占いによると、私は5年後、運命の人に出会うらしい
引き籠っているからか、人との出会いはない。
私だって幸せになりたいの! と勇気を振り絞り、当たると評判の占い師の元へ訪れた。
誰にも会いたくないとフードを深く被りマントで身を隠した姿は、我ながら結構不審だったと思う。
が、訳アリの人もよく訪れるのだろう、人気の占い師はとくに気にした様子もなく視てくれたのだ。
占いの結果、運命の人は五年後に現れるらしい。
なので、その日を楽しみに毎日を過ごしていた。
あと半年で運命の人と出会うのね、なんて思っていた矢先のこと、なんだか雲行きが怪しくなった。
魔王が現れたという噂が飛び交い始めたのだ。
やめて!
私の夢は、平和で楽しく、運命の人と幸せに暮らすこと。
戦いやら魔王やら勇者やらで物騒な世の中にしないでほしいのに。
願い空しく、魔王を倒すべく勇者を含む討伐隊が組まれ、旅立ったらしい。
相変わらず引き籠っているにもかかわらず、家の中にまで噂話は聞こえてくる。
戦いの情勢は深刻だとか、それでも勇者一行は魔王城まで辿り着きそうだとか。
そんな争いの話は聞きたくないの!
耳を塞ぎつつ、平和の世を願った。
──バンッ
「ここにいるのはわかっている、魔王!」
重くて堅い扉が開かれた。
先頭にいるのは、魔王討伐隊の勇者。
迎えるのはもちろん魔王だ。
「ハハハよくぞここまで。だがここへ踏み入れたからには消えてもらわねば」
物々しく、今まさに戦いの火蓋が切られ──。
や、待って待って。
今日はちょうど運命の人が現れる日。
戦いなんて始められたら運命の人と出会えなくなっちゃう。
私は飛び出した。
魔王と勇者の間に割り込むように、魔王を守るように、勇者に対峙した。
「争いはやめて……!」
涙を溜めた大きな瞳で勇者を見つめると、どくんと心臓が鳴った。
綺麗な金髪、意志の強そうな青い瞳。
長い旅のせいか少々薄汚れている装備品すら付加価値のよう。
これが、勇者……?
見れば向こうも同じように惚けていた。
私たちは一目で恋に落ちたのだ。
「まさか勇者が運命の人間だなんてね」
「俺の方こそ驚いた。魔王城に理想の女の子がいたんだ、戦ってる場合じゃないってな」
勇者は私にその場で求婚した。もちろん返事は即オッケー。
娘を溺愛する魔王も、息子が大切な人間の王も、互いに牽制はしつつ、我が子可愛さにあっさり平和協定を結んでしまった。史上最速である。
私はといえば、平和で幸せ、かつ毎日ラブラブで暮らせて大満足。
占い万歳! と勇者に抱きつく日々である。