『安部公房問題』
『安部公房問題』
㈠
安部公房は、自分の大変気に入っている、小説家である。『壁 - S・カルマ氏の犯罪』から、『砂の女』に続き、『カンガルー・ノート』に至るまで、凡その小説には目を通した。『カンガルー・ノート』は、安部公房の中でも最も面白いと思う、小説である。
㈡
安部公房と言えば、68歳で急死しているが、安部公房問題とは、急死しなければ、ノーベル文学賞を受けていたであろう、とされることが、大きな問題である。日本文学史上、最大の痛恨の痛手であると言って良いだろう。
㈢
才能と時期は巡り合わないのか、まさに、この夢の中の様な不可思議な内容において、読者を中毒的にするこの小説家の小説的内容は素晴らしいのだが、結句、安部公房問題とは、急死しなければ、ノーベル文学賞を受けていたであろう、という問題なのである。