第九話 決戦準備③
新たなブックマークと評価を頂けたので本日も連続投稿です!!
付けて下さった方、誠に有難う御座いました。
本日のエピソードもどうか楽しんで頂けると嬉しいです!!!!
「おーいッ、翁居るか-ー!!」
見張り櫓の下より聴こえてきた甲高い声。
それが耳に入った翁が櫓の中より顔を出すと、その下に此方を見上げる千賀丸の姿を発見した。
「……おお、千賀丸。どうした手伝いに来てくれたのかの?」
「それも有るけどー、雅の旦那から翁に手紙を渡すようにって言われてるんだ! そっち行って良いかー?」
「そうかそうか。では気を付けて上がって参れ」
用件を話し了承を得た千賀丸は、櫓に掛けられた縄梯子を登る。そして最後は翁が伸してくれた手に引っ張り上げられ、見張り櫓の最上部へと到達。
そして視界一杯に広がった非日常的な高さ、それに思わず少年の声が大きくなる。
「うわ~ッ、凄え高えな!! 壁の下で働いてる人達が一目に見渡せる、なんか殿様に成ったみてえな気分だぜ」
「ホホッ。殿、空堀の準備と壁の補強は順調でございますぞ。戦支度が整うまでもう間もなくですじゃ」
「うむ、苦しゅうない苦しゅうない!! ……殿様ってこんな感じか?」
「分からぬ。ワシも生前は殿に謁見できる様な身分では無かったからの 」
互いに見たことも無いモノの演技をしていたという事が分かり、上手く言葉が出ず会話すら覚束なくなった二人は元の口調に戻る。
そして千賀丸は懐から雅より預かった手紙を取り出し、それを翁へと手渡した。
「なあ、その手紙なんて書いてあるんだ?」
手紙の内容がずっと気に成ってはいたが律儀にその中身を盗み見ようとはしなかった千賀丸。
そして手紙を渡すという任務を完遂したその上で、翁の口からその内容を聞こうとする。
「……大太刀を可能な限り集め、木の幹の可能な限り高い位置に突き刺しておけと書かれておる。 千賀丸、お主これがどう言う意味か雅殿から聞いておるか?」
「いいや。旦那はこれを翁に渡せって言ったきり寝息立て始めちまったから」
「ふむ、そうか。じゃがこう書かれておる以上は必要な事なのだろう。町中から集めた武器の中にどれだけ大太刀があったか……」
翁はそう次に自らがすべき仕事を呟き、居ても立っても居られないという風で櫓を降りていった。そして忙しそうに地上で町の人々へと指示を出し始める。
そんな姿を見て 千賀丸は自分が邪魔に成ってはいけないなと察し、静かに翁の近くから離れたのであった。
何はともあれ、こうして手紙を渡すという雅から与えられた仕事を達成した千賀丸。
しかしそれを終えたからと言ってとても遊ぶ気に成れない彼は、更なる仕事を求め照姫の茶屋へと戻る。
そして其処で新たな団子が出来上がっている事を知り、遊んできなという照姫の言葉を固辞して、千賀丸は町の西側と茶屋の間を団子持って往復するという仕事を幾度か熟した。
その行動の裏には、確かに自分もこの町を守る為になにか協力したいという善意も存在していた。
がその感情と同等か上回る程に、自分も大人の一員として扱われたいという、何とも子供っぽい感情が存在していたのである。
「 なんじゃ、お前遊んでるのかぁッ? 」
だから、その背後から掛けられた何とも能天気な声にイラッと来たのも、彼がまだ精神的に未熟であるが故であろう。
千賀丸が振り返ると、そこに立っていたのは金色の髪に七色の目をした少女。
この町では見ない金襴のピカピカとした着物を着崩し、この町では見ない玉を使用した耳飾りを付け、この町では見ない満面の笑みを浮かべた少女である。
一目見ただけで、 少なくともこの町の住民ではないと分かる見た目をその少女はしていた。
「こんな時に遊んでる訳ないだろ。仕事だよ仕事、子供はどっか行って遊んでな」
しかしその少女の溢れ出す異常にも関わらず、千賀丸はまるで近所の子供に話し掛けられたかの様な反応を示したのである。
そして そんな少年の反応を見た少女は、更にニッコリとその笑みを深めたのであった。




