第五話 月夜のバトルロワイヤル ⑥
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「ホハハハハハッ!! オホッ、オホッ、オホホホホホ″″!!!!」
自らが放った石鎚をモロに喰らい、顔面が崩壊する音をまき散らし無様に吹っ飛んでいった不動尊を見て、骨面は何とも嬉しそうに鳴き声を上げた。
知性の欠片もないと見せかけて、どうやら戦闘の不意を衝き漁夫の利を狙う程度のずる賢さは有ったらしい。
だが悪知恵比べでは、その背後からの不意打ちすら利用してみせた雅の方が一枚上手であった。
「ダハハハハハッ!! 派手に吹き飛んでいきおったわいッ。これじゃから殺し合いは辞められん″!!」
狙っていた全くその通りと成った目前の光景に、雅も普段の顰めっ面からは想像できない程の笑顔を浮かべる。
彼は不動尊の注意を自らへと引き付けつつ、同時に背中で後ろより己を狙う気配を感じ取っていた。
更にその背後の気配が鎖を振るう音上げ始めたと同時、忍を自らの懐へと誘い込む。そして攻撃が放たれた瞬間、先ほど短刀を投げた際に予め手放しておいた刀の位置へと業『死不別互』を使用し瞬間移動。
自らを挟み隠れ合っていたその石鎚と顔面を、正面衝突させたのである。
そうして雅と骨面の協力プレイによりこの場から頭数が一つ減った。
だがそれから僅かすらも間を置かずして、雅は再び掴んだ己の本得物を振りかぶり 今度は骨面へ目掛けて猪突猛進と斬り込んでいったのである。
「次は貴様じゃ、死″ね″″ッ!!」
「ア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ッ!!」
ゴワァン″!! ゴオン″! ガァ″ン″! グワァア″ン″″ッ!!!!
射放たれた矢の如く最短距離なぞって接近してくる敵。それを前に骨面は ベットリと血が付着した得物を手繰り寄せ、此方も意気揚々と両手に石鎚を握り迎え撃った。
その身体能力は正しく人間離れしており、雅の放つ五月雨の様な斬撃の速度に常人では持つことさえまま成らぬ岩塊を武器に喰らい付いてくる。
それどころか、石鎚を打ち合わせる毎落雷の如き衝撃が刀身から柄を伝って腕へと流れ、敵の筋肉を麻痺させ始めたのだ。
「…………スウゥゥ」
このまま打ち合いを続けていては敵を斬る前に刀が振れなく成る。そう危機感を覚えた雅は 即座息一つを素早く吸い込み肺を膨らます。
そして、この戦場の速度を一段引き上げる為、精神の海原へと単身潜る覚悟を決めた。
ガン″!! ゴワァン″!! ガギィッ…………………
…………・・・・ ・ ・ ・ ・
神経すり減らす殺し合い、その一瞬の切間を突いて雅は業を発動。意識が時の流れより離れ 自らへと振り下ろされる石鎚がその動きを止める。
そして彼は、この戦いに勝機をこじ開ける必勝の動作を一人孤独なモノクロの世界で作ったのであった。
業を解除。
再び時は動き出す。
・ ・ ・ ・・・……………………………ガァ″ッ ガギィ″イ″ン″″!!!!!!!!!!!!
「ホワァッ!?」
雅の姿が残像と溶ける、そしてその刹那の内 宙へと十文字の残像が描かれた。
この瞬間彼が作った動作とは、骨面の獄門衆が握った石鎚を両手同時に弾き飛ばすという物。その精神が発した命令に肉体は己の性能許す限りの速度と精度でもって従い、刀を紫電一閃と振るったのだ。
そして予め描かれていた絵の通り、骨面の握る二つの武器が身体の正面から弾き出される。
「…グウ″″!!」
だがそれでも未だ、雅は浮上し息を吸わない。
業の解除と共に精神の海から僅かに浮上しかかった意識を超人的な胆力で押し戻し、歯を食いしばって再び海底へと潜る。
…………・・・・ ・ ・ ・ ・
業の連続使用。その負荷は単発の倍どころの話ではなく、あくまで感覚ではあるが十数倍といった所。
雅の無意識に、ブクブクと膨れ上がった脳味噌が今まさに頭蓋骨を破裂させようとしているイメージが通り過ぎた。
だが そんな中でも雅は思考を闘争一色に研ぎ澄まして、ただ敵を殺戮する為に負担を度外視で行動。この戦いでの勝利に必要な全ての動きを 此処で作りきったのである。
業を解除。
再び時は動き出す。
・ ・ ・ ・・・………………
急激に速度を纏ってゆく世界の中、雅は十文字の剣閃を描き下方向へと流れていた刀を掌で転がす。
そして刃を敵へ向けたのと同時、それはまるで棟を何かに激しく打たれたかの如く 地から天へと跳ね上がっていったのである。
門が開けられガラ空きと成った敵の胴体、そこへ目掛け雅は無慈悲に決着の一撃を振り抜いた。
………………………ッズウォオ″ン″″
予め作られていたその通りに、動作は寸分の狂いもなく最大限の速度で実現された。
そしてにも関わらず、 その握る柄に感じた殆ど無いも等しい手応えに、 雅の瞳孔がカッと見開く。
骨面の獄門衆は、放たれたその正しく雷光煌めく様な斬り上げを 余りに容易いと見える動作で躱してきたのだ。後頭部と尻がくっ付くほど上体反らし、下方からの急襲を難なく透かす。
並の獄門衆では斬られた事にすら気付けぬ、神速の剣技をである。
「 」
恐ろしい反射神経。恐ろしい瞬発力。恐ろしい野生の勘。
だがしかしそれよりも恐ろしいのは、 それら全てを振り切るまで果てしなく次手を打ち、是が非でも敵の首へと刃届かせてくる雅の執念であった。
ブウォン″ッ!!!!!!
手応えを伝える事なく虚しくも空を切ってゆく刀。それがその回転運動の頂点で、突如雅の手から離れた。
それは遠心力に引っ張られ回転しながら宙へと浮かび上がる。そしてつい先ほどまで敵の下方へと位置していた筈の得物は、瞬く間に骨面の頭上真上へと位置を変える。
……………パシッ!!
その次の瞬間刀が到達した位置へと 雅は業の力を使用し瞬間移動。更にそこから落下する事により即座次撃まで繋ぐ。
重力加速、体重、腕の振り、身体の捻り。雅の全身全霊が唯一本鋼の上へと乗せられる。
そしてそれが 敵の脳天目掛け大上段より振り抜かれた。
「ギ″ャ″ガ″ア″ア″ッ!!!!」
ジャリリイッ
しかしその紫電一閃からの電光石火という様な連撃にも関わらず ここでも骨面は雅の動きに対して完璧な対応を見せる。
振り下ろされた刃と自らの脳天との間 そこへ石鎚を繋ぐ鎖を掲げ斬撃を受け止めんと
……バヂィ″″ ッズ″バ″ア″ア″ア″″″ン″″″″!!!!!!!!
だが結局、 その神掛かり的な反応ですら、 雅の一度狙い定めた猛牙からは遂に逃げ切ることは叶わなかった。
天空より振り下ろされた斬撃 それが触れた瞬間鎖はまるで稲藁が如く千切れ飛び、刃は頭頂から股間までを触れる物全て斬り裂きながら通過。
バタッ ド″シャァァッ…………
刃の通過から一秒後、骨面の身体が真っ二つに分たれ 倒れる。
そしてその中に詰まっていた臓物血液がドボッと溢れ出て、また一つ命が潰えたのであった。
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