公私分けるタイプです
そうして迎えた土曜日の朝7時
梅ちゃんのアパートの前に祐さんはいた。
細身の体にワッフル素材のモスグリーンのトップスに紺のメルトンショートコートを羽織り柔らかいジーパンを合わせている。
「祐さんお待たせしました。」
梅ちゃんは普段のきついメイクではなく日焼け止めにマスカラをした後ワンカラーだけ乗せたアイシャドウに色つきリップと化粧崩れを気にしなくてもいいメイクをしている。
いつものキリッとつり上がった目ではなくタレ目でいつも下がっている口角はニコニコと上がったまま。
服装もピシッとしたスーツではなくゆるっとしたシルエットのグレーのシャギーカーディガンに赤いチェックのワンピースを合わせている。
祐さんの知っているキリッとどんな相手でも睨みあげ決裁を!申請を!と凄みを利かせる決裁のタイムキーパー梅ちゃんは休みの日もパリッとした服でいつものムッとした顔をしてるのかと思っていた。
「梅ちゃん・・・可愛い・・・」
「普段はキツイ感じにしてるし自分でも見慣れないかな」
えへへと照れ笑いをする梅ちゃんはタレ目がさらに下がりほわほわと柔らかい印象を与える。
「ねぇ梅ちゃんと俺ってもしかしてタメじゃね?」
「え?タメだし同僚よ?」
まじかと祐さんは顔を覆うように手で隠しながら呟く。
「祐さんも私服かっこいいよ。いつもの格好も素敵でしたけどスタイル良いですね」
まじまじと見つめながら言う梅ちゃんは自分の体をながら手足長いですよね~とくるくる首と一緒につられて動いている。
そんな梅ちゃんを見ながら祐さんは入社して1年ほどで名前を聞くことも出来ずにいなくなってしまった同僚が梅ちゃんなのではと思案していた。
「あっ祐さん時間やばいかも!早くバス停に行かなきゃ」
いっぱい歩けるように編み上げブーツを履いてよかったと言いながら既に走り始めた梅ちゃんを祐さんはその走る姿といなくなってしまった同僚の走る姿を重ねながら追いかけた。