Gランク
「アイアン、俺はサポートでいいのか?」
「後ろを任せていいか?」
アイアン達はパーティメンバーの3人でピンクオークと対峙する。俺は後を向いて他の襲撃に備えてくれとのこと。
「セイー、手伝おうか?」
「そうだね。周りの奴らを狩って来てくれる?」
「ハーイ」
アイアン達に合わせてここまで自力で走ってきたのだ。いつもぬーちゃんに乗ってるから結構しんどかった。これはちゃんと走り込みしないとまずいな。ドラゴン狩りに行くまでに毎朝走るか。
ぬーちゃんは首から離れて普通サイズで狩りに行った。マフラー代わりのぬーちゃんがいなくなると途端に寒い。狩りに行くつもりもなかったのでワイバーン装備でもないただの防寒着だ。
後ろでアイアン達がヤアッー!そこだっ!とか掛け声をかけながらピンクオークを討伐したようだ。しかしまだいるみたいで声は出し続けている。
暇だな。
ぬーちゃんが狩りに出たのでもうこちらに来る気配はない。ぬーちゃんは肉を持ってきてはまた消えていく。
この寒い時期にこれだけ出てくるってヤバそうだな。こんなウドー以外何もいなかった所にもうピンクオークだしな。明日、山に確認しにいってみるか。オーガが増えてたら角有りが食われてるかもしれん。
「グッ。しまった。セイっやべえっ。そっちに行かしちまった」
そう叫ばれて後をみるとピンクオークが向かって来てたのでメラウスの剣でスッぱりと殺った。
「気を付けろよー。そっちは任せてんだから」
一撃でピンクオークを両断したのを見て固まるアイアン達。
「ほら、また来てんぞ」
ぼーっとしてんなよ。後から襲われたら死ぬぞ?
そしてアイアン達がそのピンクオークを討伐したところで終了。ぬーちゃんがもういないと言ってきたからだ。
俺が1匹、ぬーちゃんが7匹、アイアン達が2匹。ちょうど10匹だ。
セイは肉をアイテムボックスにしまい、アイアン達に帰ろうかと言った。
「お、お前いつの間にそんなに強くなったんだよ?」
「剣のおかげだよ。もういないみたいだから帰ろう」
「どうしてわかるんだよ?」
「ぬーちゃんがこの辺にいた奴を狩ってくれてもういないって言ってるからいないよ。それとも他の場所も探しにいく?」
「い、いや大丈夫だ」
じゃ、と帰りは歩いて帰る。
「お帰りなさーい。どうでした?」
「リタの舞のお陰で楽勝だったよ。ありがとう」
「えへへへへ」
受付に行き、アイアン達に肉を10渡す。
「はい、完了報告よろしくね。俺の分はポイントも報酬いらないから」
「そ、そんな訳には行くかよっ。これほとんどお前らがやったじゃねーか」
「じゃ、ここで昼飯奢って。腹減ったよ」
「そんなんでいいのかよ?」
「いいよ」
討伐報酬はピンクオーク1匹に付き銀貨5枚。肉が銀貨10枚。全部で金貨1枚と銀貨50枚。アイアン達は一日で一人銀貨50枚の稼ぎになった。
「本当にいいのかよ?」
「いいよ。ここに来た時にアイアンが親切にしてくれなかったら野垂れ死にしてたかもしれないんだから」
「大袈裟な事をいうなよ。登録代立て替えただけじゃねーかよ」
「いや、あれ本当に助かったんだよ」
セイはソーセージとパンとシチューを食べていた。ここのソーセージ旨いんだよね。パリッと香ばしく焼いてあるから。
「お前、あんまりギルドに顔出してねぇけどいつも何やってんだ?」
「もう色々だよ。直接依頼とか受けてるから結構忙しくてね」
「ギルド通さなかったらポイント入らんだろうが?」
「もうCに上がってるからポイントもいらないんだよ」
「上目指さねぇのか?あいつを一撃で一刀両断とかすげぇじゃないか。お前ここに来た時には武器持ってなかったよな?」
「いいのを作って貰ったんだよ。軽くてよく切れるから気に入ってるんだ」
「真っ黒の剣とか初めてみたぞ」
「これ、俺以外の人が持つと力を吸い取るから他の人には使えない剣でね」
「そんな剣がありやがるのかよ」
「まぁね」
「お腹空きましたーっ」
そこにリタがやって来た。
「昼休憩?遅いね」
「いつもこれぐらいですよ」
アイアンがリタのも奢るといったのでたくさん注文していた。結構食うのよねこの娘。ウェンディやヘスティアほどじゃないけど。
「アイアンさん、頂きます」
「おぅ。バンバン食え。セイのお陰で懐がホクホクだからな」
「あのピンクオークっていつから出だしてる?」
「今年に入ってからですよ。ギルマスは渋い顔をしています」
「だろうね。このままだと春にはブラックが出るだろうね」
「はい。ギルマスもそう言ってます。セイの野郎の言った通りだって」
「セイ、お前この状況を予測してたのか?」
「ほら、ギルマスが前に言ってたじゃないですか。皆が仕事増えて儲かるって喜んでたらそのうちお前らが対応出来ない魔物が出ないといいなって」
「ああ、確かに。ブラックオークの次はどうなるんだ?」
「多分だけど、ミノタウロス、角有りミノタウロス、オーガの順番で出る。角有りまではいいんだけど、オーガは強いわ肉が食えないわで冒険者の旨味が少ないだろうね」
「マジかよ・・・。その次はなんだ?」
「まだわからない。それに今まで出なかった魔物も出るかもよ。ボッケーノだとイワトカゲとかいるしワイバーンも出る。ここでワイバーンがでたらまずいと思うよ。ボッケーノは火山から離れなかったからまだいいけど、ここで街を襲撃されたら被害大きくなるだろうね」
「ワイバーン?あの飛ぶやつか」
「そうそう。尻尾の毒もヤバイらしいから今から空飛ぶ魔物と毒持ちの魔物の対策しておいた方がいいよ」
「マジかよ・・・」
「でもワイバーンって金になるよ。ボッケーノだと皮なら金貨1枚。毒袋なら銀貨50枚だったかな?今は買い取り金額下がってるかもしれないけど。あの毒袋って何に使うんだろうね。矢に塗ったりするのかな?」
「大半がポーション作成に使われると思いますよ」
「毒が薬になんの?」
「毒消しポーションの材料になるんですよ。身体が腐っていく毒と動けなくなる毒とかいくつか種類があってそれぞれに効くポーションが作られるんです」
なるほど血清みたいなもんか。
「ワイバーンってどっちの毒?」
「ちょっと待って下さい。魔物図鑑持ってきます」
リタが飯の途中なのに取りに行ってくれた。食べ終わってから聞けば良かったな。
「えーっと、図鑑には身体が腐る毒になってますね」
「ちょっと見せてくれる?」
と図鑑を見ていく。毒のマークがあるのはと・・・
ほぅ、蛇系の魔物は動けなくなる毒、マヒ系ってやつか。これが強くなると猛毒とか表示が変わってて即死級とかもあるな。
そして魔物討伐があった国も記されている。
「この図鑑って販売してたりする?」
「高いですよ」
あ、売ってるんだ。
「いくら?」
「金貨2枚です」
手作り図鑑だし、各地の情報をまとめたらそれぐらいになるのか。
「在庫あるなら買おうかな」
「えっ?おまえこんな高いもん買うのかよ?」
「あちこち行ってるから知らない魔物とかいるしね。それに教えて貰った情報が間違ってたりするんだよ。いちいち初めから記録取るの面倒だし、書き込めたら楽だろ?」
恐らくこの図鑑はずっと昔から情報を何度もアップデートしていって作られたものだ。冒険者ギルドの宝だと言っても過言ではないと思う。あちこちにいける俺達はそれを少しでも手伝えたら各地のギルマスの気持ちの手伝いになるかもしれんからな。マモンやカントのようなギルマスの。
「ざ、在庫はたしかあったと思いますけど・・・」
「セイ、そいつはお前にやる」
「あ、ギルマス。くれるってこの図鑑を?」
「その代わり、新しい情報や間違ってる情報があれば教えてくれ」
「それはするつもりだけど、ちゃんと買うよ」
「いや、費用は本部に請求するからかまわん。この前の情報も重要事項として感謝されたからな。もしガイアに行く時がきたら総本部に顔を出してみてくれ」
「まぁ、そのうち行くつもりではあるからその時はね」
「あと冒険者証を出せ」
「何すんの?」
「ランク変更だ」
「Cのままでいいよ」
「うるさいっ。いいから出せ」
そう言われて渋々だす。ポイントはともかく俺はランクアップ試験すら受けてないんだぞ?
「おいおい、まさかお前Bを飛ばしてAに上がるんじゃないだろうな?」
「まさか。試験すら受けてないんだぞ」
「だってよぉ、ギルマス直々に冒険者証を取りに来ることになんてねぇぜ普通」
「まぁ、ギルマスとは仲よくさせて貰ってるってのもあるとは思うよ」
しばらく待ってるとギルマスが帰って来た。
「ほらよ」
ん?
「ランクGって何?最低のEより下じゃん」
なんか冒険者証自体が黒色になってるし、ランクGってなんだよ?
「裏も見ろ」
と言われて裏をみる。E・D・C・B・AS・Gと記載されていてSとGに印が付いている。
「どういうことこれ?」
「Gはお前専用ランクだ。他の奴らには無い記載だからSにも印が入っている。つまりお前はSより上のランクということだ。これは本部が特別に作った。Gランクに付いては各地のギルドにはすでに通達が入っている。Sへの印は他国に入国する際にお前みたいにEより下だと勘違いしないようにするための配慮だ。だから冒険者証は黒だが名前は金になってるだろ?」
なぜ金文字なのかというと、Sランクの冒険者証が金色だからとのこと。
「Cのままでいいよ。こんなの貰ったら絶対に面倒な事に巻き込まれるじゃんかよっ」
「巻き込むためのものだからな」
酷ぇ・・・
「ちょっとぉっ。いらないよこんなのっ」
「特別依頼は受けさせるからな。まぁ、強制されんのはアネモスだけだ。一応他国の特別依頼は断ることも出来るぞ」
「俺、ボッケーノで指名手配されてんだけど」
「指名手配じゃない。捜索依頼だ」
「え?なんで知ってんの?」
「ボッケーノのファインってギルマスが泣きそうな手紙をこっちに通信を使って送ってきた。次にボッケーノに行くのはいつだ?」
「そんな事になってるならもう行かないよ」
「嘘つけっ。いつかハッキリ言っとかないと騎士団派遣されて連れて行かれるぞ。嫌だと抵抗してそいつらと戦うつもりか?」
そんな事になるのかよ・・・
「わぁ。セイさん専用のランクなんて凄いですねぇ」
うん、リタは無邪気でよろしい。
「リタ」
「はい?」
「この冒険者証あげようか?」
「いりませんよ」
とニコニコした無邪気なリタに断られてしまったのであった。