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嫌がらせはカニ汁

翌日はこんな地獄みたいな場所ではなくて雪景色の所をリクエストする。


「ここならばっちりだろ?」 


目の前には大きな湖があり、もうもうと湯気がでている。


「これ全部温泉?」


「触って見ろよ」


と言われて手を入れるとちょうどいい。しかもしんしんと雪が降っているのだ。


「バッチリだ。バッチリだよヘスティア」


「よ、寄せよっ」


褒められるとテレるヘスティア。


ん?


なんかギラッと光った気がする。


「ここなんかいる?」


「知らねぇよ。入った事はねえし」


「キュウタロウ、キュウタロウ。ちょっと何がいるか見てきてくれ」


「ヌシ様」


ひょうたんから顔だけ出すキュウタロウ。


「もうあんな冷たいのはイヤでヤンスっ」


「ここは温泉だから温いって。ほら見てきて」


キュウタロウの首根っこを掴んで引きずり出し温泉の湖に投げたセイ。


バシャンっ


「冷たっーーーくない!?」


「だから言ったろ?さっきなんかギラッて光ったんだよ。見てきてくれ」


と言ったらようやく見に行ってくれた。そしてしばらくすると魔魚を捕まえてくる。


「いっぱいいるでヤンスっ」


山の池よりデカい。こんなのに風呂に入ってて食いちぎられたら・・・


「キョェェェェッ」


慌てて飛び出てきたキュウタロウの尻尾に魔魚が噛み付いていた。サカキがそれを握り潰してやる。


「もう嫌でヤンスっ」


と言って帰ったきり出て来なくなった。


「キュウタロウをふん捕まえてきてやろうか?」


「いや、もういいよ。キュウタロウは戦闘能力が無いしね」


「クラマ、この湖を浄化出来る?」


「全部やるのは大変じゃな」


「そうだね。かなり広いからね」


「わたしの出番ね。年寄りは引っ込んでなさいっ」


「やめろ。ウェンディがやったら全部無くなりそうだからな」


「どうするんじゃ?」


「現場監督。宜しくお願いします」


ということでクラマの指揮でサカキに露天風呂サイズに岩で区切って風呂場を作ってもらう。そこをクラマに浄化してもらうことに。土木作業再びだ。


「俺様が全体を浄化してやろうか?」


「煮えたぎるからやめて」


ヘスティアが浄化したら水蒸気爆発とかになりかねん。川を堰き止めるときも爆発してたからな。


サカキは元の姿になり、デカい岩をフンフンっと投げていく。


「おー、サカキのあの姿は見事なもんじゃのう」


ビビデもバビデも悪鬼のサカキを見ても怖がりもしない。流石だな。


大まかに区切った後はサカキが砕いた岩をデカい岩の上から隙間を埋めるように皆で投げ込んで完成。湯は岩の隙間から行き来するみたいで冷めもしない。完璧だ。


「セイ、混浴にするのかい?」


「あー、なんか仕切りがあったほうがいいね。ちょっと下級妖怪たちに頑張って貰うか」


と皆を呼び出し、前に取っておいた木を切って男湯と女湯の仕切りと脱衣所代わりの衝立を作って貰った。


「ありがとうなお前ら」


お礼に妖力を注いだら嬉しそうに帰っていった。


クラマの浄化が終わるとサカキはジャブジャブと湯に入り男湯と女湯の仕切りを岩で固定していく。うんうんバッチリだ。


「よし、飲むぞ」


「いいぞ」


少し早いけど念願の雪の中の温泉とカニ鍋を食べたくて同意したセイ。


サカキ達の鍋は2つ。こちらに一つでウェンディとヘスティアとぬーちゃんだ。


このメンバーでの鍋はとっても嫌な予感がする。


しかも想像していたより寒いのでテントを出してその中で食べる事に。


「タマモ、そっちもテントいる?」


「ビビデ達が平気そうだから別にいいよ」


そして案の定煮えたしりからウェンディが身を取ってと抜かしやがる。お前がそう言うとヘスティアも言ってくるだろうが。


二人から早く早くと急かされポキンにゅぽんっとカニの身を出して渡すカニ鍋屋の女将と化すセイ。


ダメだ。自分が食う暇がない。ぬーちゃんは殻ごといくので問題はないけと。


セイは式神に女将役をバトンタッチした。


式神がカニの世話を焼き出すとヘスティアは自分でカニの足をにゅぽんと出して食べる。出来るなら初めから自分でやってくれ。


「熱っつうぅ」


なぜ鍋から出した熱々のカニを平気で掴めるのに猫舌なのかさっぱり理解が出来ない。


テントがあるとはいえ、地面は冷たいのでマットレスを椅子代わりにして、毛布を膝に乗せて食べる事に。


「こら、ウェンディ!毛布で手を拭くな。もうそのカニ臭い毛布はウェンディ専用にするからな」


カニ汁ベタベタの手を膝に乗せた毛布で拭くとありえん。



しかし、テントの中は風情がないな。単なるキャンプとかわらん。


セイは寒いのを我慢してテントを捲りあげて外が見えるようにして食べだした。


「あー、旨いわぁ」


念願の温泉地で雪を見ながらのカニ鍋を堪能する。サカキ達は鬼殺しを飲んでいるがタマモと砂婆、そしてこちらの鍋組は日本酒だ。


「かあっーっ。カニとこの酒旨ぇっ」


そうヘスティアが叫ぶ。ウェンディもご機嫌で旨そうに飲んでいるし、ぬーちゃんも皿から飲んでる。


俺もちょっとだけ。クピっ


カハッカハッ。


砂婆が熱燗にしてくれていたのでむせるセイ。酒に雪を入れて冷ましてカニを食って飲んでみる。


「おっ、旨い」


「セイ、頼むから酔うまで飲まねぇでくれよ」


と、ヘスティアに釘を刺される。


「わかってるよ。ちょっとだけだよ」


カニ食ってキュ、カニ食ってキュ。


外の寒さもあまり感じなくなり、超絶に旨い。もう止まらんわこれ。


カニ出汁でとろけた白菜も旨いねぇ。


「サカキ、あっちでセイが飲んでるみたいだけど大丈夫かねぇ?」


「ヤバそうなら湖の奥の方まで投げてやるからいいじゃねぇか。それにどうせ餌食になんのはウェンディだしよ」


「それもそうさね」


とタマモ達はセイが飲んでるのを黙認した。


「ちょっとぉ、もうそれ以上飲まないでっ」


いつセイがヨシヨシモードに切り替わるか気が気でないウェンディ。


「だーい丈夫だって。あ、そうだ忘れてた。ウェンディ、頭出せ」


「いっ、嫌よっ」


「いいから出せって」


とセイはウェンディの頭をぐいっと近付ける。


「イヤーーッ。ヨシヨシされるのいやーーっ」


「ほら出来た」


「え?」


「お前の髪飾りだよ。カチューシャっていうらしいぞ」


頭にはめられたカチューシャを手でペタペタ触るウェンディ。それもカニ臭くなるぞ?


「えっ?」


「なんだよー、ウェンディばっかりぃ。俺様のは無いのかよーっ」


「ヘスティアはもうしてるだろ?ウェンディのは儀式用だからってタマモに取り上げられたんだよ。ウェンディ、この前作ったのお前も忘れてただろ?」


「う、うん」


「よく似合ってるわ。可愛いぞ」


「あ、ありがと」


軽く酔ってるセイは素直にウェンディを褒めた。


ウェンディはタマモに鏡を貸してもらって自分の頭を見る。お気に入りの青い宝石が散りばめられた髪飾り。とても可愛いデザインだ。


「へぇ。いいの作って貰ったね。ちょいと手直ししてやろうかね」

  

タマモが髪の毛を手直しして髪飾りがよく見えるように整えた。


いつもは犬だの猿をだの言うセイが可愛いと褒めたのが今になってとても照れくさくなったウェンディ。


雪の上に立ち、火吹きウサギのフワフワポンチョにフワフワブーツ。お揃いの綺麗な青の宝石を身に着けたウェンディはとてもいつものウェンディには見えず、サカキ達もほぅと呟いた。


照れくさそうに元の席に戻るとセイはぬーちゃんを抱き締めてヨシヨシしていた。


ちょっとヨシヨシされてやってもいいかなと思ったウェンディは肩透かしを食らったみたいな気になり、嫌がらせにセイの背中にカニの汁をぽたっと垂らしておいたのであった。



カニ雑炊を堪能した後は念願の温泉だ。


セイは水筒に水を入れて風呂に入る。サカキ達も一緒だけどたまにはみんなで入るのも悪くない。下は砂で座っても痛くはなく、ちょうどよい深さの所で座るとぬーちゃんもそばに来た。


「ぬーちゃん、気持ちいいねぇ」


「うーん」


女性陣は隣で風呂に入っている。


「セイーっ。水くれよ」


ひょいと仕切りから顔を出すヘスティア。


「ばっか、見るなよっ」


「見えねえっ・・・て」


ビビデとバビデはサカキが浸かる深さだと立たないといけないので岩に座っていた。しかも何も隠してはいない。


「何見せてくれてやがんだこの野郎っ」


ヘスティアはビビデとバビデの大事な所を焼いた。


「熱っうううううっ」

「熱ちゃちゃちゃっ」


なんて酷い事をしてやるのだ。二人は慌てて湯湯に入り火を消した。そして浅瀬まで来て確認する。どうやら本体は無事だったようだ。

 

「な、なんじゃったんじゃ今のは?」

 

「バチだよ」


バチを当てられる覚えが無い二人は頭をひねっていた。



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