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女神と混浴?

セイが皆の元に戻るとすぐに戻ってきたウェンディ。


無言でセイをぽかぽかと殴る。


「だからいきなり浸かるなよって言ってやっただろ?」


「あんな熱いお湯に浸かってるなんて思わないじゃないっ」


俺は川の水で薄めながら入ってたからな。


「残念だったな。あそこは川と交互に浸かるのがコツだ」


「そうなの?」


「冷たい川に浸かって身体を冷やして温泉に入り、熱くなったらまた川に浸かるんだ」


「もう一度行ってくる。一緒に来て」


またさっきのところまで行って靴を脱がしてやる。


「いやーっつめたーいっ。熱っづううぅぅぅっ」


アホだ。一人で地獄巡りしてやがる。


「もーいやーっ」


「バカっ、いきなり出てくんなっ」


慌ててバスタオルを投げて後ろを向くセイ。


「お前、幼児体型とはいえ裸で出てくんなよっ」


「みっ、見ないでよっ」


「見るか馬鹿。ちょっとそのまま待ってろ」


少しウェンディが哀れになったセイは下に降りて川の水を入れて調節していく。


「ほら、普通に入れるようにしてやったから入ってこい。川の反対側から熱い湯が湧いてるから川の近くで入れよ」


「騙してるんじゃないでしょうね?」


「いいからさっさと入ってこい。俺は向こうに行ってるから」


「そこで待っててよ」


「なんでだよ?」


「暗くて怖いじゃない」 


すでに日は落ちて真っ暗だ。月も出てないのでかろうじて星明かりでそこに誰がいるよなってぐらいにしか見えていない。


「なら狐火で照らしてやろうか?丸見えになるぞ」


「いっ、嫌よっ」


「さっさとそこを降りていけ。そこだけ照らしておいてやるから」


セイは後ろを向いて狐火で段差から下を照らしておいてやった。


今度は騒がずに入ってるウェンディ。


「セイーっ、そこにいるーっ?」


「いるよ」


ひっきりなしにそう聞いてくるウェンディ。狐火がそこにあるからいるに決まってるだろうが。


それを延々と繰り返した後にもう出ると言ってきたのでまた後ろを向いて着替えるのを待った。


「おんぶ」


「は?すぐそこだろ?」


「暗くて歩くの怖いの」


確かに狐火はそこまで明るく照らしてくれるわけではない。尖った岩だらけの所でコケたりしたら危ないな。


「ほら」


としゃがむとひょいと乗ってきたウェンディはホコホコしていた。



「お前らなにしてたんだよーっ?」


戻るなりヘスティアにそう言われた。飲んで盛り上がってて俺達がいないのに気付いていなかったのだ。クラマも混じってメラウスの剣とサイン入りナイフの話題で盛り上がってたのだ。


砂婆も珍しく飲み会に参加している。ビビデ達と話すのは楽しいようだ。ビビデ達もタマモがいるから嬉しそうだし。


「風呂入ってたんだよ。ほらウェンディもここで飯食ってろ。俺はもう一度ゆっくり入ってくるから」


そして水筒に水を入れて準備完了。


一人でもう一度温泉に向かうとヘスティアが付いてくる。


「何?」


「どれに入ったんだ?」


「川べりの奴だよ」


「そんなとこにもあったか?」


「見付けたんだよ。ここの温泉はどこも熱すぎてそこしか入れないんだ。明日は違う所に連れてってくれ」


「ここのは熱くていいと思ったのによ」


あなたと同じ感覚で湯を選ばないで欲しい。


「ほらここだ」


「へぇ、これを降りないと入れないのか」


「そうだよ。じゃ俺はゆっくり浸かるから」


と、服を脱いで下に降りる。暗いから平気で脱いだけどヘスティアは暗闇でも見えるのを忘れてた。まぁ、今更だ。


もう一度温度を確かめてから湯に浸かる。真っ暗な中、川の音を聞きながら湯に浸かるのもオツだ。さ、冷たい水を飲もう。


おっ、さすが魔導具の水筒だ。よく冷えてる。


ゴッゴッゴッゴッ


「ぱっーっ。旨い」


「俺様にもくれよ」


「ワァァァァっ。な、な、な、な、何入って来てんだてめーはっ」


まったく気付かなかった。どうやって入ったんだこいつ?


「何って、お前さっきまでウェンディと入ってたんだろ?だったら俺様もいいじゃねぇかよ。それより水くれよ」


「一緒になんか入ってないわっ」


暗くてもそっちを見れない。


「そっ、そうなのかよ。てっきりお前ら一緒に入ってたから俺様もとか思ってよ」


今更照れんな。こっちまで恥ずかしくなるだろうが。


「なんで一緒に入ってきたんだよ。俺は一人でゆっくり浸かりたい派だと言っただろうが」


そう言いながら水を入れて渡すセイ。


「ず、ズルいじゃねーかと思ったんだよ」


「俺がウェンディと風呂に入るとか一度も無かっただろ。恥ずかしくないのかよお前?」


「いつもの服だから大丈夫だ」


は?


「いつもの服?」


ヘスティアの方を見ると服のまま浸かってやがった。暗くてもそれぐらいは分かる。


「せめてブーツぐらい脱げっ」


「なんだよっ。別にいいだろ?それとも何かよ。俺様の足がそんなに見たいのかよ?やっぱりフェチか?」


だからフェチってなんだよ?


もうどうでもいいわ。


なんか疲れがどっと出たセイは川を眺める。川が星明かりでキラキラしているかのように見える。


「なぁ、ヘスティア」 


「なっ、なんだよ?」


「お前、寂しがり屋だったんだな」


「そっ、そんな訳あるかっ」


「嘘付け。よく今まで天界で一人で暮らしてたな」


「ま、まぁな」


「外界の飯とか酒とか旨いか?」


「べっ、別に食わなかったら食わないんでいいんだけどよ、腹も減った感じもするし、こっちにいると食いたくなるんだよ」 


「そうか。まぁ、俺がこの世界にいる間は好きに飲み食いしてくれ」


「本当に帰るつもりなのかよ?」


「まだわからん。帰りたくてもウェンディを本当に神に戻せるのかわからん。なんとなく降格させられたのは意味があるんじゃないかと思っててな」


「意味?」


「そう。グリンディルが言ってたんだけど、神の恩恵を一番受けてるのがアネモスなんだと。人々がそれに気付いてないだけだって。あいつあんなんだけど仕事はちゃんとやってたんだろうなって」


「俺様にはよくわからん。他のヤツらがどうやってるのかもしらねぇし」


「ヘスティアが神の噴火をさせるのが何百年に一回とかだろ?」


「まぁな」


「ウェンディはもっと頻繁だったんだと思うんだよね。ヘスティアみたいに基準を決めてやってたわけじゃなさそうだから、取り敢えずやってたんだろうけど」


「ちゃんとやってても信仰心を失うんだから可哀想っちゃ可哀想だよな」


「なぁ、降格の条件って信仰心だけか?」


「知らねぇよ」


「真面目に神の仕事をしてて、めちゃくちゃ人が死んでるわけでもないのに大神って器量が狭いのか?」


「だから知らねぇって」


「信仰心だけなら戻せるような気がするんだけど、条件がそれだけじゃないならわかんないんだよね」


「そんなの信仰心戻ってから考えりゃ済むはなしだろ?」


「まぁ、そうだな。まずはそれをやらないと始まらないか」


「そうだぜ。それより先に俺様の服を作ってくれよな」


「わかってる。温泉から帰ったら予定より早めに出ようか。3月くらいに」


「本当かっ?」


「あぁ。他の国も見て研究もしないといけないしね」


「アクアとか行くのかよ?」


「行くよ。アクアもガイアも」


「は、早く帰って来いよな」


「なんだよ。やっぱり寂しいんじゃないか」


「うるせえっ」


そして二人で水を飲んで風呂から上がった。ヘスティアが出ると神の服は一瞬で乾き、セイは着替えてヘスティアの熱で乾かした。ウェンディが微妙な風のコントロールが出来たらドライヤーになるのにと思った。


皆の所に戻ると砂婆が温泉まんじゅうを作ってくれて、なんか甘いものがとても美味しく感じたのであった。


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