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呪いのネックレス

「あの・・・」


セイは迷った挙げ句に話を聞いてみることに。


「奥さんは体調とか悪かったりします?」


「いいえ。至って健康ですわ」


「何か良くない事とか起きたりしてませんか?」


「良くない事は娘が拐われた事かしら。それ以外は特に・・・」


おかしいな。何に呪いが掛かってんだろうか?


いきなり聞いて愛人のなんかが絡んでたらやぶ蛇だしな。


「いや、それなら良かったです。少し顔色が悪そうにみえたのは勘違いだったようです」


「化粧のせいかしら?張り切って塗ったのがよくなかったのかしら?」


確かに顔だけ浮いたように白いからな。顔立ちが綺麗なんだからそんなに塗らなくていいのに。


しかし、気にはなるな。後で領主にこっそりと聞いてみるか。


晩餐の前に二人で少し話がしたいと執事に伝言をしてもらった。


こちらのお部屋で晩餐までお休み下さいと寝る部屋に案内してくれたのはいいが大きなダブルベッドが一つ。


「わたしここーっ」


わたしここって、ベッドは一つしかないだろうが。まぁ、一緒に寝るつもりはないのでヘスティアと寝てくれ。


コンコンっ


「どうぞ」


「話があるとはなにかね?やはり娘と・・・」


「違います。少しお伺いしたいことがございまして」


と、寝室の横の部屋に移る。ウェンディが何を言い出すかわからんからぬーちゃんに見張ってて貰った。


「つかぬ事をお伺い致しますが、奥様のネックレスはいつからされていますか?」


「あれは娘が生まれた時に付き合いのある貴族から祝いにとプレゼントされたものだ。日頃使いに丁度良くて妻も気に入っているのだ」


「それから体調を崩されたりとかはされてませんか?」


「先程もそのような事を言っていたがなにかあるのか?まさかあれが盗品とか言い出すのではあるまいな?」


「ご主人様はあのネックレスに関わっておられないんですね?」


「あぁ」


「では率直に申し上げます。あのネックレスには呪いが掛かっています。どのような呪いかまではわかりませんけど」


「呪いだと?」


「はい。私は冒険者ですけど、どちらかと言うと魔物を倒したりするより幽霊を祓ったり、怨念や呪いの類を解決したりするのが本業なのです。バンパイアを捕縛したのもその術を使ってやりました」


「なんだと・・・」


「奥様に特に影響が出ていないのであれば問題は無いのかもしれませんが、結構強い呪いみたいです。それに何かその呪いを隠蔽するかのような工夫がされているかもしれません」


「その話は本当か?なぜあの場で言わなかった?」


「以前、他の貴族の方からの依頼で怨霊を祓ったのですが、愛人関係が原因だったんですよ。なのでもし同じならあの場で言うのはまずいなと」


「わっ、私は妻一筋だ。それに愛人とかはありえん。ハニートラップとかも気をつけねばならんからな」


この国は貴族間の足の引っ張り合いが多いのかな?


「失礼致しました。どのような呪いかは解りませんけど、良かったらそれを祓いましょうか?」


「出来るのか?」


「はい。別に報酬もいりませんから。ただ、呪いというものは祓うと呪った人、それにその術を使った人に跳ね返ります。それが同一人物だと死ぬかもしれません。別々であればそれぞれが原因不明の病気のような苦しみ方をして衰弱するでしょう。それでもいいですか?」


「何のために呪いをかけたのかわかるか?」


「いえ、時間を掛けて調べれば分かるかもしれませんが、私達は次の約束があるので今夜しかここにおれません。祓うだけなら可能です」


「わかった。妻を呼んでくる」


そしてしばらくして奥様がやって来た。


「主人から伺いました。その話は本当でございますか?」


「はい。目に見えないものなので影響がわからないうちは信じられないと思いますけど。報酬も請求しませんので詐欺と疑わないで下さいね」


大体この手の話をこちらからすると詐欺扱いされるから依頼があってから解決するのが本来の流れ。これは曾祖父から教えられたことだ。


「う、疑うなど・・・」


うん、少しは変だと思った反応だねそれ。


「自分は宝石には興味もありませんから、お預かりもしませんしこの場でやりますよ」


領主から頼むと言われたので、式神で結界を張り手刀で魔を祓ってから手印を組んで術式を唱えていく。


ネックレスの宝石から禍々しい煙のような物が出始めてパッと何処かへ消えていった。呪った人の所へいったのだろう。


ピシッ


「あっ」


Oh!なんてこったい。かなり強い呪いか隠蔽工作に耐えられなかったのか宝石が割れてしまった。


「ご、ごめんなさい。まさか割れるとは思ってなくて・・・。この色って気に入られてました?」


「・・・・」


悲しそうな奥さん。


あの薄い赤の宝石持ってないんだよなぁ。濃い赤ならあるんだけど。


「領主様、奥様、ごめんなさい。呪いは祓えましたけどこんな事になってしまって。代わりの宝石でご了承してもらえますか?似たような色のを持ってなくて他の色になっちゃうんですけど」


じゃららと宝石を出して好きなのを選んで貰うしかない。


「今あるのはこういうのだけなんですよね。薄い色のが良ければピンクか水色になっちゃうんですけど、赤色はこんな濃い色のしかなくて」


「ブッ」


「あ、気にいるのありません?弱ったな。少しお日にちを頂けるなら似たようなの探してきますけど」


「コッコッコッ」


鶏の真似?


「こんなの見事な宝石をこんなに持ってるのかっ」


「ええまぁ。お気に召すのがなければ今から探しに行ってきます。明日の夜には戻って来れるとおもいますので」


「こっ、これ。これを頂いて宜しくてっ」


奥さんが選んだのは濃い赤の奴だ。


「それでいいですか?なんならお詫びに娘さんのも選んで頂いても結構ですよ」


なんか透明のも見てるしな。


「こ、これもいいのかしら?」


「はい。これで弁償ということでいいですか?鑑定書とかないですけど」


コクコクコクコクと凄い速さで頷く奥さん。


「セイ殿。今割れてしまった宝石より2つとも遥かに価値があると思うのだがそれでもいいのか?」


「はい。自分は宝石には興味がないので」


「こちらから何かお渡しさせてもらおう。これはこちらが借りを作ってしまうことになる。おい、誰か家宝の剣を持て」


「あ。剣はいらないです。あとナイフも」


「家宝の剣だぞ。特別な落ち星から取った鉱石で打たれた幻の剣と言われる・・・」


落ち星?隕鉄ってやつかな?確かに元の世界でも名刀と言われるのは隕鉄が使われていたと言われてるしな。


「いや、この前メラウスで剣とナイフを作ってもらったばっかりなんですよ」


「メラウス?」


「はい。ご覧になります?剣は人の力を奪うので見せるだけになりますけど、ナイフは大丈夫ですよ」


と剣とナイフを見せた。


「なっ、なんだその剣は・・・」


「メラウス鉱というものから作ってもらってます。通常はこっちのナイフみたいに鈍い光なんですけど、ヘスティアが焼入れすることで本来の力が発揮されます」


「ヘスティア?このナイフにもそう書かれているが・・・」


「それはヘスティア直筆のサインです。綺麗な文字でしょ?」


「やーめーろーよー」


ずっと背中越しに聞いてたヘスティアがテレてもじもじしている。


「まさか火の神様ヘスティア・・・」  


「そうですよ。バンパイア討伐の時にも後始末に手を貸してくれました。美人ですしいいヤツなんですよ」


「だからやめろってばぁ」


こら、俺の上でクネクネすんな。胸が頭に当たってるだろうが。


「しっ、信じられん・・・」


「はい。皆さんそう言います。うちのウェンディは風の神ゴニョゴニョなんですよ。ウェンディはちょっと訳あって力が落ちてるのでみんなに見えてますが、ヘスティアもここにいますけど見えないでしょ?」


「・・・・セイ殿。我が娘を娶る気は・・・」


「申し訳無いです。娘さんには普通の人を探して下さい。自分には貴族とかも無理ですしやらないといけないことがありますので。それより、呪いが誰に跳ね返ったかわからないので調べておいた方がいいですよ。怪しいのはネックレスの送り主です。送り主でなかったら入手先を調べてもらった方がいいですね」


たまたま呪いのネックレスと知らずに贈った可能性も捨てきれないからな。


セイはウェンディとヘスティアの事をあちこちで隠さずに話すようになっていた。もう人の目が気にならなくなったのと、自分達の存在が高まればウェンディの事を信じてくれる人が増えていくのではと思ったからだ。



しかし、晩餐の場でテーブルマナーもへったくれもなくがっつくウェンディを見て、皆から見えない方がいいだろうなとか思ってしまったのであった。



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