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タマモに任せた

そそれそれそれとダンスを踊って火吹きウサギのポンチョと長靴をヘスティアに自慢するウェンディ。拗ねているヘスティア。


「いつドラゴン狩りに行くんだよっ」


「だから行かないって」


「行くのーっ」


俺の腕を掴んで駄々をこねだした。だんだんヘスティアがウェンディ化していくが、まさか感染ったんじゃなかろうな?


今は森の中で一泊している最中だ。


「あー、もうっ。これ着て我慢しろっ」


あんまりしつこいのでワイバーンマントを貸してやる。


「くれんのか?」


「やらん。ちょっと貸しといてやるだけだ」


いそいそとワイバーンマントを羽織るヘスティア。ウェンディより背が高いとはいえ小さいから全くサイズが合わない。


カーテンオバケみたいになっているので腕捲くりして手を出してやる。


「どうだっ!似合うか?」


黒くて長いマント、赤い髪と半裸の上半身にロングブーツ。


「ヘスティア、ちょっとしゃがんでこの剣を担いでみてくれ」


「こうか?」


「うん、夜露死苦って感じだな。ある意味よく似合うよ」


「そ、そうか。へへへへ」


ヘスティアにこれを作ってやるときには喧嘩上等の刺繍を入れてやった方がいいかもしれん。


そしてまたいつの間にか二人に乗られて目が覚めるセイ。野宿用にマットレスとか寝具を買う事を決意した。


「セイ様」


「あれ?どうしたイフリート、緊急事態か?」


「はい。私が緊急事態です」


は?


イフリートは目から涙を流してシュウシュウと音を立てている。そして土下座してドラゴンの血を手に入れてヘスティアに服を作って欲しいと懇願する。


どうやら、服を買って貰えなかったヘスティアは可愛がりという八つ当たりをイフリートにしていて、もう耐えられなくなってきているとのこと。


「わかったよ。だから泣くなよ。お前大精霊なんだろ?」


「も、申し訳ございません」


シュウシュウ


「ドラゴンってどこにいるんだ?殺るのはヘスティアが殺ってくれるんだよな?」


「ヘスティア様が討伐すると何も出ないかもしれません」


「なんで?」


「消滅するからです」


なるほど。


「俺達がやった方がいいわけね?」


「はい、セイ様たちなら可能です。何卒っ、何卒っ」 


「解った解った。いいから頭を上げろ。俺達はボッケーノに行くからその間にどこにドラゴンがいるか調べて教えてくれる?」


「はい、かしこまりました」


もう、面倒臭いなぁ。


セイはまだガーガーと寝ている二人を見るとヘスティアは嬉しそうな顔をしてマントに包まっていた。しょーがないな全く・・・



翌日ボッケーノの宝石店にタマモも一緒に来てもらう。花嫁のアクセサリーなんてまったくわからんからな。


「これはこれからセイ様。ようこそ・・・」


宝石店の人がタマモを見て固まる。


「どうしたの?」


「お、奥様はこちらの方でございましたか・・・」


タマモは俺の腕に手を組んでたからそう見えたのかもしれない。


「いや、タマモはパーティメンバーというか・・・」


「やだね、セイはあたしの義理の息子みたいなもんさね」


「そうなのですかっ。このような宝石の様にお美しい方がお義母様とはさすがにございます」


何がさすがなんだろうか?


早速用件を伝えて花嫁用のアクセサリーをタマモが説明していく。


「セイ、宝石を出しな。透明なやつだよ」


「じゃ、この袋の中から選んで」


よいしょっと大きな袋を出した。山程貰った宝石を色分けしておいたのでこれは透明な奴ばっかり入っているのだ。


大量の宝石を見てアグアグする店の人とは対照的にタマモはこれとこれととか選んでいく。


ようやく我を取り戻した店の人はタマモと詳細な打ち合わせをしだした。


「タマモ、ティアラって何?」


「女性が付ける王冠みたいなものさ」


「それわたしも欲しい」


それを聞いていたウェンディがまた欲しがり病を発症する。


「お前なぁ。なんでもかんでも欲しがるなよ」


「欲しいのーーっ」


駄々をこねるウェンディにチョップしようとしたら、


「セイ、頼んでおやり。ウェンディはヒョウエ達の結婚式の神様役をするんだ。こういうのを着けていた方が格があるように見えるからね」


「役ってなによ、役って」


「お前見習いじゃん」


「キィーーーっ」


ギャイギャイ騒ぐセイとウェンディを放置したタマモはウェンディのはこういう感じでと説明していくので青い宝石の袋を渡す。


「俺様のはどうなるんだよ?」


なんでお前もと言いかけたが、イフリートの泣く姿が目に浮かんだ。


「タマモ、ヘスティアのもお願い。それともうついでだから、皆の分も頼んで。後で絶対になんか言われるから」


「あの・・・ヘスティア様とは?」


「あぁ、いまここに火の神様ヘスティアがセイに私も欲しいと駄々っ子してるのさ。見えてないだろうけどイエローダイモンドのアクセサリーをしているよ」


「ほ、本当でございますかっ」


「ヘスティア、ちょいとそのネックレスを貸しな」


タマモはヘスティアのネックレスを受け取ると、店の人達にはいきなり空中からイエローダイモンドのネックレスが出て来たように見える。


「ま、まさか本当に・・・」


「セイがイヤリングと指輪も作ってやったんだろ?」


「た、確かに先日作らせて頂きました」


「ちなみにこの我儘娘は風の神様ゴニョゴニョさね」


「えっ?」


エッヘンと無い胸を反らすウェンディ。


「セイは神達にここのアクセサリーをおねだりされてんのさ。これ作ってくれたのあんた達だろ?いいセンスしてるじゃないか」


タマモはこの店のセンスを気に入っていたようだ。


そして皆の分の各種アクセサリーを発注することに。グリンディルのも全部ここで作り直す。アネモスのネックレスはタマモ曰く田舎臭いらしい。


「あれ?タマモと砂婆のは?」


「あたし達のかい?ならおねだりしちまおうかねぇ」


「好きなの頼みなよ」


「ここはべっ甲は置いてるかい?」


「は、ございます」


「なら、あたしはかんざし、砂婆は櫛でお願いしようかね」


「指輪とかは?」


「おや、あたしにまで左薬指にはめさせる気かい?」


そう言って笑うタマモ。


「他の指もあるだろ?」


「ふふ、まぁ。あたしらはこれで十分さね」


宝石店の人は大忙しだ。約一ヶ月ですべてを仕上げなければならないのだ。


「旦那様、プラチナの在庫は大丈夫でしょうか・・・?」


「そうか、・・・仕方がない。店の商品を鋳潰せ」


「どうしたの?」


「い、いえなんでもございません」


「今、プラチナがどうとか?」


「本当に大丈夫でございますから」


「いいからお話し。わたしたちもいいものが欲しいだけで迷惑は掛けたくないのさ」


いや、こんな急ぎの依頼は迷惑だと思うぞ。


タマモがそういうと実はと切り出した。


「はーん、あの店かい」


この店はボッケーノではあまり大きくはないが最も高品質な商品を扱う宝石店らしい。最大手の宝石店は王城のもっと近くにあり、王室御用達店として君臨しているのだそうだ。タマモの言ったあの店とはそこの事。


「はい、セイ様がお売り下さった宝石の情報をどこからか仕入れたらしく、王室に献上されるのではと警戒されプラチナの買い占めを行っているようでして」 


「あの店のやりそうなこったね」


「タマモは知ってるの?」 


「女のすることを詮索するもんじゃないよ」


いや、知ってるのか聞いただけじゃん。


「セイ、プラチナは手に入るかい?」


あの未開発ダンジョンは前に金を出したよな。プラチナって白金ともいうらしいしあそこと交渉したらもらえるかな?


「ちょっと探してみるよ」


「そうかい。あとあんた達はあの店にやられっぱなしのままでいいのかい?」


「確かに何かにつけて王室御用達と自慢する店なのでいい気はしませんが」


「なら、ここは神様御用達店にすればいいさね。セイ、もう一度黄色いの出しな」


タマモに言われた通りに出す。


「これで、ヘスティアと同じセットを作って店頭にお飾りよ。ヘスティア、構わないだろ?」


「別にいいぜ。だけど俺様の事が見えないんだから信じねぇだろ?」


「メラウスだっけ?あれに名前を書いてやればいいさね。あの漆黒にするのはアンタにしか出来ないんだろ?」


「まぁな」


「あの・・・。メラウスとは伝説のメラウス鉱の事でございますか?」


「なんかそうらしいねぇ。セイ、あんたの剣とナイフを見せておやり」


もうタマモの独壇場だ。


剣はヘスティアの焼入れ済で漆黒。ナイフはまだなので鈍い光を放っている。


「ヘスティア、このナイフに名前を書いておくれよ」


皆を離して熱にやられないように避難。ヘスティアは指だけに熱を込めて名前を書いた。随分と達筆だな。見た目のように勇ましく美しいサインだ。


「おぉぉぉぉ」


宝石店の人達はヘスティアがここにいることをようやく信じられたようで明後日の方向にお祈りしたのであった。


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