妖剣と妖斧かもしれん
翌日服を作りに行く前にギルドに顔を出す。リタが巫女を引き受けてくれたようでタマモが舞を教えているとのこと。
「あ、セイさん」
「こんにちは。面倒な事を引き受けてもらって悪いね」
「いえ、あんな踊りは知らなかったので楽しいです。タマモさんが衣装も作ってくれるということなのですごく楽しみなんですよぉ」
赤白のあれだと思うけど、里で作ってるのかな?
「ギルマスいる?チョット魔物に付いて報告があるんだよ」
リタはギルマスに声をかけることもなく部屋にどうぞと言われた。そのうち勝手に入っても怒られなさそうだ。
コンコンッ
「入れ」
「うっす!」
「お、なんだ?まさか嫌な報告じゃねぇだろうな?」
「違うよ。魔物について報告だよ」
「バンパイアを討伐してきただと?どこでだ」
「ボッケーノの領主街ギルドへの依頼なんだけど、依頼主はギルドのない隣国の領主でね」
と経緯を説明。そして魔物図鑑を見ながら、これは嘘だったとか検証した結果を教えていく。そして図鑑に載っていない魔物やバンパイアとグールがどういう存在なのかと魔界とのゲートの話もした。
「お前、こんな情報どっから仕入れて来るんだ?」
「魔物は実際に物理攻撃から試していったんだよ。もらってた情報と少し違ったからね。バンパイアとは戦って得た情報。魔界とゲートの話はイフリートが教えてくれた」
「イフリート?ヘスティア様の眷属か?」
「そうだよ。今回のゲートは人間が作った召喚魔法陣って言ってた。命に代えて描いたみたいで物理的には消せなかったんだ。怨霊みたいな感じだと言われたから祓ったら消えたけど。他の人が同じくタイプの魔法陣を見つけたら聖魔法だっけ?それを使える人じゃないと消せないかもしれない」
「情報提供感謝する」
ギルマスのマモンは仕事として受け取りそう言った。
「これ他のギルドと情報共有出来る?」
「可能だ。総本部に情報を送ると各支部に伝わる。ちょいと時間が掛かるけどな」
「ギルドの総本部ってどこにあるの?」
「ガイアだ」
土の神様が庇護するくにだっけ?
「へぇ。放れてても情報伝達手段があるんだね」
「魔導具で情報を送るんだが、魔石を膨大に消費するからホイホイと使えるものではないがな」
「ボッケーノ王都ギルドには直接話せてないけど報告済。領主街のギルドにも報告済だけど」
「情報は被っても構わんから大丈夫だ」
「あと、極秘情報も聞きたい?」
「まだあるのかよ?」
「これはギルマスだけへの話」
カントに話したときに誰にも言うなと言われたけどマモンはカツアゲしてるの見てるからな。
(どんな話だ?)
(ダンジョンなんだけどね)
(ダンジョンがどうした?)
(実は交渉出来るんだ)
「ダンジョンと交渉だとーっ」
キィンキィンキィン
耳元でヒソヒソ話だったのになに大音響で叫んでくれてんだっ。
「そんな大きな声を出したら皆に丸聞こえだろ?」
「あ、あぁ。すまん」
「実は宝石が少し欲しくてダンジョンに行って肉と交換してもらったんだ」
「ダンジョンは出したのか?」
「ダンジョンにとっては宝石はあまり価値ないみたいでね。ザラザラくれたよ。ギルマスも追加でいる?」
「いや、いらん・・・」
「今度時間が出来たら未開発のダンジョンともやってみるよ。それで交渉成立したら確定だね」
「誰にも言うなよ」
「言わないよ」
「あと・・・」
「まだあんのかよっ」
「いや、ギルマスにお土産を渡すだけ」
「だから宝石はいらんと言っただろ」
「違うよ。はいこれ」
「剣?俺は持ってるぞ。これもダンジョンから出たのか?」
「いいから抜いてみて」
と、ギルマスが剣を抜く。
「こ、こいつは・・・」
「メラウスの剣だよ。ビビデにギルマスの体格を伝えて作ってもらったんだ。使えそう?」
「あ、あぁ、昔から持ってるみてぇだ」
「それにヘスティアが焼入れしたら俺のと同じになるけどどうする?」
「い、いやこれで十分だ・・・」
なんかあんまり喜んでないな?
「ギルマス?」
「なんだ」
「余計な事をしたかな?いま持ってる剣に想い入れがあるとか?」
「お、想い入れはあるがそうじゃねぇ・・・」
「あんまり嬉しくなかった?」
「い、いや。信じられんのだ・・・」
「何が?」
「俺の手にビビデが打ったメラウスの剣があるなんて・・・」
「切れ味いいから気を付けてね。俺は今から他の所に行くから」
「あぁ、ちゃんと帰ってこいよ・・・」
ギルマスは剣を渡してからあまり動かなくなった。まさかノーマルメラウス剣でも妖刀みたいになってんじゃないだろうな?頼むから辻斬りとかしてないでくれよ。
次は山の税金を払いに。お金があるから景気良く5年分払った。でもまだ同じだけ残ってるから大丈夫。先払いのメリットはもし税制改定があって税金が上がっても追加を支払わなくていいそうだ。下ったら返金か次の税金から差し引いてくれるらしい。これは屋敷の税金を払った時に教えてくれなかったので屋敷の分も追加で払った。それより早く元の世界に帰るかもしれないけどこっちのお金持ってても仕方がないしな。
「セイ様」
「ハイなんでしょう?」
「もしかしたら優良納税者として表彰されるかもしれませんので、決まりましたらお手紙差し上げますね」
別にそんなのいらないけど・・・
次は木工ギルドに。
「ヨーサク」
「お、なんか進展があったのか?」
「いや、今日はお土産持ってきただけ」
「いつも悪いな」
「はい」
「こ、これは・・・」
「ビビデに頼んだんだ。メラウスの斧だよ」
「ビビデが木こりの斧を作ったのか」
「バトルアックスか?と聞かれたけど木こり用っていったらこれをくれた。合ってるよね?」
「ああ、完璧じゃ・・・」
ヨーサクも動かなくなったのでタマモと待ち合わせている服屋へ。
「遅いよセイ。えらい事になってるからね」
タマモがいうえらい事とはウェンディとヘスティアだった。あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しい状態になっているのだ。
「ウェンディ、買うのは結婚式用のやつだけだからな。ヘスティア、お前には無理だと言ったろうが」
「ケチ臭いこというなよっ」
「違う。お前が普通の服を着てて熱出して燃えたらどうなるか想像してみろ」
「また買えばいいじゃねぇかよ」
「バカがお前は?そういうことじゃない。もし俺の前で服を燃やしたらどうなるかよく考えてみろ」
ヘスティアは脳内でイメージを浮かべる。
「あっ」
「お前、俺の前でハニーフラッシュすることになるんだ。目に焼き付けてやるからな」
「エッ、エロい目で見んなっ」
「そんな目で見るかバカ。見たものをお前の信者に伝導してやるだけだ」
「やめろーーーっ」
「なら諦めろ」
「わかったよ」
お、今回はさすがに素直に諦めたか。
「ここのは諦める」
は?
「ボッケーノでお前と同じ服を作れ。あれなら結構耐えるだろうが」
「ワイバーンだけならいいけど、俺のは特殊加工してあるだろうが。ドラゴンの血をくれなんて言える訳ないだろ」
「だったら狩りに行けばいいじゃねーかよ。俺様も手伝ってやるからよ」
「そんなのどこにいるんだよ?」
「探しに行こうぜ。いるなら神無しのところだろうからな」
「あー、却下却下。俺はこの世界にドラゴンクエストをしに来たきたわけじゃないからな」
「行くんだよーーっ」
「こら、纏わりつく付くな。人が見てんだろうが」
タマモは俺達を知らない人のフリをした。
ウェンディはパーティドレスみたいなのを選んだ。大人っぽいのを掴んで離さなかったが店の人とタマモからうまく誤魔化されて可愛いタイプのドレスにしていた。大人っぽいのはどう見てもお母さんのドレスをこっそり着てみた小学生だからな。
俺の服も何着も試着させられた。なんだこの服は?
「俺はモーツァルトじゃないぞ」
なんで音楽の教科書に載ってるみたいな服を着にゃならんのだ。赤地に金の刺繍って・・・。
結局紺地の制服みたいなのにしてもらった。
ラームのドレス、ウェンディのドレス、俺の服。全部で金貨20枚くらい払った。ラームのドレスはまだいい、一生に一度の晴れ舞台の衣装だし。しかし、ウェンディのドレスが金貨3枚ってなんだよ?300万円のドレスってなんだよ?
「タマモはどうすんのさ?なんか買う?」
「あたしはいいさね。何なとあるよ。それよりまだ宝石あるかい?」
「あるよ」
「ならアクセサリー類も作ってやるかい?」
「そうだね。ラームには何もあげてないし、ヒョウエもそんなの手に入らないだろうし」
アネモスの宝石店に行こうかと思ったけどなんかけったくそ悪いのでまたボッケーノに行くことに。一度目の誤解の件はまぁいい。が、その次に行ったときに店を閉めやがったのが気に食わないのだ。
そうなると急いで作りに行かなければ。その前にオーガ島でラームに両親が来てくれることを伝えると泣いて喜んでくれた。神社や他施設も順調に建設が進んでいる。
「正式な日取りはいつにする?」
「2月3日にすることにした。それなら準備も十分間に合うからな」
それ、お前らが祓われる日だぞ。大丈夫か?
まぁ、こっちの世界には節分はないからいいか。
セイは式神を飛ばしてラームの両親に日取りが決まったメッセージを飛ばしてボッケーノに向かったのであった。