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ヘスティアってさすガッス

「この先に泉があるから水浴びしようぜ」


まじで?このクソ寒いのに?


冒険者の一人が風呂代わりに水浴びしようと言ってきた。歩いているとそうでもないがかなり冷えているのだ。俺のマントはウェンディと領主の娘さんを包んでいるし。こんなとこで冷水修業はしたくない。昔はやらされていたけれども。


引きずられているバンパイアは地面に身を削られながらも修復を繰り返している。死にはしないので物凄い苦痛だろう。しつこく殺してやる殺してやると言い続けてごめんなさいを言わないので口も封印で閉じた。もうサカキの言うように更正は諦めよう。


泉に到着すると皆はタオルを水に浸けて身体を拭いている。見ただけで冷たい。あんなの無理だ。こっそりと離れた場所に移動する。


「サカキ、サカキ、土木工事してくれよ」


「うるせぇ」


ヒョウタンからお断りの言葉だけが聞こえてくる。


「このまま蓋すんぞこの野朗」


「脅すなよてめえっ」


飛び出てきたサカキ。封印されるのは嫌らしい。


「風呂サイズの穴を掘るだけだ。ここにこれぐらいの風呂を掘ってくれ」


「これ水じゃねーか」


「ヘスティアに沸かして貰う」


「それぐらいやってやんぜっ」


ずっとおんぶしてもらってるヘスティアは上機嫌だ。まぁ、気を使って浮いてくれてるみたいでほとんど重さはない。


サカキがガスガスと泉の横に露天風呂サイズで掘ってくれ、ヘスティアが土を焼き固めてくれる。そこへ壁を崩して水を流し込んだ。


「ヘスティア、もうちょい熱く」


火の神様は素晴らしい湯沸かし器だ。


「お前、失礼な事を考えただろ?」


「いやアマテラスみたいだなぁってね。さすが火の女神様だ」


「そ、そうか?」


アマテラスは風呂を沸かしたりはしない。


「一緒に入るー」


ぬーちゃんも自分が人間臭くなってきたのが嫌みたいで一緒に入ってきた。


「なんで先に入ってんのよっ」


「自分が臭いのが嫌なんだよ。ぬーちゃんはお前臭くて嫌らしいぞ。というか風呂入ってる時に来んなっ」


「くっ、臭くなんてないわよっ」


と大声で騒ぐので他の冒険者達に見つかってしまった。


「なんでこんなところにお風呂があるの?私も入ろっ」


「待てぇぇえい。順番だ順番っ。女の子が平気で脱ごうとすんなよっ」


「何よ?遠征してたらこんなの当たり前じゃない」


サカキが掘ってくれた風呂は4〜5人は入れるサイズ。そこに入って来ようとする女の子の冒険者達。どうやら男女混合パーティでは男女の関係がなくなるらしい。特にAランクまで上がって来るような強いパーティはその傾向がより強いようだ。


やめろと言ってるのに服を脱ぐ寸前なので慌ててタオルで隠して風呂から出た。ちょっと振り向くと本当に男女混合で入っているみたいだ。


ぬーちゃんはブルブルで済ませるけど俺は濡れたままなんだよなぁ。


「ヘスティア、ちょっと温めて」


「えっ、エッチなこと考えてんじゃねーだろうなっ」


「誰が抱きつけと言った。熱を出してくれたらいいんだよ」


ストーブ代わりに温めて貰って完了。冒険者達が出たあと、領主の娘と行方不明の女の子が入り、その後に男が入った。


ブスッとむくれるウェンディ。


「風呂空いたぞ」


「あんなきちゃない風呂に入りたくない」


それはそうかもしれん。もう結構臭かった人間がそのまま入って中で洗ってたからな。


翌朝出発するとウェンディはヘスティアとおんぶされるのを代われと言った。


「ぬーちゃんに乗ってればいいだろ?」


「うっさいわね。ぬーちゃんは私の事が臭いんでしょっ」


「なら歩けよ」


「嫌よ」


ヘスティアと違ってウェンディには重さがある。軽いとはいえずっとおぶったまま歩くと本当に子泣き爺のようにどんどん重く感じるのだ。


「重いから降りろ」


「ヘスティアはずっとおぶってたじゃない」


「ヘスティアは神だから軽いというか重さがないんだよ。お前は神じゃないから重いだろうが」


「キィーーー」


余計にしがみつかれてしまったセイ。もう人サイズのさるぼぼをお土産に買ったと思うしかない。


ふと、ウェンディにしがみつかれても人間臭くないことに気付く。結局風呂にも入っていのにも関わらずだ。セイはウェンディって本当に人間じゃないんだなと思ったのであった。




「やったぁ、帰って来たぁ」


ようやく元の街に帰ってきたので先に冒険者ギルドへ報告に行く。


「おぅ、お前達、予定より早かったな」


「あれ?ギルマスは私達が帰ってきて驚かないの?」


と冒険者の女の子。名前を聞いたけど忘れた。こんなにたくさんの人数の名前を聞いても覚えられん。


「こいつが事前に連絡を寄越したからな」


「どうやって?」


「さあな。直接聞け」


「どうやったのか教えなさいよーっ」


火魔法教えろ再びだ。


「ギルマス、それより色々と他にも報告があるから先に済ませて」


まずは死んだ冒険者達の記録を見せ、遺品を渡す。


「そうか、こいつら本当に死んでたんだな・・・」


推奨ランクを見誤ったギルマスは責任を感じているようだ。


「一応、全員成仏させたから。その記録にどの遺品を誰に渡して欲しいか書いてあるから宜しくね」


「遺品というかこいつはお前の物として権利があるんだぞ」


「いや、届けると約束したからいらないよ」


「そうか、すまんな。どうだったか詳しく聞かせてくれ」


その後、魔物図鑑を見て載っていない魔物、出た魔物はどうやったら倒せるか、それに間違っていた情報、バンパイアはどうだったかに加え、召喚魔法陣と呼ばれる転送ゲート及び悪魔の事を伝える。


「何だそれは・・・。どうやって知った?」


「炎の大精霊イフリートって知ってる?」


「もちろんだ」


「そいつが教えてくれたんだ。その転送ゲートは消してきたけどもう他にも出てきているかもしれないって」


「厄災だなそいつは」


「さっき話したグールとか浄化しないと死なない魔物はバンパイアの眷属の可能性があるからそれを見かけたら即座に撤退して仕切り直しをするのがいいと思う」


「解った。あとバンパイアはどうやって捕獲している?」


「あれは俺専用の魔法だと思って。多分他の人には使えない。バンパイアにも聖魔法ってのが効くようだから、もしバンパイア達と対峙せざるをえないときはその使い手を選んで。物理攻撃、毒、炎は効かなかったから」


「あのバンパイアはどうするつもりだ?」


「ちょっと試したい事があってね。それが無理だったら俺がなんとかするよ。じゃ今から行ってくる」


「お、おい待てっ」


「明日また来るから」


とぬーちゃんに乗っていざボッケーノへ。冒険者達の教えろ攻撃を食らわないうちにさっさと出発。



「セイ、お前はそいつをどうするつもりなんだ?」


ぶらぶらと吊り上げられているバンパイアを見てサカキが質問してくる。


「餌というかお礼ってやつかな?」


「は?」


セイが向かったのはボッケーノのダンジョンだった。


「お前さぁ、こいつ食える?」


セイはバンパイアをダンジョンの餌にしようと考えていた。もしこいつを吸収出来るならこの前の肉なんかよりダンジョンの餌としては優良だろう。


口を閉じないのでぽいとバンパイアを入れてメラウスの剣で突き刺して固定。そして結界を解いていった。


本来ダンジョンは生きている者は吸収しないけど食っていいぞと言ったら吸収をし始めた。


「むぐぅー むぐぅーっ」


吸収されていくバンパイアはなんか叫んでいるけどごめんなさいが出来ないから仕方がない。ギルマスのカントが言ったようにこいつは厄災なのだ。しかもこの世界のものですらないから消滅したほうが良い。


結界を解いたので霧になりかけるがダンジョンの吸収スピードの方が早い。口を抑えていた結界のところまで吸収されてきたのでそれも解除。


「ゆる・・・・」


最後の言葉が許さんか許してか、わからないけどバンパイアはすべてダンジョンに吸収された。


そしてその直後、俺達が中にいるというのに口を閉じたダンジョン。


「え?」


ゴゴゴゴゴゴっ


大きな地響きと共に地震のように揺れだした。


「やばっ、罠かよっ」


ウェンディを抱き寄せ頭を腕でガード。全体が揺れているので逃げ場がわからない。外にいるサカキを呼ぼうにも間に合わない。


猫サイズのぬーちゃんとウェンディの上に覆いかぶさり天井落下に備える。


と、身体に力を入れて構えていたら地震が止まり入口があいた。


「おい、大丈夫かよ?いきなり口を閉じやがったからぶん殴るとこだったぜ」


「いや揺れただけだったよ」


「すけべっ。何してくれてんのよっ」


そう言ったウェンディにチョップをした。


「なんだったんだろうね今のは?」


そしてセイの近くにザラザラザラザラっと大当たりしたかのように宝石が出てくる。


「もういい、もういいっ」


山盛りの宝石。


「これ、わたしのよねっ わたしのよねっ」


「違うわバカ」


宝石風呂に浸かるウェンディ。お前は雑誌の裏に乗ってる幸せのペンダントの広告か?


「これ、お礼か?」


少し入口が動くのでそうらしい。


いらないってのも悪いし、ありがたく貰っておくか。


ぬーちゃんに袋をもって来てもらって全部詰めてヒョウタンへ。


「わたしのーっ」


「うるさい。お前ネックレスもイヤリングも指輪もしてるだろが。それとも何か?もっとたくさん付けてホテルの社長でもやるつもりかよ?」


「ホテルの社長?」


「こっちの話だ。取り敢えず出るぞ。あちこちにいかんとダメだからな」


まずはヘスティアがうるさいだろうから宝石店で商品の受け取りをする。


「ほらヘスティア」


「へっへー。付けてくれよ」


ハイハイ。ウェンディの時のような失敗はしない。イヤリングのネジを緩めてから締めていく。


「やめろっ。くすぐったいじゃねーか」


「これぐらいしないと落ちるんだよ」


耳を触られてヘニョヘニョ逃げるヘスティア。


次に指輪だ。


「そっちじゃない。右手だ」


「ウェンディは左手にしてんだろうが」


「いいから。こっちの指でサイズ作ってあるんだよ」


と右手を掴むと


「うっせぇな。こっちでいいって言ってんだろ。右手にはめたらじゃまなんだよっ」


と無理やり左手を出す。中指にはめようとしたら入らない。小指ではゆるゆる。人差し指もダメだった。なぜ薬指だけピッタリなのだ?


フルセットで揃ったヘスティアは超ご機嫌でイフリートに見せに行ったみたいだ。


次はギルドに。


ギルマスはなんか急用で飛び出して行ったみたいで留守だった。今回の件の成功報告、バンパイア他の件を受付嬢に報告してからビビデ達の所へ。


サカキは飲もうぜと飛び出してきたので出来た剣とかは明日になったのであった。




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