特別依頼
「おーい、来てたのかよ」
「あ、ジール。昼間っから街をウロウロしてないで依頼でも受けろよ」
「依頼なら受けてるぜ」
「なんの?」
「決まってんだろ?お前を連行する依頼だよ。ほらギルマスが呼んでるから来いよ」
「ちょっとちょっとちょっと」
セイはジールに連行されていったのであった。
「ギルマス、道で女とイチャイチャしてるところを連れて来たぜ」
誰がイチャイチャしてんだ。
「よう、観念したか?」
「観念ってなんだよ?今回は依頼受けに来たんじゃないからね」
「いいところに来たよなまったく」
「だから依頼を受けに来たんじゃないってば」
「実はな、特別調査をやってもらいたい」
「だから受けないって」
地図を広げて場所の説明を始めるギルマス。
「だから受けないってば」
「冒険者が何人も帰って来ねぇんだ」
「え?」
「話を聞く気になったか?」
渋々セイはギルマスの話を聞かざるを得なくなった。
「で、特別依頼って何?」
「王都から離れた街や村はあまり安全とは言えないのは知ってるか?」
「アネモスでもゴブリンに襲撃される村とかあったからね」
「そんな些細なことじゃない」
いや些細な事でもないだろう。
「王都から離れた街は領主と呼ばれる奴が治めているんだが他国と隣接しているところは小競り合いが多くてな」
「あぁ、こっちに来るときに一つ見たよ」
「ちなみにどこら辺だ?」
ざっくりした世界地図みたいなものを出して来るギルマス。
えーっと、ここがアネモスかな?
ざっくりし過ぎでいてアネモスの地形とは異なるけど多分そうだろう。
ここからこう来てるはずだから・・・
「多分この辺」
「あー、なるほどな。その辺りは小国が点在しててな、そういう街があってもおかしくないな」
そうなんだ。アネモスとかボッケーノって大国らしいからな。他にもたくさんあるのか。
ギルマスの説明によると、領主が治めるくらいの規模の国は珍しくないらしい。
「で、今回はボッケーノの領地からの依頼?」
「いや、ボッケーノと隣接する国の領主街からだ」
「なら何でこの国の冒険者ギルドが動くのさ?」
「正式には冒険者ギルドは国から独立した機関なんだよ。まぁその国のギルドみたいにはなってるがな。お前もアネモスで発行された冒険者証があれば無料でここに入れるだろ?」
「あ、はい」
今回は空から勝手に入ったことは黙っておこう。並ぶのが面倒だったのだ。
「依頼があったのはボッケーノのギルドにだ。その国の領主街にはギルドがなくてな、ボッケーノの領主街にあるギルドが冒険者を派遣したが誰も帰ってこないとこっちに応援要請が来たんだ」
「ならここから人を出せばいいじゃん」
「それはそうなんだがよ。どうやらアンデットが絡んでいる可能性が高いんだ」
「あの死体のやつ?」
「スケルトンとか他にもいるがな。まぁ、ゾンビやスケルトンなら並の冒険者でも聖魔法や火魔法が使えるパーティなら対応可能だ」
「俺、ここに来る前に鎧を着た死体に襲われたんだけど。めっちゃ臭いやつ」
「そりゃゾンビだな。動きは鈍かっただろ?」
「そうだね」
「鎧なら元兵士だろうな。死んでもなお命令に従っている哀れな魔物だ」
そうなのか。雑に祓ったけどちゃんとしてやればよかったかもしれん。
「で、対応出来ないアンデットって何がいるの?」
「ゾンビやスケルトンだけならいいんだがグールやバンパイアがいるとヤバい」
「グールとバンパイア?吸血鬼ってやつ?」
「そうだ。グールは吸血鬼の手下でな。やたら凶暴で人の肉を好んで食べる。しかも数が多いから集団で襲われたらかなりヤバい」
「吸血鬼は?」
「グールとは比べ物にならん。ヤバいくらい強い。斬っても死なないし、魔法攻撃も効きにくい。討伐されそうになるとコウモリに変化して逃げるからかなり厄介だ。それとチャームという魔法を使う」
「チャームって何?」
「魅了という奴だ。簡単に言えばその魔法を使われると心底惚れて仲間になっちまう」
「吸血鬼が人間にそんな魔法を使ってなにすんの?」
「バンパイアは血を糧にしているからな。いわば餌を飼う為に使う」
どうやら惚れさせる事でその場に留まらせて血を吸い続けるのか。
「で、誰に行かせるか迷ってたわけ?」
「そうだ。場所も離れているから調査結果報告を聞く前にどんどん手遅れになる可能性がある」
「大勢で行けばいいじゃん」
「下手な奴が大勢行けば人質になるだろうが」
それもそうか。
「この依頼って急ぎ?」
「元々の依頼は結構前に出てたらしい。大きな問題になったのは領主の娘が拐われたからだ。他にも被害が出てたみたいだがな」
今回、クラマがいない。吸血鬼なら空を飛べるだろうし、タマモもいないから吸血鬼の情報は入ってこない。多分物知りだからなんか知ってるとは思うけど。
「バンパイアって、日光やにんにくに弱い?」
「初耳だな」
「銀の杭で刺したら死ぬ?」
「いや死なねぇと思う」
じゃ、元の世界と似て異なるものだな。
「わかった。取り敢えず様子を見てくる。今回フルメンバーじゃないからヤバそうなら一度引いてメンバー揃えて再挑戦になるけどいい?」
「やってくれるか?」
「何人も行方不明になってるなら仕方がないね。その領主街のギルドを紹介してくれる?そこでも情報を仕入れてから行くよ」
「わかった。ちなみに報酬だがな・・・」
「別に何でもいいよ。いまお金に困ってないし」
ということで紹介状を書いてもらい、明日向かうと約束してビビデの所へ行くことに。
「ご飯は?」
ウェンディに言われてそういや食ってない事に気付く。
「串肉でも食うか?」
「うん」
ということで何の肉かわからない肉を食べながらビビデへのところへ。お土産用にも買ってきたけどそれを食うなよ。
ビビデの所に行くとちょうどヘスティアもやって来た。メラウス鉱取ってくるのに以外と時間掛かったな。
ーサラマンダーの所に向かったヘスティアー
グオー グオー
ヘスティアがダンジョン奥の部屋に行くと呑気に寝ているイフリートを発見。
「おいっ」
ハッ
「こ、これはヘスティア様。お戻りになられましたか」
即座に起きたイフリートだが口元のヨダレがシュウシュウと音を立てて蒸発していた。
「暇そうだな。可愛がってやろう」
セイと遊んでいるとすっかり油断していたイフリートはみっちり稽古をつけられたのであった。
その間、サラマンダーは巻き込まれないように空気に徹し、メラウスっと言われた瞬間にボトボトと吐いて出したのであった。
「ほらよ。これで足りるか?」
「ビビデ。これ追加のメラウス鉱」
「またダンジョンに行って来たのか?」
「いや、今ヘスティアがくれたんだよ。これで足りる?」
コクコクと頷いて検討違いの所に向かって熱心に拝んだ。
今日はここまでにしてバビデの所に飯を食いに行こうとなり移動する。
「おい、セイ。ウェンディの付けてる宝石が増えてんじゃねーかよ」
ヘスティアは自分と見比べて拗ねる。
「残りの宝石を売りに行ったらくれたんだよ」
「俺様のはねぇのかよ?」
「ないよ」
「ズルいじゃねーかよっ。なんでウェンディばっかりにやるんだよ。俺様はメラウス取ってきてやっただろ?」
「拗ねんなよ。俺がやったんじゃ無くて宝石屋がくれたんだから」
「俺様の分も貰え」
「こっちから頂戴とか言えないだろうが」
「なら買って捧げろ」
捧げろって。
あんまりぎゃーぎゃー言うので明日また宝石屋に行くハメに。
俺がヘスティアと話しているのが理解出来たビビデはまた明後日の方向を拝んでいた。
バビデの所に到着すると、よっとサカキが出てきた。
「ようやく酒の時間かよ」
酒の時間ってなんだよ?
「おー、サカキ。やっときおったか。ほら飲むぞ」
「カッカッカッ。潰してやんぜ」
楽しそうだなお前ら。
一度渡したカニは預かっていたのでそれを焼いていく。こう切ると食べるの楽だよと教えるとメラウスのナイフでスパスパ切っていく。俺もこのナイフが出来るのが楽しみだ。
ちょっと違うものが食べたいなと思い、砂婆を呼んで何か作ってもらうことに。
「わっ、なんじゃこの婆さんは?」
「砂婆だよ。お願いした包丁を使う人」
「そうじゃったか。ちょいと手を見せてくれ」
ビビデは砂婆の手をにぎにぎすると砂婆はポッと赤くなる。いくつになっても乙女だねぇ。
「よし、これならぴったり持ちやすいのを作ってやれそうじゃわい。持ち手は金属と木とどちらがいいんじゃ?」
持ち手は木でお願いした。そして、砂婆はうな丼を作ってくれるとのことでここで焼くらしい。
「そりゃ蛇か?」
「海や川にいる魚だよ」
うなぎの焼ける匂いはたまらん。これだけで飯が食えそうだ。
「ほれ、焼けたぞ」
カニを貪っていたウェンディもこちらを見る。
「なにそれ?」
「うなぎ」
「頂戴」
とかっさらっていくウェンディ。
続いてヘスティアも食べたいと言い出した。お前らカニ貪ってたじゃないか。
サカキはヒョイとヒョウタンに戻り日本酒とワサビを持ってくる。
「ババァ、俺には白焼きだ」
「セイが先じゃ」
うんうん。さすが砂婆だ。
ようやく焼けた頃にサカキがヒョイと摘んで食べやがった。
「何してくれてんだテメーはっ」
「さっさと食わねぇからだ」
ムカッ
「滅っ 滅っ 滅っ」
護符で脇腹を3発殴っておいた。
反省しやがれ。
「セイよ。あんな攻撃したらサカキでも消滅しよるぞ」
「平気だよあれぐらい」
腹がえぐれたサカキは悶絶していた。