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オーガ島は有名になるかもしれない

ベッドに入って今日の記憶が飛んでいた事を考えるセイ。


そうか、俺はあの犬とウェンディを間違えていたのか。あの犬に名前を付けて連れて帰ろうとしていた時の事か・・・


セイは自分が暴走したことの記憶がない。後日、タマモ達に何があったのか聞かされたので知ってはいるが。


幸いにも可愛いがっていた犬の無惨な姿の記憶もないセイ。


名前か・・・。なんにしてやれば良かったかな。色々考えてたんだよなぁ。ポチ、タマ、コロ・・・


小学生の発想はそんな所である。


ふとぬーちゃんに言われたウェンディ臭いという言葉を思い出し、自分やベッドをすんすんしてみるがよくわからない。雨に少し濡れた犬はちょっと臭かったからそんな臭いなのかもしれん。




「クシッ」


「なんでぇ?神も降格したら風邪でも引くのかよ?」


「何よ風邪って。それに降格したとか言わないでよっ」


ウェンディはセイが濡れた犬の臭いか?とか思った時にクシャミをしていた。



ー翌朝ー


「おはよう」


「セイ、飲み過ぎには注意じゃぞ」


「うん、自分では飲んだつもりはないんだけどね」


砂婆が朝食にシジミの味噌汁を作ってくれていた。


「セイ、今日は何すんだ?」


「ちょっとボッケーノに行ってくるよ」


「お、もう温泉に行くのか?いいぜ、いい場所に案内してやんよ」


「いや、宝石店に行ってくるよ。山の税金が思ったより高くてね。アネモスでは買い取りしてくれないみたいだからボッケーノの宝石店に売りに行ってくる」


「まだ宝石持ってんの?わたしに頂戴よっ」


「そんないくつもいらんだろが。それに山の税金払えないと借金奴隷になるだろが」 


「ぶーッ」


猿、犬の次は豚かお前は? 


「ならあたしが行ってきてやろうか?」


タマモが行こうかと言ってくれる。


「いや、ビビデとかにもカニとか持っていこうと思ってるから自分で行くよ。ワイバーンの巣がどうなったかも気になるし」


「お、それならドワーフの秘酒貰にいくか」


「あの酒、そうホイホイくれるものじゃないらしいぞ」


「ならヒョウエの所で鬼殺し貰ってそれと交換だな」


いや、ヒョウエ達もたいがいにしてくれとか思ってるんじゃないかな?


結局オーガ島に寄ってからボッケーノに行くことに。鬼殺しをいつも大量に奪っているのでアネモスの酒屋でまた酒を買い占めてそれと交換してもらおう。


酒屋に行くと「げっ、また来た」とか言われた。俺達が来ると仕入れが読めなくて困るらしい。すまんね。


オーガ島に行ってあらゆる酒と鬼殺しを交換してもらう。ヒョウエに気にしなくていいのにと言われるがそういうわけにはいかない。


「セイ、ちょっと頼みがあるんだ」


ヒョウエが改まって頼み事があると言う。


「何?オーク狩りでも手伝って欲しいの?」


「いや、ラームの両親にこの手紙を渡してくれないか?」


「手紙?」


「あぁ、結婚式というものをすることになってな。ラームも一度ここの生活を見てもらいたいと言うから招待してみようかと。年明けにやるつもりだからお前らも来てくれるか?」


「俺達も呼んでくれんの?」


「当たり前だ。お前らは恩人だからな」


結婚式なんて初めてだな。どんなんだろうか?


「へぇ、結婚式ねぇ。どんな形式でやるんだい?」


タマモは物知りだ。形式とは神前式とか教会式とか色々あるらしいけど、どれも神様に結婚をすることを報告して愛を誓うのが結婚式らしい。


「それなんだがどの神様に祈るのかよくわからんのだ。取り敢えずやしろは建てているんだが」


と、その場所に案内された。


「これ神社じゃん」


赤い鳥居をくぐれば参道があり、やしろは見慣れた神殿だった。


「こんなのだったと聞いた事があるから建ててはいるんだがな」


オーガ島は陸地から離れているとはいえ、一応アネモスに位置する島だ。


チラッとウェンディを見ると物珍しげに神社を見ている。神社が何か知らないから怒りはしていない。


「ねぇ、これって鬼の教会?」


「そ、そうだな・・・」


「結婚式って神の前で愛を誓うのよね?」


「そ、そうだ」


「なら、ここはわたしの屋敷ってことねっ」


めっちゃ嬉しそうな顔でそういうウェンディ。


「いや、お前は今は神じゃないし・・・」


ウェンディに愛を誓ってもなんのご利益もないだろうと思ってそういうとグーでいかれた。


「ウェンディ様が俺達の結婚式をしてくれるのか?」


おろ?ヒョウエはなんか喜んでるっぽいぞ?


「そうよっ。わたしに任せなさいっ」


神様がごちゃまぜになりそうだがまぁ信心があれば何でもいいか。しかし、神社だと節分には鬼を祓う豆まきとかやるんだけどヒョウエ達は祓われたりしないのだろうか?


「ほう、神社か。ならワシが神主代わりをしてやろう」


クラマは神社の作法に詳しい。ここに鈴を付けろとかしめ縄を付けろとか指示をしだした。


「ここを守るのは狛犬か?稲荷か何にするんじゃ?」


何にするんじゃって、そんなの自分で決めるものなのだろうか?


「いや、お前らに似ている狛犬がいいじゃろな。誰か岩を掘って作れる奴はおるか?」


鬼の中から作れそうな奴をヒョウエが呼び、クラマがこうなっておってなとか説明を始めた。


「なら巫女も必要だねぇ。セイ、リタに巫女をお願いしてみちゃどうさね?」


「リタをオーガ島に連れてくんの?」


「あの娘なら大丈夫さ。舞はあたしが教えてやるさね」


どんどん元の世界の物が採用されていく。ヒョウエ達もよく知らないので言いなりだ。


「ヒョウエ、花嫁衣装はどうすんだい?」


「服も何か必要なのか?」


「当たり前さね。ならそれもわたしが調達してやるさ。セイ、お金は任せたよ」


「セイ、みんな何を始めたんだ?」


蚊帳の外だったヘスティアが聞いてくる。


「俺もよくわからん。もうみんなに任せておいた方がいいよ」


あと、宴会場も作っているらしくそこに案内されると水路というか海水を引いて来られるようになっていた。どうやら人魚達も招待するという心遣いのようだ。


そして宴会場の名前が・・・


「ヒョウエ、このコウヨウカクってどっから名付けた?」


「なんとなくだ」


「そうか。なんとなくか。これで温泉があれば完璧だな」


「温泉か?あるぞ」


え?


「ここに温泉あるの?」


「知らなかったのか?こっちだ」


温泉は海水が温められたクソほど熱いものだった。地獄温泉だ。見るからに熱そうで俺には入れなさそうだけだど海水で薄めたら行けるかも。


「ここはアリマ温泉ね」


「温泉に名前を付けるのか?」


「そうだ」


ヒョウエとコウヨウカクとくればアリマしかあり得ない。炭酸せんべいとか作ったら売れそうだ。


タマモは早速何処かへ飛んで行き、クラマは神社建築の指導をするらしくここに残ると言い出したので置いて行くことに。


「セイ様」


「はい、ラームさん。何でしょう?」


「私達の為にいつもありがとうございます」


と嬉しそうににっこりと微笑んでくれる。


「幸せそうでよかったね。お父さんとお母さんには手紙を渡してくるからね」


「来てくれるでしょうか?」


「正直、お父さんはわからない。でも来てくれるんじゃないかな。ラームさん可愛がられていたみたいだし」


「はい。親不孝をしてしまいましたがラームは幸せだと言うことを見て頂きたいと思います」


「うん、そう伝えるよ」


「お手数をお掛けいたしますが宜しくお願い致します」


ラームって物腰も柔らかいし上品でやっぱりいいよな。ヒョウエもいい人を嫁さんに貰ったものだ


なんか向こうでキーキーとクラマと言い合ってるウェンディと見比べて改めてそう思う。ウェンディが祀られるならこの神社は庚申神社にしたらいいかもしれん。


ボッケーノへのお供はぬーちゃんとサカキになり、後はクラマに任せて出発したのであった。



「お、あっちの方にも街がありやがんのか」


ぬーちゃんの横を飛んでいるヘスティアがはるか遠くを見てそう言う。どんな視力してんだろうか?まったく何も見えない。


行って見ようぜとか言うので寄り道してみる。



「ヘスティア、ここダメだよ。幽霊だらけだ」


近づかなくてもわかる。そこそこ大きな街みたいだけど人の気配もないし荒れ果てている。所謂死んだ街だ。


「こりゃ人間同士で争いやがったんだな」 


「戦争?」


「まあな。こいうのはあちこちにあるぞ。人間ってのは争うのが好きだからな」


それはそうかもしれんな。


「人がいないなら祓う必要もないし、ボッケーノに行こうか」


「焼き尽くしてやろうか?」


「いや別にいいよ。誰か困ってるならやらないとダメだけど」


怨念もいるから結構面倒臭いことになるのは確実だ。ヘスティアが下手に焼き払うとその怨念がどこに向かうかわからんし。


誰に向かった怨念だろうな?とか少し気になりつつもセイ達はボッケーノに向かったのであった。




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