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ギルマスより強い

「マモンが嬉しそうにご飯を食べに行くわけがわかったわ。ギルマスたるもの一部の冒険者と馴れ合うのは良くないとか言ってた癖にねぇ」


人ならざるけど綺麗所が揃ったメンツをみて奥さんは呆れていた。


「マモンってギルマスの名前?」


「そうだ。知らなかったのかよ?」


「私もこの前初めて知りました」


リタもつい最近まで知らなかったらしい。


「元A級も落ちたものねぇ。あんた名前すら知られてないじゃないの」


「う、えるせぇな」


「セイ、A級ってなんだ?」


「お嬢さん、A級冒険者ってのは通常の一番上のランクなのよ。現役時代はそれなりに有名だったんだけどねぇ」


えっ?


今俺に話し掛けたのはヘスティアだ。


「グ、グリンディルさん。もしかしてヘスティアの事見えてます?」


「ええ。人魚達はともかく、露出の多い女の子だから気を使って紹介してれないのかと思ってたわ。初めまして。私はグリンディルよ」


「お、おぉ。俺様はヘスティア・・・」


「お、おい。お前、ヘスティア様が見えるのか?」


「あんた、もしかしてこの子においたでもしたのかしら?なんか誤魔化そうとしてるならただじゃおかないよっ」


もしかして奥さんってめちゃくちゃ能力高い人なんじゃなかろうか?


「グリンディルさん、大丈夫ですよ。ギルマスはヘスティアにあーんして貰ったぐらいですから」


ギロッ


「お、おい、セイッ。いらんことを言うなっ」


「どういうこったい?あんな半裸美人にあーんして貰っただって?」


「い、いや。俺にはヘスティア様が見えてねぇんだよっ。だから知らん間に生の魔物を口に突っ込まれて酒を飲まされただけでだな・・・」


「あーんしてもらってるじゃないかっ」


ビッタンビッタンされるギルマス。顔の形が変わってないか?


「ご、誤解なんだって・・・」


哀れなギルマス。うちのかぁちゃん怖いんだと言ってた意味がわかった。


(ウェンディ、可愛そうだから治癒してやってくれ)


こそっと、そう伝えるとウェンディはギルマスに近付いて耳にふぅ~と息を掛けた。


「うっひゃぁぁぁ」


「若い娘になにやらせてんだいっ」


ドゴンっ


あ、グーでいかれた。ごめんギルマス。


その後も殴られ続けそうだったので慌てて止めに入り事情を話す。



「今の話は本当かい?」


「そうです。半裸美女が火の神様ヘスティア、息を吹き掛けたのは風の神ゴニョゴニョのウェンディ。さっきの息は治癒の風なんです。ウェンディは訳あって力が落ちてるのでみんなにも見えてますけど、ヘスティアは正真正銘の神様なんで普通は見えないはずなんです。ヘスティアが見えるグリンディルさんは特別な力を持たれてるんじゃないかと思いますよ」


「信じられない・・・。ここに火の神様が来てるなんて」


「セイは特殊なんだよ。ランクはCだがSすら生ぬるい実力をもってるんだ。仲間たちもみんなそうだ。言わば神ランクのパーティなんだよ。何があっても不思議じゃないんだ」


「へぇ。そうだったの。あんたもそれならそうと早くいいなよっ」


ドスっ


痛い。あの肘はとてつなく痛そうだ。ゴツいギルマスが悶絶しているからな。


グリンディルは水の魔法使いで現役時代はそりゃ凄かったらしい。パーティメンバーの実力が二人に追いつけずAランクで現役を退いたが、グリンディルはSでもおかしくなかったらしい。


ギルマスは女絡みの余計な事に巻き込まれないようにサカキ達の鍋に。バーベキューと違って他の妖怪達は出てこず、ユキメも熱い鍋は嫌だと来なかった。


「ハモと松茸の鍋なんて贅沢だよねぇ。めっちゃ旨い」


が、ウェンディとヘスティアはあまりがっつかない。松茸の旨さがわからんのかもしれん。人魚達はハモをフーフーした奴を美味しそうに食べているけど。


「なかなか美味しいわけ」


「ウェンディはあんまり好きじゃないのか?」


「味が薄い」


ヘスティアも頷き


「この白いのなんだよ?味がねぇぞ」


豆腐の旨さもわからんようだな。ギルマス達のほうもサカキとクラマは喜んで食べてるけど、ギルマスと奥さんはイマイチなのかもしれん。


「砂婆、他の鍋とか・・・」


「ほれ、これなら食うじゃろ」


と松茸抜きの寄鍋風を用意してくれた。ハモにくわえて黒豚のバラと鶏肉。スープも鶏ガラと昆布らしい。


「はい、砂婆がこっちを食べろだって」


「おっ、こりゃ旨いぜ」


ヘスティアとウェンディはガツガツといきだした。ギルマス達もこっちの方がいいらしい。


「元の世界でも似たようなもんさ。西洋の方だと松茸の匂いは好まれないからねぇ」


タマモが砂婆に別に寄鍋を準備しておいた方がいいとアドバイスしていたようだ。


「タマモって何でも良く知ってるよね?」


「当たり前さね。何年生きてると思ってるんだい」


「そうだけどさ、みんな大昔から生きてるよね?」


「あたしゃ大陸生れだからあちこち行ってただけさね。他の皆はほとんど同じ場所から動いた事がないだろ?」


そういやタマモは日本生れじゃないと言ってたけな。


「これ美味しいですよね?」


リタはハモと松茸の鍋を気に入ってくれたようだ。カニも生でいってたしな。俺達と感性が似ているのかもしれないな。日本酒も好きみたいだし。


若い人魚達は目を輝かせてマテをしているのでハモを冷ましておいて順番に食べさせていく。餌付けは順調だ。


「あんた人魚ハーレムを作るつもりなわけ?」


なんだよ人魚ハーレムって。


「この子達、フォークとか道具使うの苦手みたいだからだよ。いつもは手掴みなのか?」


「そ、魚はクチで捕まえてこう食べるわけ」


クチで捕まえるのか。そういやクチが大きくあいたな。怖いからあまり想像しないようにしよう。


「人魚がこんなに人に近付くなんて珍しいわね」


グリンディルがこちらに来て人魚達を見てそういう。


「セイが人から守るって約束してくれたわけ。だからよ」


「へぇ。人魚が人間を信用するなんてねぇ。セイ、あんた何をしたんだい?」


「俺がしたというより、俺が助けてもらったんだよ。カニの魔物に油断したときにね」


「そうなのかい。あんたマーメイだっけ?泡になるんじゃないよ。人間はすぐに死ぬんだからね」


「あんた・・・知ってるわけ?」


「私は物知りなのよ」


泡?


「あんたは知らなくていいよ。女同士の話なんだから」


そう言われたら引き下がるざるをえない。


「セイ、ちょっと荷物を置きたいから屋敷に案内してもらえないかい?」


「あ、気が付かなくてすいません。こちらにどうぞ」


グリンディルの荷物を持ち屋敷に案内する。


「立派な屋敷だね。その若さで凄いじゃないか」


「これは依頼の報酬でもらったんですよ。くれた貴族は税金対策みたいな感じでしたよ」


「それでも大したもんさ。それとちょっといいかい?」


「はい、なんでしょう?」


「あんた何者だい?」


「ギルマスは何か話してます?」


「いや、あんたの話はするけど、凄い奴だとか悪いことをしちまったとかそんな話だけだよ」


少し迷ったセイはギルマスが夫婦間で隠しているのもしんどいだろうなと思って話すことにした。


「ギルマスには話してありますけど、異世界人って奴です。ウェンディは人々の信仰心を失って神から見習いに降格になりましてね。ウェンディを神に戻すための手伝いをする約束をしてここに連れて来られました」


「そういうことだったのね」


「はい」


「異世界人ってみんなそんな神が見えるほど力があるのかい?」


「どうでしょうね?タマモやサカキ、クラマ達の事を元の世界で見ることが出来る者はほとんどいません。俺が知る限り見えるのは親戚の一部だけですよ。この世界はみなが見えるので驚きました」


「人間じゃないんだよね?どんな存在なんだい?随分と力が高そうなんだけど」


「みんな凄いですよ。自分の世界では妖怪と呼ばれる者達です。その中でもタマモ、サカキ、ぬーちゃん、クラマは特別な存在で神と同等の力というか強さがあります。クラマは山の守り神みたいな存在ですけど、後の3人は大昔に悪さしていてずっと封印されてたんですよ」


「へぇ。神と同等の力ねぇ」


「この世界の神様とはちがうというか、俺のいた世界には神様がたくさんいましてね、本当に小さな区域や物だけを守る神様から国を守るような神様まで様々です。氷の神様とか音楽の神様とか実に様々ですよ」


「へぇ。面白い世界だね」


「俺にはこちらの世界の方が不思議で面白いですけどね」


「ははは、世の中そんなもんかもしれないね」


「ちなみにグリンディルさんは何者ですか?ヘスティアが見えるって大精霊クラスの力がないと見えないはずなんですけど」


「私も驚いたよ。まさか神を見る力が残ってたなんてね」


「力が残ってた?どういうことですか。現役時代はもっと力があったということですか?」


「違うよ。これはマモンも知らないことなんだよ・・・」


グリンディルはワインあるか?と聞いて来たのでセイはそれを準備したのであった。




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