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ウェンディーズデビュー

「村はこっちの方だよな?」


「そうじゃない?あっ、あっちに村が見えるわよ」


サカキ達はひょうたんに入ってもらってウェンディとぬーちゃんに乗って移動している。受付嬢のリタに教えて貰った村を発見した。


「てことはあの山があるところが子鬼がよく出る場所なんだよな。ぬーちゃん、あの山の所に降りて」


「はーい」


「お、着いたか」


コキコキと首を回りしながらひょうたんから出てくるサカキ。


「多分ね。ここの子鬼はどんな所にいるんだろね?」


どこでも同じだろ?大体岩陰とかで遊んでやがるに決まってる。あっちに大きな岩があるからあそこに行こうぜ」


とサカキに言われた通りに岩場へ移動。


「おかしいな、子鬼ならこういうところで遊んでやがるんだかな」


皆で岩陰をあちこち覗いても子鬼なんて居ない。


「キシャーッ」


「お?何だあの緑の奴らは?」


「さぁ?でも敵意剥き出しにしてるね」


「よし、一発ぶん殴ってやるか」


久しぶりに大暴れ出来るのが嬉しいのか指をぺきぺき鳴らすサカキ。


「セイー、あっちにもたくさん居るよ。ちょっと遊んでくるー」


「ぬーちゃん、子鬼を見付けたら呼びに来てくれ」


「はーい」


「ちょっとちょっと、あいつらゴブリンよ」


「あの緑のゴブリンっていうのか。悪者か?」


ウェンディが言うにはあの緑のはゴブリンという魔物らしい。


「魔物よ魔物。さっさとやっつけちゃって」


「殺すのか?」


「当たり前でしょっ。魔物は敵よ」


「だってさ。サカキ、遠慮しなくていいみたいだぞ」


「そうか。暴れても良いお墨付きとは嬉しいねぇ。じゃ、スッキリとしてくるか」


「しかし、この山の空気は随分と濁っておるな」


クラマはそう言って渋い顔をする。山を守る立場としてはそういうことが気になるらしい。


「そうなの?」


「あぁ。この嫌な空気はワシが吹き飛ばしてやろう。風を使えると言っても小娘には無理じゃろうて」


「なんですってぇぇぇ」


あ〜あ、また始まったよ。まぁ、ここなら暴れても問題無いから放っておくか。


「タマモはどうすんの?」


「私はセイとここにいるさね。サカキ達が暴れるならろくな事になりゃしないんだから」


「嫌な事を言うなよ」


「めちゃくちゃにならないようにちゃんとセイが見張ってな」


と言われてもすでにサカキは手応えのねぇ奴らだと叫びながら暴れているし、ウェンディは暴風で木をなぎ倒してるけどこんなの見張ってても意味がない。


「こりゃっ小娘っ、山を荒らすでないっ。嫌な空気だけ吹き飛ばさぬかっ」


「空気だけなんて無理に決まってんでしょっ」


「この未熟者めがっ」


クラマは羽うちわで神通力の風を送って濁った空気だけを吹き飛ばしているがウェンディは木ごとなぎ倒している。あいつ、見習いに降格させられたのはこれが原因ではなかろうか?


「ぬぅ、飛ばしても飛ばしても後から濁ってきよる。これは濁りの元を絶たねばならんな」


「何言ってんのよっ。単にあんたが力不足なだけじゃないの」


「なんじゃとーーっ」


何喋ってるかわからんけどまたクラマは怒ってるわ。クラマのじっちゃんは神様同然の存在なのに沸点低いからなぁ。


「セイ、クラマがあれだけうちわで仰いでもどんどん濁った空気が出てくるのはおかしいわね。元を絶たないとダメなんじゃないのかい?」


見ているだけのタマモがそう言う。


「今日は子鬼退治に来ただけなんだけどなぁ」


「セイー、あの緑のやっつけたら石ころになったよ」


「おー、それ集めて来てくれ。金になるかもしれん」


「はーい」


とぬーちゃんが大量の魔石を持ってきた。


「これ持ちきれないからひょうたんの中にいれといて」


とぬーちゃんに指示をすると魔石をせっせとひょうたんに入れてくれる。サカキが倒したやつも拾って来てくれた。

 

「おい、セイ。緑の奴しかおらんぞ。場所間違ってんじゃねーのか?」


「そうかも。一度ギルドに戻って場所確認した方がいいかもしんないね。ぬーちゃんクラマ達呼んで来て」


ウェンディとギャーギャー言い合いしているクラマをぬーちゃんに呼びに行かせる。


「ぬっ、ここには子鬼はおらんと申すか?」


「緑のゴブリンってやつばっかりなんだよ

ね」


「ううむ、セイよ。この濁った空気をこのままにしていくのは気が引けるのでな、元を断ってくるから少し待っておれ」


と、クラマは言い残して黒い羽でバッサバッサと飛んで行った。そして暫くして戻ってきた。


「濁った空気の元を断って来たぞ。ゴブリンとやらがうじゃうじゃ追ったからすべて退治したがよかったかの?」


「倒したら石になったろ?その石は?」


「そのままじゃ」


「じゃ、勿体ないから取りに行こう。あれお金になるからね。借金の足しにしないと」


クラマとぬーちゃんとで魔石を拾いに行ったセイ。山肌の洞窟に入り大量に落ちている魔石を全部集めてひょうたんに入れたのであった。



一度ギルドに戻ってリタに確認する。


「リタ、この山で良かったんだよな?」


セイは地図を見ながら説明する。


「はい、間違いありません」


「そこ、子鬼なんていなくてゴブリンって奴しかいなかったぞ」


「あっ、それですそれ。子鬼ってゴブリンのことですよ。って、一度山にいって戻って来たんですか?」


「そうだよ」


「そこ、走っても片道で半日くらい掛かる距離なんですけど・・・」


「ぬーちゃんに乗せてもらったからすぐだよ」


「そ、そんなこと出来るんですか」


「ぬーちゃんは空を駆けられるからね。リタが子鬼っていうからてっきり鬼の子供かと思ったよ」


セイは指で角と牙の形をやって鬼を真似る。


「鬼って、オーガのことですか?あれは子供なんていませんよ。ゴブリンとは別の魔物です」


この世界では鬼はオーガというのか。


「まぁ、子鬼がゴブリンと同じなら多分殲滅したからいっか」


「殲滅?たくさん倒したんですか?」


「魔石持って帰って来たけどお金になる?」


「はい、討伐証明として頂きます。こちらに出して下さい」


と、リタはお盆みたいなものを出してきた。


「ぬーちゃん、全部出して」


「はーい」


一度ひょうたんに入ったぬーちゃんは袋を咥えて出てきた。


ドサッ


「えっ?」


「移動中にタマモが袋に詰めてくれたみたい。いくつあるかわかんないから数えようか」


袋からザラザラと魔石を出すセイ。


「な、なんなんですかこれ」


「ゴブリンの魔石」


「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って下さい。ギルマス呼んで来ます」


大量の魔石を見たリタは慌ててギルマスという人を呼びに行った。




「おい、ゴブリン共を殲滅したという新人はお前か?」


「はい、というのかやったのは仲間ですけどね。俺は見てただけ」


「これだけ大量にあるということは巣があったのか?」


「巣?」


「ゴブリン共が生まれてくる場所だ」


「嫌な空気を出してた洞窟のことかな?クラマが元を断ったとか言ってた洞窟にたくさんいたみたいだけど」


「それが巣だ」


そうなんだ。


「お前新人だろ?どうやった」


「ちょっと待って。おーいクラマどうやって倒したか説明してくれ。ぬーちゃんも」


ひょうたんから出てきた二人に驚くギルマス。


「そりゃ、アイテムボックスかそれとも召喚魔法か?」


「アイテムボックス?」


「収納魔法の掛かったいれものだ」


「これは入れものというか出入口かな。コイツラの住んでる里とつながってるんだよ」


??????


頭にハテナマークが浮かぶギルマス。


「何を言ってるかよくわからんがそいつらはなんだ?」


「そいつとは何じゃっ」


そいつ呼ばわりされて怒るクラマ。


「クラマ、落ち着いてっ。暴れたらまた借金増えるだろうがっ」 


どうどうとクラマを宥める。


「人間ではないけど仲間だよ」


この世界には存在しない妖怪を説明するのは面倒くさい。


で、クラマは羽うちわで、ぬーちゃんは毒を撒いたらしい。


「何なんだお前ら?」


「ふっふーん。私は風の神ウェンディ。私の下僕が魔物を退治したのよ。大半は私が風で倒したんだけどねっ」


「このお嬢ちゃんも仲間か?」


「誰がお嬢ちゃんよっ。この国の神だって言ってんでしょっ。感謝して崇めなさいよねっ」


無い胸を反らすして鼻を鳴らすウェンディ。


「おい新人、大丈夫かこの娘?」


「可哀相なやつだから気にしないで」


「誰が可哀相なやつなのよっ」


ギャーギャーうるさいウェンディをぬーちゃんは命令する前にカプっと尻尾で噛んだ。


「おいおい、嬢ちゃん泡吹いてんぞ。何した?」


「耐性出来てるみたいだから大丈夫だよ」


リタは他の職員達と魔石を数えてくれているのでその間にギルマスの部屋で話をすることになった。



「は?その泡吹いてる嬢ちゃんが元神?」


「そう。なんか見習いに降格させられたらしくてね。俺は神に戻す手伝いをさせられてんだよ」


「その話は本当か?」


「みたいだね」


「お前らどこから来た?」


「日本ってところなんだけどね、こことは違う世界らしい」


「もしかして異世界人ってやつか?」


「どんな呼び方されてるか知らないけどここは俺のいた世界と違うみたいだ。俺の居たところにゴブリンとかいなかったし魔法も無かったからね」


「魔法が無いって、あのクラマって奴は風魔法で倒したんだろ?」


「魔法じゃないよ。俺の居た世界では妖力とか神通力とか言ってたけどね。普通は使えない力なんだよ。クラマ達は神と同等の力を持ってるから」


「マジか・・・。この話は他の奴にしたか?」


「詳しくはしてないよ」


「なら黙っておけ。異世界人だとバレたら国に連れて行かれるぞ」


「連れて行かれたらどうなるの?」


「戦争に加担させられる。異世界人は強大な力を持っていることが多いからな」


ということは他に俺みたいに他の世界から来たやつがいるんだな。


「俺はこいつが神に戻ったら元の世界に戻してもらうから国同士の戦争に加担するな気はないよ。それよりウェンディを神に戻すのギルマスも手伝ってよ」


「どうやったら神に戻れるんだ?」


「信仰心を集めればいいらしいよ」


「あー、この国で風の神様への信仰心ねぇ・・・」


そう言ったギルマスは渋い顔をしたのであった。







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