表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/323

山の改造完了

翌朝、セイ達は山の作業に向かう事に。


「リタ、俺達はやることがあるから出掛けるけどどうする?ここでのんびりしてるか?」


「何しに行くんですか?」


「山を管理って言うのかな。まぁ土木作業だよ」


「付いて行っていいですか?」


「いいけど退屈かもよ?」


「ここにいてもセイさん達がいないと退屈ですし」


「なら一緒に行こうか。どうしようかな。ぬーちゃんに大きくなって貰わないと3人は乗れないかな」


リタがぬーちゃんの本来の姿を見たら怖がるかな?リタもそんなに大きくないしギリ乗れるか?


「なら、あたしが乗っけて行ってやろうかね」


「タマモが?」


「そうさ。リタはあたしの本来の姿がどんなのか気になってるみたいでね」


「そうなの?」


「えっ、あ、はい」


まぁ、九尾の妖狐の事を知らなければ見ても怖くないかな?


「じゃ、タマモお願い出来る?」


「はいよ」


ドロンっ


タマモは九尾の妖狐の姿に戻った。


「わっ、これが本来の姿なんですか?」


「そうさね、怖いかい?」


「いえ、とっても綺麗です。こんな見事な尻尾は初めて見ました」


九尾の妖狐の毛並みはとても美しい。白というより白銀のように輝き、9本の尻尾はフサフサに膨らみ見事だ。


「尻尾には触らないでおくれよ」


フワフワ尻尾に手を伸ばしかけたリタにそう言う。急所というわけではないがタマモは尻尾を触られるのを嫌う。フワフワが気持ちよくて子供の頃にやめろと言われてもしつこく触って噛まれたのは昔の思い出だ。


「うわぁ、柔らかくてスベスベの毛並みですぅ」


タマモの背中に乗ったリタはそのまま顔を埋めそうな勢いだ。元の世界ならこんな光景ありえないなと思いながら山に向かって出発。空を駆けるのも怖がるどころか大喜びだった。



「え?こことあっちの山はセイさんの山なんですか?」


「あっちは買ったんだけどね、こっちはもらったんだよ」


「凄いですねぇ。大金持ちじゃないですか」


「木工ギルドで管理出来ないからって」


「へぇ、そうなんですか。あのお屋敷もそうですけど税金大変そうですね」


「え?税金」


「はい。土地にも税金掛かりますよね?」


しまった。その通りじゃん。山ってめちゃくちゃ広いけど税金いくらぐらいなんだろうか?帰りにヨーサクの所に行って聞かなくちゃ。それに後で手持ちのお金がいくらぐらいあるか確認しないと。ま、足りなければ宝石を売ればいいか。



「いやぁぁぁぁっ。何で私の所にくるのよーーっ」


いきなりウェンディが騒ぎ出した。何やってんだ?と思ったら獣の幽霊に集られてやがる。黒豚に襲われて死んだ猪とか熊の霊だなありゃ。獣も自分が死んだ事に気付いてないと暫く幽霊になったする。話しかけては来ずに自分がまだ生きているつもりで襲って来たりするが普通は害はない。


「ウェンディさんはどうしたんですか?」


「見えない動物と戯れてるんだよ」


ドンッ


「ぐえっ」


あ、猪の霊に体当たりされた。動物霊は霊力が弱いから普通ならすり抜けるはずなんだけど。


「なんか突き飛ばされたように見えましたけど?」


「うん、突き飛ばされたね」


ヘスティアはそれを見てゲラっゲラ笑ってる。酷いお姉ちゃんだ。


「何すんのよぉっ!」


ブフォぉぉっ


あ、ふっ飛ばしやがった。巻き込まれた木がなくなっただろうが。


「何やってんだよっ。山が剥げただろうが」


「だって、体当たりしてくんのが悪いんでしょ ぐえっ」


今度は後ろから体当たりされたウェンディ。そして転んだ所に集中攻撃されてやがる。


ピンポールみたいになっているウェンディ。笑いを超えてちょっと可哀想になってきた。


「ウェンディさんってあんな動きが出来るんですねぇ」


ウェンディがあちこちにポンポン跳ねている姿を見て感心するリタ。


好んでそうしているわけじゃないぞ。


セイはウェンディの元に駆け寄り手を引いて自分に引き寄せて動物霊達を祓った。


「えぐっ えぐっ」


「お前、霊が見えても反応するなって教えてやっただろうが」


「あんなの霊だなんて思わないじゃないっ」


もしかしたらウェンディは俺よりくっきり動物霊が見えてるのかもしれん。


「仮に本物の動物だったらもっとケガしてるんだからな。危ないから俺のそばにいろ」


セイの言葉は命令となり、ウェンディはピッタリとセイのそばにくっつく。


少し離れたリタとヘスティアには「俺のそばにいろ」しか聞こえていなかった。



「なんでぇ、お前らやっぱりそういう仲だったのかよ」


「そういう仲ってなんだよ?」


セイの腕を掴んでそばにくっつくウェンディ。リタもやっぱり二人は・・・とか思って見ていた。



サカキはとっくに元の姿になってクラマ現場監督の元、土木作業中だ。


タマモとぬーちゃんはいつの間にか黒豚狩りに行き、肉をたくさんゲットしていたようだ。そして隣の山に角有りを狩りに行ってくると伝えてきた。タマモ、獣に戻ってんぞ?


「セイさん、なんかあっちで見たこともない魔物が暴れています」


少し怖がってセイの腕を掴んでくるリタ。


「あれ、サカキだよ。とっとと終わらせたいから元の姿でやってるんだ」


「あれ、サカキさんなんですか?」


「そう。怖いだろ?あいつが本気で暴れたら王都とか壊滅するからね」


「はぁー、セイさん達って本当に凄いんですねぇ。もう何が来ても怖くありませんね」


リタの感覚ってどうなってるんだろうか?離れているとはいえ、サカキの元の姿を見たら震え上がってもおかしくないんだけどな。


妖怪達は人々の恐怖から生まれたと言われている。人の怖いという感情が集まって生まれると曾祖父さん達から聞かされている。だから人々は妖怪が怖いのだと。しかしリタにはそれが当てはまらない。世界が違うからだろうか?


クラマがバサバサと飛んで来た。


「セイ、もう池もこんなもんでいいじゃろ。後は水がチョロチョロ出るぐらいに川を堰き止めてやればしまいじゃ」


「チョロチョロ出したら土の壁だとすぐに崩れそうだね」


「さっき未熟者が吹き飛ばした木を組んで作るしかないの」


セイの腕を掴みながら誰が未熟者よっと吠えるウェンディ。


「あれだけの堰を木で組むのは時間かかるね」


「そうじゃな。いい加減に組む訳にはいかんからの」


「俺様が土を焼いて固めてやろうか?」


「そんなこと出来るの?」


「そんなもん朝飯前だぜ」


クラマの指示でサカキが山肌を崩して川を堰き止め、ヘスティアが光熱で周りごと土を溶かす。溶けた土が川の水に触れた途端に一気に爆発するかのように水蒸気が上がる。


「きゃあっ」


「大丈夫。いまヘスティアが仕事を手伝ってくれてんだよ」


爆発したと思って悲鳴を上げたリタ。同じ作業を繰り返すサカキとヘスティア。


「もういいぞい。サカキ、真ん中をこれぐらいの幅でこれぐらい削るんじゃ」


満水になったらチョロチョロと水が出るように真ん中を少し削って完了。池が満水になり、それが溢れてここから流れでるまでかなりの日数を要するだろう。それまでこの川からは王都へと水が供給されなくなるのだ。



土木作業が終わる頃、タマモとぬーちゃんが肉をたくさん咥えて帰ってきた。肉がぬーちゃんとタマモのよだれまみれだ。洗うからいいけど。それを全部ひょうたんにしまって終了。


「けっ、両脇に女を侍らかせて見てるだけなんていい身分だなセイ」


「誰が侍らかせてんだよ?」


と言いつつ、本当に両手に花のセイ。


「ウェンディ、お前、いつまでへばりついてんだ?もう帰るぞ」


「何よっ、あんたがそばにいろって言ったんじゃない」


「確かに言ったけどな。もう帰るから離れろ。タマモ、悪いけど二人を乗せて先に帰ってくれる?俺は木工ギルドに寄ってから帰るから」


「酒屋にも寄れ」


ブスッとそういうサカキ。また酒屋で買い占めさせるつもりらしい。



木工ギルドのヨーサクの所で税金の話を聞く。


「手続きは終わっておるでの。去年と、同じなら年に金貨15枚くらいじゃ」


さっき金貨を数えたら20枚は残ってたから足りるな。


酒屋でまた買い占めて屋敷に戻ると先に飲み始めているタマモ達。俺の顔を見るなりドワッと笑いやがったのでまたいらぬ話をしていたのだろう。



鍋をパーティの為に海岸の岩場で土鍋をいくつもセットしていくとギルマスが奥さんと共にやってきた。


ふくよかな奥さんだ。可愛いと美人の間ぐらいの人だな。キリッとした目だ。


「よぉ、お言葉に甘えて連れてきたわ」


「あなたがセイさん?初めてまして。私はグリンディル。主人がいつもお世話になってるわね。いつもお土産ありがとうね。これもとっても素敵。こんなの主人から貰った事がなかったから嬉しくて嬉しくて」


そう透明な宝石のネックレスを指をさした奥さん。ネックレスというより首輪になってる。もう少しチェーンが長いほうが良かったかも。



「こちらこそギルマスにはとてもお世話になってます。ギルマスが親切にしてくれてなかったらこの国にいられなかったかもしれません」


「まぁ、そんな風に言ってくれるなんてあなた冒険者じゃないみたい。まともな人そうね」


まともな人ってどういうことだ?


「まぁ、うちのかぁちゃんも元冒険者でな。冒険者にはろくでもないやつも多いからよ」


へぇ。ギルマスも元冒険者だろうしパーティ内での職場結婚みたいな感じかな。


そして、人魚達もやってきたので奥さんのグリンディルに皆を紹介していったのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ