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美人とかわかるけどそれだけ

「海坊主、これからも時々海鮮取ってきてくれよな。ハモとかいないか?」


「ハモってどんなの?って聞いてるわよ」


マーリンが通訳してくれる。


そういや、ハモって調理されたものしか見たことがないな。


砂婆に来てもらってハモがどんな魚か説明して貰うと海坊主は探しに行ってくれた。


しばらく経ってからボタボタっと魚を出してくれる。


「これはウミヘビじゃからいらん、コイツは穴子、これはウナギか。そしてこれがハモじゃ。でかしたぞ海坊主。この3種類はよく覚えておくんじゃ」


コクコク


今日はもうお腹いっぱいなので、これらはまた後日に食べる事にしたのでユキメが瞬間冷凍してくれる。


「セイよ、明日はハモと松茸の鍋にしてやるからの」


「連日豪勢だねぇ」


異世界バンザイだ。こんな贅沢は元の世界では出来ないからな。


「何よ?明日もなんか美味しいの食べるわけ?」


「食べたい?」


「当たり前でしょ。ここでやってよね」


ハイハイ。


「セイさん。さっきのニョロニョロしたのも食べるんですか?」


「そうだよ。明日は鍋にしてくれるみたい」


「鍋?」


「そう。一つの鍋をみんなで分け合って食べるんだよ」


「あー、冒険者飯ってやつですね」


「冒険者飯?」


「はい。冒険者さん達は泊りがけで依頼を受けた時に外で鍋に色々入れて食べるみたいです」


そこへようやく復活したギルマスが説明を付け加えてくれる。


「冒険者の晩飯の定番だ。その辺に生えてる草とか狩った獲物をぶち込むだけのな。旨い肉は売るからそこまで旨い飯じゃねぇ。乾パンと干し肉よりマシってぐらいだ」


「鍋とか持って依頼をこなしにいくわけ?」


「当たりまえだろ?テントやらなんや持って行かねぇとダメだからな。アイテムボックスを買えない奴らは遠征に出たがらねぇ。だから稼ぎも少ないんだがな」


「アイテムボックスって高いの?」


「高ぇぞ。テントと鍋をしまえるウエストポーチサイズで金貨5枚ぐらいだな」


そいつは高いな。普通の冒険者達は一人当たりの稼ぎが日に銀貨1〜2枚ってとこらしいからな。俺達はひょうたんの中に何でも大量に入れられるし、寝床はぬーちゃんがいるから寝具も不要だ。


「冒険者飯の草の鍋ってお腹痛くなりそうでやだね」


「生の魔物食うよりマシだろうが。さっきはいきなりねじ込まれて飲み込んじまったがよ」


「あれ、ヘスティアが食べさせたんだよ。女神様に食べさせてもらえるなんて果報者だね」


「えっ?マジか?あれヘスティア様がやったのか?」


「そうだよ。女の子に食べさせてもらうなんてハレンチだね。今度奥さんに言いつけてやるよ」


「バカッ、やめろ。うちのかぁちゃん怖えんだよ。ち、ちなみにだがよ、ヘスティア様ってどんな感じなんだ?」


「どんな感じとは?」


「ほ、ほれ見た目とかよ」


「あー、そういうことね。小柄だけど美人だよ。目尻の上がった大きな目をしてて髪の毛とか派手で、ビキニとホット・パンツにブーツ姿」


ビキニ?ホット・パンツ?はなんだと聞いて来るので説明してみる。


「そ、そんな裸みたいな姿をされてんのかっ」


「裸みたいって・・・」


と言いかけたら後ろからヘスティアがセイの肩を組んでニヤニヤしてきた。


「なんでぃ、なんでぃ。俺様のことを美人だとか思ってやがったのかよ?まさかホレたんじゃねーだろうな」


「誰がホレるんだよ?美人とかは客観的に見た時の印象だろ。それに女神とはそういうもんじゃないのか?」

 

元の世界の神も異形か美型のどちらかだ。


「なんだよツレねぇな。ならひんぬーぇんでぃはどうなんだよ?」


ウェンディねぇ。


「まぁ、見た目は美少女ではあるよ」


なんとなくウェンディの事をそう言うのが照れくさくて赤くなるセイ。


「お、お前まさかひんぬーが好みなのか?マザコンの上に幼女好きとかじゃねーだろうな?」


幼女・・・。確かにウェンディは幼児体型だ。


「胸の大きさなんてどうでもいいよ。というか好みとかそんなのよくわかんないから」


「セイ、なんの話をしているんだ?」


ギルマスには俺の声しか聞こえないから何を話しているか状況がわからない。 


「ヘスティアが下らない事を聞いてくるんだよ。俺の好みがどうとか」


「どんなのが好みなんだ?」


ギルマスまで・・・


セイの心にはある日突然自分の事を怯えた目で見た母親の目が焼き付いている。それは明らかに自分の事を拒絶した目。そして小学生時代も同じ子供達やその親から母親と同じ目で見られていた。それは誰もが幼いながらに経験するであろう恋心とかを封印した。


セイの事をそういう目で一度も見たことがないのは曾祖父、曾祖母とタマモやサカキ達だけであった。幼かったセイの心が壊れてしまわなかったのはタマモ達のおかげである。


「よくわからないよそんなの。顔立ちが整ってて綺麗だなとかはわかるけど」


そう言いながらセイはふとラームを思い浮かべた。恐ろしい姿をしているヒョウエにも怯える事なく嬉しそうに微笑み、物腰も上品で自分にも優しく微笑んでくれる人間の女の人。容姿こそヒョウエ達みたいだけど、ああ言う目で見てくれる人なら・・・


「タマモの事を綺麗と言ったのは?」


「そういう意味かな。あれはタマモの本来の姿ではないけどね。本来の姿も綺麗だとは思うけど」


「リタはどう見えてる?」


「可愛いと思うよ。ユキメも美人だし、人魚達も綺麗だと思う」


「それだけか?」


「それだけ」


「お前、綺麗所に囲まれ過ぎてて感覚が麻痺してんじゃねぇのか?こんな状況に囲まれてたら普通の男なら嬉しくて仕方がねぇんだぞ」


「もしそうならやっぱり俺は普通じゃないんだろうね」


セイがそう答えてギルマスはハッとした。余計な事を言ってしまったと。


「ま、まぁ。そのうち普通の感覚が芽生えるかもしれんからな。その時にモンモンしやがれ」


モンモンするとはなんのことがわからないけど、なんとなく気を使ってくれたのはわかる。


「まぁ、この話は置いといて。明日鍋にするけど明日も来る?ギルマスの言ってた冒険者鍋とは違うと思うから」


「はいっ!ぜひっ」


リタはギルマスが返事するよりも先に返事をした。どうやら今日もお泊りセットを持って来ているらしい。


「連チャンでいいのかよ?」


「他の妖怪達は来ないだろうけど、人魚達は来るみたいだし。何なら奥さんも連れて来なよ」


「うちのかぁちゃんを連れてくんのかよ」


「毎晩遊んでたら機嫌悪いんだろ?子供はいるの?」


「いや、うちは二人だけだ」


「ならお泊りセット持ってきて夫婦で泊まれば?どんな所で遊んでるか見てもらったら次から心配しないだろうし、泊りならギルマスも心置きなく飲めるだろ?」


「仕事があんだよ」


「早めに出て、奥さん送ってから出勤すればいいじゃん。うちはウェンディ以外みんな早起きだし」


ということで明日はギルマスの奥さんも参加の鍋パーティになったのであった。


バーベキューは終了し、ギルマスは帰宅、リタはお泊りでタマモ、ウェンディ、リタ、ヘスティアと露天風呂に入っている。男連中は内風呂でも宴会か。



ー露天風呂ー


「セイさんが言ってましたけど、ヘスティア様って美人なんですってねぇ」


「おぅ、あいつが俺様の事をそんな目でみてやがるとはよ」


リタにとっては一方通行の会話だ。

セイに美人だと言われたヘスティアは上機嫌でそう答えたのでタマモが通訳してあげている。


「タマモさんの本来の姿ってどんなのですか?」


「あたしの本来の姿かい?あんたらにとっちゃ魔物とかわんないさね」


「魔物ですか?」


「そうさね。この人間の見た目は仮の姿さ。もうこっちの姿でいる方に慣れちまったけどね」


「妖怪でしたっけ?」


「そう。あたしたちは妖怪って呼ばれてる存在さ。人とは違う存在なんだよ」


「不思議ですねぇ。人間にも色々いますけど、私が神様やタマモさん達みたいな人とこうやって一緒に食べたりお風呂入ったりしているなんて」


「セイの周りには人間と違う存在の方が多いからね。これからも怖がらずにセイと仲良くしてやっておくれ。セイが人間の女の子と普通に話してるのは初めてだからね」


「怖がる?セイさんをですか?」


「そうさ。あんだみたいに普通の人間の娘がセイの事を気味悪がったり怖がったりしないのがあたしは嬉しくてね」


「セイさんはいい人ですよね?」


「そうさ。セイはいい子なんだよ。ちょっと人とは違った力を持ってるだけで・・・」


「違った力ですか。確かに凄い冒険者さんですよね。うちのギルドに登録して間もないのに難しい依頼も簡単にこなしてますし」



その話を聞いていたヘスティア。


「ウェンディ、今更だけどよ。お前どうやってセイを見つけたんだ?」


「なんか力を持った人を探そうと思って部屋の扉を開けたらセイがいただけよ」 


「なんだよそれ?」


「知らないわよ」


「あとな、セイはお前の事を美少女だと言ってたぞ。嬉しいか?」


「当たり前でしょ。私は風の神なんだから」


「元な、」


「うっさいわねっ」



ヘスティアはウェンディがなぜ異世界にいる強い力を持ったセイを見つけられたのか不思議に思っていた。いまのウェンディの話を聞いてセイがこの世界に来たのは大神が絡んでるんじゃないかと想像する。


と、すればウェンディを降格させたもの何か意味があるかもしれないなと一人で納得するのであった。




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