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鈍感力

「あいつら男二人で何話してんだ?」


「知らないわよそんなの。それよりやっぱり私の青いのが一番綺麗だと思うのよね」


「そうか?俺様の黄色のが一番綺麗だよな」


「私のオレンジのが一番可愛いと思います」


「私達のこれが一番ステキなわけ」


「あらぁ、そんなの似合う人がつけてるからこそなのよ。その点私の分身のような水色のが一番よ。セイが私のために選んでくれたんですもの」


ヘスティアの事が見えない者たちまで見えているかのように会話している。そしてぎゃーぎゃー言い合っている所に戻って来たギルマスとセイ。


「どれが一番なのよっ」×全員


ギルマスはえらい時に戻ってきたと察知して空気に徹した。


「な、何がだよ?」


「誰のネックレスが一番か聞いてるのっ」


「何が一番なんだよ?値段とか知らんぞ」


(セイ、その鈍さは武器だ。メラウスの剣並のすげぇ武器だ)


ギルマスはそう心の中で呟く。


「そうじゃないっ。誰のが一番綺麗で似合ってるか聞いてんのっ」


「なんだそういう意味か。それなら・・・」


「それなら?」×全員


ゴクッと唾を飲んでセイの答えを待つ面々。


「タマモじゃない?」


「はぁっ?なによ、このマザコンっ」×全員


(セイ、よく正解を選んだ。誰にもその気がないのなら、クスクス笑って見ているタマモを選ぶのが正解だ。あの婆さんでは誤魔化したと思われる。誰よりも強そうかつ、美人でセイにとって色恋に関係のないタマモが正解だ)


ギルマスは再び心の中で呟いた。


一番綺麗なのは?と聞かれてタマモと答えたセイ。宴会始めに実の母親に捨てられタマモが母親の代わりになってセイが育てて来たことを聞かされていたみんなはセイをマザコン認定したのであった。


一気にしらけた場は食事を再開する。


「あんたが欲しいって言った海藻なんてやっぱり美味しくないわけっ」


ワカメで包んだ魚の蒸し焼きのワカメを食べて文句をいうマーメイ。


「これはワカメは食べないんだ。中の魚をワカメで蒸し焼きにすることでワカメは風味だけを味わうものだよ」


ワカメから魚を取り出して切り分けるセイ。なんとなくマーメイにオウオウのイメージが残ってたので、少しフーフーして冷ましてからマーメイの口の中に入れてみた。


「ん、あっ、お、美味しい」


「だろ?ちょうどいい焼き加減というか蒸し加減だったね。旨いよこれ。なんていう魚かな?」


「それ、魔魚よ」


「へぇ、魔魚って旨いんだな。身質もしっかりしているし脂の乗りもいい。これデカいやつ?」


「そこまでじゃないわけ。これぐらいのやつ」


と、マーメイが両手を広げる。大型マグロぐらいありそうだな。


「怖いって言ってた魔魚はどれぐらいあるんだ?」


話によると小型のクジラかシャチぐらいありそうだ。もっと沖には更にデカイのがいるらしい。


ふと見ると若い人魚達がオウオウしながら口を開けているので順番に口の中に入れていくと、魚を食べさせて貰った人魚達は海の中へ入り、次々と華麗なジャンプを見せてくれたりする。


今度ボールが売ってないか探してみよう。


「あんた、若い人魚達を手懐けて何か企んでるわけ?」


「手懐けるってなんだよ?それよりもいつもは魚を生で食ってるんだよな?焼いたやつも旨いのか?」


「お、美味しいわよ。肉も野菜も美味しいわけ」


「なら、米も食ってみるか?」


と、砂婆特製の三角オニギリを食べさせてみる。


「何これ?中になんか入ってるんだけど?」


「それは昆布の佃煮だね。取ってきてくれた昆布で作ってくれたんだよ」


ムシャムシャと両手に持ってオニギリを食べるマーメイ。米も昆布の佃煮も気に入ったようだ。なら、焼きおにぎりも食べるかな?


「よう、セイ。この米ってのはあんまり味しねぇのな」


ヘスティアは米を味気無いと言う。


「食べ慣れないと味がわからないかもね。よく噛んでると甘さとかわかってくるよ。焼肉とか味の濃い物と一緒に食べると旨いし。それとこうやって焼いて食べるのもいいよ」


オニギリに焦げ目が付いてきた所に醤油を掛けていくとめちゃくちゃいい匂いを放つ。


あ、カニ食べてないや。砂婆が綺麗に殻を半分に切ってくれてあるカニの脚も焼いていく。これも香ばしくていい匂いだね。


小さめと言ってもデカい甲羅を焼いてそこに日本酒を注ぐ。鬼殺しを飲ませたらヘスティアがまたやらかすからな。


「はい、好きなの食べていって。やり方見てただろうからお代わりは自分達で焼けよ」


そういうと真っ先に一番大きなカニの足の付根を取ったウェンディ。なぜ一番食べにくいところを選ぶのだ?お前、大きさだけで選んだだろ?


案の定、うまくほじれなくてイライラしたウェンディはそのまま齧る。お前は犬か?そのうち猿、犬、鳥を一人でコンプするんじゃなかろうな?


「貸してみろ」


ウェンディの口から足の付根を取り上げてほじってやろうとすると


「何で取り上げんのよっ」


と吠える。だからお前は犬か?


「中身出しておいてやるから。先に食べやすい方から食べろ。足ならこうやったら簡単に取れるから」


カニの足の身の取り方の見本をみせるとそれも食いやがった。


後は勝手に食べだしたのでその間に足の付け根をほじくり出していく。


「ほら取れたぞ」


「こっち食べるからもうそれいらない」


こいつ・・・


なぜ、俺がウェンディの齧った奴を食わねばならんのだ。セイはきちゃないなと思いつつ、せっかくほじった身がもったいないのでそれを食べる。


ユキメはカニを冷水に浸けて生で食べている。雪のようにパッと花咲くカニも旨そうだなと思い、一つくれといったら食べさせてあげるとかいってあーんする。


「ユキメ、俺は生で食べてみたいのであって冷凍カニを食いたいわけじゃない」


瞬時に凍っていくカニのあーんはお断りして自分でしゃぶしゃぶしてわさび醬油でいってみる。


「お、甘いね」


「セイ、カニの魔物を生で食うとか正気か?それに人前で女の子に食べさせたり食べさてもらったりとかハレンチが過ぎるぞ」


「魔物といっても普通のカニと似たようなもんだから生でも旨いよ。それに人魚達に食べさせたのは餌やりで・・・」


餌やりと言った瞬間、マーメイにビッタンビッタンされる。


頬に尾ビレマークを付けたセイはギルマスが生で食べる事を正気かと聞いてくる意味がわからない。生きたコブリンを齧ってるならまだしも。


「そ、そうか旨いのか・・・」


人ならざる者達と同じように食べるセイを見てやっぱりこいつも人じゃないかもしれないと思いだすギルマス。


ふと横を見るとリタも同じように生でカニを食べようとしていた。


「やめろっ。お前まであっち側に行くな」


止めようとしたギルマスだが時既に遅し。生のカニはリタの口の中へ。


モニュモニュモニュ


「あっ、美味しいですよギルマス。モチモチしてて甘いです。焼いたみたいな香ばしさは無いけど、甘さはこっちが上ですよ」


なんてこった。普通の女の子のリタがあっちへ側行ってしまった。


「セイっ」


「ギルマスは食べないの?ならこの甲羅酒飲みなよ。酒飲みには旨いらしいよ」


「リタに責任取ってやれよ」


「なんの責任?」


「そっち側に行ってしまった責任だ。もう普通の女の子には戻れんのだぞっ」


「何訳のわかんねぇこと言ってんだよテメーは。ほら食ってみろっ」


ヘスティアはすでに酔っていて、ギルマスが自分の事を見えていないのを忘れていた。宙を飛んで来た生のカニがギルマスの口の中にねじ込まれる。


「ムッ ムグゥゥゥウ」


「それからコイツをキューーっとだな」

 

続いて熱々の甲羅酒を流し込まれた。


「ギルマスもハレンチだな。女の子にカニ食べさせて貰って酒まで飲ませて貰ったんだから」


生のカニを口に入れられた挙げ句、熱々の酒が喉に流れ込み悶絶したギルマス。


「なんだよ。これしきで倒れるとか酒に弱すぎんぞ。これぐらいの酒なら俺様は平気・・・・。あっつううぅ」


何やってんだよお前ら?


それぞれがそれぞれで騒がしく飲み食いするセイ達のテーブル。


「ほら、いい感じに焼けたよ」


タマモが焼きおにぎりを皿に乗せてくれた。すっかり忘れてたわ。


香ばしく焼けたおにぎりは旨い。

それをパクパク食べてると、次は焼きおにぎりに焼いたカニを乗せてそれを出汁茶漬けにしてくれる。


「酒飲まないならこういう物の方がいいさね」


「これ旨いねぇ」


「そうかい。そりゃ良かったね。たんと食べな」


皆がふと気付くと、タマモがセイのことを母親がするように世話を焼いていた。セイもそれを嬉しそうにしていたのでさらにマザコン疑惑が強まったのであった。




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