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別にいい

「まったくもうっ」


酷い目にあったセイはそのテーブルを離れて砂婆のテーブルへいく。


「なんじゃ、若い子達のところの方が良かろうに」


アイツらを若い子というけどもしかしたら砂婆の方が若いかもしれない。


「めちゃくちゃなんだよあいつら」


「そうかい。楽しそうにしてるように見えたがの」


びしょ濡れ→冷凍→火炙り→くすぐり。なぜこれが楽しそうに見えるのだ?


疑問に思いながらもようやく落ち着いて食べだしたセイを見て砂婆が話しかける。


「お前は皆にネックレスを付けてやったのじゃろ?」


「タマモがそういうもんだって教えてくれたんだよ」


「そういう事は親密な仲になったらするもんじゃ。タマモやワシにはええが、他の女子おなごにするとセイがその娘に気があるんじゃないかと思われるんじゃぞ」


「気があるって?」


「その娘を好いとるということじゃ」


「え?」


「お前はこういうのに本当に鈍感じゃの。人との交わりが少ないからそうなったのかもしれんがの」


「好きとかそんなのわかんないよ」


「ほうか。ならばこれからは気を付けるんじゃな。女子おなごとのトラブルは面倒じゃからの」


砂婆は焼けた貝をセイに取ってやり、セイはアチチチとそれを食った。


貝を食いながらギルマスもリタに気を持たせるなと言ったのはそういうことだったのかと気付くセイ。


海岸で賑わうバーベキュー会場。そこに人間はセイ、ギルマス、リタのみ。後は人ならざるものばかり。セイはずっとそういう環境の中で過ごしてきたのだ。


セイは砂婆にご馳走さまを言ってギルマスの元へと向かった。


「ギルマス、ちょっといいかな?」


と、ギルマスだけを連れて他の場所にいく。


「なんか話があんのか?」


「あ、先にこれを渡しておくね」


「なんだこれは?」


「奥さんへのプレゼント。今回も迷惑かけたし、ギルマスより奥さんへのプレゼントの方がいいかなと思って」


ギルマスの奥さんの分だけはケースに入れて貰っていた。そのケースを開けるギルマス。


「お、お前これ・・・」


「まだたくさんあるから気にしないで」


「本当にいいのか?」


「うん。俺は宝石なんてよくわからないし。奥さんがどんな人かわからなかったから色無しにしておいた」


「・・・そうか。ありがたく頂戴する」


「でね」


「何が聞きたいんだ?」


「リタのことなんだけどさぁ。俺がお土産にネックレスをあげたじゃん。あれまずかったんだよね?」


「まぁな。菓子とかならいいが物が物だけにな」


「女の人にネックレスを渡すときは男が付けるもんだとタマモに教えられたからそうなんだと思ってたけどそれもまずかったんだね」


「特に皆の前だったしな」


「ギルマスに言われた気を持たすなと言う意味もぜんぜんわかんなかったんだよ。今、砂婆に聞いて初めてわかったんだよね」


「だろうな。俺もお前に言っても無駄だと悟ったからな。リタには俺からお前にそんな気はないと説明しておいたから安心しろ」


「そうなんだ。ありがとうね。俺、この世界の事だけじゃなく人に関して全然知らなくてさ。多分普通の人の感覚とか欠如してるんだよ」


「だろうな。ちなみにお前がうちの嫁さんにぽんとくれたこのネックレスはいくらぐらいの価値があるか知ってるか?」


「高いんだろうなというのは知ってる。でも俺にはこんな石ころが高いのが理解出来ないんだ」


「ちなみにこれだと最低でも金貨300枚ぐらいする。オークションにかけたらどれぐらいの値段が付くかわからんような代物だ。ここまで大きなダイヤモンドはまず手に入らんからな」


「金貨300枚は・・・3億か。凄いね」


「お前、いつも金額をなんかに変換してるよな?元の国の金に変換しているのか?」


「そう。金貨の価値がピンと来ないんだよ。金貨300枚ってこれぐらいの袋いっぱいぐらいだよね?」


「そうだな」


「元の国のお金はお札っていって紙で出来ててね、金貨300と同等の金額に換算するとこれぐらいのカバンが3つぐらいになるはずなんだ。普通に働いていたらまず見ることもない金額だよ」


「紙なんかで出来てるならいくらでも偽造出来るし、すぐに破れたりして使い物にならないだろうが。それにいくらでも国が作ってしまえるじゃないか」


「紙のお金は破こうと思わない限り結構丈夫なんだよ。ニセ金作りは重罪だし、作れないように物凄く工夫してあってね。特に俺のいた国のお金はまずニセ金なかったよ」


「お前のいた世界はどれぐらいの国があるんだ?」


「190ぐらいだっけな。もう少し多いかも」


「そんなにあるのか?」


「文明ももっと発展してるから世界中の情報を仕入れようと思ったら仕入れられるし便利な世界だよ。まぁ便利が行き過ぎて不便なんだけどね」


「よくはわからんがすごい世界なんだな?」


「俺にとってはこっちの世界の方が凄いよ。魔物を倒すと肉とかに変わるのが理解できないし、魔物を弱体化する神の力とかね」

 

「でもお前はすぐに受け入れたんだろ?」


「まぁ、俺は変わってるらしいからね」


「お前、どんな人生を歩んで来たんだ?」


「んー、聞きたい?」


「あぁ」


セイは小さな頃からの話をギルマスにしたのであった。


「なかなか生き辛い人生を送ってきたんだな」


「小さい頃は理解できなかったよ。自分が普通じゃないって。自分が見えているものが人に見えないとかね」


「そうだろうな」


「でもこっちの世界だとサカキ達もみんな見えるし、異形のものでもそんなに驚いたりしないだろ?」


「まぁ、元々色んな奴がいるからな」


「だから気が楽ってのはある。それに見えていることを隠さずに済むから。人が見えないものが見えてもそうなんだって感じで受け入れてくれるし」


「お前の世界だとサカキ達は見えない存在なんだな?」


「そう、ギルマスがヘスティアを見れないのと一緒だね。でも見えないけどここにいるよと言っても信じてくれるだろ?」


「まぁな」


「元の世界で言っても気味悪く思われるだけで誰も信じない。だから人は俺とは関わらない。母親ですらね。そんな世界だよ」


「そうか。なら、こっちに来て良かったんじゃないのか?」


「そうかもね。こっちの世界に来て楽しいをたくさん貰ったよ。人の知り合いも増えたし」


「知り合いとか冷たいこと言うなよ。俺たちゃもう仲間だろ?」


「そう言ってくれるんだ」


「当たり前だ。確かにお前はこっちでも普通じゃない。行動も感覚も無茶苦茶だ。だけどな別にそれでもいいと俺は思う。そう別にいいんだよ」


「別にいい・・・」


「そうだ。お前はお前だ。別に気にすることはねぇ。違う時は違うと言ってやるから。人としての感覚は学んで行けばいい」


「そうか。ありがとうねギルマス」


「但し暴れんなよ?」


「大丈夫だよ」


「風の神様が元の神様に戻ったら自分の世界に帰るつもりか?」


「うーん。一度戻ってまたこっちに来れるならそれが一番いいんだけどね。まだわかんないや。サカキ達はこっちの世界の方がいいと思うけど、クラマは元の世界でやらないといけないことがあるんだよね。クラマはもう良いとは言ったけど、誰かに役目を引き継ぐとかしないと気になるとおもうんだよ」


「風の神様が元の神に戻ったら俺達には見えなくなるのか?」


「多分ね。ヘスティアと同じ存在になると思うよ」


「そうか。ならお前らがいなくなったら寂しいだろうな」


「そうかもね。でも俺はずっと一緒に居てやれる事は出来ないから遅かれ早かれの問題だよ。サカキ達がこっちに残ったらずっとかまってやれるかもしれないけどね」


ギルマスはウェンディ達がまだギャーギャー言い合ってるのをチラッと見た。なんとなく自分のネックレスの方がキレイだとか言っているようだ。


ギルマスはセイがいなくなったらあんな風に存在が異なる奴らが一緒に騒ぐことも無くなると気づけよと思っていたのであった。


「お前いくつだっけ?」


「19歳だよ。来年20歳だね」


「そうか。まぁ先はまだ長い。色々と学んでいけよ」


「そうだね。また色々と教えて貰うよ」


「こっちもお前に教えて貰うことがあるからな。お互い様だ」


「あ、そうだ」


「なんだ?」


「前にピンクオークが増えてるのはまだ大丈夫だって言ったろ?」


「あぁ。それがどうした?」


「ごめん、それ嘘かも」


「は?」


「オーガ島を浄化したらオーガが出なくなってゴブリンになったんだよ」


「そう言ってたな」


「でね、もうオークが出始めてるから、場所とか環境で魔物が入れ替わるスピードが異なる可能性が高いんだ。そのうちピンクにブラックがまじり始めるようならどんどん強い魔物へと加速するかも」


「そんな重要な事は早く教えろっ」


「なんだよ。親切で気付いた事を教えたんじゃないかっ」


「それが本当ならヤバいだろうがっ」


「冒険者達の仕事増えて良かったね」


「そんなスピードで強い魔物が出たら対応出来んだろがっ。手伝えよっ」


「今木工ギルドに頼まれることやってるし、それが終わったらボッケーノの温泉に行くから無理だよ。春にはアクアに行くし」


「こんな時に呑気に温泉に行ってる場合かっ」


「これ、ヘスティアとの約束だから破ったら神罰下るかもよ」


「俺まで脅すつもりかっ」


「じゃ、自分でヘスティアに交渉してみて」


「出来るかぁーーっ」


セイは自分の気持を吐露し、親身に話を聞いてくれたギルマスに少し照れくさくなったのでからかってごまかしたのであった。


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