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セイ、捕まる

サカキ達にここを任せてぬーちゃんと街の宝石店へ。ボッケーノより小規模だけどちゃんとあった。


「すいません、ここは持ち込みの宝石を加工してくれたりします?」


「形見かなにかでしょうか?可能ですけど・・・」


小汚い若造が来るような店ではないぞという雰囲気だな。ボッケーノではそんな扱いされなかったんだけど。


「赤い髪の女の子に似合う色って何がいいかわかります?」


個人的には濃い赤なんだけどタマモと同じというのもな。次にいいと思うのは黄色かな?


「どのような物をお持ちでしょうか?」


ふんって感じのチョビヒゲ親父。


セイはザラザラザラザラっと袋から宝石を出して見せる。


「この中から選びたいんだけどね」


「ブーーっ」


吹き出すチョビヒゲ


「こ、これはどこで手に・・・」


「ボッケーノのダンジョン・・・」


「え、衛兵を呼べっ。盗賊だっ」


え?


「ちょっとちょっとちょっとっ!」


わらわらと出てきた店の警備員に取り押さえられながら外へ連れ出され、衛兵を呼ばれたセイ。首に巻き付いていたぬーちゃんが大きくなって警備員を威嚇する。


「我のセイに何をするのだ。死にたいのか貴様ら」


「ヒィィィィ。魔物だーっ。街の中に魔物が出たぞーっ」


蜘蛛の子を散らすように逃げていく警備員。腰を抜かすチョビヒゲ。


「こらっ、ぬーちゃん人前で元に戻っちゃダメだろ?」


「ぬぅっ」


シュルルルといつもの大きさに戻ったぬーちゃん。


「だってー、あいつらセイに悪さしようとしたんだもん」


「大丈夫だから。誤解なんだよ誤解。だから毒撒いちゃダメだからね」


「はーい」


が、時既に遅し。衛兵が来てしまった。


「こい、盗人が」


「だから違うんだってば。これはボッケーノのダンジョンで取ってきた宝石で」


と言うにも関わらず連れて行かれてしまった。


詰所で冒険者証を確認される。


「隊長、犯罪歴はありませんっ」


「初めて捕まったのかお前。随分と荒稼ぎしてたようだが年貢の納め時ってやつだな」


「だから違うってば。ボッケーノのダンジョンで取ってきたやつなんだよ」


「嘘を付くなっ。冒険者ならあんな見事な宝石を採掘したら真っ先に売るに決まってるだろう。どうせ足が付かないと思ってアネモスで売るつもりだったのだろう?」


ボッケーノでもそうだったが、こっちの世界は人を犯罪者と決めつけて怒鳴るよな。捕まってる人でもかなり冤罪が多いんじゃなかろうか?


「あのさぁ、これ冤罪だったらどうするつもり?」


「エンザイ?」


「無実なのに犯罪者として扱われることだよ。濡れ衣とも言うけどね」


「貴族でもないお前のような若造がこんな高価な宝石を持っているのがおかしいのだ」


確かに俺もそう思うけどさ。だからって酷くない?


「隊長、こいつの持っていた剣はどうされますか」


詰所に入る前に剣も取り上げられたのだ。ぬーちゃんには大人しくしろと言ってあるので首に巻き付いている。


「言っておくけどその剣は特別だから抜いて確かめようとかしないほうがいいと思うよ」


「何をふざけた事を。抜いて確認してみろ」


「知らないからね。俺もどうなるか見たことがないから」


忠告しているにも関わらず剣を抜いた衛兵。


「ぐっ・・・・」


ドサッ


血の気が引いたような顔をして倒れた衛兵。力がない人が抜いたらこんな風になるんだな。


「貴様っ、剣に毒を仕込んでおいたな。なんという卑劣な奴だ。牢に入れろっ」



人生初めての牢屋だ。このままでは本当に罪人として処分されそうだな。


「セイー、あいつら殺そうか?」


「ダメだよ。そんな事をしたら大事になるしウェンディが余計に恨まれたりするだろ?パーティ名もバレてんだから」


仕方がない。助けを求めるか。


セイは式神をギルマスの所に飛ばせた。

サカキ達に飛ばしたらもっと大事になるからという判断だった。



「あれ?なんか飛んで来た・・・。あっ、これセイさんの不思議なやつだ。ギルマスーギルマスーっ!」


受付嬢のリタはギルマスを呼びに行くが式神は先にスルリとギルマスの部屋に入った。


「ごめん、誤解で衛兵に牢に入れられた。中央の衛兵の詰め所にいるから助けてくんないかな」


式神はセイの声でギルマスにそう伝えた。


「何をやったんだあの馬鹿は?」


40秒で支度したギルマス。


「リタ、俺は中央の詰め所に行ってくる」


ギルマスは馬を飛ばして中央の詰所へと向かった。




「おいジジィ、セイの野郎は人に作業を押し付けてどこに行きやがったんだ?」


「街に用事があると言っておったからな。すぐに戻ってくるじゃろ」


「ちっ、いい気なもんだぜ。ウガーーー!ッ」


(そうか、セイの野郎、俺様のネックレスを作りに行きやがったんだな。早速行くとはかわいー所があるじゃねーか)


サカキの土木作業を見ていたヘスティアはピンときて上機嫌だった。




「おい、貴様。腰に付けているそれも渡せ」


「これはダメだよ。下手に触ると街に厄災が降りかかるから」


「そこにも毒を仕込んでやがるのか?」


牢の柵越しに話し掛けてくる衛兵隊長。


「毒より恐ろしいよ。あまり俺に酷い事をしたらまずいからそっとしておいて。そのうち誤解が晴れたらそれでいいから」


「誤解だと?そんな物は無い。お前は罪人として裁かれ、あの宝石は証拠品として没収されて終わりだ。盗賊どころか衛兵殺人未遂の罪は重いぞ」


「剣に触んなと忠告しただろ?言うことを聞かずに剣を抜くように指示したお前のせいだ。このひょうたんもそうだ。俺から取り上げるな」


そうセイは凄んだ。無理矢理ひょうたんを取り上げられそうになったら抵抗するしかないからな。恐らくこのやり取りも状況も妖怪の里には筒抜けだ。さっきから中の妖怪達の怒りが伝わってきている。


セイに凄まれた衛兵は威圧を感じてクッと唸って後ずさりをする。


「貴様っ・・・」


「やめとけ。俺は誤解が解けるまで大人しくしててやるから」



「隊長っ!冒険者ギルドのギルドマスターがそいつを出せと言って来ました」


「なにっ?」


バタバタと走っていく衛兵隊長。そしてギルマスとの怒鳴り合いが聞こえてきた。世話掛けて悪いねギルマス。



ドンガラガッシャーーーン


ギルマス、怒鳴り合いまではいいけど暴れたら捕まるぞ?


と思ったら案の定連行されて来たギルマス。流石に剣は抜いてないみたいだけど衛兵隊長の顔を見るとぶん殴ったんだろうな。


牢の扉が開けられギルマスが放り込まれた。


「ギルマス、助けに来てくれたのに衛兵ぶん殴っちゃダメだよ」


「ムカつくんだよあいらっ。お前が皆を引き連れて暴れたらどうなると思ってんだっ」


人を厄災みたいに言わないで欲しい。


「ギルマスが捕まっちゃったらもう頼れる人がいないんだよね」


「頼むから暴れてくれるなよ」


「俺はね。ただこれ以上俺に酷いことされたらみんな出て来て暴れると思うんだよね。それ結構まずいんだよ。全員が一気に暴れたら俺も抑えきれないかもしれない」


「お、抑え切れなくなったらどうなるんだ?」


「国が滅ぶというか、みんな死ぬかも。ぬーちゃん一人でも出来るから」


「おいっ!衛兵っ、ここから出せ。本当にまずいんだよっ」


なんて嘘だけど。みんなちゃんと言うことを聞いてくれるやつばっかりだから抑えきれないなんてことはない。が、ここの世界の人間を敵と認識されるのはまずいのだ。


「ギルマス」


「なっ、なんだ。みんな暴れだしそうなのかっ」


「いや、ここから出ようと思えば出られるけど、出たらなんとかしてくれる?逃げたりはしないから」


「何をするつもりなんだ?」


「ほら、この世界って罪人だと決めつけたらそうなるみたいだろ?なら皆が俺の事を手がつけられないぐらいの怖い存在だと認識してもらったら手出ししなくなるんじゃないかと思って」


「やめてくれっ。そんな事をしたらお前の討伐依頼が国から出されるだろうが」


そんな事になるのか。アイアン達とかと戦いたくないな。




(クックックッ。これを没収出来るかと思うと笑いが止まらん)


「おい、あいつを絶対に罪人として処理しろ。いいなっ」


「ハッ」


衛兵隊長はセイの持っていた宝石に目がくらんでいた。そして他の衛兵達は大物盗賊を捕まえた担当として出世出来ると気合をいれていた。




「おい、ジジィ。セイはいつ帰ってきやがんだ。もう日が暮れるだろうが」


いつまで経っても帰って来ないセイにイライラが募るサカキ。


「そうじゃな。遅いのぅ」


「よぉ、俺様が見て来てやろうか?」


「どこにいるのか解んのかよ?」


「神様舐めんな。当たり前だ。ちょっと待ってろ」


ヘスティアはフッと消えてセイの元に飛んだ。



「よぅ、こんな所でなに油を売ってやがるんだ?サカキがイライラして爆発しそうだぞ。早く戻ってこいよ」


「わっ、ヘスティア。よくここがわかったな」


「当たり前だろ?神様舐めんな」


「いや、誤解で捕まって牢屋に入れられててさぁ」


「なんだよ、こんなもん壊しゃいいじゃねーか」


ゴウッ


一瞬で鉄の柵を溶かしたヘスティア。


「セ、セイいま何が起こってる?仲間が暴れだしたのかっ」


「違うよ。俺が帰って来るのが遅いからヘスティアが迎えに来たんだよ。いきなり柵を壊しやがったんだ」


「セイ、あの俺様が手伝って作った剣はどうした?それにそいつは誰だ?」


今、ギルマスのことが目に入ったヘスティア。


「剣は衛兵に取り上げられたよ。この人はアネモスの冒険者ギルドの責任者。俺を助けにきて捕まったんだよ」


「お前を助けに来たのか。ならこいつは勘弁してやろう」


勘弁してやる?


「ほら、行くぞ」


「ちょっとちょっと」


ヘスティアはセイの手を握って牢屋から引っ張り出していく。ギルマスは明らかになにかに引っられるセイを見て本当に火の神様がここにいるのだと理解した。


衛兵達がいるところにいくヘスティア。


「こいつらがお前を閉じ込めたのか?」


「貴様らっ。どうやって牢から出た」


殺気立つ衛兵は剣を抜いた。


「やめろっ。こいつに手を出したら神罰が下るぞっ」


付いてきたギルマスが叫ぶ。


「何を分けのわからんことをっ」


と剣を抜いた衛兵がボッと燃えた。


「ギャァァァっ」


「ヘスティアっ、何やってんだよっ。神が人を殺すなっ」


「殺しちゃいねーよ。もう火は消えてるだろうが」


確かにサッと表面を炙られたようになってるだけだ。セイはこんな時にヘスティアって寿司炙らせたら上手いんじゃなかろうかと変な感心をしていた。


次に剣を抜いた衛兵をギルマスが殴り飛ばして剣を奪い対峙するように構えた。


「いいか、お前らよく聞け。セイは神の使者だ。こいつに手を出すやつはみな神罰が下る。神罰どころかこいつの怒りに触れたら国が滅ぶ。今ならなかった事にしてくれるように俺が頼んでやる。だから引け」


使者ってなんだよ?


「何を訳のわからんことを言っておるのだ。冒険者ギルドの責任者ごときが衛兵隊長の私に逆らうかっ。そいつは罪人にするのだっ」


罪人にする?聞き捨てのならないことを言った衛兵隊長。


「セイ、せっかく俺様が力を貸して作った剣はちゃんと持っとけよ」


とヘスティアがメリウスの剣をポイと投げる。


それより俺を罪人にするとはどういうことだろう?


ふと衛兵隊長のポッケから宝石を入れていた袋が見えた。


あー、この人は宝石に目がくらんだのか。没収とか言ってたからポッケナイナイするつもりだったんだな。素直に頂戴といえば一つくらいあげたのに。


「セイ、こいつら焼き尽くしてやろうか?」


「神様が人を焼き尽くすとか言うなよ」


セイがそう言ったらギルマスがビクッとした。


「セイ、ここは俺がなんとかするから神を鎮めてくれっ。頼むっ」


いや、ヘスティアも本気で言ったわけじゃないから。本気ならもう燃えてる。


「衛兵さんたち、剣を下ろして。今回は誤解だし衛兵さんたちには罪はないから。でも隊長はバチを受けないとダメだね。ダメだよ衛兵隊長が宝石を盗んじゃ」


「何を言うのだっ。私は盗みなどっ」


「じゃあなんでポッケに宝石入ってんのさ?」


「これは証拠品として押収したまでだっ」


「衛兵さん、この国では証拠品を隊長がポッケに入れて管理するの?」


「た、隊長・・・」


「何をやっとるかっ。はやく罪人を捕まえろっ。出世に響いてもいいのかっ」


「なんだそういうことかよ。なぁ、セイ。あの袋の中に俺様にくれるつもりだった宝石も入ってんのか?」


「抜かれてなければね」


「じゃ、あいつは神への捧げ物を盗んだということだな」


捧げ物って。プレゼントと言って欲しい。


「セイ、今神様と何を話している?物凄く熱いんだが」


「あの宝石の中からヘスティアにネックレスを作ってあげる約束してたんだよ。それを隊長が横取りしたからたいそうお怒りでね」


「こいつを俺が切れば神の怒りは収まりそうか?」


「神様って短気なんだよね。もう無理じゃない?ギルマスが切るまでも無いよ」


もうヘスティアは笑顔で燃え盛ってるからな。怒ったときに笑顔になるのは本気で怒ってる証拠だ。しかし、力いっぱいやられたら巻き添えを食らう。いまワイバーンの防具着てないし。


「死ねっ・・・」


ふぅ~


「ウッヒャァァァァ」


セイはウェンディにやられるようにヘスティアの耳に息を吹きかけたのであった。





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