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ヘスティアが見たセイという人間

翌日はオーガ島にお肉の配達。


「ヒョウエ、肉持ってきたぞー」


「お、悪いな。でももう大丈夫だぞ」


「ラームもゴブリン齧るようになったのか?」


「違う。出る魔物にオークが混じり出したからな」


もうオークが出始めたのか。随分と早いな。


「まぁ、せっかくだから貰ってくれよ。角有りと黒豚だから旨いぞ」


「そうか、ならありがたく貰っておく。それとマーメイ達が毎日のように来てお前が来るのを待ってるぞ」


「そうなの?今もいる?」


「もうすぐ来ると思うぞ。前に海藻頼んでたろ?それ持って来てくれたから一応干してあるぞ」


「助かるよ」


サカキ達は飛び出て来て鬼殺しをご馳走になるようだ。朝から宴会だなこれ。


入江に行くと海藻が干してあった。随分とたくさんあるな。


「よぉっ。あいつら何なんだ?」


「ヒョウエ達のこと?あれは鬼だ。元々俺がいた世界からはるか昔にここに祖先が来たらしい。なぜ来たかはわからんけど」


ヘスティアは鬼を初めて見たようだ。


「人か?」


「いや、妖怪の類いなのかな?鬼は鬼なんだよね。ちなみにサカキも鬼の一種だ。サカキがドラゴンとするとあの鬼達はワイバーンみたいな感じだと思う」


「なるほど。よくわかったぜ。でもあいつらも強ぇだろ?」


「鬼は強いよ。見た目は怖いけど結構律儀で優しいしね。サカキ達と宴会するはずだから一緒に飲んで来れば?」


「いや、あいつら俺様の事が見えてねぇみたいだから遠慮しとくわ。セイはなにするんだ?」


「人魚が海藻持って来てくれたみたいでね、毎日来るみたいだから待ってようかと思って」


「人魚か。お前、色々なやつらと知り合いなんだな」


「ここに来てから知り合い増えたよ」


「元の世界ではいなかったのか?」


「まぁ、そうだね・・・」


ピシャっ


「わっ」


ヘスティアと話しをしているといきなり顔に水を掛けられた。


「やっと来たわけ?」


「よう、あんなにたくさん海藻ありがとうな」


「ふんっ、別にいいわけ」


「ワカメはたくさんあったけど昆布がこの時期少なくてかなり遠くまでお姉ちゃん採りにいったんだよ」


「マーリンは余計な事を言わなくていいのっ」


そうだったのか。


「マーメイ」


「何よ?」


「後ろ向いて髪の毛を上げてくれる?」


「すっ、すけべな事を考えてるわけ?」


誰がだ。


「いいから早くしろよ」


マーメイは両手で髪の毛を上にあげて後ろを向いたのでネックレスを付けた。チェーンがパクパクしているエラに引っ掛かったりしないだろうか?


「な、何なのよこれっ」


「お土産だよ。この前助けてくれたお礼と海藻のお礼を兼ねて」


ネックレスを付けて貰ったマーメイはカーーーっと顔が赤くなる。


「なっ、なんか特別な意味があるわけ・・・」


マーメイがなんか言いかけた時にセイはマーリンにも同じ物を付けていた。


「わーっ、ありがとうお義兄ちゃん」


喜んでくれるのはいいけど、お義兄ちゃん呼びはやめてほしい。


ワナワナと震えるマーメイ。


「あんたっ これに愛はあるんかっ」


「無いよ。お土産って言ったじゃん」


そう答えるとマーメイは尾ビレでセイのほっぺたをビッタンビッタンしたのであった。


二人の胸元には白に虹が掛かったようなお揃いのネックレス。


「他の人魚達には無くて申し訳ないけど」


「大丈夫よ。他の娘達は人の言葉も理解できないし」


とマーリンが言う。


「人魚によっても違うの?」


「みんなまだ若いから」


マーメイ達はいくつなんだろうか?でも歳の事は聞かないでおこう。人とはことわりが異なるのだ。


「ちょっと、これいつ食べさせてくれるわけ?」


と海藻を指さすマーメイ。


「んー、そうだ。近々みんなでバーベキューやるんだけど来る?」


「バーベキュー?ここでやるわけ?」


「いや、うちの屋敷の前の砂浜でやる予定。人魚ってどこまで陸地に上がれる?」


「そんなに長い時間でなければ大丈夫よ」


「そうか。岩場とかあったほうがいい?」


「そっちの方がいいかな。場所はどこ?」


大体の地図を説明する。もしかして迷うとダメなので海坊主に案内させるか。


と、海坊主を呼ぶ。


「お前、里にいるのとここの海にいるのとどっちがいい?」


と聞くと海を腕でさした。


「なら、この人魚達をうちの屋敷まで案内してくれ。そしてそのまま海にいていいぞ」


「ねー、こいつ誰なわけ?」


「海坊主。海に住む妖怪だよ。結構強いから魔物がいても大丈夫だと思うからこいつに案内してもらうよ」


「へー、強いわけ?なら魔魚倒せるわけ?」


「魔魚ってなんだ?」


「魚の魔物。小さいのならいいけどでっかいのもいるわけ。危なくてしょうがないわけ」


「そんなのがいるんだ」


「お義兄ちゃん、マーメイの言う通りもっと沖にしかいなかった大きな魔魚とかがこのへんにも増えてるの。なんとかならないかな?」


海の魔物か。俺達には無理だな。


「海坊主、お前倒せそうか?」


海坊主は何かを言っているようだがまったくわからない。


???となってるとマーリンが


「元の大きさに戻ってもいいなら大丈夫だって」


「海坊主の言葉分かるの?」


「分かるよ」


それは僥倖。


「戻ってもいいけど、絶対に船を沈めちゃダメだぞ。それを約束出来るなら許可する」


「わかっただって。それと力を欲しいって」


セイは海坊主に妖力を注いでいく。


「海坊主、いいか。お前の役目は人魚を守る事だ。俺の代わりに皆を守ってやってくれ」


コクコク。


「あと、魚とかカニが欲しいときに取って来てくれるか?」


コクコク。


「こいつがあんたの代わりなわけ?」


「俺達は海の中では無力だからな。元に戻った海坊主は強いから頼ってくれていいぞ」


「ふんっ」


「その代わりと言っちゃなんだけど人間からは守ってやれる」


「どういうこと?」


「バーベキューの時に他の人間も呼んであるから紹介するよ。顔見知りになった人魚を狩ろうとはしないだろ?」


「そんなことわかんないわけっ。その時に人間が襲ってきたらどうするわけっ」


「俺がそんな事をさせるわけないだろ。もし仮にお前らを襲うような人間がいたら誰であろうと俺が許さんよ」


「そ、それならいいわけ。バーベキューの日が決まったら教えてよねっ」


ぴしゃっ


そう言い残してセイに水をかけたあとマーメイは去って行った。


「海坊主、頼んだぞ」


コクコク。


海坊主とマーリン達はマーメイの後を追うように海の中へ消えて行った。



「お前、あの人魚の事をどう思ってんだ?」


「ん?マーメイは俺を助けてくれた恩人かな」


「なんだよそれ。あの人魚も可哀想に」


とヘスティアが言うけど何が可哀想なのかわからないセイであった。


「そういやよ、ウェンディもネックレス付けてたよな?あれもお前がやったのか?」


「そうだよ」


「なら俺にもくれよ」


「あれ、ボッケーノのダンジョンから出たやつだぞ。ヘスティアならいくらでも手に入るんじゃないのか?」


「いいからくれよ」


まぁ、サカキがカツアゲした宝石がたくさんあるからいいけど。


「街で加工してもらわないとダメだからしばらく待ってくれ。欲しい色はあるか?」


「お前に任せるよ」


ヘスティアには何色が似合うかな?夜にでもどんな宝石があるか確認してみるか。


砂婆を呼んでワカメと昆布を渡すと喜んでくれた。何か料理に使ってくれるだろう。ワカメとキュウリの酢の物はいらないからねと言っておいた。


ヒョウエ達の所に戻るとウェンディがひっくり返っていた。こいつには記憶という回路はないのだろうか?


試しにヘスティアに鬼殺しを飲ませてみたらまた脱ごうとするのでぬーちゃんに軽く噛ませて気絶してもらった。


朝から始まった宴会は夜まで続き、オーガ島で一泊して屋敷に戻ることに。



今日は山と山の間の川を堰き止めなければいけない。先に冒険者ギルドに寄ってバーベキューの日取りを決めてから向かった。


「ここを崩せば川を堰き止める事が出来るじゃろ」


「溜まった水はどうなる?」


「そうじゃな。水の逃げ道がないとすぐに溢れて堰き止める意味がなくなるの。池になるような所を作って貯めるしかあるまい」


これはかなりの工事になりそうだな。


クラマが地形を確認して、こことここに池になるように掘れと指示する。地形を利用するとはいえ大変だな・・・サカキが。



土木工事をさせられるサカキはめっちゃぶつくさいうので式神と下級妖怪達を総動員して工事を進めていく。川を堰き止めるのは最後だ。


「セイ、川を堰き止めるのは塗り壁にやりゃしゃいいんじやねーのか?」


「ずっとここで川を堰き止めさせてるなんて可哀想だろ?」


「あいつは里でもすることが無くてずっとぼーっとしてやんがんだ。ここでぼーっとしてても同じじゃねーか」


愚痴が止まらないサカキ。


「後で大量に酒を買ってやるからブツブツ言うなよ」


「鬼殺しもドワーフの酒もあるんだ。弱ぇ酒なんて買っていらねーよっ」


「もうっ、そんなにブツブツいうなら元の姿に戻ってさっさと終わらせろ」


セイはサカキに妖力をぶち込む。大男のふてくされた態度はムカつくのだ。


んがーーっと叫んでストレスを発散させるがの如く土木作業員をやるサカキ。下級妖怪達が震えあがってしまったのでひょうたんへ帰した。


「おい、あいつなんなんだ?」


俺達の様子を見ていたヘスティア。サカキが悪鬼に戻った姿を見て驚く。


「あれが本来の酒呑童子サカキだよ。厄災だね」


「サラマンダーの時になぜあれに戻らなかったんだ?一撃でやれただろ」


「あれに戻ると力がありすぎて危ないんだよ。だから勝手に元の姿にはならないと約束したんだけどね。ここならやりすぎても問題ないからしょうがないよ」


「他の奴らも本来の姿ってのはあるのか?」


「あるよ。ぬーちゃんもデカいし、クラマのじっちゃんも本来はもっとデカい。下手したら小さな山なら吹き飛ばせるんじゃないかな。ぬーちゃんも本気で厄災撒いたらこの国の王都とか一日で滅ぼせるよ」


「お前らまるで神じゃねーかよ」


「そうだよ。皆神と同等クラスの力を持っているんだ。それを悪さに使ったから封印されてたんだよ。クラマは違うけどね」


「お前の本来の姿はどんなのだ?」


「俺はこのままだよ。人間だからね」


「嘘つけっ。あんなヤツらを従えてんじゃねーかっ」


「従えてなんかないよ」


「は?お前の命令に従ってるじゃねーかよ」


「命令なんてしてないよ。お願いと約束しかしてないからね」


「お願いと約束?」


「そうだ。あいつらは従者じゃない。家族なんだよ」


「家族・・・?」


「そう。俺にとってはね」


「ウェンディはどうなんだ?家族か?」


「あいつは主人のふりをした従者だ」


「うははははっ。酷ぇなお前」


「まぁ、世話の焼ける従者だよ」


ぬーちゃんにこのキノコ食べれる?とか遊んでいるウェンディを見てそう言ったセイなのであった。




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