神の加護とは何かを説明する
「火山の噴火は数年前にあったが大噴火ってわけじゃない。およそ300年周期ぐらいで大きな噴火がおきているらしい」
どこが100年おきだ。ヘスティアの感覚はどうなってんだ?
「前の大噴火からはどれぐらい経ってるの?」
「200年とちょっとだ」
なるほど。それで強い魔物の発生が高くなってるのか。
「大噴火したら大きな被害が出るんだよね?」
「文献によると前の前の大噴火は人がほとんどいなくなるぐらいの噴火だったらしい」
「なんでそんな所に皆住んでんの?」
「ここは野菜とかよく育つし水も出る。それに鉱石が豊富に取れるからな。自然と人が集まってくるんだろ」
まぁ、大噴火の後は魔物もほとんど出なくなるだろうし狙い目っちゃあ狙い目なのかもしれん。
「大噴火の前は地震とかある?」
「あぁ、大地の神の怒りと書いてあるのがそうだろう。噴火を抑える火の神様の力より大地の神様の力の方が上なのかもしれん」
「それ間違った解釈だと思うよ。火山の大噴火はヘスティアがやってるんだ。地震は大地の神の怒りではなくて、噴火するよって合図だね」
「何?」
「神様の加護ってね、魔物を弱体化させるものなんだよ。まだ推測になるけど魔物は魔物を生む空気から発生する。その場所が育つと弱い魔物から段々と強い魔物に入れ替わっていくんだ」
「本当かそれは?」
「どれぐらい時間が経ったら違う魔物が生まれるかわからないけど、オーガが大量にいたところを浄化したらオーガが出なくなってコブリンが生まれるようになった場所があるからだいたい今の話はあってると思う」
「お前がここに来たのはそれを調べてんのか?」
「それが目的じゃないけどね。調べてはいるよ」
「神の加護はどうやったらもらえるんだ?」
「ここは火の神様ヘスティアが見ている国でしょ?加護は大噴火なんだ。ただ大噴火を起こすと人が大勢死ぬから300年周期とかでしかやってないと思う。人々が倒せない魔物が出だしたら噴火させるって言ってたから」
「言ってた?」
「ヘスティアからお告げを貰ったみたいなものかな」
「いつだっ」
「この前。火の教会の孤児院に肉を寄付して子供達と遊んでた時にね」
「そんな事をすればお告げがもらえるのかよ・・・」
「神の声は聞き取りにくいから聞こえないかも。でもちゃんとお祈りしてれば何かいいことあるかもしれないよ。あと、バチなんて当ててないと言ってたから火の事故は気を付けていれば大丈夫だと思う」
「やっぱお前はすげぇな」
「俺達は風の神の加護を受けているからね。だからお膝元のアネモスに帰らないとダメなんだよ」
「そうか。しかし、ワイバーンの巣の調査は受けてくれるか?」
「わかった。今いるワイバーンの討伐だけなら俺達で行ってくるし、巣をどうするか決めるならギルマスも来てよ」
「わかった。俺も行こう」
ギルマスは鎧に着替えてきたのでセイもワイバーンの防具に着替える。
「なんだその服は?」
「ビビデの弟、バビデに作って貰ったワイバーンの防具。軽くていいよこれ。鎧ほど衝撃は吸収出来ないと言われたけど、剣でも切れないし耐炎性にも優れてるんだ」
「ワイバーンってそんなに黒くないだろうが」
「特別加工してくれたみたい。さ、行こうか」
もうぬーちゃんが飛べる事がバレてもいいか。明日帰るし。
ぬーちゃんに股がり、後ろにギルマスを乗せる。しっぽは触らないでねと注意してから出発。
「ぬおっ」
空を駆けると驚くギルマス。ぬーちゃんは遠慮なく空を駆けて行き、ワイバーンの巣に到着。
「セイ、封印するのかの?」
「どうするかはギルマスに決めてもらうよ。個人的には封印するともったいないと思うけど」
「うわっ、どっから来たんだじーさん」
「貴様、ぐだぐだ言っておる間に来ておるぞ」
巣からワイバーンの気配を察知したクラマ。顔を出したワイバーンの首をすっぱり落とした。
「なっ、なっ、なっ、なっ」
「中に入るんじゃろ?鵺よ、今日は毒は無しじゃぞ」
「わかってるー」
「うわっ、しゃべった」
いちいちリアクションが面白いギルマス。
「皮は後で拾おうか。先に調査だね」
ぬーちゃんから降りて歩いて中に入っていく。この穴はかなり広い。溶岩が固まって出来だのだろうか?壁や天井が物凄く黒くてゴツゴツしているけど尖ってはいない。
時おりキシャーーとワイバーンの鳴き声がするのでぬーちゃんが先行して噛み殺しに行ってくれた。
「こっちじゃの」
迷路みたいになった洞窟をクラマはスタスタと歩いていく。道を知っているわけではなく嫌な空気が濃い方向へと進んでいるのだ。
「あの奥じゃろうの」
そうクラマが指を指した所がワイバーンが生まれてくる場所らしい。
「ギルマスどうする?浄化する?浄化したらなんの魔物が出てくるかわからないけどワイバーンより弱いのが出てくるようになるはず」
「ワイバーンがいなくなるのか?」
「この穴からはね。他にもあるだろうから全く出なくなるわけじゃないと思うけど。ワイバーンの皮って重要な資源なんじゃないの?」
「そうだ」
「ワイバーンを簡単に倒せる冒険者を育ててここで専属ハンターとかにすれば?」
「あんな簡単にワイバーンを倒せる奴がいるかっ」
「飛ぶと厄介だけど穴の中なら倒せるでしょ。ワイバーンの防具を身に着けてたら毒のしっぽも刺さらないだろうし」
「しかしよぉ・・・」
とギルマスと話をしていたらワイバーンが奥の部屋から出てきた。
「セイ、その剣の試し斬りしてみよ」
「そうだね」
「よっと」
剣を抜いて軽く振るとドガンっと衝撃波が出てワイバーンの頭が吹き飛んだ。
「こらっ、洞窟の中でそんな攻撃をして崩れたらどうするんじゃっ」
「ご、ごめん。妖力を込めてく振っただけなんだよ」
「次からは妖力無しにせいっ」
この剣ヤッバ。神通丸と同じような感じで振ったらあんな攻撃になるとは思って無かった。
「な、なんだ今のはっ?」
ビビるギルマス。
「この剣凄いね。さすがビビデ渾身の剣だよ」
ギルマスは浄化を軽くするだけに出来るかと聞いてきたのでクラマは力を抑えて洞窟内を浄化したのであった。
「どれぐらい持つかわからないよ」
「いや、確かに飛べない場所でのワイバーン討伐は理にかなっている。ワイバーンの防具を着せた討伐組を結成した方がいいな。それとここにギルドの出張所を作ることにする」
「そう。なら後は宜しくね」
帰り際に落ちていた皮を拾い集めて帰ろうとするとダンジョンに寄ってくれと言われた。俺達を拒否したのを確かめたいらしい。
「あ、閉じてる」
「なんてこった・・・本当の話だったのかよ」
ダンジョンは俺たちが来たのがわかったのか入り口を閉じてしまった。
「よし、こいつを殴ったら何を出すか楽しみだな」
サカキがぐるぐると腕を回しながら出てきた。
「うわっ」
どひゃーとひっくり返るギルマス。いい反応だ。リアクション芸人になれるかもしれないぞ。
「やめとけ。中に人が居るんだぞ。なんかあったらどうするんだよ?」
「だってよぉ、前の所は金塊を出しやがっただろ?ここは何を出しやがるか試してぇじゃねぇか」
サカキがそう言うとダンジョンの入り口がフルフルと震えてジャラジャラっと宝石を出して来た。
「カッカッカッカッ。ここは宝石を出して来やがったぜ。しょうがねぇ、勘弁してやらぁ」
なんとなくホッとしたような感じのダンジョン。
ぬーちゃんが宝石をぽいぽいとひょうたんの中へ。
「ギルマス、宝石いる?」
フルフルと首を振るギルマス。
「今何をやったんだ?」
「カツアゲ」
は?
「さ、用件は済んだし帰ろうか」
ポカンとするギルマスをぬーちゃんに乗せてギルドに帰ったのであった。
今回のワイバーンの皮の報酬と巣の調査の報酬は孤児院の寄付依頼に回してもらった。宝石の事は黙ってろとギルマスに言われたのでそのままだ。あれだけあると値崩れしてまずいからとのこと。別にもういらないけどなんかの時に使えるかもしれないから取っておこうか。
「世話になった。ワイバーンの巣の件は俺が責任を持って進めておく」
「はい、よろしくね」
これでボッケーノの仕事は完了だ。明日には出発だな。
ーセイ達が出掛けた後の宿屋ー
「やっと起きたのかい?寝坊すけだねまったく」
「何それ?」
ウェンディはタマモの首に掛けられた赤い宝石のネックレスを見てそう聞いた。
「これかい?これはセイがあたしにプレゼントしてくれたんだよ。綺麗だろ?」
「わ、私には宝石取れなかったって嘘付いたのねーーっ」
「おや、そうだったのかい?砂婆とユキメも貰ってたんだけどねぇ」
「キィィーーーーッ。私が一番始めに欲しいって言ったのにぃーーっ」
タマモはくすくすと笑ってキーキー怒るウェンディを見ていた。
自分の首に掛かってるネックレスにはいつ気付くんだろうね。まったく鈍い娘だよ。