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ヘスティアも同類

「ヘスティア、お前飯食うか?」


「人間どもが食ってるやつか?」


「そう。お前らって天の実だっけ?それしか食ってないんだろ?」


「時々な。別になんか食う必要ねぇから滅多に食わないけどな」


「ならどこかで晩メシを食うか。食堂とかだとヤバいから外だな」


夜を待ち、ぬーちゃんに出て来てもらって誰も居ない草原にいく。


「砂婆、なんか作って。とんかつとかがいいな」


「これが火の神様かね?随分とハイカラな神様じゃな」


サカキやクラマ達も出てきて一緒に宴会。


「お前ら全員俺様の事が見えるんだな。一体何者なんだお前らは?」


「人間は俺だけ。他の皆は妖怪って存在だ。俺がいた世界では神様と似たような存在かもしれん。人に敬われるか恐れられるかの違いでしかないと俺は思ってるよ」


「お前、異世界人なのか?」


「そう呼ばれているみたいだね。ウェンディに無理矢理連れて来られたんだ」


「無理矢理って何よ。あんた同意したじゃない」


「あんなの同意とは言わんぞ」


「同意よ。助けてくれるって聞いたら、はいって返事したじゃないっ」


確かにそうだが異世界に連れて来られるとは聞いてない。まぁ、今更の話だ。


「そうか、異世界人か。時たまそういう奴がいるんだよな」


「他の人はどうやってここに来たんだろうね?」


「知らねぇよ。サラマンダーから鉱石持っていったやつもそうだったんだよな。俺様の国で魔物倒すのかと思ってたのによ」


「そいつはどこかへ行ったのか?」


「知らねぇ。さっさとどこかへ行きやがったからな」


神様でもなんでも知ってるわけじゃないんだな。


「ほれ、トンカツと豚バラ串にしてやったぞ。セイ、それと茶碗蒸しじゃ」


「おっ、やったね」


「干し椎茸と川海老、銀杏、鶏肉入りじゃ」


サカキとクラマはいそいそと豚バラ串を焼き始める。ネギを間に挟んだネギマだ。ネギマとは本来はネギマグロらしいけど。


ウェンディはトンカツをガツガツと食いだした。お前揚げ物好きだよな。


「これはなんだ?」


ヘスティアは始めてのようだ。


「ウェンディが食べてるのはトンカツ。ブラックオークを油で揚げたものだ。茶碗蒸しは卵から出来てる」


そう説明すると茶碗蒸しをスプーンで口に放り込んだ。


「あっつぅ」


なぜ火の神様が猫舌なのだ?


「なんだよ?何かおかしいかよ?」


「別に。口に入れる前にフーフーしてから食べろ」


ヘスティアは言われた通りフーフーしてから食べた。


「おっ、なんだこりゃ!?」


フーフーしては口に運びガツガツと食いだしたヘスティア。次から次へと食べていく。それサカキ達の分だぞ?こういう所はウェンディとやっぱり同類だな。


「おっ、銀杏発見!」


茶碗蒸しはほじくり出す楽しみもあるから好きだ。


「おい、火のねーちゃん。これ飲むか?」


「なんだそれは?」


「火酒ってやつだ。串焼きに合うぞ」


サカキが豚バラ串と火酒を持ってきた。


「アチッ」


だからフーフーしろって。


学習したヘスティアは串焼きをフーフーして頬張り、火酒を煽った。


「ぐほっ。なんだこの飲み物はっ」


「ドワーフの秘酒ってやつだ。旨ぇだろ」


「なんか身体がほてるぞ」


「それがいいんじゃねーか。ほら、もっと飲め」


ぐびぐびと火酒を飲むヘスティア。


「あーはっはっはっ。なんだこれは楽しいぞっ」


サカキにどんどん注がれて飲むヘスティア。めちゃくちゃきつい酒だけど大丈夫か?


「熱くなってきやがったぜっ」


と炎をイメージしたブラを外そうとするヘスティア。


「やめろっ。こんなところで脱ぐなっ」


セイは慌てて脱ぎ出しそうなヘスティアを止める。


「なんだ?俺様を抱き締めたいのかよ?いいぞ」


ムギュゥ


「ちょっとーーっ。私の下僕に何してんのよっ」


「ひんぬーぇんでいには無理だろ。あーっはっはっ」


「なんですってぇぇぇ」


「バカ、やめろっ」


ブホォォォッ


「やりやがったなてめぇっ。落ちこぼれの癖にっ」


「キィーーーっ」


退散退散。



ヘスティアとウェンディの戦いに発展してしまったのでセイ達は慌ててその場を離れる。


現神と元神の二人の能力のぶつかり合いは炎の竜巻となり草原を焼き尽くした。


「すげぇな」


「本当に」


ぬーちゃんに飛び乗って離れて二人の戦いを見ていたセイとサカキは呆れていた。人里から離れてたのが幸いだ。


「セイよ、これはどう始末を付けるつもりじゃ?」


バッサバッサと隣で飛んでいるクラマがそう言うけどあんなのどうすることも出来ない。


ふと、何かが来た気がして見上げるとイフリートがいた。


「イフリートいいところに来た。二人を止めてくれ」


「申し訳ありませんセイ様。無理でございます」


なんて役に立たん奴だ。仕方がない。


「ぬーちゃん、毒撒いて」


「はーい」


二人がいる上空からぬーちゃんが痺れ毒を撒いてようやく二人は泡を吹いて気絶したのであった。


実はぬーちゃんが最強かもしれん。


アメフラシに出て来てもらって辺り一帯に雨を降らしてもらって鎮火する。


「あーあー、草原無くなっちゃったじゃないか」


「これから草は枯れるシーズンじゃから問題無しじゃろ。春になったらかえって新芽がよく吹くようになるわい」


そういうものなのか。それならいいけど。


「イフリート、お前何しに来たんだ?」


「ヘスティア様が顕現されたのを感じまして何事かと」


「気付くのが遅いぞ。昼間には顕現してたぞ」


「申し訳ありません。能力を使われるまでわからないものでして」


なるほど。


「ちなみに風の妖精、シルフィードの事は知ってる?」


「はい。存じておりますがどこにいるかまではわかりません。ウェンディ様が能力を使われたら現れるのではありませんか?」


「いや、ウェンディは何回もやらかしてるけど来ないんだよね。呼んでも来ないみたいだし」


「やはり神で無くなると・・・」


やめたれ。泡吹いて倒れているウェンディをそんな目で見てやるな。


「ヘスティア様は大丈夫でしょうか?」


「痺れ毒だからそのうち目を覚ますよ。連れて帰るか?」


とんでも無いと両手を前に出して断るイフリート。暇つぶしに日頃いじめられているのかもしれん。


「では、セイ様にお任せいたしますので」


そう言い残してスッと消えた。厄介払いされたようなもんだな。


「セイー、お肉まだあんまり食べてなーい」


「おう、俺も飲みたりねぇぜ」


「そうじゃな。いきなりあれじゃったからな」


ということで下に降りて飯を食べ直し。

砂婆はまったくしょうがない娘達だと文句を言いながら作り直してくれた。


先に目を覚ましたウェンディ。さすが耐性が出来てきただけの事はある。


「何で毒を撒くのよっ」


「お前らが暴れたからだろうがっ。周りの惨状を見て反省しろっ」


ペシっとチョップ。


「もうっ。ヘスティアが悪いんでしょっ」


「お前が張り合うからだ。大人しく食っとけ。ヘスティアも初めてだから少しはしゃぎ過ぎただけだ」


「もうっ!」


「ほら、角有りの焼肉だ。これでも食っとけ」


ガツガツガツガツ。


犬かお前は。


「う、うーん・・・」


「目が覚めたかヘスティア。もう脱ごうとするなよ?」


「誰がそんなことするかっ」


したんだよ。酔うのも早いけど覚めるのも早いな。


「サカキ、もう飲ませんなよ」


「あぁ。分かってるって」


といいながらヘスティアは勝手に飲んでいた。クラマがかなり薄めておいたようでさっきみたいなことにはならなかったけど、めっちゃご機嫌でクラマの背中をバンバン叩いていた。クラマの顔が真っ赤なのは酒のせいではないだろう。酔って暴れたら俺がぬーちゃんに言って毒を撒かせるのを理解したクラマはバンバン叩かれるのをそのまま耐えていた。


しばらくしてガーガーと寝だしたウェンディとヘスティア。ぬーちゃんにもたれてお互いに足の乗せ合いをしてやがる。


「もうこのままここで野宿だね」


宿屋も金だけ払っていつも帰って来ない俺達をどう思ってるのだろうか?


サカキとクラマは魔物の気配がないのでひょうたんに帰り、セイはウェンディ達と反対側に回ってぬーちゃんにもたれて寝たのであった。


ぐっ、身体が動かん・・・


金縛りにあったかのように動けずに目が覚めたセイ。


おいっ。


ウェンディとヘスティアがなぜ俺の上で寝ているのだ?俺はぬーちゃんじゃないぞ。


またもや身体がバッキバキになったセイ。二人をよっこいしょと避けて起き上がり、身体をほぐす。秋も深まり日が登る前の朝は結構冷え込んでいる。


「寒っ」


狐火を出して身体を暖める。今日は剣出来ているかな?そんな事を思いながらまだグースカと寝ている二人を見ていた。神も人もこうやって見るとあまり変わらんな。


日が登り始める頃、ぬーちゃんはしっぽでペシペシと二人を叩き起こしている。


サカキ達も出て来て、砂婆の朝飯を食べてからビビデの所に向かったのであった。



ビビデの工房に入ると干からびて屍と化している。


「大丈夫か?」


慌てて水を飲ませると酒をくれと言いやがった。


「寝ぼけんなよ。もう朝だぞ」


「そうか、朝か。そこに出来ておるから試してみてくれ」


フラフラと起き上がったビビデは鈍い光を放つ剣を指さした。


「ほぅ、これは見事な剣じゃな。これならいけるやもしれんな」


クラマがそう剣を見立てた。


「おい、これはメラウス鉱を使ったんだよな?」


そうヘスティアが聞いてくる。


「だと思うよ」


「なんか混ぜもんしたんじゃねーか?ちゃんと使えばこんな色にはならんぞ」


「ビビデ、これメラウス鉱になんか混ぜた?」


「バカモンっ。あんな貴重な鉱石に混ぜものなんぞするかっ」


「だって」


「はーん、混ぜもんしてねぇってなら、こりゃ熱量が足りなかったんだな。これだとメラウスの力を出し切れてねぇ」


「どういうこと?」


「技量云々の話じゃねぇ。単純に熱が足りないからこんな色になったんだ」


「セイ、貴様は誰と話しておる?」


「ビビデには見えてないと思うけど、ここにヘスティアがいるんだよ。ヘスティアが言うにはこの剣はメラウスの力を出し切れてないって。熱量が足りないらしいよ」


「ヘスティア?まさかここに神がいるのかっ」


「うん。暇だからって付いて来たんだよ」


あぐあぐするビビデ。しばらくフリーズしてからおずおずと話し出した。


「しかし、熱量と言われてもあれ以上はどうすることも出来んぞ」


「これはお前の剣になるのか?」


「そうだよ」


「なら大丈夫か。ちょいと力を貸してやる。そこのやつにこの剣を炉に入れろと伝えろ」


セイはヘスティアに言われたようにビビデに伝えるとビビデは半信半疑で炉に剣身を入れた。


「よっ」


ヘスティアが能力を使うと赤い炎が青白くなり、そして何も見えなくなるぐらい白く輝いた。顔が燃えるかと思うぐらい熱が飛んできた。


「おいっ」


セイ、ビビデ、ウェンディ、クラマの全員がチリ毛になってしまった。雷様勢ぞろいだ。


「もうっ」


ウェンディは自分を治癒し、続いてセイとビビデを元の髪に戻す。クラマは自分で修復し、自慢の黒羽を見回して問題がないか確認する。


「はっはっはっは。スマンスマン。ほら、その剣を見てみろ」


炉から取り出した剣身はこの世のすべての光を吸い込むかのように真っ黒というか空間に穴があいているのか?という黒になっていた。


「これが本来のメラウスの力だ。お前以外の奴が長く持つんじゃねーぞ」


「どういう意味?」


「こいつは力のねぇ奴が持つとそいつの力を奪う。逆にメラウスより力を持つやつには力を与える。つまり諸刃の剣ってやつだ。さっきまでの色ならそんな事は無いけどな」


「俺は大丈夫なのか?」


「持ってみろよ。そうすりゃわかる」


言われた通りに黒い剣を持つと妙にしっくりくる。


「しっくり来るというか、身体の一部みたいな感じがする」


「だろ?お前なら使えると思ったぜ。今なら俺様の事も切れるぞ」


「神すら殺せる剣って事?」


「そうだ。俺様を切ってみるか?」


「するわけないだろ」


「だと思ったぜ。せいぜい俺様の代わりに強ぇ魔物を倒してくれ。そうすりゃ噴火もさせずに済むからな」


「いや、俺達はもうアネモスに帰るんだけど」


「何っ?」


「ウェンディを神に戻さなきゃダメだからね」


「約束が違うぞっ」


何も約束なんてしてない。


「たまには孤児院に肉を持ってボッケーノには来るつもりだけど」


「返せーっ。その剣を返せーーっ」


ヘスティアもウェンディと中身が変わらんかもしれん。


駄々をこねるヘスティアを見てセイはそう思ったのであった。


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