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タッパの村

「セイ、お前は相変わらず相手が神だろうとなんだろうと態度が変わらんのぅ」


「神なんて元の世界にたくさんいたじゃん」


「それはそうじゃがの」


「ちゃんと神様らしく慈悲深く皆の幸せになるような事をしっかりやっていたら敬うよ」


セイにとっては妖怪も神もあまり差はない。祀られているか否かの違いぐらいしかないと思っている。


元いた世界では様々な物に神が宿っているから神が見えるセイにはとても身近な存在だったのだ。


帰りは順調そのものというか魔物が出ない。もうこのダンジョンは俺達に降参してしまったのだろう。


ぬーちゃんに一気に駆けて貰って一泊のみで済ませて外に出た。長居すると他の坑夫達に迷惑が掛かるのだ。


「やっと外だね。取り敢えずビビデの所に行こうか」


とお目当ての鉱石を届けに行くことに。


「随分と早いな。どうだった?」


「うん。取れたよ。これで足りる?」


と、ぬーちゃんにひょうたんからゴロゴロと出して貰う。


「こ、こんなに取れたのか」


「まぁね。あれなぜ出ないかわかったよ」


「何か条件があるのか?」


「サラマンダーって神獣がいるんだけどそいつといい勝負したら貰えるんだ。かなりの強敵だから端から勝負にならないような奴が来ても出てこないんだと思うよ」


「神獣を倒したのか?」


「いや、討伐寸前の所で止めたよ。だからこれは褒美の品みたい」


イフリートとヘスティアの事は伏せておいた。


渡したメラウス鉱石は必要分どころか何本剣が打てるかわからないぐらいあるらしい。鉱石代を払うと言ったビビデに剣代も払ってないんだからいらないと言っておいた。俺たちが持ってても仕方がないし。これで貸し借り無しだ。ダンジョンで結構な量の金をゲットしたからそれで十分。


「しかし、バビデの作った防具もかなり焼けておるの」


「助かったよ。この防具のおかけで無事だったんだ。これがなかったらやばかったね」


「サラマンダーの炎とはそれほどなのか。ファイアドラゴン並みかもしれんの」


「なにそれ?」


「火の塊みたいなドラゴンじゃ。出会ったら倒して素材を取っておいてくれ」


「ウチのパーティは火の特性を持った魔物と相性が悪いんだよね。もし出会ったら逃げるかも」


その後、バビデの所に行って皆で晩飯。つまみだけの飯は嫌なので砂婆に作ってもらった。


バビデは俺の防具をメンテナンスしてくれるらしい。一度の冒険でこんなになるとはまだまだ俺もダメだなと言っていたが大精霊の炎に耐えたのだからかなり凄いと思う。


サカキは鬼殺しとドワーフの火酒を交換して飲み、お互いに大盛りあがりですっかり意気投合していた。サカキの飲み相手に付き合える人など今まで鬼ぐらいしかいなかったのだ。


クラマはそこまで付いて行けずひょうたんに帰り、ぬーちゃんも寝てしまった。



「セイ」


「なんだ?」


「あ、ありがとう」


「何がだ?」


かーっと赤くなるウェンディ。


「うっさいわねっ」


なんだよそれ?


ウェンディはヘスティアやイフリートに自分の事で怒ってくれたことにお礼を言ったのであった。



翌朝、鉱石ギルドに金の鉱石を買い取りしてもらいにいく。


「はい、こちらはキロ当たり銅貨10枚ですので、銀貨5枚と銅貨2枚です」


「これ金じゃないの?」


「これは貧者の金ですよ」


「貧者の金?」


「はい、真鍮と呼ばれる物です。初心者の方がよく間違われるので慌てん坊の金とも言われます」


貧者の金とか慌てん坊の金とか酷い言われようだ。こんなに安いなら持って帰ってくる必要なかったな。


まぁ、銀貨もらえたしいいか。入山料が返ってきたと思っておこう。


「また宜しくお願いします」


俺達はもう無理なんだけど、はいと返事はしておいた。


今日はすることがないのでウェンディとプラプラ街を散策。甘いものが食べたいというのでカフェに入った。


「これとー、これとー、」


面倒だからここからここまでと言えばいいのに。結局甘い物を全部頼んだウェンディ。よく気持ち悪くならないものだ。


食べ終わったあと満足気なウェンディにその後服とか買わされた。神の服があるからいいんじゃないかと思うのだが欲しいものは欲しいのっと駄々をこねたのだ。


「おい、一度これを宿に置きに帰るぞ」


「ひょうたんにいれておけばいいじゃない」


「こんなの見たらユキメも欲しがるだろうが」


「ふーん、私には内緒にしておくつもりだったんだ」


いきなり出てきたユキメ。


もうバレてる・・・


「体調は落ち着いたのか?」


「もう大丈夫よ。外はだいぶマシだから。ねぇ、私にも服買ってよ」


「お前、今まで一度もそんなこと言わなかったじゃないか」


「欲しいものは欲しいのっ」


こいつ、ウェンディとのやり取りも全部聞いてやがったのか。


そしてユキメは大量の服を持ってウキウキとひょうたんへと帰っていった。


ウェンディは晩御飯まで寝るということなのでセイはもう一度街に出掛けた。行き先は宝石店だ。


「すいません、宝石持込なんですけどネックレスに加工ってしてもらえますか?」


「はい、承ります。どのような宝石ですか?」


じゃらっと宝石を7つ出す。


濃い青

透き通った水色

濃い赤

オレンジ

透明に金が混じったようなやつ

白に虹が掛ったようなやつが2つだ



「ブッ」


それを見て吹き出した店員。


「こ、これはどこで手に入れられたのですかっ?」


「ダンジョンだよ」


「こ、こんなに品質の良い宝石を取ってこられたのですか」


「宝石はこれだけなんだよ。どんなのがいいかわからないからお任せでいいかな?」


「ちなみに、ちなみにでございますよ。これはお売りになる気はございま・・・」


「無いよ。お土産だから」


そう答えるとガックリと肩を落とす店員。


「あの・・・」


「はい?」


「お名前を伺っても宜しいでしょうか」


「セイといいます。加工代は先?後?」


「の、後ほどで結構です」


「だいたいどれぐらいの金額になりそうかな?」


「物が物だけに見合う加工をさせて頂くと金貨7枚は必要でしょうね」


高いなぁ・・・。まぁでも仕方がないか。


「わかった。なるべく早めにお願い出来るかな?」


「かしこまりました。一週間で仕上げます」


ということで宝石はすべてネックレスにしたのであった。



今日の晩飯は宿屋で食べて翌日ビビデの所へ。


「どれぐらいの日数掛かる?」


「まだわからん。こいつの加工は難しいからな。すまんが集中させてくれんか」


これは時間掛かりそうだな。


「ぬーちゃん、肉を狩りに行こうか」


そう声を掛けると出てきたので暇つぶしに肉狩りにいく。


「ノーマルオークばっかりだね」


「黒いのがいいよねー」


どこにブラックオークがいるかわからないなぁ。あっ!


「タッパの村に行こうか。あいつ前にブラックオークを狩ったと言ってたから知ってるかも」


と、タッパの村に向かった。


「ど田舎ね」


「俺はこういう所の方が好きだけどな。俺の住んでた所も変わらんよ」


ここは農村らしく広い畑にポツン、ポツンと家が建っていた。農作業をしていたおばさんに声を掛けてみる。


「すいませーん。ここに冒険者をやってるタッパって居ます?」


「あー、いくつになっても夢見とるアホウのことかね?」


酷い言われようだな。


「アホウかどうかわかんないけど、今二十歳ぐらいだったかな?」


「それなら、向こうのはずれにある木で出来た家だ。丸太組の家だからすぐに分かるよ」


畑のあぜ道を歩いていく。ここらへんの家は昔ながらの木と土壁の家だ。だいたいどこの畑も冬野菜を育て始めてんだな。


「これなに?」


「なんだろうね?白菜かな」


これは?とか聞かれるけどよく知らない。砂婆に聞けばわかるけどウェンディも暇つぶしに聞いて来るだけで本当に知りたいわけではないだろう。適当にキャベツ、レタス、ほうれん草とか言っておいた。


「あれじゃない?」


「うん、他の家と雰囲気が違うね。山に近いから林業をしているのかな?」


丸太組みの家に到着し、ドアをノックする。


「はい、どちら様かしら?」


恰幅はいいけど優しそうなおばさんだ。


「自分は冒険者のセイといいます。タッパと知り合って一度尋ねると約束してたんですけどここはタッパの家で合ってます?」


「あー、あの馬鹿息子の友達かい?まさか冒険に誘いに来たんじゃないだろうね?」


タッパは家の人に冒険者をやってるの快く思われてなさそうだな。


「俺達は他国から来てまして、国に帰る前には寄ると約束したから来たんですけど迷惑でしたか?」


「あら、そうなのかい。わざわざ来てくれたのに嫌なことを言って悪かったわね。さ、中に入って頂戴。バカ息子は旦那と山に行ってんだよ」


「何か狩りに行ってるんですか?」


「ウチの旦那は木こりなんだよ。さ、中に入った入った」


中に入れて貰ってお茶を出して貰った。


「驚いた。その使い魔は小さくなれるのかい?」


「元々の大きさはもっと大きいんですよ。これぐらいになってくれないと家の中では場所をとりますので」


「あんたも冒険者なんだろ?テイマーってやつかい?」


「まぁ、そんな所です」


「しかし、男はどうして冒険者なんてやりたがるんだろうね?危ないし命がけの割に実入りは少ないし」


「そうですね。自分もしたくてしてるわけじゃないのでなんとも言えません」


「なら普通の仕事をしなよ。なんかあったら可愛い奥さんも悲しむだろうに」


奥さん?


「こいつは奥さんじゃありませんよ。冒険者パーティのメンバーです」


「そうよっ。私は風の神ウェンディ。セイは私の下僕よっ」


「あら、奥さんじゃなしに神さんだったのかい。それはそれは・・・」


タッパのお母さんはセイを苦労してるんだねぇという目で見ていた。





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