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ダンジョンの罠に嵌まる

崩落に押しつぶされた人達を見たウェンディはセイの腕にしがみついたままだ。岩に押しつぶされた坑夫から流れ出た血が生々しい。が、すぐにダンジョンに吸収されていくことでダンジョンが魔物だということを実感する。


「歩きにくいから離せよ」


「わっ、私だけ埋まったらどうすんのよっ」


人を巻き添えにしようとするな。


「それならサカキにしがみつけ。あいつなら岩が落ちてきてもどうってことないぞ」


「うるさいわねっ」


ウェンディはサカキのチョップを喰らいたくないのだ。


魔物を倒しつつ飯休憩をはさみ、丸一日進んだ所で鉱石ギルド出張所があった。


ここはセーフティゾーンらしくあちこちで鉱石掘りの人達が休憩している。とても男臭い場所だ。


出張所の人に聞くと最奥はあと7日くらい歩かないとダメらしい。


「セイー、人が少なくなったら走るー?」


「そうだね。何もせずに7日も歩くの嫌だよね」


砂婆に出て来て貰って晩飯にする。


「ほれ、松茸ご飯じゃ。それとどじょう鍋じゃぞ」


「おっ、豪勢だね」


「これ何?木の屑がはいってんだけど?」


ウェンディはゴボウをフォークで刺してそう言った。


「これはゴボウという食べ物だ。木屑じゃない」


こちらの世界では松茸も食べないのか変な臭いだと言われた。


「砂婆、土瓶蒸しはないのかの?」


「材料がイマイチなんじゃ。セイよ。ハモは手に入らんか?」


ハモか。


「今度人魚達に会ったら聞いてみるよ。海の幸はちょっと待ってて」


「煮干しやらも欲しいの。鰹節はまだあるがあれは作るのに時間かかるで早めにあると助かるの」


妖怪の里に海はないから元の世界で仕入れて渡してあったものもそろそろ尽きるのか。帰ったらなんとかしないとな。


松茸ご飯とドジョウ鍋を堪能していたらぬーちゃんがにくーというので角有りを狐火で焼いた。ダンジョンに長らくこもっている人達には酷な匂いだったようでずっと見られていた。


ぬーちゃんを布団にして就寝。ここは安全だと解っているのでサカキとクラマは里で寝るようだ。セイはぬーちゃんに乗ってグースカと寝るウェンディに自分のマントを掛けてやってから寝たのであった。


朝と思われる時間に砂婆が持ってきてくれた飯を食って出発。少し人が減って来たけどまだまだ多い。そして出る魔物の種類が変わってきた。ゴツゴツした大きなトカゲみたいな魔物だ。


「変わった魔物じゃの?トカゲか?」


「取り敢えず殴りゃ死ぬだろ」


サカキが殴ろうとすると見た目と違って素早く逃げる。


「こいつ、結構早ぇな」


逃げたトカゲに石を投げて殺したサカキ。凄まじい威力だ。


「お、なんだこりゃ?石になりやがったぞ」


鉱石っぽい物に変わったトカゲ。


「そりゃ鉄鉱石だ。普通のより純度が高いからそこそこの値で売れるぞ。イワトカゲを倒すと貰える報酬だ」


と、俺達の戦いを見ていた人が教えてくれた。


「あんたら坑夫じゃなさそうだな。冒険者か?」


「そうだよ」


「どこまで行くつもりだ?」


「最奥まで行くつもりなんだけど」


「最奥か、あそこなんにもねぇぞ。壁も掘れんし。あそこを目指していく奴が時たまいるがみな何もないと言って帰ってくるからな」


「そうなんだ。あそこでしか採れない鉱石があるって聞いてきたんだけど」 


「そりゃ大昔の話だろ?もう出ないやつかもしれんぞ」


なるほど。


「まぁ、取り敢えず行ってみるよ。人に頼まれてるから行かない訳にはいかないから」


「そうか。気を付けていけよ」


「ありがとう」


「おいおい、その鉄鉱石どうすんだ?」


「別にいらないから欲しかったら持っていって」


と情報をくれた人に鉄鉱石はあげることに。俺たちが持っていても意味のないものだ。


それからサカキはイワトカゲを見る度に石を投げて倒していく。サカキにとっては手応えがないので暇つぶしだ。そのまま鉄鉱石を拾わないで行くとコソコソと持って行く人達。イワトカゲが溜まっているところにサカキがどどどどっと石を投げて殲滅するとたくさんの鉄鉱石が溜まった。俺たちが鉄鉱石を拾わないのを知っている人が後ろから付いて来ていてその鉄鉱石を確保しに行った時に天井が落ちてきた。嫌な音が聞こえる。


「金魚のフンみてぇに付いて来てやがったからスッキリしたぜ」


酷い言い種だ。人が死んだというのに。


さっきの宝石もそうだったが、このダンジョンは人の欲を上手く利用している。欲張ると罠にハマるのだ。さっき固まってたイワトカゲは動かなかったから罠としてあそこに固まっていたのだろう。


また俺にしがみつくウェンディ。


「欲張らなかったら大丈夫だって」


「そう言って頭に岩が落ちてきたらどうすんのよっ」


俺にしがみついてても落ちてきたらどうしようもないぞ?


疲れたので今日はここで終わり。セーフティゾーンでもなさそうなのでサカキもクラマもここで野宿する。


セイは見張りとして式神を出しておいたけど不要かな。


サカキはグーグーとイビキをかいているがイワトカゲが近付いてきたら寝たまま石を投げて殺している。器用なやつだ。


人が少なくなってきたのでぬーちゃんに乗って駆けてもらうことに。サカキとクラマはひょうたんに入ったからイワトカゲは無視だ。ぬーちゃんが駆けると坑夫達も何事だ?と振り返るけどそれも無視。


「うわっ」


次に出て来た犬みたいな魔物が火を吹いた。まさかそんな攻撃をしてくるとは思わなかったので油断した。


しかし、バビデが作ってくれたワイバーンの防具は素晴らしく熱くもなんともない。ぬーちゃんもこれぐらいの火なら平気だ。唯一の被害はウェンディの頭がチリったぐらい。


「もーっ」


ウェンディは自己治癒して髪を元に戻す。


「ウェンディ、これを羽織ってろ。またどこからか火を吹かれるぞ」


ウェンディにフード付きのマントをすっぽりと被せた。セイよりずっと小柄なウェンディは全く見えなくなった。これなら大丈夫だろう。


「セイー、この先にたくさんいるよー。どうするー?」


「そうだね、突っ切るには数が多そうだね」


野犬の群れのように固まってる魔物達。あれが罠かどうかわからない。倒して鉱石を拾わなくても近くに行ったら岩を落とされるかもしれん。


「ウェンディ、あいつらを吹き飛ばしてくれ。その隙に間をすり抜けるから」


「わかったわ。いけっ真空刃っ!」


嘘つけ。ただの突風じゃねーか。


ウェンディの突風をまともに食らって吹き飛ぶ犬。これはいいかもしれん。


「そのまま突風を出し続けられるか?」


「突風じゃないっ。真空刃よっ」


真空刃なら魔物は引き裂かれて死んでるわ。


どうやら出し続けられるみたいなので真空刃(突風)を出し続けてもらうと吹っ飛んで壁に当たって死んだ犬が金の固まりみたいなのに変わった。


「ぬーちゃん、ちょっと待って」


鉱石なんていらないと思ってたけど金なら話は別だ。上を見ながら金の鉱石を拾う。あっちにたくさん落ちているところのはスルーしよう。欲張りはいけないのだ。


いくつか拾ってひょうたんに入れていく。これで来年の風の教会の税金払えるかな?


歩くと3日ぐらいの距離を1日で来れた。明日には最奥に到着出来るだろう。


「ここで泊まろうか?サカキ、クラマ出てきてくれ」


「もう着いたのか?」


「いや、到着は明日かな」


「ここ、蒸し暑ぃな」


そう、サカキの言う通り奥に来るにつれて暑くなってきた。洞窟だと通常はどんどん気温が下がるはずなのだがここは違う。もしかして火山のダンジョンだから溶岩とかに近いのかもしれん。そんなのが吹き出す攻撃されたらたまらんな。


砂婆の飯を堪能しているとサカキが飲みだした。


こんな時にまで飲むなよ。


「こんなもんで酔う訳ねぇだろうが」


それはそうかもしれんけど。


「お、犬が来やがったぜ。石投げるのも飽きたしちょっくらやってやるか」


「何をやるんだ?」


「酔拳だ」


どこかだ。飲みながら殴ってるだけじゃないか。


金を拾ってひょうたんに入れていくとキラッと光る物が見えた。なんだろ?


サカキの爪でほじくってもらうと宝石が見えた。


前にウェンディが宝石欲しがってたよな。


「ウェンディ、これ欲しいか?」


「わっ、欲しいっ」


というのでほじくり出して貰った。


「まだあるぞ」


その下にも宝石があるみたいだ。


「掘って、掘って!」


タマモもこれをあげたら喜ぶかな?


とサカキが掘っていくとゴロゴロ出てくる。ヤバっ。


「サカキ、これ罠だ」


その瞬間天井が落ちてくる。セイはウェンディを突き飛ばした。


「キャァァァァッ」


「フンッ」


サカキは落ちてきた岩を粉砕した。


「危ねぇな。痛ぇだろうがっ」


サカキは砕けた岩を天井に投げてぶつけた。


ゴワンゴワンゴワン


揺らめく天井。これ、もうダンジョンがお宝出してくれなくなるんじゃないか?


「痛っいわねっ。何すんのよっ」


突き飛ばされたウェンディがセイに怒るのを見て、クラマは呆れていたのであった。




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