セイの仲間登場
チャリン・・・
泣き崩れているウェンディに銅貨を投げてくれる人がいる。可哀そうな人だと思われたんだな。
「ヒック ヒック。うわぁぁぁぁん。私は神なのに 神なのにぃぃぃ」
「お前、神じゃなくなったんだろ?」
ビシビシビシビシっ
「痛って、何すんだよっ。本当のことじゃねーかっ」
「下僕の癖にうるさいっ」
「あっそ。せっかく稼いだから飯食うのに呼びに来てやったのに。神様に余計なお世話だったな。じゃな」
「えっ?ご飯?」
「お前は恵んで貰ったその銅貨で勝手に食え」
「セイっ、どこで食べんの?」
人の言うことをまるっきり無視してご飯という言葉だけに反応したウェンディ。ニコニコ顔で銅貨を拾って付いて来やがった。まるでお小遣いを落として拾う子供みたいだな。
「おー、ツレって女だったのか。隅におけねぇなあんちゃん。随分と可愛い娘じゃねーかよ。よし、このまま俺達と臨時じゃなくパーティ組もうぜ。うちもちょうど二人抜けたからこれで元通りだっ」
パーティか、この世界の事もよく知らないしコイツラ気もいいし一緒に組んでやるのも悪くないな。
「私ねー、これっ」
人の話を聞いてないウェンディはウッキウキでメニューを見て注文してやがる。
「あとこれもーっ!」
こいつ酒まで飲むのか。まぁ、ギルドのメニューはどれも安いし大丈夫か。
「あんちゃんも飲めよ」
「いや、酒はちょっとヤバいからやめとくよ」
「弱ぇのか?」
「飲んだ事はないけどヤバいんだよ」
「飲んだ事がねーならヤバいかどうかなんてわからんだろが。とりあえず飲んでみろって。おーい、ビール追加だ」
「いやいやいや、本当にヤバいんだって」
ドンっ
「はいビールね」
断る暇もないままビールを目の前に置かれてしまった。
「よし、カンパーイ」
「よぅ、酒の匂いがするじゃねーか。セイ、お前飲める歳になったんなら言えよ」
「うわっ、なんだこいついきなり現れやがった」
皆の目の前にといきなり現れた大男に驚くアイアン達。
「呼んで無いのに出てくんなよ」
「酒の匂いがしたからしょーがねぇだろ。で、どこだここ?」
「おい、あんちゃん、こいつ知り合いか?」
「こいつは酒鬼。だから酒はヤバいって言ったんだよ・・・」
サカキという名の男は酒呑童子、大妖怪の一人である。
「あら、セイ。あんたいつの間に結婚したのかしら?」
「何食べてるのー」
続いて現れたのは色っぽい美人とぬーちゃん。
「あ、あんちゃん。こ、こ、こ、この人は・・・」
「こいつはタマモ。あとこっちはぬーちゃん。ぬーちゃん、みんなびっくりしてるから小さくなって」
「はーい」
ひゅっと小さくなったぬーちゃんは猫サイズになった。
「タマモ、結婚なんてしてねーぞ。詳しくは後で話す」
「坊主が結婚したとなっ?なぜワシを呼ばなんだっ」
もー、クラマまで出て来やがった。
「あ、あんちゃん。この人達はいったい・・・」
「全員仲間だよ」
酒呑童子の酒鬼
九尾の妖狐玉藻
大天狗の鞍馬
鵺のぬーちゃん
取り敢えずアイアン達とウェンディに皆を紹介した。
ーセイの幼少の頃ー
「キャッキャッ、ねー、スズちゃんつぎ何してあそぶ?」
(ねぇ、源さんの所の誠くん、また部屋の隅で誰かと話して一人で遊んでるんだけど)
(気味が悪いわよね。一度親御さんに話した方がいいんじゃない?)
保育園に預けられていたセイは人間の友達ではなく、座敷わらしのスズといつも遊んでいた。座敷わらしが見えない保育士達はセイを気味悪く思い母親に相談した。
「ウチの子供に変なことを言わないで下さいっ。名誉毀損で訴えますよっ」
セイの母親は弁護士であり、ヒステリックな性格をしていた。
母親は家でセイの父親にそのことを話す。
「そうか・・・。セイ、誰と遊んでるのかな?」
「スズちゃんっ」
「どんな感じのお友達かな?」
「えーっとぉ」
と無邪気にスズという友達の話をするセイ。
「はぁ、どうやらセイにしか見えない友達がいるみたいだな」
「ど、どういことよっ」
「実はな・・・」
セイの父親は実家が元々祓い屋だということを説明した。
「こ、こ、この子は化け物と遊んでるっていうのっ」
「いや、化け物といわけでは・・・」
「いやぁぁぁぁぁっ」
こうして母親に気味悪がられたセイは曽祖父の元に預けられる事になったのである。
「こ、これっ。それは触ってはいかんっ」
曽祖父の元に預けられたセイは源家が守ってきた封印のひょうたんの蓋を開けてしまった。普通の人間は元より曽祖父ですら開ける事の出来なかった蓋をいとも簡単に開けたセイ。まず出てきたのは世に厄災をもたらす鵺だった。
「我をこんな所に封じた忌々しい人間どもめぇ」
出てくるや否や厄を撒こうとする鵺。
「キャーッハッハッハ」
鵺のヒゲを掴んで引っ張るセイ。
「いだだだだっ、やめろっやめてくれぇぇぇ」
続いて首をコキコキと鳴らしながら出てきたのは酒呑童子の酒鬼。
「ほう、こんなに小せえ癖に鵺を引っ張り回すなんて面白ぇ。俺と勝負しやがれっ」
ゴスっ
「おやめっ!」
次に出て来たのは九尾の妖狐玉藻だった。
「どうやら封印を解いたのはこの子みたいだね。人間とはいえ恩人みたいなもんさ」
「こいつが封印を?」
「わからないのかい?この子に流れる血の匂い」
「そういや・・・。というか色んな血が混ざってねぇかこいつ?」
「随分と面白い子だよ。敵に回すより味方の方がいいんじゃないかねぇ」
その後、鵺はペットに、酒鬼は武術の師匠、玉藻は母親代わり、そこへ山を守っていた鞍馬が剣術を、曽祖父と曾祖母が陰陽術等をセイに叩き込んで育てていくのであった。
ー冒険者ギルド酒場ー
「ガーハッハッハ、お前らなかなか酒が強いじゃねーかよ」
「もうダメだーっ」
アイアン達も結構酒に強いみたいだが酒呑童子のサカキに飲み比べで勝てるわけねーだろ。てかこいつらどんだけ飲んだんだよ。いつの間にかめちゃくちゃジョッキがテーブルに並んでんじゃねーかよっ。
「セイの結婚相手はてっきり私みたいなタイプだと思ってたんだがねぇ」
そう言って胸をゆさゆさするタマモ。
「だから結婚なんてしてないってば」
「隠さんでもええじゃろが。結婚指輪とやらをしておるではないか」
「えっ?あんたらこれが見えるの?」
クピクピ一人酒を楽しんでたウェンディがクラマが言った結婚指輪の発言に驚く。
「セイが二本、お主が一本揃いの指輪をしおるじゃろうが」
「それにしても随分と怪しげな指輪だね。何で出来てるんだいこれ?」
「ちょっとちょっと、なんでコイツらこの指輪が見えるのよっ」
「ん?これは普通見えないのか?」
「大妖精クラス以上の力を持ってないと見えないのよこれっ」
「大妖精?」
「そうよっ。神に次ぐ存在の妖精が大妖精なのっ」
「なるほど。それならこいつら見えてもおかしくないな。みんな神と同じぐらい力を持った大妖怪だから」
「は?神と同等クラス?こんなカラスみたいな爺さんも?」
「あっ、バカっ」
「ワ、ワシがカラスじゃと?」
「だってカラスの羽じゃん。もしかしてカラスのハーピィ?」
「ワシをカラス扱いするかーーーっ!この小娘がぁっ。いくらセイの嫁とはいえ許さんぞっ」
「誰が小娘よっ!私はウェンディ。風の女神なのよっ」
「何が風の神じゃぁぁぁっ。風神はもっと威厳があるわっ。貴様が風の神と申すならばこれを防いでみぃっ」
「バカ、クラマやめろっ」
大天狗のクラマは羽うちわでウェンディをブワサッと攻撃した。
キャァァァァっ
ギルド内に吹き荒れる突風にガチャガチャガチャっと物が壊れていく。
「やったわねぇ」
ブォォォォォッ
ギャァァァア
ウェンディが竜巻のようなものを出して対抗したのに巻き込まれるギルド酒場にいる面々。
「セイっ、なんとかおしっ」
タマモにそう言われたセイはクラマをぶん殴り、ウェンディに強烈なデコピンを食らわした。
「キュゥッ」
「ぐふっ セ、セイ・・・。強くなったの・・・」
その場で気絶するウェンディとクラマ。
「終わったのー?」
とっさにひょうたんに逃げ込んたぬーちゃんが顔を出した。
「せっかく結った髪がぐちゃぐちゃじゃないか。まったくもうっ」
髪を結い直しながらブツブツ文句を言う玉藻。
「あーあ、せっかくの酒が台無しじゃねーか。しらけちまったからから帰るぞ。おい、じーさん、行くぞ」
「お、おいサカキっ」
「まったく、埃だらけになっちまったから私も帰るわよ。じゃまたねセイ」
「セイ、またねー」
「おいおいっ、お前らこの状態を俺におしつけんなって。おいっ、待てっ」
ヒュッと皆はひょうたんの中に入って行ってしまった。残されたのは伸びてるウェンディと俺とアイアン達だ。
「おい、新人。どーしてくれんだこれ?」
ギルド酒場の大将がやってきてセイに凄む。
「い、いや俺は止めただけで・・・」
「全員お前の関係者だよなぁ?」
「ア、アイアン。俺達パーティだよな?なんとか説明してくれよぉ」
「お、俺たちはパーティっても臨時だからな。悪いな」
「新人、冒険者証出しな。払えねえってんならツケといてやるからよ」
「は、はひ・・・」
こうしてセイは日銭を稼ぐどころか借金を背負ってしまったのであった。