表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/323

火の神の加護

「おいバビデ、コイツの防具を作れ」


「兄貴が人を連れて来るとは珍しいな」


「おう、素材はコイツの持っとるワイバーンの皮じゃ。頂上付近の坑道のワイバーンを討伐して来おったきたんじゃ」


「2匹もいたのか?」


「いや、25じゃ」


「は?」


バビデにも状況を説明しておいた。


「兄貴がワザワザ連れてきたからやる奴なんだろうなとは思ったが凄いな。S級か?」


「Cだよ」


「なんだと?C?」


「まあ、Cランクならほとんどの依頼受けられるって言われたから」


「上に上がらんと尊敬されんだろうが」


「別にそんなのどうでもいいよ。冒険者をやってるのも仕方がなくだし」


そして防具の話をする前にビビデとバビデと一緒に飯を食うことになった。



「ガーハッハッハ」


サカキだ。サカキみたいな奴らがここにも居た。


どっかに食べに行くのかと思ったらバビデの家でおつまみと酒だけの晩飯。酒はドワーフの火酒というものでかなり強いらしい。クラマ曰く鬼殺しといい勝負みたいだ。ぬーちゃんはそれを飲まずにセイとジュースを飲んでいた。ウェンディより賢い。


「セイー、お肉食べたい」


「そうだね」


こんなナッツ類だけじゃ飯を食った気にはならん。俺はリスじゃないからな。


「クラマ、ちょっとぬーちゃんと肉を狩ってくる」


「今からか?」


「そう、ひとっ飛び行って豚肉でも狩って来るよ」


「ならワシも・・・」


「そんな赤い顔してたら危ないじゃん。すぐに帰って来るよ」


「なら、こいつを持ってけ」


と刀を渡されるけどぬーちゃんがやるからいらないかも。


ギルマスに教えて貰ったポイントまでひとっ飛び。暗いからぬーちゃんで街中を飛んでも問題なし。


「セイー、何匹狩る?」


「1匹で・・・。いや、何匹か狩っていくか。孤児院の依頼受けてるし」


「はーい」


そう返事したぬーちゃんが豚肉を咥えて帰ってきた。早いな・・・


「ぬーちゃん、鶏居た?」


「じゃー、鶏狩ってくるー」


ちょっと探したようで時間かかったけどコカトリスを2つ狩ってきた。


オークを1匹追加して終わり。豚2、鶏2だ。孤児院と半分こしよう。


バビデの所に戻るともう帰ってきたのかと驚かれた。ビビデが適当に切って炭で焼いてくれるみたいだ。みんな食う気まんまんだな。食ってもいいけどこっちにもくれよ?


「残りは孤児院にもって行くから冷やしといてくれる?」


「そうか。これだけあれば皆に肉が行き渡るじゃろ」


ビビデとバビデも孤児院の事は知っているようだ。教会への寄付は孤児院運営にも使われるらしく二人も時々寄付しているみたい。


飲みながらバビデはワイバーンの皮で防具を作ってくれると言った。重かったり動きにくいならいらないと言ったらめちゃくちゃ怒られた。そんなもん作るかと。


確かにワイバーンの皮は見た目よりとても軽い。空飛ぶ魔物だから軽いのは当たり前だそう。丈夫さもかなりの物のようで特に耐炎性にも優れているとのこと。


そのままバビデの家に泊めてもらい、翌日教会に行ってみた。


「スイマセーン」


「はい、何かご用かしら?」


「ギルドに出ていた依頼を受けてきた者です。肉はどちらに渡せば宜しいですか?」


「まぁ、ありがとうございます。さ、どうぞこちらへ」


と孤児院に案内されるとあまり元気の無い子供達が大勢いた。親を亡くした、捨てられたとか理由は様々だけど親がいない事は共通している。


自分も母親から拒絶されたけど、曾祖父、曾祖母に加え、サカキ達が居てくれた。この子供達には神官しかいないし、食べる物も少ないのだろう。


「肉持って来たよ」


「わーいっ」


お肉と聞いて喜ぶ子供達。


「じゃ、これ渡しておきますね」


「こんなにたくさんありがとうございます。火の神の加護がありますように」


とお祈りされた。


達成のサインと銅貨を受け取り依頼完了。そして受け取った銅貨と金貨1枚を孤児院に寄付しておいた。ここの教会は信者が多いから大金を寄付しなくても大丈夫そう。孤児院への配分が少なそうに感じたのでこの寄付は孤児院にと念を押しておいた。


ここにいる間はちょくちょくお肉を持って来てもいいな。ついでに神様の事を聞いておくか。


「あの、火の神様の事を少し教えて貰うことはできますか?」


「は、はい。構いませんけれども」


まず、火の神ヘスティア像を見る。美しい女神にいかつい男とトカゲみたいなのが頭を下げている。眷属は男とトカゲか。


「火の神様の加護ってなんですか?」


「火の神ヘスティア様は火山が噴火しないように抑えて下さったり、火を使っても火事にならないようにして下さっているのです」


「あの火山は噴火しないんですか?活火山のようですけど」


「活火山?」


「まだ噴火を続けている火山の事です。時々噴火したりしないんですか?」


「皆のお祈りが足りないと噴火致します。人々の祈りが神に力を与え、噴火を抑えるのです。残念ながら少し前に祈りが足りなく噴火いたしました。被害が少なかったのが幸いです」


神様が噴火を抑えてるとか凄いな。魔物を滅するのに噴火させてるのかと思ってたよ。


加護は火や火山の被害を減らすというものなのか?バチという見方もあるけどこれなら一生懸命お祈りするのも分かる気がする。今もお祈りしに来る人が何人もいるからな。


ウェンディもバンバン暴風吹かせて、お祈りしてくれたら暴風を止めるみたいなやり方の方がいいのか?


いや、すでにウェンディが暴風を吹かせていることが人々にバレてるから、暴風を抑えてくれたとかの感謝にはならんな。


教会を後にして冒険者ギルドに依頼達成の報告をする。


他の冒険者達の話が聞こえて来て、どうやら斥候を得意とする冒険者が依頼を受けて火山にワイバーンがいないことを確認してきたらしく、鉱石発掘が再開されるみたいだ。


「はい、手続き完了です。また孤児院の依頼を受けて下さると助かります」


「これ、ワザワザ依頼を受けなくちゃダメ?」


「どういうことでしょう?」


「この国にいる間は肉を狩ったらちょくちょく持って行くつもりにはしてるんだけど、毎回依頼を受けて完了報告が面倒なんだよ」


「直接寄付されたらポイント付きませんよ」


「それだけのこと?」


「はい。報酬はあってないようなものですのでポイントは高くしてあります。それだけでランクアップしてもなんなので上限は設けてありますけど」


「なんだ。じゃ、今後は直接持っていくわ」


「ポイントいらないんですか?」


「別にいいよ。Cランクなら大体の依頼を受けられると聞いてるし」


「たまに国から出される特別任務はB以上しか受けられません。特別任務は普通の依頼より比較にならないほど高額報酬を貰えますよ」


「今、借金が無いからそんなにお金もいらないんだよ。冒険者として名前を上げようとも思ってないし」


「そうなんですか。もったいないですね」


肉は狩れば手に入るし、税金分とサカキ達の酒代を稼げたら十分だからな。アネモスの教会の来年分の税金代を稼げたらもうそんなに必要ない。



ビビデの所に行くと自ら鉱石を取りに行ったのか留守だったのでバビデの所にいく。


「まだ出来てないぞ」


「いや、ビビデの魔剣って奴を壊しちゃったのと、今度特別に剣を作ってくれるらしいんだよ。大体の値段ってわかる?」


「兄貴は値段を言ってないのか?」


「壊した魔剣のはいらない、新しい剣は銀貨40枚って言ってたけどそんなわけないよね?」


「あー、値段付けてやがらんのか。なら銀貨40枚でいいと思うぞ。一度そう言ったならそれ以上受け取らんだろうからな」


「いいのかな?」


「兄貴は元々気に入った奴にしか剣を売らん。ましてや自分から剣を打つと言い出すことなんてほとんどなかったからな。気にするな。それだけお前が気に入られたってことだ」


金を受け取らないならなんか他の物でもわたそうか。何がいいか分からんけど。


「作ってくれてる防具っていくらぐらい?」


「素材持込だからな。金貨1枚でいいぞ」


「じゃあ、先に払っておく。ワイバーンの討伐報酬で結構お金入ったし」


「そうか。なら貰っておこう。あと足のサイズ測るぞ」


「靴も作ってくれんの?」


「皮が2枚あるからな。フルセットで作っておいてやる。ほら、手も出せ」


靴はありがたい。スニーカーしかなかったし、歩くことも多いから傷んできているしな。


「今日もここで飯食ってけ。それと肉を狩って来てくれ」


へいへい。


クラマもドワーフの火酒が気に入ったのかそれで構わんとの事だったのでコカトリスを狩って焼き鳥にしたのであった。


街の中を見て回ってバビデの所で飯を食う日々が3日程続いた後にビビデが帰ってきたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ