表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/323

クラマとぬーちゃんには大したことない魔物だった

しばらく待たされた後、ギルマスらしき人がやってきた。


「お前ら初顔だな」


「アネモスから来ました」


「そうか。お前ら本当にワイバーン倒せんのか?」


「わからないから確認しに行きたいんですよ」


「ビビデに直接言われたってのは本当なんだろうな?」


「ジールに昨日連れて行かれたんですよ。彼に聞いて貰えばわかりますよ」


「ジールが連れてったなら本当の話のようだな。しかし、依頼失敗の違約金を無くすことは出来ん。こういう前列を作っちまうと後がややこしくなるからな」


「じゃ、無理ということで伝えて来ます」


「ちょっと待て」


いや、もう待ってたじゃん。


「ギルドからお前に指名依頼を出してやる。坑道入口付近のワイバーン状態調査だ。報酬は銀貨1枚」


「で、倒したら?」


「後付でこの依頼も達成したことにしてやる。この依頼は随分と前から出てるから今どうなってるかもわからんから見てこい」


「じゃ、それ受けますね」


「で、どんなメンツで行くんだ?」


「本来6人パーティなんですけどね、ボッケーノに来てるのは俺とクラマとぬーちゃんだけ。ぬーちゃんは使い魔扱いになってますよ」

 

「は?まさか二人と1匹で行くつもか?」


「はい。今から行ってきます」


「武器や防具はどうした?」


「持ってません」

 

「持ってないだと?今日だけか?」


「いや、持ってないんです。だから剣だけでも持っておこうかなと思ってたらビビデさんが作ってくれるらしいんですよ」


「どうやってCまで上がった?よく見りゃ初登録がこの夏じゃねーか」


「たまたまゴブリンの巣を潰したら上がりました」


「たまたまで潰せるかっ」


「いや、クラマが嫌な空気が出てる所を潰したら巣だったらしいんです。まぁ、取り敢えずワイバーンがどんなのか見てきますよ。もし倒したら毒袋か皮が討伐証明になるんですよね?」


「あ、あぁそうだ。それも売るなら買い取ってやる」


そうなんだ。


「じゃ、夕方には戻ってきますよ」


は?


というギルマスの顔を見ずにセイ達はギルドから出ていった。



面倒なので裏道に入ってぬーちゃんに乗り一気に飛び上がってもらい火山へと向かった。入山する許可証を見せて中に入ってまた空を駆けていく。教えて貰った道を上から確認しながら現地へ。


「ここかな?」


頂上付近に坑道があるがワイバーンはいない。


「でかい鳥なんじゃよな?おらぬぞ」


「だね」


坑道へ入る許可証はないので入口付近で待機するもワイバーンは出てこない。


「ここじゃないのかな?ちょっと周り全部確認してみようか?」

 

と、ぬーちゃんに乗って山肌沿いに空を駆けていく。


「ここにも穴があるが・・・。ワイバーンとやらが生まれてくる穴やもしれん。来るぞっ」


クラマは嫌な空気が漏れ出て来るのに気が付いていた。


「キシャァーオ」


穴から大きな嘴が出てきた。かなりデカそうだ。


ぬーちゃんがバッとそこから離れ、クラマは刀を抜き頭を出したワイバーンの首をはねた。


ゴトンとその場に落ちるワイバーンの首。そしてそれは毒袋になった。が、クラマもぬーちゃんも臨戦態勢をくずさない。まだワイバーンはいる。


様子見で頭をだしたワイバーンがやられた事で次から次へと一斉に飛び出してきた。


「セイー、下に降ろすねー」


「了解」


ぬーちゃんに下ろしてもらっている間にクラマはワイバーンと戦闘を始めていた。


ワイバーンは図体がデカい分、小回りが効かない。対してクラマはスピードも旋回性能も段違いで上だ。これはクラマ一人でも大丈夫か?


ぬーちゃんも参戦し、空飛ぶワイバーンの後ろに回り首を噛んで振り回している。


遊んでないで早く噛みちぎれよ。と思った時に毒の尻尾をぬーちゃんにヒットさせたワイバーン。


あ、ぬーちゃんが怒った。


「我にこんなチンケな毒が効くと思うなよ」


愛らしいぬーちゃんが元の凶悪な鵺に戻り尻尾の蛇で噛んで即死させた後、周りにいるワイバーンに毒の息をガーーーーっと吐きかけた。


ヤバっ アレ即死級の毒じゃん。


毒の息に触れた部分があっという間に壊死していくワイバーン。めっちゃグロい。


毒が飛んで来ないように風上に回るとクラマが飛んで来て羽うちわで毒がこっちに来ないように仰いでくれる。


「えげつないの」


「ぬーちゃん攻撃受けてイラッとしたんだね」


「あれしきでイラッとくるなぞまだまだ未熟じゃの」


ぬーちゃんもクラマには言われたくないだろう。


ワイバーンを毒で殺し、首に噛み付いては下に叩き落とすぬーちゃん。セイとクラマは討伐証明の毒袋と皮拾いだ。


「ひーふーみーよー」


セイが戦利品の討伐証明を拾って数えていく。ワイバーンも出てこなくなったので終わりだ。


「毒袋7、皮18だね」

 

革が大きいので丸めてもかなりの荷物だ。ひょうたんがないから持って帰るのが大変だな。


「セイよ、この穴は浄化せぬとまた出て来るじゃろ。どうするんじゃ?」


「確認してからにするよ。この国にとってはワイバーンも資源かもしれないし」


「解ったのじゃ」


ワイバーンの革を一つクラマが細く切ってくれたのを紐代わりにしてぬーちゃんに括り付けていく。


そして火山を後にして先にビビデの所に今いたワイバーンは討伐したことを説明した。




「そんなにおったのか?」


「ワイバーンの巣みたいなのがあってね。そこから出て来たんだよ」


どこにじゃ?と聞かれたので地図で場所を説明する。


「そんな所までどうやって行ったのじゃ?」


「クラマもぬーちゃんも飛べるから」


「コヤツも飛べるのか?」


「そう。みんなが驚くから人前では歩かせてるけど」


「そのワイバーンの巣はどうした?」


「浄化しようかと思ったけど、ワイバーンがいなくなって素材が取れなくなったら困るかな?と思ってそのままだよ」


「浄化?」


「クラマはそういうのを抑え込む能力があるから今出ている魔物を生む空気は浄化出来るよ」


「お前ら、早く冒険者ギルドでその報告をしろ。指名依頼が出されるはずじゃ」


「いや、もういいよ。この国に冒険しにきたわけじゃないから。」


「なに?冒険しに来たわけじゃないのか?」


「神様の事を聞きに来ただけなんだよ。取り敢えずギルドに討伐報告してくるから、何か知ってるなら教えて」


「解った。あと、そのワイバーンの革は2つ程売らずに持ってこい」


「わかった」



ギルドに戻って受付で討伐したことを伝える。


「え?調査しにいかれたんですよね?もう戻って来たんですか?」


「調査の報告もあるけど。これ討伐証明。25匹いたよ。皮を2つ残して買い取って欲しいんだけど」


「お、お待ち下さい」


慌てて中に入っていく受付嬢。他の職員も冒険者達もざわついている。



「倒したって本当か?」


ギルマスが慌ててこっちへ来た。


「今回は25匹だったよ。巣があったからまた出ると思うけど」


「ワイバーンの巣だと?」


「鳥の巣みたいなものじゃないよ。ワイバーンがワラワラと出てきた穴。中まで入ってないけどそこからワイバーン生まれきてると思う。ゴブリンも角有りも似た様な穴から生まれてくるから。ワイバーンが出てくる穴は結構大きかったけどね」


「詳しく教えろ」


とギルマスに言われて、魔物が生まれてくる穴から嫌な空気が出て来ていることを伝える


「ワイバーンもゴブリンみたいに生まれてくるわけか」


「多分ね。で、ワイバーンがこの国の資源になってるかもしれないからそのままにしてきたけど」


「そのままにしてきたとは?なんとか出来るのかお前ら?」


「クラマが浄化したらしばらく出ないと思うよ。嫌な空気は湧き出てるから完全に止めるなら封印しないとダメだと思う。そこを封印しても他から漏れ出すかもしれないけど」


この世界の仕組みはよくわからない。嫌な空気を止めても大元を封印しないとどこからかまた出てきそうな気がする。


「何者だお前ら?」


「風の神様の加護を受けたパーティってところかな」


「神の加護を受けてる?そんなの聞いた事がねぇぞ」


「アネモスは今ちょっとややこしくてね。特別なんだと思うよ」


ギルマスも風の噂にアネモスが神を捨てた事を知っていた。


「ちなみに神を捨てたらどうなるんだ?」


「風の被害はなくなったけど海と山が死にかけてる。魔物も増えてるしね。そのうちヤバいんじゃないかな?ここはみんな火の神様にちゃんとお祈りしてるんだよね」


「あぁ。そうしないとバチが当たるからな」


やっぱりバチか。ボッケーノは加護の恩恵よりバチが当たらないようにすることで信仰心を保持しているのだろうか?


ウェンディは不信心者だけに暴風を吹かすような器用な真似は出来ないだろうから同じやり方は無理だな。


「ワイバーンの巣はどうする?」


「詳しい場所を教えろ。調査団を出す。それにお前も加われ」


「調査団を組むなら俺達はいらないでしょ。ここの冒険者じゃないし、俺達もフルメンバーじゃないから」


「ワイバーンをお前らだけであんなに倒せただろうが」


「他の人達がいたら巻き込む恐れがあるからね。ここの人達に任せるよ」


さっきからここの冒険者達の殺気が凄いのだ。よそ者にいいところを持っていかれたって所だろう。受付では何やら金貨が積まれてるし。


「セイさん。こちら調査報酬の銀貨1枚、討伐依頼達成の金貨10枚、毒袋が7つが金貨3枚と銀貨50枚、ワイバーンの皮16で金貨15枚。合計で金貨28枚と銀貨51枚になります」


ワイバーンの皮って高額なんだな。


「ありがとうございます」


「お前らいつまでこの国にいる?それと、皮の勘定が合わねーぞ?」


「皮の一つはくくりつけるのに紐にしたから」


お前らアホか?と言われたけど、皮が金貨1枚で買い取ってくれるとは思わないじゃん。


「うーん、剣がいつ出来るかによるんだけどね。あと、これ受けようと思うんだけどコカトリスやオークの出る場所教えてくれる?」


「孤児院の依頼を受けてくれるのか?」


「受ける人少なそうだし。剣出来るまで暇だから」


そうか、とギルマスは魔物ポイントを教えてくれた。この国にいる間はなるべくギルドに顔を出してくれと言われた。


ワイバーンの皮を持ってビビデの所へ行く。


「調査団が組まれるのか」


「お前も入れと言われたけど断ったよ。ここの冒険者じゃないし」


「そうか。死人が出んとええがの」


「死人?」


「当たり前じゃ。まだワイバーンが生まれるなら死ぬ奴は出てくるじゃろう」


そうか、人が死ぬかもしれないんだな。


「まぁ、いいわい。その皮を持って付いて来い」


「どこに?」


「バビデの所じゃ」


バビデ?



どうやらバビデとはヒビデの弟、防具職人らしい。そのうちブゥとかも出て来そうだな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ