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ボッケーノの冒険者

カッコカッコカッコ


風の教会の前に豪華な馬車がやってきた。執事に手をとってもらい降りてきたのはリーゼロイ家の婦人だった。


「奥様、扉が開いておるのようですので中へ参りましょう」


祭壇に向かいお祈りを捧げる婦人。


「あ、あの・・・お祈りですか?」


「そう。ウェンディ様にお祈りを捧げに参りました。これからは毎週参りますわ」


「あっ、ありがとうございますっ」


「あなはここの神官かしら?」


「まだ見習いです。神官の母を呼んで参ります」


と、ケネルはあきらかに貴族である婦人をみて母のファンケルを呼びに行った。


そして別室でハーブティーを入れながら話をする。


「リーゼロイ家の奥様でしたか。神の思し召しに感謝致します」


「あなたに伝えておくわね。この教会は宗教法人に戻してもらったから税の心配はしなくて宜しいですわよ」 


「え?」


「とある方にお願いされましたの」


「もしかしてセイさんですか」


「そう。特別な依頼をお願いした際の報酬として教会を宗教法人に戻して欲しいと」


「報酬・・・?」


「随分とこの教会の現状を憂いでおられましたわ。この教会への毎週のお祈りもセイ様への報酬の一つですの」


「そんなことをして下さってたのですか。先日、税金と私達の当面の生活費相当の多額な寄付までして頂きましたのに。せめて税金分の寄付をお返ししなければ・・・」


「ご心配はいらなくて?セイ様はそれぐらいの金額はサクッとお稼ぎになるでしょうし、これからはリーゼロイ家が教会をバックアップ致します。お金の事は気にせず信仰心を高める神官の役割を果たして下さいませ」


「それもセイ様の報酬でしょうか?」


「いいえ。リーゼロイ家は神への感謝を疎かにしてきたことを反省いたしましたの。本来あるべき姿に戻ったまでですわ」


婦人は出されたハーブティーに口を付けた。


「これは?」


「教会で栽培しているハーブを使ってます」


「数は作れるかしら?」


「あまりたくさんは・・・」


「そう。なら栽培農園を貸出しますのでもっとハーブを増やして下さらないかしら?農夫も出しますわ」


「何をされるおつもりですか?」


「信者に振る舞っておあげなさい。神の加護を受けたハーブティーとして。きっとご利益がありますわよ」


婦人は見た目は怖いけどとても上品にそう笑ったのであった。




「この国はあやつが言っていた通り武器を扱う店が多いのう。それに山のヨーサクみたいなやつがやたら多いわい」


「そうだね。人種が違うのかも」


小柄でガチムチで毛深い人の比率が高い。女性にヒゲはないがとても小柄な人が多いのだ。子供ではなさそうだし。



「セイ、刀の代わりに剣を見ておくか。良いのばあれば買え」


「そんなにお金持ってきてないよ。ひょうたんを置いてきたからね」


「足りぬなら稼げばよいじゃろ?ここにも冒険者ギルドとやらがあるのではないのか?」


セイが持ってきたお金は銀貨50枚ほど。そんなに長居をするつもりもないので宿と飯代には十分足りる金額だ。


とりあえず門から続く大通りの店を何軒か入ってみる。


あの冒険者が言っていた通り、標準的な物が銀貨20〜30枚。金貨1枚とかするものは装飾が施されていた。


「何が武器防具のメッカじゃ。ろくな物がないの」


クラマ曰く、標準的な物と高い物とで刀身にあまり差はなく装飾代みたいなものらしい。覗くだけの俺達とは違って高価な物も結構売れているみたいだけど。


「もう、見るだけ無駄じゃの」


「そうだね」


セイに刃物を見分ける能力はないのでクラマがそう言うならそうなのだろうと思って適当に返事をした。


武器屋巡りはやめて、とりあえず飯を食い冒険者ギルドの場所を聞いて向かうことにした。何がしかの情報収集をするのに冒険者ギルドは都合が良いのだ。


ボッケーノのギルドはアネモスより随分と大きくて人も多かった。柄の悪そうなやつも多いけど。



「あっ、門の所の・・・」 


クラマに剣を切られた冒険者がいた。


「おっ、来たか。ここに居りゃまた会えるんじゃないかと思って待ってたんだ。衛兵に連れてかれちまって悪いことをしたな」


「いや、お前が事情をちゃんと話してくれたからすぐに釈放されたよ」


「そっか。俺はタッパ。Dランク冒険者だ。お前は?」


「俺はセイ。Cランクだよ。剣を切ったのはクラマ、使い魔はぬーちゃんだ」


「俺よりランク上かよ。歳下だよな?」


「18歳だよ。クラマは何歳だっけ?」


「歳なんぞ忘れたわい」


「じーさんはじーさんでいいわ」


「人をじーさん呼ばわりするなっ」


いや、見た目も年齢もじーさんだよね?


「そっか、俺より3つも歳下なのにランク上とかすげぇな」


「俺がというより仲間が強いからね」


「じーさん以外にもメンバーがいるのか?」


「国で留守番してるけどいるよ。ぬーちゃんを入れて6人メンバー。ウェンディーズって言うんだ」


「へぇ。俺達と同じ数だな」


大体4〜6メンバーが多いみたいだしな。


「あれ?もう剣を買ったんだ」


「おう、前から目を付けてたからな。見てくれよかっこいいだろ。切られた剣より上等なやつだぜ」


その剣を見るクラマ。


「フム、確かに装飾は上等になっておるの。しかし刀身は前のとさほど変わらん。ナマクラじゃ」


「何だとっ」


「お前さんが気にいってるのなら別に良いが性能は前と同じぐらいじゃから過信するでないぞ」


「それは本当か?」


「こんな事に嘘を付いてどうなる」


「これ、前の奴の倍以上したんだぞ」


「いくらじゃ?」


「前のが銀貨30枚。これは少しまけて貰って銀貨70枚だ」


「いうことはお前はその装飾に銀貨40枚払ったのと同じじゃ」


「嘘だろ・・・」


「ワシらもここへ来がてら何軒か武器屋を見て回ったがろくなものがありゃせんかったわい。武器のメッカとやらは嘘ではないか」


「俺は嘘なんか付いてねぇっ。ボッケーノの王都は世界一の武器が揃ってんだっ」


俺達のやり取りを聞いてニヤニヤ笑ってる冒険者がいた。


「何笑ってやがるっ」


「お前、田舎モンだろ?」


「う、うるさいっ」


「はん、その面見てりゃバレバレだぜ。お前、この武器通りのどっかの店で買ったろ?」


「当たり前じゃないかっ」


「だから田舎モンって言われんだよ」


「は?」


「お前、田舎者とはいえボッケーノの冒険者のくせになんにもしらねぇんだな」


「どういう意味だ?」


「武器通りで買うのは商人か観光客だ。後はお前みたいな見る目が無いやつとかな。まぁ、見る目ないやつばっかりだが。それに比べたらじーさんは良い目してんな。どっから来た?」


「セイ、どこからじゃ?」


「アネモスだよ」


「あぁ、荒ぶる風神の国か」


そんな呼ばれ方してんのか。


「まぁ、どの神も荒ぶる神だけどよ」


ん?


「あんたは?」


「俺はボッケーノのCランク冒険者、ジールってもんだ。同じCランクと言ってもアネモスと同じとは考えんなよ。ここの魔物は強ぇからな」


「へぇ。国によって違うんだね」


「制度は同じらしいが出る魔物が違うからな」


「ここに来たばっかりでなんにも知らないんだよ。話聞かせてくんない?」


「ならギルドに指名依頼出してくれよ。まぁ、報酬はここの酒代でいいからよ」


ということでボッケーノ国の情報提供の依頼をジールに指名して出した。報酬は銀貨1枚。サカキがいないからこんなもんだろ。


「えっと、あなたも冒険者ですよね」


「そうだよ」


「こんなのギルドで教えますよ?」


「まぁいいよ。実際に冒険に出てる人と話してみたいし」


「はぁ。わかりました。ジールさん、これ受けますよね?」


「リズ、当たり前だ」


指名報酬はポイントが多めに付くらしい。もうランクなんてどうでもいいから詳しくは聞かないけど。



「ありがとよ。あと少しでBの試験が受けられるんだ。せこい真似してスマンな」


「いや、銀貨1枚で酒代足りる?」

 

セイは冒険者ギルドの酒場に金貨を何十枚も払ってきたので相場がよくわからなくなっていた。


「ま、ビールぐらい飲むには十分だ。お前も飲むだろ?」


「俺はジュースでいいよ。クラマは飲むけど」


「俺も混ぜろっ」


と、タッパも混じってきた。ジールは嫌な奴かと思ったらそうではないらしい。受付の女の娘の対応でわかる。


「お前は自分で払えよ」


あ、ジールは今の報酬で俺達の分も払ってくれるつもりなんだ。飯食ったばっかりだからジュースしか飲まないけど。


ジールは唐揚げとウインナーの盛り合わせ、ビールを頼んだ。それを見ていたらちょっと欲しくなったのでウインナーを追加した。


「で、何が知りたいんだ?いい武器屋か?」


「いや、武器はついでなんだよ」


「は?アネモスからワザワザ来て武器がついで?」


「そう。知りたいのは火の神様のことなんだよね」


「神官でもねぇのに他国の神について勉強しにきたってか?」


「まぁ、そんな所」


「お前、変わってんな」


「だろうね」


タッパは皮袋の中の小銭と相談しながら注文しようとしていたので、銀貨1枚超えた分は払うから気にせずに頼めと言っておいた。こいつにも何か聞ける事があるかもしれんからな。





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