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エンディング〜始まりは繰り返す〜

「さ、どういうことか説明してもらおうか」


ヘスティアがセイにそう凄む。


「おい、魔王。いい加減に離れろ」


「うむ、このまま子作りをしてもよいのじゃぞ」


「作るかバカ。早く離れろと言ったんだ」


セイがそう怒鳴るとようやく離れた。


「姫様っ」


消滅したかと思われた四天王が現れた。


「何じゃ貴様ら。随分と小さくなったのぅ」


四天王はアマテラスとヘスティアの莫大な熱と神力で悪魔としての能力をほとんど消され、小さくなり人のサイズになっていた。


「姫様っ 姫様っ」


伸びていた悪魔たちも駆け寄ってくる。妖怪や元の世界の神々と戦った悪魔たちも同じく悪魔としての能力が神力と相殺され人のようになっていた。


「姫様?お前魔王じゃないのか?」


「悪魔の王は妾の父じゃ。父は妾にお前が契約して良いと思えるほど強き者に出会ったなら嫁にいけと遺言を残したのじゃ」


そうホロリと涙を流す。


「以前やってきた魔王は既に滅びておったのか…」


その話を聞いていた大神はあの悪魔の王が滅びたことを驚いていた。


「・・・姫様、王はご顕在でございますぞ」


四天王の一人がそう進言する。


「そんな事はわかっておるのじゃ」


「お前、遺言と言ったじゃないか」


「そうじゃ、この世界に来るときにそう言われたのじゃ」


それは遺言とは言わん。


「あーっ、もうっ。敵対しないなら悪魔の世界に帰れっ。ここはお前らの住む世界じゃない」


「何を言うか。そなたが妾に我がものになれと言うたから契約したのではないか。一方的に契約を破棄することなど許されん。妾は既にお前の大切なものを奪わないと契約をしたのじゃからな」


「マガツヒの俺がそう言ったのはお前を吸収すると言う意味で言ったんだ。嫁になれと言ったわけじゃないっ」


「それは一つになれと言う意味だったのかか?」


「そうだ」


「なら、早く一つになろうではないか。さすれば子もすぐに出来よう」


「そういう意味じゃねーって言ってるだろうがっ」 


また抱きついてくる悪魔の姫。


「離れなさいよぉぉぉっ」


ふぬぬぬぬぬぬっ


「悪魔の姫、もう契約はいいから悪魔の世界に帰れ」


「なぜそのような事を言うのじゃ?」


「俺はウェンディ達を永遠に面倒を見ると先に約束をしている。だからお前を娶るつもりはない」


「そこにいるものたちと先に約束をしたのか?」


「そうだ」


「約束をしたのじゃな?」


「そうだと言っている」


「ならば問題ではないのじゃ。契約は約束より上位の守りごとじゃからの。妾との契約の方が優先されるのじゃ」


確かにそうではある。が、言い負けてはいけない。このままではウェンディ達に何をされるか分かったもんじゃない。


「俺は約束を守りたいからお前を吸収するのを止めたんだ。すなわち、俺の中ではお前との契約はウェンディ達との約束の上に成り立ったものだ。だから約束の方が優先される」


「うぬぬぬぬっ」


良かった。こいつは頭があまり良くなさそうだ。


「分かったら大人しく悪魔の世界に帰れ」


「我のものになれと熱く言った癖になぜそのように冷たくするのじゃ?そなたにとって妾は魅力的ではないのか?妾の世界では超絶モテモテなのじゃぞ?」


そう上目遣いで言って来る悪魔の姫は角や牙があり、少し赤黒い肌の悪魔らしい姿をしていはいるが顔立ちは可愛い。が、そういう問題ではないのだ。


「そうだ。魅力的ではない。俺はウェンディがいいんだ」


「なら魅力的になればいいのじゃな」


悪魔の姫はセイにチャームを使った。


ホワン


セイはチャームに弱い。あっさりと魅了されいきなりデレデレになった。


「ちょっとぉぉぉっ。何いきなりデレてんのよっ」


「セイ、いい加減にしやがれっ」 


「なんかムカつく」


ウェンディ達にぶん殴られてセイの魅了が解けた。


「痛ってぇぇっ。なにすんだよっ」


「妾のチャームを解くとはお主らも中々やるの。ほれ、もう一度じゃ」


その後、チャームをかけられてはデレてウェンディ達に殴られを繰り返すセイなのであった。



「あんた達もいい加減におし、セイが死んじまうよ」


チャームを重ねがけされてなかなか解けなくなって来たセイは気を失うまでヘスティアにしばかれた。タマモが見るに見かねてセイを抱きしめて奪ったのだ。


「だってセイの野郎がよぉ、悪魔にデレやがんだぜ」


「しょうがないさね。あんた達も神の力を使ってセイにくっついてたんだ。悪魔も悪魔の力を使うさね」


タマモは悪魔の姫をジロリんと睨んだ。


「あんたもいい加減におし。セイをおもちゃにするんじゃないよ」


「妾を魅力的に思えれば契約がスムーズに行くではないか」


「あんたがした契約はセイの意志に反するものだよ。我がものになれといったが結婚してくれと言ったのかい?」


「結婚してくれとは言ってはおらぬが…」


「セイが言った我がものになれと言うのは嫁ではなく下僕になれと言った意味さね。すなわちお前はセイの従者さね」


「妾が従者…」


「そうさね。従者は主人の言うことを聞くのが道理。セイの命令は元の世界に帰れということだよ、解ったかい?解ったならとっとと命令を聞いて帰るんだよ」


タマモはセイよりも圧倒的に相手を納得させるスキルが高い。他の悪魔たちにも姫がセイに下った事を知らしめ、主人の命令に従い元の世界に帰れという命令を伝えた。


「姫様…」


四天王が呼びかけるも悪魔の姫様はタマモに言い返せずただうつむくだけであった。



「よう目が覚めたかよ?」


ウェンディに膝枕をされていたセイはヘスティアにペチペチされて目を覚ました。


「痛てててて」


ヘスティアにしばき回された傷が痛むセイはポーションを飲んだ。


「セイ、悪魔共にどういうことか説明しておいてやったさね。お前の口からも悪魔共に元の世界へ帰るように命令しておやり」


セイが気絶している間の出来事をタマモが説明してくれた。


「さすがタマモだね」


「いいから早く命令おしっ」


「悪魔共に命令する。元の世界に戻り、二度とこの世界に来るな。これは命令だ、解ったな」


悪魔の性質は契約を守るのと序列がきっちりと決まっていることだ。悪魔の姫の軍勢は姫の主人となったセイの言葉にハイと答えた。


「そなたの名前はセイと言うのじゃな?」


「そうだ」


「では主として妾にも名前を付けよ」


「お前は名前がないのか?」


「悪魔の最上位種である妾は仕える者がおらなんだから名前を持たん。妾に名前を付ける事により正式に主となれ」


名前か・・・


悪魔の王様が魔王。こいつは悪魔の姫だから魔姫・・・マキでいいか。


「じゃあ、お前の名前はマキだ」


そう名付けると悪魔の姫は人間のようになった。少し赤黒かった肌が人の肌のようになり、角や牙が小さくなったのだ。もう悪魔というより小悪魔だ。


「では主、我らはそなたの命令により元の世界に帰る事にする」


「そうか。悪魔に言うのもなんだけど元気でな。もうこっちの世界に来ようとするなよ」


「わかったのじゃ」


そう寂しそうな言い方をしたマキに少し同情の念が湧く。バンパイアの話では悪魔の世界は何もない退屈な世界だと聞いていたからだ。


いかんいかん、可愛いとはいえこいつは悪魔であり、この世界を脅かしたものだ。それにウェンディを殺るとか言いやがったからな。ここから消えてもらうのが当然だ。


そう心の中で呟き、悪魔達が帰るのを待った。


・・・

・・・・

・・・・・


「早く帰れよ」


「それはこちらのセリフじゃ。早くゲートを開かぬか」


「ん?お前らが開くんだろ?」


「妾達がゲートを開くのにどれだけの時間と力を費やしたか知らぬのか?そのゲートも主が消滅させたではないか。主らがゲートを開かねば妾達は帰れんぞ」


え?


「大神、こいつらの世界へ繋げるゲートを作れる?」


「無理じゃな。繋がるのを防ぐ事はしてきたが繋げる方法は知らぬ」


マジかよ・・・


「マキ、なんとかゲートを繋げる方法はないのか?」


「こちらから開けぬとなると、しばらく妾が帰らぬと父が心配して迎えにくるじゃろう。それまで待つしかあるまい」


「しばらくとはどれぐらいだ?」


「妾がここまで育つ時間ぐらいじゃろうの」


「お前いくつだ?」


「10万17歳じゃ」


10万て・・・。お前は蝋人形を歌った閣下か。


しかし10万年とか全く想像がつかん。俺にとっては永劫の時と変わらんぞ。


「ということは・・・」


「そなたは妾の主となったのじゃ。元の世界に帰れるようになるまで面倒を見る義務があるぞ」


そう言われたセイはなんとかしてくれとチラリとタマモを見る。しかしタマモも良い案が出てこないようで肩をすぼめて両手を上に上げた。


「仕方がないのう。迎えが来るまで一緒におるのじゃ」


そう言って笑顔になったマキは腕を組んできた。


「離れなさいよおぉぉっ」


そう叫ぶウェンディ、指をポキポキと鳴らすヘスティア。拗ねるアーパスにやれやれといった顔のテルウス。


「セイよ、ちと困った事になったの」


「全くだよ大神。なんとかしてくれよ」


「困ったとはそのことではない。ワシも今回の事でほとんどの力を使うてしもうた。辛うじて神の恩恵を各地に与えるぐらいしか力が残ってはおらん」


「どういうこと?」


「他にも神がやらねばならぬことはある。ワシの力が戻るまでしばらく代行を頼む」


は?


「俺にそんな事が出来るわけないだろうが」


「セイは娘達全員の力を持っておるから問題なしじゃ。頼んだぞ」


「頼んだぞって、どれぐらいの期間なんだよ?」


「数千年といった所じゃ」


10万年と比べたら短いけどそれでも永劫の時と変わらんぞ・・・


「セイ、ウチらの仕事もやってな。ウチも月読も力を使い果たしてもうたさかい」


「アマテラスの仕事?」


「そや、後で引き継ぎするわ」


「セイ、ワシらも皆神力を使い果たしてもうたからな、ワシらの分も頼んだで」


「えべっさん、それどういう意味・・・」


えべっさんがそう言うと次々にワシも、俺も、私もと元の世界の神々が自分の仕事をやれとセイに迫った。


「無理に決まってんだろうがっ」


神々にブチ切れるセイ。


「セイ、お前は全員の加護持ちやから大丈夫やで。そやから立派に代行を勤める事が出来るんや。なぁに心配せんでもまた神力が溜まったら皆もちゃんと元に戻るがな」


「えべっさん、神力が貯まるってどれぐらいの期間なんだよ?」


「千年くらいちゃうやろか。人間が昔くらいに真剣に感謝のお祈りしてくれたらの話しやけどな」


「今の状態ならどれぐらいかかるんだよ?」 


「どれぐらいやろな?セイが代行してくれてるときに信仰心を高めてくれんと無理かもしれんなぁ」


「はぁーーーー?」


えべっさんにそんな説明を受けている時に元の世界の神々は良かった良かったと嬉しそうにオーガ島へと戻っていく。


これって俺がこの世界に来たきっかけとなったやつ。ウェンディを女神に戻す為にやったことと同じ・・・。元の世界で神々への信仰心を高めて元の神に戻せというのか?


女神の面倒を見るだけでなしに2つの世界の神の面倒を見ろですと?


・・・

・・・・

・・・・・


「出来るかーーーっ」


セイはウェンディ達とマキに取り合いをされながら空に向かって叫ぶのであった。



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