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凶星の意味

「きっ、気持ちが悪い・・・」


あまりにも一気に大量の加護が付いたことによりその加護の知識が頭の中に強制的に流れ込んでくる。


「ど、どうしたの?」


いきなり真っ青な顔になって吐き気を我慢しているセイの事をウェンディが心配する。


「ふぅ~ ふぅ~っ」


ウェンディが一生懸命癒やしの息吹を掛けてくる。


「うっひゃっひゃっひゃっ やめろっ」


耳にふぅふぅされてくすぐったくて笑い転げるセイ。


「おっ、喜んでやがるな。おーいっ、セイが加護を受け入れたぞーっ!」


「うぉぉぉぉっ。これでここで思う存分遊べるぞーーっ」


ええじゃないか♪ええじゃないか♪ここに居てもええじゃないかっええじゃないかっ♪


自分の仕事をセイが代行すると思った神々はええじゃないかを踊りだす。


「ちっ、違うっ。誰が国中の神の代行なんて出来るんだよっ」


セイはそう叫ぶけれど神々はええじゃないかを踊り続けて誰も聞いちゃいない。


「えらいことにならはったねぇ」


アマテラスは呑気にそんなことを言ってきた後にエイッと加護をなすりつけた。


「これでウチとヘスティアの加護が混ざったんやろ?あんたほんまモンの太陽にならはるかもしれんなぁ」


なんてことをしてくれるんだ。


「では私の加護もやろう」


いきなり後ろに立った月読まで加護をなすりつけやがった。


「これで盤がなくとも先読みが可能になったぞ」


何をしやがるんだ。


うげぇぇっ、アマテラスと月読の加護は強烈だ。ひときわ強いモノが流れ込んで・・・


セイはその場で気を失ったのであった。




「ここはどこだ?」


セイが目覚めるとあのええじゃないか狂乱が収まり静かになっている。


「セイよ、目が覚めたか?」


「ここどこ?」


「ワシの部屋じゃ」


は?


「もしかして大神?」


目の前に立っている爺さん。白い布を肩掛けに纏った仙人みたいな人でなんかイメージ通りの神だ。


「さよう」


「もしかして俺は死んだのか?」


「そうとも言えるな」


「ん?そうとも言えるとは?」


「お主は人ではなくなったのじゃ」


「えっ?」


「元の世界の神々の力を得たであろう?」


「あー、皆に加護をなすりつけられましたね」


「恐らくあの神々を作ったモノが自分の力をそれぞれに分け与えていたのであろう。ワシがウェンディ達にしたようにな」


「それで俺はどうなったの?」


はぁ〜♪


なんか大神が琵琶みたいな物を弾きだしたぞ?


「神のようで神ではない、ベンベン♪人のようで人ではない、ベンベン♪それは何かとたずねたら♪」


なに落語家の大喜利みたいにしてんだよ?


「はぁ、わからんわからんわからん♪」


なんだよそれ?


「わかんないってどういうこと?」


「お主はこっちの加護というか力も持っておるからの、それに元々なにやら混じっておるようだしワシにもわからんのじゃ」


「俺は得体のしれない何かになったってこと?」


「そうじゃ。しかしちょうど良かったワイ」

 

「何が?」


「ほれ、ワシが結界を張っておったのは知っておるじゃろ?」


「そうですね」


「間もなく破られる」


「は?」


「向こうも長い年月を掛けて力を溜めておったようでの。力を分散したワシでは抑えきれぬようじゃ。ほれ、ここを見てみよ」


大神が空間にスクリーンのような物を映し出した。


あっ・・・、空に薄っすらと転移の魔法陣みたいなのが見える。山の大きさと比較するとめちゃくちゃ大きいじゃないか。それにあの場所はドラゴンスポットか?


「見えたか?」


「はい・・・」


「向こうも総力を集結して挑んでくるじゃろう。前回みたいに追い返されまいと力を付けたはずじゃ。もうワシ一人の力ではどうにもならぬのでないかと思っておる」


「ウェンディ達を外界に居られるようにしてくれた影響?」


「それは奴らが来る時期を少し早めただけじゃろうの。いずれはこうなっておったはずじゃ」


「どうすんのこれ?」


「お主にも手伝ってもらわにゃならん」


「俺が大神と引き分けた奴らに通用するわけがないじゃん」


「今のお前なら大丈夫じゃ。もしお主が嫌じゃというならウェンディ達をワシが吸収して完全体にならねばならん。それでも勝てるかどうかわからんがの。もし勝ったとしてまたウェンディ達を作り直しても見た目は同じに出来るが同じ存在にはならんじゃろうの」


まじかよ・・・


「俺がやればウェンディ達は今まで通りに存在出来るんだな?」


「勝てばの」


「あれはいつ開く?」


「あと半年といったところか」


「わかった。俺は外界にはどうやって戻れる?」


「もう想像しただけで瞬間移動が出来るはずじゃ。ドアを開ける要領でよかろう」


そう言われたのでオーガ島に戻った。


「セイッ セイーーっ」


オーガ島に戻るとウェンディが泣きながら俺の身体を揺さぶっている。


あれ?


「ウェンディ、大丈夫だ」


「うわぁぁぁんっ。死んだかとおもったぁぁぁ」


涙や鼻水やなんやらでぐしょぐしょのウェンディが顔を擦りつけてくる。お前、俺で拭いているだろ?


ヘスティアもぐしゅぐしゅ顔で抱きついてくるしどういう状況だったんだ?


二人が落ち着いた所でサカキに何があったか聞いてみることに。


「お前がぶっ倒れた後、息もしてねぇしピクリとも動かねぇし本当に死んじまったみたいだったんだよ」


「その割には落ち着いてんな?」


「ひょうたんには妖力が流れ続けてたからな。死んじゃいねぇのは分かってた」


なるほど。


「俺が倒れてからどれくらい時間がたってる?」


「小一時間ってところか。神達もなんかやべえ事になったかもしれんと大人しくしてやがるぞ」


それは良かった。反省して早く帰ってくれないかな。


セイはアマテラスと月読を呼び、3人で皆に一旦元の世界に帰れと命令をした。神々が反発するかと思ったがなんとなくセイの存在自体が変化をしたのを感じたのか大人しく命令に従い帰って行ったのであった。


アマテラスと月読はここに留まらせ、サカキやタマモたちを連れて屋敷に戻った。



「え?悪魔の野郎たちが攻めて来やがんのかよ?」


「近々来るらしい」


セイはアーパスとテルウスも呼び現状を話しておく。


「よーしっ、今回は俺様達もやってやんぜっ」


「ダメだヘスティア。悪魔達との決戦は俺と大神でやる。タマモ達は妖怪達を連れて元の世界に避難して。それとウェンディ達も連れて行ってくれ」


「おいおいっ、セイは一人でやろうとすんのかよ」


「そうだ。悪魔達は力を溜めて総力を上げてやってくるらしい。恐らくサカキ達の力は通用しない」


「どういうこった?」


「俺は神々の加護をもらったろ?月読の加護も」


「先が見えてんのかよ?」


「頭の中で戦いのシュミレーションをすると未来がいくつにも分かれていくのがわかる。共通しているのはサカキ達の力は通用しないってことだけだ」


「なんだと?」


「下っ端はまぁサカキ達でも大丈夫なんだけど強い4人とめっちゃ強い1人が居てね、そいつらにはサカキ達の攻撃が通用しないんだ。恐らく神の力がないと攻撃が効かない」


「ちっ、負の力を持ってやがるということだな?」


「そう。だから下っ端は後からでも掃討出来るけど、問題は強い5人なんだ」


「勝てる未来はあるのか?」


「見えているのは負ける未来と見えない未来だけ。見えない未来が勝てる可能性のあるやつなんだと思う。それも目まぐるしく変わるから実際にやってみないとわからないってのが正直なところ。向こうにも先読みの力を持った奴がいるんじゃないかな?」


「なるほどな。で、ウェンディ達も連れてってくれということだな?」


「そう。負けたら残念ながらこの世界の人間は救えない。人間の世界を作り直そうにも悪魔達に乗っ取られるからそれも無理なんだ」


「負けたらセイはどうなんだよ?」


「負けた後は何も見えなくなるから消滅するんじゃないかな?」


「そんな事があってたまるかっ。相手には神の力があれば効くんだろうがっ。俺様達もやってやんぜっ」


「あのなぁヘスティア、負けたら一緒に消滅するんだぞ?」


「へんっ、死なばもろともってやつじゃねーかよ。どうせセイがいなくなった世界に興味はねぇ」


はぁ、今は何を言っても聞きそうにないな。後で冷静なテルウスに皆を避難させるように言っておこう。最悪捕縛して無理矢理向こうに連れて行ってもらえばいい。俺が死んだら捕縛も消えるだろうし。


セイは世話になった人達にこのことを伝えるのは止めておくことにした。知ってどうなることでもないし、勝てば何も知らずに終わり、負ければ人間は滅ぼされるのだ。



皆が寝しずまってもセイは眠くならないので露天風呂に入って凶星を眺めていた。加護をなすりつけられるのを暗示しているのかと思ったがどうやらあの凶星は俺が死ぬことを暗示しているようだ。未来を見ると自分が死ぬ時に凶星が流れ星となって消えていくのが見えている。



ふぅ、どうしたもんかね。なんとなくこの騒がしい生活がずっと続くかと思っていたわ。そんな事を思っているとちゃぽっと後ろに誰かが入ってきた。


「ウチらも手伝ったるわ」


「アマテラス、入ってくんなよ」


「私もいるから大丈夫だ」


月読もいるのか。


声をかけられても振り向かないセイ。


「恥ずかしがりなや。ウチら元々は一つやったんやで」


「俺にはマガツヒの記憶なんてないぞ」


「せやかて」


「それに手伝うって言ってくれるのはありがたいけどダメだ。アマテラスと月読が消滅したら向こうの世界はどうなるんだよ?」


「さぁ、どうにもならへんのちゃう?科学が進歩してウチらの存在意義ももうあらへんし」


「いなくなって初めて解る事もあるだろうが。そうなってからじゃ手遅れなんだよ」


「それはセイにも同じことが言えるんちゃう?」


「何が?」


「あんたがおらんようになったら何某かの影響でるんちゃうん?向こうの世界にも」


「俺はマガツヒが混じってるかもしれないけどマガツヒじゃないだろ?それにそもそもマガツヒは厄災じゃないか。消えても問題ないだろ?」


「そうか?厄災は厄災で意味のあるもんやと思うで。意味ないんやったら存在してへんって」


月読の先読みの力は万能ではない。自分がいなくなった後の未来は見えないから元の世界がどうなるかはわからない。


「月読、俺がいなくなったあとの向こうの世界はどうなる?」


「私にも見えんな」


「どうして?」


「お前が滅びるということは私も滅びるからだ」


「なんでだよ?」


「お前は混じりと言っているがすでにマガツヒはお前の中にしか残ってはいない。我ら3人は一つなのだ。どれが欠けても3人とも滅びる」


えっ?


「そやねんて。そやからウチらを避難させても無駄やねん。そやったら力を合わせて勝つ方がええんちゃう?それともあんたも向こうに帰える?ほならみな無事や」


「そんな事をしたらこっちの人達が全員死ぬのが確定するじゃないか」


「ほなウチらと力を合わせて勝たなあかんなぁ」


セイはアマテラスの方へは向かず二人の力を借りるシュミレーションをするのであった。


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