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ようやく試練

「ここだろうな」


ようやく最深部まで到着したケビン達。


「食料ぎりぎりだったね」


「もう何も気にせずにたくさん食べたーいっ」


ラーラの言う通り食料がギリギリで節約につぐ節約をしてきてオルティアは不満が爆発していた。


「今日はここで一泊して体力と魔力を回復してから挑むぞ」


3人は飯を食って回復をしてから挑む事にしたのであったがここの所塩味のじゃがいもスープばかりでオルティアはグチグチと文句を言っていた。


「もうっ、そんなに文句ばっかり言うなら食べなくていいわよっ」


「そんな言い方しなくていいでしょっ。肉よ肉っ、肉を食べないと力が出るわけないじゃないっ」


「俺も賛成っ。ラーラ、まだ肉は残ってんだろ?」


「あるけど帰りはどうすんのよ?このダンジョンは肉を落とす魔物が出ないのよ。今食べちゃったら帰りは本当にじゃがいもと玉ねぎしかないんだからねっ」


「帰りのことは帰りに考えようぜ。サクッと試練を終わらせたら帰りは楽勝だしな」


ケビンとオルティアが結託して肉を出せとせまり、渋々ラーラは肉を出したのであった。


「ラーラ、お前反対していたくせにガツガツ食ってんじゃねーか」


「どうせ全部オルティアに食べられるぐらいなら自分で食べるわよっ」


結局残りの肉を全部食べた3人は明日の試練に備えて眠りについたのだった。



翌朝、試練の間に入るとすでに灼熱状態だった。


「遅すぎるぞテメーら」


両脇にはすでにボロボロのイフリートとサラマンダー。来るのが遅いと機嫌の悪いヘスティアにさんざん可愛がられていたのだ。


「ヒッ」


ヘスティアの機嫌の悪さを一発で見抜いたオルティアはコソコソと逃げ出そうとしたが入り口を炎で塞がれる。


「オルティア、覚悟はいいな。セイにイフリートをお前らにも見えるようにしてもらってあるから存分に戦え」


もうどこにも逃げ場がない3人。本来の試練はサラマンダーだけだがドラゴン防具を身に着けた3人にはイフリートも参戦。その上、ヘスティアの八つ当たりをさんざん食らったのはこいつらのせいだと怒りの矛先をケビン達に向けていた。


いきなりイフリートの炎攻撃が戦闘の口火を切る。


ゴウゥゥゥゥゥ


「きゃぁぁぁあっ」


殺す気がないとはいえ、炎の大精霊の力はえげつない。3人はドラゴン装備があるとはいえ火傷を追う。


「ポーション飲んでっ」


3人はセイから貰ったポーションを飲み、ラーラは土魔法で壁を作った。


イフリートは炎を壁に吹き付けていき、サラマンダーは溶岩を纏った身体で丸まり体当たりしてきた。


ぐわっしゃんっ


全力で出した土壁をいとも簡単に壊された3人は固まっていると危ないと判断して散開する。


「ラーラ、あちこちに土壁を出してくれ」


ケビンの指示で土壁をたくさん作るラーラ。オルティアはイフリートの炎を風魔法で吹き飛ばそうとして竜巻をだした。


「熱いっ熱いっ熱いっ」


ドーム状の試練の間に渦巻く炎の竜巻。そこはまるでオーブンの中のようになり、熱から逃げ場が無くなる。


「ラーラ、冷やしてくれっ」


ラーラが大量の水を出して熱を下げることを試みる。


ボバっ ジュワワワワ〜


軽く爆発を起こす水蒸気。そしてドーム内は一気に高温の水蒸気で包まれていく。


「熱っちぃぃぃっ!」


「死ぬっ 死ぬっ 死ぬっ」


オルティアは慌てて風魔法で冷やそうとするがそれが返ってロウリュのようになり3人はあっけなく撃沈した。



「弱すぎんぞお前ら・・・」


今まで待たされた怒りで爆発しそうだったヘスティアはあっさり蒸し焼きにされた3人に呆れて怒りの熱が冷めていった。


このままだと3人が死にかねないのでヘスティアはセイを呼びに行く。


「終わったのか?」


「死んだかもしれんから来てくれ」


ええっーーっと驚いたセイはドアで試練の間へ繋げる。


「あっつっ!!」


ドアを開けると高温の水蒸気が吹き出してくる。慌てて3人を試練の間から救出してポーションをかけまくった。


多分肺の中まで火傷をしているだろうから無理矢理口を開けてポーションを飲ませた。


「ゴホッ ゴホッ」


良かった。3人とも生きてた。


「大丈夫か?」


「あっ・・・おにーちゃん。うわーーんっ、死んだかと思ったぁぁぁっ」


セイの顔を見て泣き出すラーラ。ケビンとオルティアも意識を取り戻してガタガタと震えている。死の恐怖を存分に味わったのだろう。


ヒックヒックと泣きながらセイにしがみつくラーラをふぬぬぬぬっと引き剥がそうとするウェンディ。怪力ラーラはそんな事では離せない。


「ヘスティア、やり過ぎなんじゃないのか?あれ、死んでてもおかしくなかっただろうが」


セイはやりすぎだとヘスティアを叱る。


「だってよぉ、ありゃ自爆だぜ自爆」


「自爆?イフリート来いっ。話を聞かせろ」


「お呼びでございますか」


「状況を教えろ」


イフリートの話によるとオルティアの風魔法とラーラの水魔法であんな事になったことを聞かされる。


まぁ、確かに自爆っぽいな。


「ドラゴン防具を身に着けているので多少やりすぎても問題ないとヘスティア様が・・・」


ガスッ


「俺様のせいにすんなっ」


イフリートに回し蹴りを食らわせるヘスティア。いや、イフリートはヘスティアに言われた通りにやっただけだろう。


「状況はわかった。今度試練を受けるときは俺も立ち会う」


「お願い致します。出来ればその・・・初めからヘスティア様とご一緒に居て頂けると・・・」


よく見たらイフリートもボロボロだな。これはヘスティアにやられたのか。


「わかった」


そう返事をするとイフリートはそそくさと帰っていった。


今いる場所はアクアの虹の街だ。ようやく泣き止んだラーラを引き剥がしてからドアでダーツを呼びに行き、オルティアの面倒を見させることに。他のメンバーも呼び寄せてアーパス教会横の家で飯にすることにした。


「まだ試練を受けるには早かったか」


シーバス達にそう言われて返事をしないケビン。


「今回はイフリートもいたから難易度は相当上がっているし、能力的にも相性が悪いからね」


セイはフォローするが戦い方が悪かったのは事実だ。


「ま、それでも上手く戦略を立てられずに負けたんだ。自分たちが強くなったと伸びた鼻を折られて良かったな。相手が魔物だったら本当に死んでたぞお前ら」


自分達もよくわかっていることを改めて言われて面白くないケビン。


「言われなくてもわかってるよっ」


「じゃあ、どうすりゃ良かったんだ?」


「オルティアがパニックになって風魔法なんか出すから・・・」


「仲間のせいにすんな。そもそも試練の間に行くのにどれだけ時間かかってんだよ?広くなってるとはいえ遅すぎだろうが」


「宝石に目がくらんだケビンが悪いんでしょっ。私のせいにしないでよっ」


オルティアは責任を回避。


「お前だって何回も罠に掛かってただろうがっ」


「あんたが罠に落ちた時に助けてあげたのにそんな言い方するわけっ」


「やめろ二人共。お前らなんにも分かっちゃいねぇからこのザマなんだろうが。試練を受けに行くのに宝石なんかにかまってる暇なんかねぇだろうが」


「まったくだぜ。待ちくたびれてイライラさせやがって」


ヘスティアは腕を組んでそう言う。セイは二人に諭すように話す。


「ケビン、オルティア。お前らはどっちもどっちだ。今回試練を受けに行く前に相手はイフリートとサラマンダーということは分かってただろ?それにヘスティアの性格も」


「はい」


「ヘスティアを待たせずにスムーズに試練の間に辿り着いていたらもっといい勝負になるぐらいに手加減をしていてくれたはずだ。あれは試練であってお前らを倒そうとしている戦いではないからな。それとオルティアがパニックになって風邪魔法を出すのは想定内だろ?試練の間に入る前に皆で作戦会議をしたか?」


「してない・・・」


「だろ?ちゃんと作戦を立ててやればイフリートやサラマンダーに対しても風邪魔法も使い道がある。自分たちは強くなった、ドラゴン防具もあると思ってナメて挑んだのが敗因だ」


「はい・・・」


「もっと力を付けて自惚れを捨てられたらまた試練を受けろ」


そう言って聞かせたセイはご飯を食べ終わった後に、ギルマスと奥さんの所に今回の報告をしにいったのであった。



「二人にはいい薬になったわねぇ。ちょうどいいタイミングで鼻を折ってくれたわぁ」


ニコやかにそう答える奥さん。


「そうだな。自信が付くのはいいことだが過信に繋がると死ぬからな」


ギルマスも敗北を知ることは悪いことではないと言った。


「3人とも落ち込んでいるけどね」


「落ち込むより反省しやがれってんだ。まぁ、あいつらはこれからボッケーノの冒険者を代表するような立場になってもらわにゃならんからな。修行のやり直しだな」


ケビン達の修行のやり直しかぁ。どこでやるのがいいかな。そうだオーガ島に住まわせて神様達にやってもらうか。毘沙門やサカキも喜んでやってくれそうだし、他の神も混じって色々と楽しんでやってくれるかもしれん。


神様達の相手をケビン達にさせておけばこっちも楽だなと悪いことを考えるセイなのであった。





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