デコイは二人で
「イヤァァァァっ」
酷ぇ、オルティアを囮に使ってやがる。
オルティアがドラゴンをおびき寄せ、ラーラの魔法攻撃が届く範囲まで降りてきたら土の散弾でドラゴンを落とし、ドラゴンの足をチーヌとダーツ、ケビンが攻撃して態勢を崩す。コケたところにシーバス、ガッシー、カントが総攻撃って戦法だ。
「ラーラ、逃げられるっ。土の杭で羽を固定してくれっ」
「ハイっ」
ドガガガガっ
なかなか貫通しないドラゴンの身体は諦めて比較的薄い翼を集中的に土の杭を打ち込むラーラ。そのうちの何本かが羽に刺さり暴れたくるドラゴン。
あれで翼がダメになったら討伐可能だな。
各自が使うメラウスの武器とエンシェントドラゴンの牙剣はドラゴンにも通用するのでそのうちの倒せるだろう。が、ブラックドラゴンやファイヤドラゴンにはラーラの土の杭は効かないかもしれんな。
サカキ達はどうしてるかというと、ドラゴンがタメを作って口を開けた所に土の玉を当ててやがる。ほんの少しでもズレたらブレスで焼かれるというのに怖いもの知らずだな。
流石のドラゴンの硬さも口の中までは硬くないようで、土の玉を食らうと痛がって落ちてくる。そこをサカキは足を狙って発勁でこかせてから身体にも発勁。流石だな。
毘沙門も口の中に玉をぶつけて落とした後に三叉槍で滅多刺しにして頭を下げた所を踏みつけて延髄に止めか。守護神と呼ばれるだけの事はあるな。
「悪鬼も毘沙門も単独でようやってはるねぇ」
「アマテラスは単独で倒せる?」
ヘスティア達はお茶とお菓子を食べながら皆の戦いぶりを見ていた。
「ウチが単独で本気出したらこの辺みんななくなるやん」
「へぇ、アマテラスってそんなに力あるのかよ?」
「ウチは太陽神やしなぁ」
太陽の熱量をここで出されたら皆蒸発するだろう。絶対にやめてくれ。
「よーし、俺様と勝負しようぜ」
「ヘスティア、やめろ。お前らが熱勝負なんかしたら世界が蒸発するだろうが」
「いいじゃねぇかよ」
「いいことあるかっ。勝負はゲームだけにしとけ」
「しょうがねぇなぁ。アマテラス、屋敷で勝負しようぜ」
「ええで、なんで勝負する?」
「サマーソルトキックを食らわしてやんよ」
「ほならウチはジャイアントスイングを御見舞したるわ」
ヘスティアとアマテラスはゲームをするということでここで離脱。扉で送っておいた。
「私はカントの応援でもしに行こうかしらぁ」
奥さんは皆が苦戦している所へ参戦するようだ。ラーラに戦い方を教えに行くつもりなのかもしれない。
しばらく見ているとノーマルドラゴンをようやく倒せた。しかしアイテムは肉。残念ながらお目当ての物ではない。
一度戻ってきて休憩。
「セイさん、みんな酷いんですぅ」
「お前逃げてただけだろ?」
「違いますっ。囮ですよ囮っ!私にドラゴンを誘き寄せる役目をやらせてるんですっ」
そう言ってキッとチーヌを睨む。
「お前が一番逃げ足が速いんだから適任だろ?」
チーヌのやつよく結婚しようかという相手にそんなことを言えるもんだ。
「ほら、これ飲んどけ。休憩が終わったらまたやらされんぞ」
「嫌ですっ」
「ヘスティアの試練を受けるのにドラゴンの防具はあったほうがいいぞ。試練の場所は閉鎖空間だから逃げ場がほとんどないからな。今出たのは肉だろ?」
そういうとチラッと皆をみるオルティア。皆は早くポーションを飲めという雰囲気だ。
ガチっ
「痛てててっ、指ごと噛むなっ」
行き場の無い怒りにも似た感情をセイの指にぶつけたオルティアはまた走って行ったのであった。
奥さんが参加してからはドラゴンを下に落とす効率が一気にアップする。やろうと思えば土の杭を貫通させられるのだろうけど、あえてラーラと同じぐらいの威力に落としている。それに、物量が違うし重みで落とす方へと切り替えていた。
ドラゴンにどんどんとオモリを乗せるようにしていく奥さん。首、翼の付け根、足とかに岩の輪っかを嵌めていく。奥さんってめっちゃ器用に魔法を操るんだな。ラーラも流石にあそこまでコントロール出来ないのだろうな。
ドラゴンが嫌がって上昇しようとしているところにオルティアが風を巻いてバランスを崩すと落ちてきた。後は武器を持っている男達の出番だ。
倒したドラゴンから出たのは血。残念、また外れだ。
サカキ達も暴れまくったのでドラゴンが警戒して下に降りてこなくなったので今日は終了。
「屋敷で晩飯にする?」
「そうしてくれ。もうクタクタだ」
カントは疲労困憊って感じだな。
サカキ達も呼んで屋敷に戻った。砂婆が飯を作ってくれている間に風呂に入ってから宴会。
「カッカッカッカッ、俺様の勝ちだな」
「はぁ?同じ数だろうが」
「お前のは全部ノーマルだろ?俺のはブラックが混じってるからな」
サカキと毘沙門はトータル4匹ずつ倒したがサカキのは1匹ブラックドラゴンが混じってたらしい。こちらの戦利品はほとんどが皮だ。
「なんでサカキ達のはアイテムが皮なんだよっ」
「知らねぇよ。欲しけりゃ持ってけよ」
「いーや、自分達で手に入れる」
「私が欲しいのはピンクの皮です」
ラーラはウェンディ達が着ていた奴が欲しいと言ってたからな。ノーマルやブラックではあんな染色は難しいだろう。
「明日もやるの?」
「当ったり前だろ?俺達ゃ目当の物が捕れるまでやるぜ」
「サカキ達はどうすんの?」
「ブラックの方が強いとか聞いてなかったぞ。明日はブラックのみで勝負だ。良いなサカキ」
「いいぜ、負けた方の奢りで酒飲み放題な」
お前はいつも飲み放題だろうが?
翌日ドラゴンスポットに行くも、警戒したドラゴン達ははるか上空を飛び降りてこない。
「ちっ、ビビリやがったか。どうするよ?」
「オルティア、お前一人で行ってくれ」
「嫌よっ。チーヌも来てよっ」
「しょうがねーなぁ」
皆は一度洞窟に戻り二人でドラゴンを誘き寄せる事に。しかしドラゴン達の警戒は緩まない。
「ダメだ。降りて来ねぇわ」
諦めた二人は戻って来た。そのまま様子を見ていても降りてくる気配が無い。
「昨日はもっと集まって来たよな?」
「ソースの焦げる匂いにつられたのかもしれないね。焼きそばを焼きだしてから数が増えたろ?」
「よしっ、いいことを思いついた。セイ、ソースをくれ」
「また焼きそばを焼くのか?」
ソースを出してチーヌに渡す。
「いや、こうするんだよ」
びしゃっ
「キャァァァッ。何すんのよっ」
チーヌは無慈悲にオルティアにソースを掛けた。
「ほら行けっ。これで寄って来るだろ」
「嫌よっ」
「いいから早く行けって」
「道連れにしてやるっ」
「バカッ、やめろっ」
「このっ このっ」
ソースまみれのオルティアはチーヌに抱き付き二人でソースまみれになったのであった。
「覚えてろよっ」
「それはこっちのセリフよっ」
二人でぎゃーぎゃー言いながらドラゴンを誘き寄せる為に出ていくと匂いにつられてドラゴン達が降りてくる。
「来たぁぁぁっ」
「こらっ、待てっ!一人で逃げんなっ」
オルティアを庇おうとしたチーヌに対してオルティアは一目散に逃げ出す。あいつら大丈夫か?
シーバス達はそれを見て駆け出し、サカキ達はブラックを目指して飛び出して行った。
「奥さんは行かないの?」
「もうラーラに任せるわぁ。ケビンはカント達が手本を見せてるし」
奥さんもウェンディ達と一緒にお茶を飲みながら皆を見物。
ラーラは奥さんほど魔力操作に長けていないので岩で固定する方法を取らず岩をドラゴンの上に落として物量でやっていた。まるでドラゴンに隕石が降ってきているみたいだ。
「落ちたっ」
「よしっ、後は任せろっ」
チーヌとオルティアは他のドラゴンに追われているが残りのメンバーで落ちたドラゴン討伐。ラーラは無慈悲に岩をドコドコとドラゴンの上に積み上げていく。
そしてようやく皮が出た。ノーマルドラゴンのだけど。
「イヤァァァァっ」
オルティアはピンクドラゴンに追われているのでラーラはすかさずピンクの上にも岩をドガガガガと降らせた。休むまもなく次の討伐だ。カントとかヘロヘロになってるけど大丈夫だろうか?
ケビンとダーツが足を集中的に攻撃してシーバスとガッシーが首を狙う。カントは他のドラゴンから攻撃されないように後方を守っていた。
「はぁー、疲れたぜ」
「チーヌ、お前は戦闘に参加しないのか?」
「俺があっちに参加したら他の奴を呼び寄せるだろうが」
「他のやつを引き付けておけよ」
「オルティア一人で十分だ」
相変わらず酷いやつだ。
ズドドドドドドっ
「馬鹿野郎っ、引き連れたままこっちにくんなっ。あっちにいけっ」
「熱いっ 熱いっ 熱いっ」
ファイヤドラゴンを引き連れてこっちに逃げてくるオルティア。
しょうがないなぁ。
セイは剣を抜いて妖力を注ぐ。
「オルティアっ、飛び込めっ」
ズザッと洞窟内に飛び込んだ所を見計らってセイは剣を振って妖力を飛ばした。
スパンっ
ファイヤドラゴンがタメを作ってブレスを吐こうとした瞬間を斬り裂いたセイ。赤い皮をゲットだ。
「チーヌっ!酷いじゃないっ」
「逃げ切れんだから問題ねぇだろうが」
帰ってきてからも痴話喧嘩をするので風呂に入ってソース臭いのを落として来いと怒鳴っておいた。
風呂は男女に分けてあるがチーヌとオルティアは言い合いをしながらも同じ風呂に行く。仲良いじゃないか。
その後もポーションを飲んで回復をしながら皆それぞれお目当ての物をゲットしてドラゴン討伐は終わったのであった。