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奥さん酷ぇ

「うぐっ、ヒック、ヒック」


ビリはオルティアだった。1位カント、2位ラーラ、3位ケビンだ。


カントは疲労困憊、ケビンは気絶していて起きたら真っ暗で進む方向が分からず反対方向に走ってしまったらしい。


オルティアはビリになりたくない一心で全速力で走っては転び、走っては転びをしてビリになったのだった。


晩御飯は唐揚げ。泥まみれでベチャベチャのオルティアは壁の隅っこに張り付いて拗ねて泣いている姿があまりにも哀れだ。


「ほら、オルティア。お前の好きな唐揚げだぞ」


「いりませんっ。ビリは晩御飯抜きなんですよねっ」


「いいから食えよ」


セイは唐揚げを摘んでオルティアの口の前に持っていく。


「ガブッ」


「痛てててっ。指まで食うなっ。こっち来てみんなと食え」


「ぐすっ ぐすっ。いいんですか・・・」


「今日一日飲まず食わずだったろ?明日も走るんだからちゃんと食え」


「うわぁぁぁぁんっ」


「こらっ、抱き付くなっ。こっちまで泥だらけになるだろうがっ」


泥まみれのまま抱きついて離れないオルティア。離そうにも離れないので唐揚げを口の前に持っていき、パクッと来るのをひょいと避けて皆のところまで誘導していく。



「痛ててててっ。指まで食うなって言ってんだろうが」


最後に食いつかれてしまったセイは指ごといかれていた。


あーっ、もうっ。泥まみれヨダレまみれじゃないか。チーヌはよくこいつを嫁にしようとしているもんだ。


セイは水を出してヨダレまみれの手を洗ってから唐揚げを食べだす。


「あんたらおもろいなぁ」 


と、セイとオルティアのやり取りをクスクス笑ってみているアマテラス。


「どこがだよ?」


しつけのなってない野良犬みたいになってんだぞこいつ?



「こっちのテントは女風呂、俺達はこっちな」


食べ終わった人から順番に風呂に入ることに。



「ケビンと入るの久しぶりだな」


「ほら見てくれよこの筋肉っ」


「可愛くねぇな。ちょっと前まで可愛いかったのに。もうちょっとしたらギルマスそっくりになるんじゃないか?」


「やめてくれよ。父さんはもう腹とか出てきてんだぜ。あれでよく走れたもんだよ」


「誰の腹が出てるだって?」


ケビンと二人で入っているとカントも入ってきた。


「ほら、こことか摘めんじゃねーかよ」


「うるさいっ」


バチャバチャとお湯を掛け合う親子。仲良いよな。


風呂から出るとヘスティアがもう出て来ていた。


「随分と早いな」


「ウェンディがキーキーうるせぇんだよ」


「なんかあったのか?」


「ほら、あいつ一人だけ崖胸だろ?ラーラが挑発しまくってんだよ」


あー、なるほど。


ムッキーとなったウェンディがテントから出て来た。


「そんなに怒んなよ」


「うっさいわねっ。あんなの脂肪の塊じやないっ」


「お前、前に大きく見える胸当てしてたろうが?気にしないならあんなの必要ないだろ?」


「キィーーーーーっ」


そっとしておけばいいのにまたいらぬことを言うセイ。


ウェンディにポカポカされているとオルティア以外も出てきた。


「風呂片付けるからオルティアも出て来いよ。それともまだ浸かってんのか?」


「入って来ないで下さいっ」


テントの中からオルティアが入って来るなと言う。


「あの娘、服を洗って乾かすの失敗しはってん。どうすんねやろねぇ」


と、アマテラス。


「ラーラの着替えを貸してあげてもいいけど下着はどうしようかしらぁ」


ラーラとオルティアはだいたい似たようなサイズらしい。背はオルティアの方が高いみたいだけど。 しかし下着の貸し借りは嫌だろうな。


「セイ、扉でチーヌの所に行って取ってきてやれよ」


とヘスティア。


「あっ、そうだね。その手があったわ。じゃ行ってくる」


トンネルを移動すると決めた時から扉を使う事を忘れてたわ。明日からヘスティア達がシューティングゲームしなくていいなら次の休憩ポイントへ行くのも扉を使おう。



扉で虹のまちへ移動。


「シーバス、チーヌってどこにいる?」


「王都の家だと思うぞ。こんな時間に一人で来たのか?オルティアのヘスティア様の試練どうなってんだよ?」


シーバスにヘスティアの試練の前にドラゴン狩りすることを伝えた。


「俺も行く」


「は?何しに?」


「ドラゴンの皮を捕りに行くに決まってんだろうが」


「もう冒険者ほとんどやってないだろ?」


「うるせぇっ。欲しい物は欲しいんだっ。それにセイーゴが大きくなったときに残してやれるしな」


ツバスは好きにしたら?と言って留守番をすることに。その代わり自分の分も狩ってこいだと。そしてダーツも呼びに行って参戦することに。


サカキとクラマ、毘沙門も行くとの事でトンネル移動は面倒だから戦闘が始まる時にもう一度迎えに来いだと。



シーバスとダーツを連れて王都へ移動。


「オルティアの着替だと?」


「あいつまだテントの中で真っ裸かも」


「はぁーっ、相変わらず世話の焼ける奴だ。ほれ、これとこれとこれと」


オルティアの着替えが入ったクローゼットから服や下着をポイポイ渡してくる。ちょっとは気を使ってやれ。なぜ俺がオルティアのパンツを生で持たなにゃならんのだ。


「袋かなんかにいれろよ」


「別にアイテムバッグにそのまま入れりゃいいだろ?で、シーバスとダーツは何しに来たんだ?」


「俺達はドラゴンの皮を手に入れに行く」


「どういうこった?」


と、聞くので経緯を説明。


「なら俺も行く。ガッシーも行きたがるぜきっと」


ガッシーとリタをダーツが呼びに行き、ガッシーが留守の間リタはフィッシャーズの家で泊まることに。


「ねぇちゃん、俺も連れて行ってくれるように頼んでくれよ」


「ダメよ。Sにも上がれてないのにドラゴンなんて無理に決まってるでしょ?」


「えーっ、俺もドラゴンの素材欲しいよっ。頼んでくれよっ」


リタの弟も連れて行って欲しいみたいだが今回はダメだな。ケビン達もいるから面倒を見きれない可能性が高い。


「お前等もSに上がったら次回に連れてってやるよ」


「ほんとかっ」


「あぁ。しかしSだからってドラゴンが狩れるかどうかは別だぞ。空中戦が出来るか強烈な遠距離攻撃が出来ないと話にならんからな」


ガッシー(兄貴)とかどうやって倒すんだよ?みんな空中戦も遠距離攻撃も出来ないだろ?」


「さぁ?帰ってきた時にどうやったか聞けば?」


俺もどうやるかは本当に知らない。皆メラウスの武器を持ってるいるから攻撃は効くとは思うけど。


リタの弟達を連れて行く時はヘスティアの試練とドラゴン狩りのどちらを先にするか迷うな。ノーマルの武器だとドラゴンには通用しないだろうからヘスティアの試練が先かな。


という事でシーバス達を連れて移動。



「やっと帰って来やがった。遅ぇぞ」


「ごめんごめん、シーバス達もドラゴン狩りに行くっていうからさ。オルティアは?」


「テントの中でむくれてんぞ」


ラーラの服を借りたオルティアは胸は緩いのにウエストはキツくてボタンが止まらずショックを受けたらしい。オルティアのスタイルが悪いわけではないけどね。


「チーヌ、後は任せた」


ここは彼氏に任せておこう。


シーバス達もケビンとラーラが初め誰か分からなかったらしく、その成長ぶりに驚いていた。積もる話もあるようなので、みんなで寝る前に少し飲むことに。


「お前ら、ドラゴンをどうやって狩るつもりなんだ?」


カントがシーバス達に聞く。


「ドラゴンの強さがどれぐらいだかわからんが空を飛ぶのが厄介だよな」


「速さもかなりのもんだよ。攻撃は爪、尻尾に加えて即死級のブレスがある。ブレスは撃ってくる前にタメが入るからわかると思うけど」


「サカキは前にどうやって狩ったんだよ?」


「クラマとセットだよ。クラマがサカキを運んでドラゴンの上に投下。サカキはドラゴンの背中から殴り飛ばしてた。何回か落っことされてたけどね」


「そんなやり方をしてやがったのか。ドラゴンは下に降りてくるか?」


「どうだろうね?休憩している奴を探すか誘き寄せるしかないと思うよ。オルティア達と連携するならやり方はあると思うけど今回は別々にやってね。シーバス達抜きでやってもらいたいから」


「今回はパールフもいねぇから支援魔法もねぇしな」


「ま、現場で実際に見て作戦を決めて。俺は今回見ているだけだから」


「マジかよぉ、ちょっとは手伝えよな」


「素材あげようかと言ったら自分の手で手に入れるって言ったんだろうが」


「そりゃそうだけどよ」


「だろ?明日からはランニングも頑張れよ」


「えっ?」


「当たり前だろ?ビリは晩飯抜きだからな」


「セイ、俺は明日からソリに乗るからな」


と、カントは走らんと言ってきた。シーバス達からはズルいとやいやい言われていたけど頑としてソリに乗ると言い張ったのであった。



翌朝


「奥さん、ヘスティア。今日もシューティングする?」


「やらねぇって言ったらどうすんだ?」


「次のポイントまで扉で移動するよ」


「ポイントに早くに着いていても暇だろ?なら屋敷でゲームしてようぜ」


ヘスティアは夜になればポイントに行けばいいと言う。確かにそうかもしれん。



カントはすでにソリに乗ってスタンバイしているなか、


「じゃ出発ねぇ」


奥さんの合図と共に全員ダッシュした。


「カント、早く出発しないとビリになるわよぉ」


「えっ?何を言ってるんだお前?」


ガチャ、バタン


「嘘だろ・・・。扉で行くなんて聞いてねえぞっ。こらぁぁぁあっ」


カントは貴重なドラゴンの皮のソリを置いていくことも出来ず、濡れてもいない道をソリを引いて走るハメになったのであった。




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