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洞窟で肩慣らし

扉を使ってドラゴンスポットの洞窟へ。スポットの中に直接入って目の前にドラゴンが居たら危ないのでヘスティアが開けた洞窟の入り口に来たのだ。


「へぇ、黄泉へ通じる穴みたいやねぇ」


アマテラスが嫌なことを言う。


「別に黄泉の国に繋がってるわけじゃないけど、ドラゴンがウジャウジャいるからここから入ることにするよ」


どこまで成長したかを確認する意味を込めてケビン達に洞窟を走らせることに。こっちはドラゴンの皮ソリで移動だ。水も風も自分で出来るようになったしな。


「えー、私達だけ走るんですかぁ」


オルティアは不服そうだ。


「ぐちゃぐちゃ言ってるとケツ燃やすぞこらぁ」


「やめてくださいっ」


ヘスティアに燃やされた事のあるオルティアはお尻を押さえる。


「ラーラも体力の特訓したんだよな?」


「もちろんですっ。もう足が遅いなんて言わせませんよっ」


「じゃあ、お母さんが後ろから応援してあげるわぁ。ほらダッシュダッシュぅ」


「えっ? いやぁぁぁぁあっ」


奥さんはスパルタだ。ラーラの後ろに火の玉を出して早速追い立てた。それを見たヘスティアもオルティアの尻に火の玉を近付ける。


ズドドドドドドっ


ラーラに続いてオルティアも走り出す。奥さんと違ってヘスティアは本当に燃やすのだ。


「ケビン、置いてかれたぞ。俺たちも先にいくからな」


奥さんとヘスティアの火の玉を目指してこちらも水と風を出して出発。


「まっ、待ってくれよっ」


ホバークラフトのように走り出したドラゴンの皮ソリ。ケビンは出遅れて暗闇になった洞窟を走り出す。


「うおぉぉぉぉっ」


おー、速いじゃん。


「キャーハッハッハッハっ セイくんもっと飛ばしてっ。ケビンに追いつかれるわよっ」


いや、追い付けるスピードで進めてるんだけど、奥さんはスピード狂なのかもっと飛ばせと言う。


飛ばすならウェンディが落っこちないようにくくりつけておこう。膝の間に挟んだウェンディと背中にアマテラスをおんぶ紐でくくりつける。ヘスティアは肩の上に乗ってるけどまぁ大丈夫か。


「じゃ、飛ばすよ」


ぶほっと風を強くしてスピードを上げる。


シュルルルルルっという音と共に加速していく皮ソリ。オルティアとラーラの真後ろまで来た。


「どきなさーいっ。弾き飛ばすわよっ」


「きゃぁぁぁっ」


このままだとぶつかるのでソリを操作して壁に登るような感じにして二人を避ける。


「うわぁぁぁっ」


ガゴン ゴロンゴロンゴロンっ


「あっ、ギルマスが落ちたっ」


セイが止まろうとすると奥さんはキャハハハと笑いながら風を自ら出して更に加速。


「奥さん、ギルマス落っこちたんだけど」


「平気よぉ〜。たまには足腰鍛えないとねぇっ」


ひでぇ。


もう奥さんとヘスティアはオルティアとラーラには火の玉を出していない。自分達の前方にヘッドライト代わりに出しているのだ。


ん?なんかいるような・・・


ドゴンっ ドコンっ


奥さんがその影に向かって土の弾を撃っていく。


「ゴブリンよっ。セイくんはこのままスピードを維持して。私が狙い撃つわっ」


ドラゴンスポットへ抜けるこの洞窟に弱めの魔物が住み着いたようでだんだんと前方にその影が増えてくる。奥さんはシューティングゲームのようにそれを撃っては倒しをしていく。


「おっもしれぇ。俺様もやってやんよっ」


ヘスティアは小さい火の弾を撃って倒していく。二人協力プレイって奴だ。


「暗ぁて見にくいんちゃう?ウチが明るくしたるわぁ」


アマテラスが洞窟内を照らしだした。電気のスイッチを入れたかのように明るくなる洞窟内。


「おっ、やるねぇっ。これでやりやすいってもんだぜっ」


明るくなったとはいえ、よくもまぁこんなスピードで走ってるのに撃ち抜けるもんだ。


奥さんとヘスティアが散々リアルシューティングゲームを楽しんだ後に休憩しようということになった。ここは前回野営した広場だ。一日かけて来たところが小一時間ってところか。みんなどれぐらいで追いつくんだろ?



「ねぇセイくん。ここに土壁作っておいたらどうなるかしらぁ?」


この休憩ポイントの手前に土壁を作れと言う奥さん。


「危ないんじゃない?オルティアかラーラが火の玉を出して照らしながら走ってたら気付くと思うけど、気付かなかったらぶつかるじゃん」


「大丈夫よぉ。死にはしないわよぉ」


本当にスパルタだな奥さん。


油断していたらひどい目に合うという教訓にするそうだ。


カチコチのカベだと本当に危ないので脆い土壁を作っておく。


休憩ポイントでお茶と持ってきたチョコレートを食べて一時間施休憩していた。



ーほっていかれたケビン達ー


「へっへーん、まだまだ遅いぞラーラ」


「うるさいっ。灯りも無しに飛ばしたらどうなっても知らないからねっ」


「お先っ」


ケビンはここまで来るのに一直線だった事に気を許し、暗闇でも走れると判断して火の玉を出して走っているラーラとオルティアを抜かした。そしてその先にいたのは父親のカント。


「なんで父さんがいるんだよっ」


「うるさいっ。セイの野郎が俺を落っことしてそのまま行きやがった」


ラーラ達の光が薄っすらと届いていたので父親だとわかったケビン。


「親父、なまってんじゃねーのか。先に行ってるぜ」


「暗闇で全速力で飛ばすなっ。何がいるかわからんだろうがっ」


「おっさきーっ」


父親の忠告も聞かずに飛ばすケビン。


「ちっ、まったくケビンの奴は」


カントは念の為に気配を探りながら7割ぐらいのスピードで走る。そしてすぐにラーラとオルティアが追いついて来た。


「どうして父さんまで走ってるの?」


「落っことされたんだ」


「じゃ、先に行くねーっ」


「こらっ、待てっ」


カントは二人の灯りを頼りに後ろを付いて行く。全速力で走ればラーラ達にはまだ勝てそうだがケビンにはもう速さでは敵わない。自分の衰えへの寂しさと息子が自分より速くなったことへの嬉しさが入り混じった妙な気持ちであった。



ー休憩ポイントー


「遅いわねぇ」


「当たり前ですよ。自力で走ったらここまで1日くらいかかってもおかしくない距離ですからね」


「オルティアは風魔法も使えるのかしら?」


「あいつは火と風魔法を使えますよ」


「カントとケビンはともかく、ラーラも風魔法も使えるようにしてあるのよ。それを使えばもっと早く走れるはずなのよねぇ。でも全部教えたら自分で考えなくなるしぃ」


なるほど。追い風にしてやれば足が付いていく限界までスピード上げられるってやつか。


そしてさらに1時間が経過した頃。


ドゴンっ グワッシャン ガラガラガラ


脆い壁が破裂するかのように砕け散り、ケビンがゴロンゴロンと土と共に転がってきて気絶していた。


「思った通りねぇ。やれやれだわぁ」 


回復魔法を掛けてやるでもなし、ポーションを飲ますわけでも無く呆れた顔で顎に手をやり我が子を見る奥さん。


「ポーション飲ませましょうか?」


「セイくん、壁を脆く作ってくれたんでしょう?大丈夫よぉ」


本当にスパルタ教育だな。


それから小一時間ほどでオルティアがやってきた。なんか半べそだ。


「お前、泥だらけじゃないか?」


「なんで床がずっと水浸しなんですかっ。転んだじゃないですかっ」


「床が濡れてないとソリの滑りが悪いからな。お前着替持ってきてるよな?」


「あっ」


どうやらいつもはチーヌがアイテムバッグに色々と入れてくれているので自分で持って来てないのに今気付いたようだ。


「お前、この後からどうすんだよ?風呂とかはあるけど流石にお前のパンツとかないぞ」


ウェンディやヘスティアの着替はあるけどオルティアには小さいしな。 


「気持ち悪いですっ。ウンディーネにお願いしてくださいっ」


「ウンディーネは来てないぞ。リザードマンとなんかしてるみたいだしな。水かけてやるから自分の火魔法と風魔法をコントロールして乾かせ」


びしゃしゃしゃしゃと水で洗ってやる。


「冷たいですっ、冷たいですっ。お湯っ、お湯にしてくださいっ」


いちいちうるさい奴だ。


アチチのお湯にして洗ってやり、乾かすのは自分でやらせた。火魔法と風魔法を併用しながらちょうどいいぐらいの温度と風量に調節するのは難しいみたいで、自分であっつうぅとか言いながらなんとか乾かしたオルティアは髪の毛がカスカスになってボンバヘッドになっていた。



「やっと追いついたぁ」


ラーラとカントが到着。カントはめっちゃ怒ってる。


「カントがビリねぇ。罰として野営ポイントまで走ってね。うふっ」


セイに怒鳴ろうとしたカントは愕然とする。置いていったのはセイではなく妻だと理解したのだ。


「じゃあ、次の野営ポイントにビリだった人は晩御飯抜きね。魔物の露払いはやっておいてあげるからぁ。じゃあ、セイくん行くわよぉ」


「お、おい、ちょっと待てよ・・・」


カントの言葉虚しく奥さんはセイをソリに早く早くっと乗せて出発してしまったのだった。


「お父さん、ケビンがなんか鼻血出して気絶してるんだけど?」


「セイの野郎が仕掛けたトラップにやられたんだろ。ちょうどいい、ケビンがこのままくたばってたら俺達は晩飯抜きにならなくて済む。俺は先に行くからなっ」


「ちょっと待ってよぉぉっ」


カントは休憩もろくに取らずに本気モードで消えていったセイ達のソリを追い掛ける。このまま子供達に負けていたらずっとこれが続くのだ。一番に追いついて明日からはソリに乗ると心に誓い走り出した。


オルティアも飯抜きはイヤ、この休憩で水も飲んでいない。ケビンは自分よりずっと速かったので起きる前に走り出さないと負けてしまう。


「うぉぉぉぉぉぉっ」


ズルんベチャッ


勢いよく走り出したオルティアは足元がビチャビチャなのを忘れてその場で転倒。


「おっさきーっ」


ラーラはそれを尻目に走り出したのであった。


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