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何かあるらしい

「アマテラス、この力はどうやったら収まるんだ?」


「別にそのままでもええやん?」


マガツヒの力が溢れたままのセイ。確かに強大な力ではあるが禍々しくて宜しくない。


「そうやねぇ、ウチが吸い取ったってもええねんけどウェンディ達が怒るんちゃう?」


「吸い取る?」


「そうや。かまへんねやったら口出し」


「ちょっとぉぉぉっ、何するつもりよっ」


「え?力が邪魔や言うから吸い取ったろうかと思うてな」


「どうやんのよ?」


「ウチがセイの口から吸い取るんやで」


「なんでお前がセイとチューするんだよっ。俺様だけしてねぇんだぞっ」


は?


「ヘスティア、俺様だけしてないってなんだよ?」


「私はしてもらった」


アーパスがそう言う。


「いつ?」


「セイが子供の時」


「セイが母親に会う前に子供に戻ったんだよ。その時のおままごとでアーパスにチュッチュしてたさね」


あー、なんかそうだったらしいな。俺は何をやってるんだ・・・


「なら俺様が吸い取ってやんよっ」


「ちょっとぉぉぉっ、なんでヘスティアがすんのよっ」


「いいじゃねーかよっ」


人前でぎゃーぎゃー喧嘩するウェンディとヘスティア。もうこの禍々しいままでいいわ。


そこへウカノが戻っできた。ウカノとイナリの手に持つザルに山程野菜やらなんやらが盛られている。


ドサッ


セイを見てそのザルを落とすウカノとイナリ。


「あ、あ、あんたなんやのそれ」


「ウカノ良かったなぁ、珍しもん見れて」


カタカタカタカタ


いつもは糸目なのにまん丸な目でセイを見て震えるウカノとイナリ。


「イナリ、ちょっとこっちに来い」


「いっ、嫌やっ」


「いいから来いって」


「ウ、ウカノ様っ」


セイに呼ばれたイナリはウカノの後ろに隠れて震える。主を盾にするのは妖怪も神も同じだな。


目をまん丸に見開いたままのウカノはそのままイナリを差し出す。


「嫌ややあぁぁぁっ」


泣き叫ぶイナリはウカノの方を向いて逃げようとするがウカノはそのまま押し返した。


セイは剥げたイナリの尻尾を掴む。この尻尾はネズミみたいで可愛くない。

 

むんず


「ひぎゃぁぁぁぁっ」


ポーションをプチっと潰して尻尾に塗り塗りしてやる。


「ほら、口を開けろ」


いやぁぁぁと叫びながら顔を横に振って逃げようとするイナリのほっぺをムギュッと掴んでポーションを放り込むみ、顎をぐっと上にあげて噛ませた。


傍から見ていると狐少女をイジメているようにしか見えないセイ。周りで見ている観光客や冒険者達はざわつく。


「ほら、終わりだ」


手を離すとピュっと逃げるイナリ。そのままウカノの後ろに隠れてしまった。


すぐにフサフサの尻尾に戻るだろ。



夜はウカノが持ってきた野菜で鍋を食べることに。黒豚と水菜、丸い大根、ネギとか味が濃くて旨い。


「湯葉も美味しいわぁ。なぁ、ウカノ」


「は、はい」


ウカノはうつむいたまま顔を上げないので砂を噛むような気持ちで食べているのかもしれない。


「セ、セイ」


「なんだイナリ?厚揚げも入れて欲しいのか?」


「お、おおきに」


「何が?」


「あの時の尻尾治してくれたんやろ?」


「あのままだったらネズミの尻尾みたいで可愛くないからな。フサフサの方が触り心地もいいし」


セイはイナリの尻尾をモフモフする。


「そ、そんな触らんといてぇな。エッチ」


尻尾がなぜエッチなのだ?


ウカノとタマモは仲良くはしないみたいだが喧嘩しないようだしやれやれだな。


シーバス達はサカキや毘沙門と酒を飲んでいてこちらは食い組だ。ツバスとパールフも子連れでこっちに。


アーパスは子供が好きなのかすずちゃんとセイーゴ、ルリの面倒をよく見ている。アメフラシもすっかりアーパスに懐いたようだ。


「セイはいつまでここにいる?」


「ちゃんとした相撲場を作って興業としての仕組みをシーバス達と決めてからかな。日頃は力自慢の人達でやってて貰って、年に何回かサカキ達に挑戦とか」


「その後は何をするの?」


「まだウラウドからアクアへの街道作りが途中なんだよ。それを再開したらツクヨミが来いって言うだろうね」


「じゃあそれが終わるまでここにいる」


「セイは参道作ってはんの?」


「参道じゃない。街道。ツクヨミもこっちの世界で祀られようとか思ってないだろうし」


「そうなんや。ウチも久々にツクヨミに会いに行こうかな」


「日頃会うことないの?」


「あらへんで。ツクヨミは引き篭もりやし。暗がりでじーっと先を見とるだけや」


嫌な言われ方だ。ウラウドも夜に動くから居心地がいいんだろうな。


こっちはパクパク食べながら話しているけどウカノは正座したままあまり食べていない。ちょっと可愛そうだな。


締めはうどんにして、ウカノとイナリにはキツネうどんにしてやった。


「はい、お前等ちゃんと食ってないだろ?多めに入れといたぞ」


「お、おおきに・・・」


しおらしくそう返事するウカノ。イナリはチラチラとウカノの顔を見ながら食べようとしない。


「延びるから早く食べろ」


そう言ったらようやく食べたのだった。その後は教会横のアーパスの家で就寝することに。


「セイ、早くその力をなんとかしろよ。落ち着かねぇんだよ」


ヘスティアはエンシェントドラゴンを殺しそうになったときの事を知っている。姿はセイのままだが感じる力に落ち着かないようだ。


「そのうち収まるらしいから我慢してくれ」


そして皆が寝静まった頃にウェンディがぱちくりと目を開ける。


「それどうすんのよ?」


「ん?まだ起きてるのか?」


マガツヒの力のせいか眠くならないセイ。


「どうしようもないだろ?自分でしたわけじゃないんだから」


「もうっ」


ぶちゅー


ウェンディはセイからその力を吸い取った。



翌朝



「あら?もう抜けたん?」


「えっ、あぁ、そうみたいだね」


「えらいはよ抜けたんやねぇ。ちゃんと穢も消えとるわ。さすがやねぇ」


恐らくウェンディは力を吸い取った時に浄化もしてくれたのかもしれない。アマテラスがいたら正気を保ったままあの力が使えてウェンディが元に戻してくれるって感じかな。


シーバス達と興行の話をして、サカキ達をここに置いていく。相撲のことは任せておいて王都に移動することに。アマテラスにアクア王都観光をさせてやるのだ。


 「小洒落た船やねぇ」


「ゴンドラっていうんだよ。移動も楽しめるだろ?」


ウェンディはいらぬことをしそうなので足の間に挟んでいる。幅広のゴンドラとはいえ落っこちそうだからな。


「セイはウェンディの事を随分と大切にしてるんやね」


「こうしとかないと何をするかわかんないんだよ」


「何にもしてないでしょっ」


「するんだよお前はっ」


「お客さん、危ないから椅子に座って下さいよ」


「どうってことねえって」


ヘスティアを肩車しているもんだから船頭は気が気でないようだ。揺れても飛べるから問題ないんだけど。


アクア王都で美術館を見に行った後に晩飯に。今夜はピザとパスタにワインだ。


アマテラスは初めて食べるらしくてとてもよく食べていた。


アーパスのお宿ではチョコレートを使ったデザートを持ってきてくれそんなに食べたら鼻血が出るぞ?と思うぐらい皆食っていた。


翌日から街道作り再開。


「そないして作るんやねぇ」


「こっちの神の加護の力だよ。便利だよねこれ」


「ほんまに。人のやることやないわぁ」


テント泊でもツクヨミに邪魔されることない日々が過ぎ、ウラウドーアクアへの街道整備は終わったのだった。



「ほならツクヨミに会いに行こか」


夜を待ってツクヨミの社に行く。



「アマテラス、久しぶりだな」


「あんたなんやのんそんなおなごみたいな格好して」


「セイは女に弱いというのが見えていたからな。お陰でこのような社も建ち、旨い肴も酒も運ばれてくる」


「ツクヨミってやっぱり男神だったのか?」


「妾はセイにとって女神であろ?」


そう意地悪そうに笑うツクヨミ。男神と言われりゃそう見えるし、女神だと言われたらそう見える。難儀な神だ。


「セイ、酌をしてくれ。お前に酌をしてもらう方が旨い」


もうアマテラスに男神だとバラされたので口調も男神に戻っているツクヨミ。


「ほならウチもお酌してもらお♪」


「じゃあ俺様にも注げよな」


「わたしにもー」


お前ら・・・


一杯目だけ皆にお酌をしてから後は手酌で飲めと言っておく。



「セイよ、これから何をするつもりだ?相撲か?」


「どこまで見たんだよ?」


「先は見ておらん。お前がここに来ない間は何をしているかを少し見ただけでな。相撲は各地で成功するだろう」


(未来)を見てんじゃねーかよ。


「娯楽も作っていかないとね。衣食住が揃ったらそういうのが必要だろ?」


「そうであるな。して、次の神会議はこの世界ですることになったのだな」


「知らないよそんなの」


「オーガ島とやらに皆が集まる姿が見えておるぞ」


はぁ、やっぱりな。


「向こうの世界に影響がないならいいけどさ」


「セイ、神々共を従えよ」


「なんでだよ。というか人間が神々を従えるって無理だろそんなこと」


「アマテラスの力を使えば良い。妾も手伝ってやろう」


「なんの為にだよ?」


「気になるなら盤を使えば良いではないか」


「なんでも先が見えたらつまらんだろうが」


「そうか。見ぬのなら妾の言葉を受け入れた方が良いとは思うぞ。ほら、酌をせよ」


意味深な事を言って盃を出してくるツクヨミ。何かあるんだろうなと思いながら酌をするセイなのであった。


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