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嫌な予感

ウラウドからアクアへの街道整備を始めた。ウェンディとヘスティアも自分の教会を作れとうるさいのでこれも並行して始める。ウェンディの宝石ステンドクラスはアクアのロレンツォに頼んだ。どれだけ宝石が必要になるかわかりませんよと言われだがいくらでも手に入るので問題なし。像はプラチナ、金、ピンクゴールドの組み合わせに宝石だ。成金趣味にも程がある。


ウェンディとヘスティアの教会は王城の敷地内に作ることに。犯罪を誘発させない為だ。テルウスの教会はテルウス自身が陣頭式を取っていて当初の予定の物より大きく豪華になっているようだ。


セイは街道作りに没頭する。ここにいると他の神からあれやこれや言われないのだ。屋敷にも帰らず野営しながらの街道作り。屋敷には勝手に神が入ってきて落ち着けない場所になっていたからだ。


「お前の居た世界の神って遠慮ねぇよな」


それは君たちもだけどね。


「神は皆勝手なんだよ。妖怪達の方が可愛げがあるだろ?」


「そうだよなぁ、妖怪達はセイの言うことをよく聞きやがるからな」


野営のテントの中は平和だ。魔物は出るけど結界を張ってあるから襲われる事はない。ウラウドーアクア間は弱い魔物だけだし図鑑にも載せたやつばっかりだから討伐する必要もあまりないのだ。


時々オーガ島に行っては魚を仕入れてツクヨミの所に持っていく。ウラウドは醤油も作れるようになっていたがアネモス産の方が好みらしくそれも運ばされていた。


「セイよ、日本酒をお代わりじゃ」


「もう樽を渡してあるんだから自分で飲んで下さいよ」


「つれないこと事を言うでない。妾とそなたの仲ではないか」


セイはツクヨミの所に行くたびにお酌をさせられるのだ。ウェンディ達はツクヨミが男神か女神かわからないので焼きもちを焼こうか複雑な心境だ。


焼魚はウラウドの料理人でも良いが、刺し身と煮魚は砂婆に作れと言う。ツクヨミのタチの悪いところは俺がどこにいてもすぐに探し出して呼びに来るところだ。神には張った結界も効かないのでテントで平和な生活だったのが台無しだ。


「そなたもすぐに移動出来るのであろう?夜になればここに来るがよい」


ツクヨミの社もすぐに作られたのでここで寝泊まりしろと言われる。テントで寝ていても呼ばれるのでもうそうした方がいいかもしれない。


「セイ、どうすんだよ?」


「どこにいても居場所がバレるんだからもうテントもここも変わらん」


夜にツクヨミに酌をして昼間に街道作り。そしてピリリピリリと電話が頻繁に鳴る。


「なんだよシーバス?」


「なんだ機嫌が悪いじゃねーかよ?」


「あちこちから頻繁に呼び出されるんだよ」


「俺もその要件だ。ウカノが来いと言ってるぞ」


「何の用だよ?」


「ヤツハシ持って来いだってよ。なんだよヤツハシって?」


「向うに帰って食ってこいと伝えて。あんなもん持ってる訳ないだろうがっ」


「俺に怒んなよ」


それはそうだけど、八つ当たりする所がないのだ。


セイは電話のスイッチを切り、ツクヨミに一週間は呼び出すなと言ってヘスティア温泉に行くことに。心を癒やさねば発狂してしまう。


ウェンディとヘスティアだけを連れて温泉へ行くことに。街道工事を始めてからアーパスは虹のまちですずちゃんと過ごしているのでウェンディとヘスティアだけを連れて湖の温泉に移動。


あー、誰もいない所は開放感があって・・・、って誰かいるじゃん。ここは秘境なので誰も来ないと思って風呂場に使用禁止とかの立て看板も立ててないから仕方がないっちゃ仕方がないけど勝手に使われててなんかムカつく。



「あっちに行こうか」


テルウスの力があるので他の場所に浸かれる場所を作ろう。離れた場所まで移動して風呂場を作っていく。



「俺様達と一緒に入るつもりかよ?」


「順番に入ればいいだろ?2つ作るの面倒なんだよ。俺がテントを張っている間に入って来いよ」


「水着を着て一緒に入ってあげるわよ。その代わりお酌してよね」


「なんでだよっ。毎晩毎晩ツクヨミに酌をさせられてたんだから風呂ぐらいゆっくり浸からせろよ」


「わたしにもしてくれたっていいでしょっ」


あー、もう口論するのも面倒だ。


「ならあたしもご相伴にあずかろうかねぇ」


と、タマモも出て来た。サカキとクラマはオーガ島で相撲三昧なのでひょうたんにもいない。タマモが出てきたのでぬーちゃんにも出ておいでと言ってみんなで浸かることに。


風呂に浸かりながら皆は酒を飲み、セイは冷たい水を飲んだ。めし食う前に風呂で酒を飲んだらめっちゃ酔うからな。


「はぁ〜、誰からも連絡がこないと心が休まるわ」


そんな独り言を言いながらウンディーネにゴボゴボしてもらってゆっくりとくつろぐ。


「セイ、バレないようにするんだよ」


とタマモが言ってくる。


「何に?」


「元々作った温泉に浸かっている奴にさね」


「そこそこ離れたし大丈夫だろ?」


「そうかい?」


ここは木で隠れているし湖全体から湯気が出ているから向こうも見えない。大勢で騒いでいる訳でもないから大丈夫だろう。


土を固めた仕切りにアゴを乗せて紅葉を楽しむ。いつも冬に来ていたけど秋もなかなかよい風景だ。赤や黄色に彩られた山は美しい。


「えいっ」


ズルん じゃぼっ ゴボボボっ


「ぷはっ!ウェンディ、てめぇっ何するんだよっ」


セイはうつ伏せの体制で顎だけ仕切りに乗せて身体をプカプカと浮かべていたところにウェンディが飛び乗ったのだった。


「お酌してよ」


「自分で注げよ。初めにいれてやってやっただろうが」


「注いでくれた方が美味しいんだもーん。キャハハハ」


ウェンディのやつすっかり酔ってやがる・・・


「あーっ、ずりぃぞ。俺様にも注げよ」


「はぁ、やれやれ。セイがゆっくり出来る場所はないもんだねぇ。せっかくサカキがいないから落ち着いて飲めるってのに」


ウェンディとヘスティアがぎゃーぎゃーとセイにまとわりついているのを見てタマモは手酌で飲みながらぬーちゃんにも酒を注いでやっていた。


ホコホコになった後は飯の準備。砂婆は毎晩ツクヨミの飯を作っていたので休んでもらっている。


「焼き鳥でもしようか」


砂婆が作り置きしてくれている焼鳥の串をタマモが持ってきてくれたので炭火で焼いて行くことに。ウェンディとぬーちゃんは主にタレ、俺とヘスティアとタマモは塩だ。


セイは元の世界の瓶ビールをコップで飲む。キンッと冷えたビールと焼き鳥の相性は抜群だ。ヘスティアはハイボール、ウェンディは梅酒ソーダ。タマモもビールでぬーちゃんはもうお酒はいらないとのこと。


「タマモ、ウカノとまだ揉めるか?」


「あたしゃどうでもいいけど、向こうが突っかかってくるさね。噛み殺してやってもいいなら遠慮なくやってやるんだけどねぇ」


流石に神殺しをさせるわけにはいかんからな。


「クラマがいてもダメか?」


「クラマと毘沙門と一緒なら大丈夫じゃないかい?」


あの3人は昔からのよしみだからな。クラマと毘沙門がウカノを抑えていてくれたら大丈夫か。


「ならサカキも来るよな?」


「だろうねぇ」


それならまた騒ぐな。ならばいっその事、虹のまち場所みたいな感じで相撲イベントを開くか。観光イベントとしてやれば人を呼べるしな。ウカノとタマモをなんとかしないと虹のまちに行けないからな。


そんな事を考えながら次々に焼き鳥焼いていく。そろそろ日が暮れると思っていたがまだ明るい。秋の日はつるべ落としというがまだ時間が早かったのかな?



「ウチはタレな♪」


「ハイハイ・・・、うわぁぁぁぁっ。誰だよお前っ?」


「ウチ向かってお前やて、失礼やないの。プンプン」


突然目の前に座っていた女の子が二人。一人は踊り子?もう一人はシンプルだけど手の込んだ模様の服というか装束と言った方が良い感じのものを来ている。しかもこの髪色・・・


「お前ら神か?」


「やっぱりアンタ、ウチのことちゃんと見えてるんやねぇ。凄いやん。なぁ、ウズメ」


ウズメ?


「ウズメって、あのウズメ?」


「あのかどうかは知らぬが我はウズメだ」


「あの・・・、もしかしてアマテラス様?」


「当たりや。あんたセイやろ?」


「なんで知ってるんですか?」


「あんた、ウチらとおんなじもん混じってるやないの。すぐにわかったわぁ」 


「は?」


あー、マガツヒの事か。


「セイ、こいつ誰だよ?」


「向こう世界の太陽の神様。ツクヨミと同じ存在だよ。最高神の一柱」


「あっ、前に俺様に例えたやつか?」


「そうそう」


アマテラスもウズメも想像していた姿と随分と違う。綺麗系ではなく可愛い系だ。背丈もウェンディ達と変わらないし。


「で、その二人は誰なん?」


「こっちがウェンディ、この世界の風の神様。こっちがヘスティア、火の神様です」


「へぇ、風神と炎神なんやぁ。なぁ、炎神、あんた神楽舞えれるん?」


「なんだよそれ?」


「嫌やなぁ、祓う為の舞やないの。炎神やったら舞えなあかんで♪」


「なんでだよっ」


「なんでて鬼や厄を祓わなあかんやろ?」


「アマテラス様、この世界の鬼は悪さもしないし人も食いませんので祓う必要はないんですよ。それにウェンディやヘスティア達は存在するだけで人々に福をもたらせますので舞う必要もありません」


「そうなん?わぁ、自分らめっちゃ凄いや〜ん♪」


アマテラスって天真爛漫だな。しかし何故に関西弁なのだ?おっとりとした口調ではあるけど。


突然現れたアマテラスとウズメはなぜここに来たんだろうか?


「あの、どうしてこの世界に?」


「なんやみんなおらんようになってしもてな、ツクヨミもどっか行っておらへんし、ウズメに探しに行ってもろてん。ほならええ温泉見付けた言うから来てみて入ってたらええ匂いしてきてん♪ もう焼けた?」


ウェンディと同じような目で焼き鳥を見ているアマテラスとウズメに焼き鳥を皿に乗せて渡す。最高神でも串からそのままいくんだな。


「あの、ツクヨミもアマテラス様もここにいたら向こうの世界に影響出るんじゃないですか?」


「ツクヨミもこっちにおるん?」


「いますよ。このまま居着くつもりみたいです」


「そうなんやぁ。セイ、ツクヨミは呼び捨てにしてんねんなぁ。ほならウチにも様付けいらんで。アマちゃんて呼んで♪」


アマちゃん・・・


チャラッチャチャチャチャララ♪というBGMが脳内に再生される。


「向こうの世界は心配せんでええで。もう人はお日さんとかお月さんとか科学っちゅつやつでこうやと決めつけたやろ?そやからウチらもう必要ないねん。ウチがおらんでもお日さんは登るしお月さんも出る。ウチが隠れたかて暗うなることもあらへんから好きにしててええねん。なぁ、ウズメ」


「ムグムグムグ、ふぁい、アファへファフファマ」


「あー、なんでウチの分まで食べてんのよぉっ。自分そんなんしてたらしばかれんで」


「ふっ、ふいふぁへん」


最高神のアマテラスとウズメはウェンディ達と変わらないな。もしかしてこいつらも居着いてしまうんじゃなかろうか?


セイは嫌な予感しかしないのであった。




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