増える神
それからも知らない氏神とか来ているけどかまってられないのでスルーすることにした。
はぁ、トイレに行って寝よ。
「うわぁぁぁぁっ」
「こんばんは」
「なんでうちのトイレにいるんだよっ」
トイレの神様が来ていた。確かにとても綺麗な神様だけどびっくりするじゃないか。
「お気にならさずにどうぞ」
「気にするわっ」
お漏らしする前にこの世界はみんな神が見えてるから向うに帰れと屋敷の神社の中に押し返した。
結界も神には効かないしどうしたものか・・・。
オーガ島の神々が住む社はヒョウエ達が住むところから少し離した所に作られ、相撲をするための土俵が完備された。サカキと毘沙門が横綱で鬼や他の妖怪たちがそれに挑戦したりして楽しんでいる。コウヨウカクは弁天達と音楽や踊りに精通した神と妖怪で盛り上がっているそうな。
漁師たちが待避するための港は漁師達が頻繁に立ち寄るようになり、捕った魚の冷凍や保存スペースへの氷を入れたりするのをヒムロとユキメが商売としてやっていた。支払いは酒や捕れた魚だ。それとダンジョンから出たマギョロの切り身とかも漁師に売り出した。なぜこんなに待避するための漁港が流行っているかというと、えべっさんが商売繁盛笹持ってこいをやっているからだ。七福神がいるお陰でオーガ島は五穀豊穣、豊漁、商売繁盛となり他の神々も移り住むと言い出しているからな。
大黒天なんて打ち出の小槌でオーガを討伐して金に変えたりとか無茶苦茶だ。金の価値が変わるからあまり使うなと言ってあるからオーガ島にはどんどん金が溜まっていっている。
「セイ、シーバスの所に行かなくていいのかよ?」
「あそこにウカノが住みついただろ?あんまり顔を合わせたくないんだよね」
ウカノが住みついた事により虹のまちは五穀豊穣というかフルーツ類とかも豊作でワインの質も格段に上がると期待されているらしい。最近では冒険者達の間のオヤツとしていなり寿司が流行ってたりするし。悪いことばかりではないから追い返すに追い返せないのだ。この世界の人々は女神信仰プラス向こうの世界から来た神にも願い事をせずに感謝だけを捧げるもんだから皆帰りたがらない。お互いWIN-WINなのだ。お供えで事が足りるからお金も使わないし。
「乗っ取られたりしねーよな?」
「大丈夫だと思うよ。ボッケーノにはまだ誰も住み着いてないし」
シーバス達にはごめんねと連絡を入れてビビデバビデの所にいく。そろそろ温泉街が出来るのではないかと様子を見に行く為だ。
「おう、仕入れか?」
「いや、もう定期船が出始めたから俺が持っていく必要ないでしょ?ガッシーから急ぎの発注でも入ってるなら持っていくけど」
「急ぎはないから問題ないぞ。で今日は何じゃ?」
「温泉街を作ってるだろ?そろそろ出来るんじゃないかと思ってね」
「どうじゃろな。ワシも最近こもりっぱなしで外に出とらんから知らんぞ」
ビビデの武器はガッシーが認めた者にしか販売していないようだ。ガッシーが体格や力とか見て武器を発注したものはビビデも断らずに受けている。ボッケーノの冒険者とアクアの両方の武器を作ったりメンテナンスをしているからかなり忙しいらしい。
「サカキはどうした?出てこんのか?」
「毎日相撲三昧だよ。いいライバルがいてねオーガ島で遊んでる」
「そうか。ちっとも飲みに来んと思ったらそんなことをしておるのか。なら酒を持って行ってやれ。サカキと対等に戦えるなら飲むじゃろ」
ドワーフの酒は鬼殺しとは違った旨さがあると言っていたから喜ぶだろう。俺にはどちらもアルコールが強いとしかわからん。
「ティンクルは?」
「ポーション工場を広げて大忙しだぞ。ちょっと手伝ってやれ」
「やだよ。こき使われるじゃないか」
「いいから顔だしてくれ。変わった奴が研究所に入ってな、そいつと研究しておって毎日ずっとこもりっぱなしじゃ」
この二人は夫婦といっても前と変わらない。お互いがお互いにしたいことをしている関係だ。
バビデの所はもっと忙しい。弟子を取って生産体制を強化している。アンジェラがおめでたみたいだからな。
ティンクルの研究所は前のままだが、生産拠点は拡張されている。よく魔力をそそけるやつをたくさん雇えたものだ。
「おーい、ティンクル。ちゃんと風呂入ってんのか?」
ティンクルはまたこもりっぱなしで研究してるらしいからな。
「おー、誰か思たらセイやんけ」
「げっ、新しい研究者ってスクナだったのかよ」
「ん?お前等知り合いか?」
「ティンクル、そいつは神様だ」
「そうか、どうりで詳しいはずた」
何も驚かないティンクル。もうヘスティアとか普通にいるしな。
「お、なんや俺の事を神と知っても驚かんのか?」
「神はそこにいるからな。我々の神はヘスティア様だ。他の神を蔑ろにするわけではないが一番はヘスティア様だ」
「へっへーん、ティンクル、よくわかってんじゃねーかよ」
ティンクルに一番だと断言されてヘスティアは上機嫌だ。
「へぇ、この世界の神様はえらい可愛いな。俺と付き合うか?」
「お前なんか知るかよっ。俺様にはセイがいるんだよっ」
「なんでヘスティアにセイがいるのよっ」
「薬指に指輪はめて貰ってるだろうがっ」
ヘスティア、それは利き腕の指にはめたら邪魔だと君が言ったからだ。
「なんやセイ、お前神さんと結婚したんか?カミさんだけに。あーっはっはっは」
スクナ、ちっとも面白くないぞ。
「ティンクル、スクナは薬神でもあるから一緒に研究するのにはちょうどいいかもな」
「お前、薬神なのか?」
「そやで」
二人共小さいからここは異世界の中の異世界みたいな感じだな。
「スクナ、お前どこの神社からここに来た?」
「大阪のちっこい方や」
「住吉の三神とかに知られてないだろうな?」
「大丈夫や。あいつら偉そうやろ?あんま好きちゃうねん」
三神は神格がかなり上だからな。スクナの言いたい事は分かる。俺も近寄らないようにしていたからな。
「ならいいけどな。ウカノとかも来てるぞ」
「あぁ、あの何考えてるかようわからん狐も来てんのか」
「お前、誰からここに来れるって聞いた?」
「ヒムロや」
あいつめ・・・
やけに関西地域に縁の強い神が多いと思ったらヒムロのせいか。ウカノはクラマのせいだったけど。
「ヒムロのとこに行くか?」
「いや、ここでポーションっちゅう薬を一緒に作ってるわ。こいつがなかなか仕組みちゃうから難しいてな」
「それを作ったのはセイだ」
「なんやてっ?お前神ですらわからん薬を作ったちゅうんか?さすが混じりはちゃうのう」
「混じりって何だ?」
「お前にはなんや色々と混じっとるやろ」
「あー、なんかマガツヒが混じってるとか言われたやつか?」
「なんやて?お前マガツヒみたいな恐ろしいもんが混じってんのか。いや、そんなん感じひいんけどなぁ。まぁ、ええわ。作り方教えたりぃや」
「作り方はティンクルが知ってる」
「私のはセイの程効能がないだろう?」
「俺がいた世界の神がわからないものってなんだろうねぇ?」
「ん?」
「教えて欲しかったら教えるけど、それでいい?」
「いや、自分で探そう」
「そやかてティンクル、俺の知らんもん言うたかてこの世界のもんは知らんもんばっかりやで」
「それを調べるのが研究なのだ」
「はー、それもそやな。よし時間は無限にあるしじっくり調べよか」
「私の時間は有限だぞ」
「あっ、そうか。人間はすぐに死ぬんやったなぁ。ほなら急ごか」
セイは研究に戻った二人を見て帰ろうとすると呼び止められる。
「何?」
「ウラウドには行くか?」
「いや、予定してないけど」
「そうか、ならば行くときには教えてくれ」
「なんかあんの?」
「虫使いの予防薬の支払いが溜まっている。渡しようが無くて持ったままなのだ」
「あれ、お金払うの?」
「当たり前だ。開発したやつにキチンと利益を落としてやらねばいかん。こちらも儲かったからな」
金貨50枚以上あるんだな。ウラウドにも長い間行ってないし持って行くか。
ということで預かっておいた。
一応ビビデに研究者は自分が居た所の薬神だと教えておく。俺に様子を見に行かせたのは見知らぬ男がずっとティンクルと一緒に研究しているのを気にしたからかもしれないからだ。
「あいつは異世界の神か?」
「そう。まぁ、気さくないいやつだしティンクルに悪さしないから」
「そっ、そんな心配はしとらんっ」
「本当にぃ?」
意地悪にそう笑ってやる。
「ヒントはやったのか?」
「わかりにくいやつだけどね」
「お前のポーションほど効果が無いのは魔力量が足りんのじゃろ?」
「あれ?分かってたの?」
「なんとなくな。セイの力は魔力では無いと言うておったが魔剣に通わせられる力じゃからよく似ておるはずじゃ。お前の膨大な力があってこそのあの効能なのじゃろ?」
ダンジョンが作ったとは言えないが、俺の妖力を注ぎ続けたから出来たポーションだからな。
「そうかもね」
「全く無駄な研究をさせおってからに。鉄でメラウスの剣を作れと言うてるのと同じじゃろうが」
「違うよ。ティンクルに渡した素材で作れるんだよ」
「なんじゃとっ?」
「だからそのうち見つけ出せると思うよ」
「それは伝えたのか?」
「ティンクルが答えを聞いて喜ぶと思う?」
「そ、そうじゃな。あやつはそういう奴じゃ」
ビビデもそういうタイプだからよくわかるだろう。ティンクルの研究はちゃんと正解があるのだとわかったビビデは機嫌が良くなっていた。
お酒を大量に貰った後に温泉街を見に行くと宿を多く作っているのでまだ完成していない。今年の年末には完成させるとのことだったのでその時にまた来るとそこの責任者に約束した。
そしてセイはそのままウラウドに移動したのであった。