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正夢

翌日、ヒョウエ達と新年会をするためにオーガ島へ移動。


ん?何やら騒がしい。


ウェンディ神社の外に出ると鬼達と妖怪達が混じってすごろくや福笑いとか昔ながらの遊びをしていた。


それはいい、それは別にいいのだ。


「ヒムロっ、ヒムロはどこだっ」


さっと隠れたヒムロを指差すユキメ。


「アッ、アホっ。なんでセイに教えんねんっ」


「隠し通せるわけじゃないでしょ」


「お前、なんでバラしたん・・・」


「あらぁ、セイ。久しぶりねぇ」


「あの、その、お久しぶりです、弁天様・・・」


セイの背後から声をかけたのは弁財天。そしてセイが見たものは入江に停泊していた宝船だった。昨日宝船を見たのは正夢か現実か・・・


「その名前で呼ぶなってんだろうがっ」


「サ、サラスバティでいいでしょうか」


「うふふ、いい子ねぇ。サラでいいわよ。私とセイの中じゃなぁい」


そう言う笑顔の弁天はとても怖い。福の神の一人でエキゾチック美人なのに彼氏がおらず嫉妬深いのだ。


(お前、弁天にバラしたのかよ?)

(しゃーないやろ。突然来てなにコソコソしてるんだって顔を近付けられて脅されたんやっ)

(何しに向うに行ってたんだよ)

(1日は氷灯籠があんねん。そんときぐらいおったらなあかんやろ)


あー、神事の時に行ってたのか。また悪いタイミングで弁天が来たもんだ。


「うわっはっはっは。セイ久しぶりやなぁ」


「あ、えべっさんも来てたの?」


商売の神様である恵比寿様。宝船船に乗る神様で唯一元から日本の神様だ。この神様はいつも笑顔で優しいのだ。


「こないに空気も海も綺麗なところがまだ残ってたんは僥倖僥倖。ほれ、お前もワシが釣った鯛食うたらええわ。こっちへ来んかいな」


と、コウヨウカクへ引っ張って行かれる。案の定、他の七福神もいた。しかもめっちゃ飲んでるようだ。


「おっ、毘沙門じゃねーかよっ」


「はぁぁっ?鬼だけじゃなしにサカキまでいやがんのか。面白ぇ、表出やがれ」


「クックック、返り討ちにしてやるぜ」


「サカキ、魔物の森の方へいけ。お前らが暴れたらここが壊れる」


毘沙門とサカキを魔物の森へと追いやる。酷いことになるのは目に見えてるからな。


「セイ、こいつら誰だよ?」


「向こうの世界の神様だよ。ヒムロがこの世界の事を話したらしい。全くこいつは」


「ワ、ワイのせいちゃうやんかっ。弁天がワイを脅してやなぁ」


「あぁん?おまえら別れさせてやろうか?神と妖怪がくっつくとか気に入らねぇんだよっ」


「わっ、かんにんや。そんなんしたらあかん」


「ねぇ、セイ、その娘達はだぁれ?まさかいい人じゃないよねぇ〜」


と、弁天は人差し指でセイの顎を撫でる。


「セイに触んないでよっ」


「なんだとぉっ、セイはあたしのもんなんだよっ」


「なんですってぇぇぇぇっ。セイ、どういうことよっ。わたしに一生守ると言ってちゅーしたくせにっ」


「なんだとぉぉっ、セイっ、どういうこったいっ」


「あわわわっ、えらいこっちゃえらいこっちゃ。セイの浮気がバレてもうたがな」


ヒムロ、ややこしくしないでくれ。俺と弁天は何にもないぞ。


「タマモ、ヘルプヘルプっ」


「おい、サラスヴァティ、やめな」


「ちっ、タマモまでいやがったのか」


タマモが妖狐の姿で出てきて威嚇したことで弁天は引いた。この二人ははるか大昔から知り合いらしい。


セイはウェンディ達をこの世界の神だと教え、よそ者の神は大人しくしとけとタマモに隠れながら言った。


「セイ、お前はこっちの神とは仲良くしとるんやなぁ。結構結構」


恵比寿はセイが元の世界ではあまり神に近寄らない様にしていたのが、ここではベタベタするぐらい仲が良いのを見てよろこんでいた。

セイは元の世界であまり神に関わらないようにしていたのはほとんどの神が我儘なのが原因だ。神が見えないふりをしても見えているのがバレてあれしろこれしろとか言ってきてキリがないのだ。


弁天はセイにというよりも誰もが自分の彼氏だと思っているようで、独身男性がカップルでお参りに来たりするとめちゃくちゃ嫉妬して怖いのだ。結婚している男性にはそうではないのだが。


「えべっさん、もうすぐお祭りだろ?こんな所で遊んでていいのか?」


「祭の当日は帰らんとあかんやろなぁ。それが終わったらまたくるけど。熊手をお土産に持って来たろか?」


「いらない。贋物の小判とか金の俵とか付いたやつだろ?」


「ホンマモンの小判とかもうあらへんからしゃあないがな。あんな紙切れがお金とか信じられへんわな。世知辛い世界になってもうたわ」


「あの・・・ えべっさん、また来るってどういうこと?」


「ワシらもここに住もかなと思うてんねん」


「は?」


「ここはええとこやなぁ。そっちの嬢ちゃんたちも神様や言うたやろ?」


「うん、もう一人いるけど今日は来てないね」


「嬢ちゃんらみんなえらいべっぴんさんやし、幸せそうやんか。人々に感謝されてんのがよう伝わってくるわ」


「えべっさんも商売人から感謝されてるじゃん」


「ワシはまだそこそこ感謝されとるけど、他の神はちゃうやろ。あれやってくれ、これやってくればっかりやさかいな。ワシもしょーもない商売人から宜しく言われても知らんがなっちゅうのが本音やさかいな」


珍しく渋い顔をするえべっさん。しょーもない商売とはどんなのかわからないけど神様してるのに疲れてるのかもしれん。


「それに比べてこの世界の人は純粋やな。鬼達にも聞いたけど、あれこれお願いせんと感謝でお参りしてくてるみたいやないか。そんなんされたら皆張り切るん当たり前やな。ええ世界や。日本も昔はそうやったんやけどなぁ」


しみじみそういうえべっさん。弁天はタマモと牽制し合いながら飲み始めたし、こっちもえべっさんと飲むか。ちょっと愚痴を聞いてやったほうがいいかもしれん。


その後は大黒や福禄寿や寿老人、布袋もこっちに来て福の神たちの愚痴を聞くのであった。寿老人は酔ってヘスティアにおいたしようとして長い頭の先を燃やされていた。


「なぁ、セイ」


「何?」


「ここにワシらの社を建ててくれへんか?」


「は?」 


「ほれ、ここに住むならそういうものが必要やからな。鬼達のとこじゃ無くてもかわまん。島の向うに船着き場があるやろ。あそこに建ててくれへんか?」


「あそこは海が荒れた時に漁師が退避してくる港だぞ」


「ちょうどええやないか。荒れてないときには釣りし放題やからな。あそこは潮通しのええ場所や」


「その釣具は神器だっけ?」


「そうや」


「なら釣れた魚は鬼達にも分けてやってくれ。魚はいくらでも出せるんだけど、出した魚は鬼達の栄養にはならないんだよ。釣った魚と交換してやるとかでも構わないから。住むのもここでいいじゃん。港に神社作ったらすぐに行けるだろ?」


「ほうか、ならそれでええで」


ということで七福神の社を鬼の住む近くに作ってもらうことに。社が出来る間はコウヨウカクで住むとのこと。


「なんでよその神が住むのよっ」


「しょうがないだろ。お前たちと一緒で神は言い出したら聞かないんだよ。他の街よりここの方がマシだ」


人間の住む街で神が入り乱れたらややこしいからな。妖怪達と仲良くやってくれるならそれでいい。


クラマと港に神社を作る打ち合わせをしていたらピリリと電話が鳴った。


「シーバス、何?」


「あのな、ここの神社から白い狐が出てきてんだが魔物じゃねぇよな?」


「は?出てきたのは狐だけ?」


「いや、細い目をした美人も出てきたぞ。今キョロキョロしてるがなんかえらいさんみたいな雰囲気しててよ、セイの知り合いかと思って話しかける前に連絡してみたんだ」


「すぐにそっちに行く」


セイはジロッとヒムロを見る。


「しっ、知らんっ。ワイはなんも知らんで」


「ほんまやろな?」


関西弁が伝染るセイ。


「ほ、ほんまやて」


ヒムロは本当に知らないようなので取り敢えず虹のまちに移動する。


「おや、クラマ。こんなところに居やはったんやね」


「ウカノ、貴様何をしに来たんじゃ?」


「つれないこといいなはんな。なんやあんたを見かけへんようになった思たらカラス共に後は任せたて言いはったみたいやないの」


「セイ、すまぬ。カラス共が喋りおったみたいじゃ」


「どうすんだよ。ウカノとタマモは仲が悪いんだぞ」


「こっちに来とらんから大丈夫じゃ」


弁天とタマモはどちらも元々は異国の者同士で牽制し合う仲ではあるが嫌いあっている訳ではない。が、ウカノミタマは神狐の最高峰、タマモは妖狐の最高峰。二人共どちらが上かで必ず揉めるのだ。だから稲荷系の神社には近寄らないようにしていたがクラマとは旧知の仲なのを忘れてた。


「なぁ、クラマ。あんたはなんで帰って来うへんの?」


「ワシはセイの面倒を見ねばならんのじゃ。セイがこの世界を選んだからワシもここにおる」


「あー、あの子供がこない大きいなっとんのかいな。なんやまたえらいもんようけ混じっとるやないの。こんなどっちに転ぶかわからんようなもんの面倒見るなんてあんたも物好きやなぁ」


「うるさいわい。お前には関係のないことじゃ。用事が済んだらさっさと帰れ。大元のお前がおらなんだら混乱するじゃろうが」


「ほならクラマも一緒に帰ろ。山が寂しがってはんで」


「ワシはここにおる。山の事はカラス共がちゃんとやるワイ」


「ほならウチもここにおろかなぁ」


「貴様は帰れと言うておるんじゃっ」


「なんやえらい冷とならはったやんか。ウチの事は飽きはったん?ウチそんなん寂しいわ」


「クラマ、ウカノと良い仲だったの?」


「違うわっ。こいつが勝手に言うておるんじゃっ」


それを見てコロコロ笑うウカノ。どうやらクラマは弄ばれているようだ。まさに女狐って感じだな。


「シーバス、ごめん。この人は俺がいた世界の神様でウカノミタマ。五穀豊穣の神様なんだよ。白狐達は眷属で各地で祀られているから神に近い存在なんだよ」


「へぇ、狐が神様なのか変わってんな」


「誰が変わってるやてっ」


「げ、イナリ。貴様まで来ておったのかっ」


「当たり前やっ。ウカノミタマ様が行くとはウチもおんねんっ」


「あれは?」


「白狐の中で一番上の眷属イナリ。今は人型になってるけど狐だよ」


セイはタマモのこともあり、ウカノやイナリとには近付かないようにしていたのでここはクラマに任せよう。


「じゃ、クラマ。後は宜しく」


「わ、ワシにだけ押し付けるつもりかっ」


「カラスの不始末はクラマの不始末。ちゃんとケツ拭いてやってね」


「ここにも他の神が住み着くの?」


アーパスは表情を変えずにそう聞いてきた。


「アーパス、後はクラマにまかせよう。マダラ、すずちゃんとクラマのサポート宜しく」


「マダラとすずちゃんを置いて行くの?」


「すずちゃんは神様みたいなものだし神からも妖怪からも可愛がられているから大丈夫。マダラはイナリを牽制出来るから」


と言ってる尻からマダラとイナリはバトり始める。本気ではないけどマダラの方が強いしおちょくるのも長けている。イナリは尻尾で自分の鼻先をマダラにフリフリ挑発されてキーキー怒る姿がウェンディみたいだ。


「あらぁ、すずちゃんもここにいはったんやねぇ。えらい大きなってぇ」


「私はアーパス。すずはこっち」


どうやらアーパスはすずちゃんが心配なようでウカノが帰るまでここにいるらしい。


セイはシーバス達を集めて事情を説明することに。


「随分とややこしいな」


「だろ?それに嫌な予感がするんだよね」


「何がだ?」


「神のネットワークで神がここに来れるのはバレると思っておいて」


「どういうことだ?」


「毎年10月に俺の居た国の神様が一箇所に集まって会議するんだよ」


「で?」


「ここに来れることが全部の神にバレる」


「バレたたらどうなるんだ?」


「こっちに遊びに来るに決まってるじゃん。神って我儘で言い出したら聞かないんだよ」


「別に遊びに来てもいいじゃねーかよ?」


「こっちの金を持たずに飲み食いするだろうが。誰がその金を払うんだよっ」


「セイが払ってやれよ。金持ちだろ?」


嘘だろ・・・


「ウェンディ」


「なによ?」


「向こうの世界に行こうか?」


セイはこれから先の事を考えると現実逃避をしたくなるのであった。

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