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冒険者デビュー

「え?入るのにお金いるの?」


「身分証を持たぬ者は入国許可証を発行せねばならんからな。一人銅貨10枚だ」


「おい、ウェンディ、金いるってよ。払ってくれ」


「そんなの持って無いわよ」


「は?」


「お金なんて持ってる訳ないでしょ。私は神よ神っ。神様がお金払ってる所見たことあんのあんた?」


「お前神様じゃなくなったんだろ?」


「うぐっ ヒックヒック。そ、そんな言い方しなくたっていいじゃないっ」


また泣き出しやがった。


「何をゴチャゴチャ言ってるんだ?二人で銅貨20枚さっさと払わんか」


門番にそう急かさせるセイ。


「いや、ちょっと財布失くしちゃったみたいで・・・」


「盗賊にでも襲われたのか?ツレの女も泣いてるみたいだが」


「まぁ、そんな所。お金以外で何か代わりの物じゃダメか?」


「金以外の物?」


ポケットをガサガサと漁るセイ。


財布、スマホ、使い捨てライター、ガム。入ってるのはこんなものか。世界が違うらしいから財布の金は使えないだろうな。


「何だそれは?」


門番が聞いて来たのは使い捨てライターだ。


「これ?使い捨てライター。こうやったら火が点くんだ」


シュボッと火を付ける。


「おぉ、魔道具か。それならそいつを銅貨50枚で買ってやろう」


銅貨1枚がいくらかわからんがとりあえず街に入れるならいいか。


ライターはこの液体が無くなるまで使えると説明して入国許可証と銅貨30枚を受け取った。ついでにこの国で金を稼ぐ事は出来るかと聞いたら冒険者ギルドというところに行けば何なと仕事があるそうだ。



「セイ、お腹空いた」


ウェンディがそう言う。


「そうだな。なんか食うか」


出店みたいなのがズラッと並んでるところでいい匂いのするところに行ってみた。


「おっちゃん、これいくら?」


「3本で銅貨5枚だ」


「じゃ、6本くれ」


ムグムグとなんの肉かわからん串肉を食う。結構旨い。豚バラみたいな感じだな。


「これからどうすんのよ?」


お前のせいなのに他人事みたいに言いやがって・・・


「とりあえず冒険者ギルドって所に行って金稼げるが確認しないとな。そうしないとまた野宿になるぞ」


「まっ、また蛇に噛まれるのイヤーーっ」


「だから金がいるだろうがっ」


「ふっふーん。ここは私の庇護下にあった国よ。下々の者たちに言えば寄付なんていくらでも集まるわ」


勝ち誇ったように無い胸を反らすウェンディ。


「お前さぁ、女だと思ってたけどもしかして男か?」


「誰が男よっ。どこからどー見ても女神でしょうがっ」


「その割には胸が・・・」


ガスッ


「うっさいわねっ。どこ見てんのよっ。そ、それにあんなもの脂肪の塊じゃないっ」


そんなに真っ赤になって怒ることないじゃないか。


「まぁ、どっちでもいいわ。とりあえず寄付集まるならそれでもいい。但し、変な壺とか売るなよ」


「何で壺なんて売らないといけないのよ?」

 

怪しげな宗教は壷を売ると相場が決まっているのだ。


「いや、こっちの話だ。とりあえず俺は冒険者ギルドって所に行ってみる。あんまりウロウロしてどっかに行くなよ。俺はこの世界の事を何にも知らないんだから」


「うっさいわね。下僕の癖に私に指図しないでよ」


ウェンディの言い種にムカついたので手で蛇の真似事してやったらヒッと青ざめるたウェンディをここに放置して冒険者ギルドへ向かうセイであった。



「いらっしゃいませ。ご依頼ですか?」


「ここって冒険者ギルドであってる?」


「はい」


「ここで仕事を斡旋してくれるって聞いたんだけど、日銭を貰えるような仕事ってあるかな?」


「冒険者証はお持ちですか?」


「いや持ってないよ」


「では登録ですね。こちらに名前と年齢とタイプを書いて下さい」


「タイプって何?」


「剣士や魔法使いとかです」


そういや魔法がなんたらとかウェンディが言ってたな。


この世界で陰陽術とか使えんのか?


「狐火」


ボッと火の玉を出すセイ。


「キャッ。こ、こんな所でファイアボールを出されては困ります」


「あ、おねーさんもこれ見えるんだね」


「はぁ?当たり前です」


ざわざわと騒がしくなるギルド内。


(おい、あの見慣れねーやつ、ファイアボールをその場で維持してやがるぞ)

(おお、ありゃ相当な使い手だな。見た事のねー顔だがどっから来たんだ?)


狐火を出すとざわざわするギルド内。ふむ、この世界の人はみんな見えるみたいだな。


「ぬーちゃん、ちょっと出て来て」


「はーい」


「キャァァァァ」


「あ、ごめん。怖がらないで。こいつは俺の友達だから」


「つ、使い魔ですか?」


「使い魔?なんかわかんないけど、勝手に悪さしたりしないから」


「わ、わかりました。タイプは魔法使いとテイマーで宜しいですか」


「じゃ、それで」


「セイー、何してんの?」


「仕事探しだよ」


「妖怪退治するの?」


「どんな仕事があるか聞かないとダメなんだよ。もういいよ、戻ってて」


「はーい」


「あっ、あの」


「はい?」


「使い魔は話せるんですか?」


「ぬーちゃんは大妖怪だからね」


「大妖怪?」


「そう、ああ見えて物凄く強いから」


「は、はぁ。では登録料銀貨1枚になります」


「えっ?お金いるの」


「はい」


貨幣価値は銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚とのこと。さっきの串肉の感じからすると銅貨1枚100円、銀貨1枚が1万円ってところか。


「参ったな。財布落としてお金無いから仕事を探しにきたんだけど」


「そう言われてもこちらも登録料代を貰わない訳には・・・」


「そうだよねぇ」


「おい、あんちゃん。俺らの仕事を手伝うなら代わりに払ってやろうか」


「あんたは?」


「俺はCランクハンターのアイアンって者だ。さっき見てたがあんちゃん魔法使えんだろ?」


「あれは魔法じゃ・・・」


「今日狩りに行く魔物はウドーって木の魔物なんだけどよ、火魔法使えたら楽に倒せるんだ。ウドーは一匹当たり銀貨1枚の報酬が貰えっからよ」


魔物狩りか。妖怪退治みたいなもんか?


「俺に倒せるかどうかわからんぞ」


「おい、リタ。こいつは俺達の臨時パーティに入れっからよ冒険者証発行してやってくれや」


と、アイアンと名乗る男が銀貨1枚払ってくれた。


メンバーは全員男で、アイアンとリードが剣士、ストンが槍使いの3人組だ。


話を聞くと他にも女性治癒魔法使いと攻撃魔法使いがいたらしいけど二人は結婚するってことでパーティを抜けたらしい。


ギルドで発行された冒険者証は身分証になるらしく、これがあると入国料をいちいち払わなくて住むとのこと。



セイはアイアン達に言われるがまま魔物退治に連れて行かれることに。


「で、木の魔物ってどんなの?」


「見た目は木そっくりでな、近付くといきなり襲われるんだ。薪を取るのに木こりが襲われる事もあるから常駐依頼ってやつだな。剣や槍で倒したら薪としても使えるんだが俺達がやるのは討伐だ。ウドーは火魔法を使えりゃ一発で討伐出来る。アイツらよく燃えやがるからよ」


狐火は火魔法じゃないけど大丈夫だろうか?やばかったらぬーちゃんにも手伝って貰おう。



そして4人でウドーが頻発している森にやって来た。


「そろそろ出てもおかしくないぜ。気を付けな。枝に巻かれたら脱出困難だからな」


ウドーは近付いた生き物をぐるぐる巻にして養分を吸い取るらしい。こいつの狩り方は一人にならないこと。巻き付かれた仲間がいたら他の人がその枝を切ってやらないとダメだからだそうだ。


と言ってるそばから体に枝が巻き付いて来た。


「うわっ」


「フンッ」


セイの身体に巻き付いた枝をアイアンが切り払ってくれた。


「あんちゃんっ、今だっ焼けっ」


「狐火っ」


狐火がウドーに触れた瞬間にボッと燃えて倒れた。


「よーし、よくやった。やっぱ火魔法が使えりゃ一発だな。燃え尽きたら魔石が出て来るからよ、それが討伐証明になる」


ウドーはすぐに燃え尽き、その後に小さな赤い石が残った。


「これ、森が火事になったりしないのか?」


「大火力ならわからんが、普通の生木はそんなに簡単に燃えねぇって」


なるほど。


「じゃ、狐火で手当たりしだいに木を触ってみるよ」


「キツネビ?そういやあんちゃんファイアボールの事をキツネビとか・・・」


アイアンがぶつぶつ何かを言いかけた時にセイは狐火を手当り次第木に触れさせた。


ボッ ボッ ボッ ボッ ボッ


あちこちで燃え上がるウドー。



「おいおい、何だよこりゃあ・・・・」


たちまち30本程のウドー討伐に成功したセイ。


「まだいるかな?」


「まさかこんなにウドーがいやがるとは。これはギルドに報告しなきゃならんかもな」


「これって多いのか?」


「あぁ、異常に多い。今日も4〜5匹くらいのつもりだったんだ」


ギルドに戻ってアイアン達はウドーが異常に多い事を報告し、報酬は山分けとなった。


「あんちゃん、こんなに早く終わって報酬もたんまりだ。打ち上げしようぜ」


「俺はまだ未成年で酒は・・・」


「は?歳いくつだ?」


「18歳だ」


「なんでぇ、成人してんじゃねーか。ほら飲むぞっ」


どうやらこの世界は15歳で成人らしく、オッサンだと思ってたアイアン達は20歳だった。


「はっはっは、あんちゃんどっから来たんだ?」


ご機嫌のアイアン達に聞かれたので元の地名を言うと当然のごとく誰も知らなかった。


「誰も知らないような遠い国から来たんだな。一人でよく来たな」


「あっ・・・」


すっかりウェンディのことを忘れてた。


「ごめん、ツレを街に残してたんだった。ちょっと迎えに行って来るわ」


ウェンディが寄付を募ると言っていた場所に行くとそこには泣き崩れたウェンディの姿があったのであった。

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