知らなかったことがたくさん
母親と会うのか・・・
ぼんやりとそんな事を考えながら写真をプリントアウトしていく。
「俺様とも二人で撮れよ」
ハイハイ。
スマホでヘスティアと一緒に撮影する。普通に撮るのかと思ったら肩に乗って脚を首に絡めている写真を撮らされた。ピースとかいつおぼえたんだろうか?
アーパスとはすずちゃんを間に挟んで手を繋いだ写真。親子写真だなこれ。
ウェンディはお姫様抱っこの写真。もうみんな好きにしてくれ。
タマモやサカキ達も呼んで屋敷をバックに撮影もしておいた。この世界だと妖怪達も写真に写るからな。
プリントアウトした写真を皆に持っていく前にアネモス城にいってマリーの写真や王城から王都を見下ろした写真を撮る。ギルマスとグリンディルはギルドをバックに撮影。内部はアイアン達が飲んだくれているところだ。
オーガ島で写真を渡してボッケーノに移動。ビビデ達を撮影したあとにワイバーンスポットでワイバーンを撮影。試しにイフリートを呼んで撮影したら写ったので他の妖精と神獣も撮影しておいた。
カントハウスに寄って撮影する。
ここでもラーラが撮影の瞬間にほっぺにチュとしたのでまたカントに殴られる。なぜが動画撮影になっていたので殴り飛ばされるまでしっかり撮影されていたのであった。ケビンがウェンディと二人で撮って欲しいと懇願するので撮影はしたが少し手ブレしておく。
アクアはアーパスの宿をバックにリタ達を含めて記念撮影。美術館のステンドグラス、上空からの街並みを撮影をしていく。
虹のまちではマダラとアメフラシも入れてアーパスの教会と宿の内部を撮影した。
ガイヤへと続くゴンドラにも乗った場面、ガイヤは上空からの撮影とセイカレーを食べて舌をコップで冷やすウェンディとか撮っておいてやる。ついでに一つ目や三つ目なんかも撮影しておいた。
「なんでこんなに写真撮ってんのよ?」
「ほら、会うときに何を喋っていいかわかんないだろ?写真があれば話題が作れるかなと思ってね」
そしてセイは快速空馬でドラゴンスポットに飛んだ。ヘスティアとアーパスは瞬間移動をしてもらうのでウェンディと二人乗りだ。誰が乗るかで揉めたけどウェンディが上手く瞬間移動出来ないということで一緒に乗ることになったのだった。快速空馬ならこの山も超えられるので山越えしてヘスティアが掘った洞窟に移動する。
「サカキ、クラマとドラゴンを狩って来いよ。最近暴れてないから力が有り余ってんだろ?」
「欲しい素材があるのかよ?」
「別にないけどドラゴンを撮影しときたいんだよ。お前たちの勇姿も映像として残るぞ」
「けっ、そんなもんどうでもいいわ」
と言いつつクラマと合体してドラゴン討伐に向かうサカキ達。
おー、すげぇすげぇ。
セイはぬーちゃんに乗って戦うサカキ達を撮影していく。怪獣物の撮影をしているみたいだ。
サカキが落っこちた所はNG集として編集しよう。パソコンにそういうソフトが入ってたからな。
各種ドラゴンを狩った戦利品を回収して戻る事に。
「セイ」
「なんだよヘスティア?」
「空馬に乗らなくてもよ、大神の扉を使えばすぐに移動出来たんじゃねーのか?」
あっ
「そうだね。すっかり忘れてたよ」
テッテレーとか口で効果音を出しながら扉を出して屋敷に戻り撮影した物をプリントアウトしていく。ムービーは動画編集ソフトは簡易式の物ではあったがなんとか見れる素材に編集出来たのであった。
それから数日して意を決したセイは元の世界に移動して父親にメールを送った。
返事を待つ間に家電店で写真用紙とインクを買い足して行く。そこでふと家庭用のWi-Fi機械を見つけた。
店員さんに聞くとスマホと同じくこれが通信機になり、家でWi-Fiが使えるとの事。回線契約をすれば電源を確保するだけですぐに使えるらしい。試しにこれを買って契約をした。神社の中においておけば受信が出来て家の中でWi-Fiが使えるかもしれない。
そして父親からの返事があった。
「可能であれば明日の19時に駅で待ち合わせをしよう」
明日か・・・
心がドキドキするが引き伸ばしても仕方がないので、4人で行くと返事をしたのだった。
新幹線を2席ずつ前後で取り対面席にすることに。社内販売の駅弁だと足りないかもしれないので駅で色々な種類の弁当を買って乗り込んだ。
「これ美味しい」
アーパスが食べているのは幕の内弁当、ウェンディとヘスティアは様々な弁当の食べたいおかずだけ食べてこちらに寄越して来やがる。野菜の煮たやつとか食えよ。
新幹線で移動する間にひたすら食べ続ける女神ズ。弁当ガラを何度も捨てに行き、小さなゴミ箱を満タンにしてしまった。
入り切らなかったゴミは駅のホームで捨てて乗り換え。前みたいにラッシュアワーではないので人酔いすることもなく目的の駅に約束の時間より随分と早くに到着した。近くのファミレスでデザートを食べつつ時間が過ぎるのを待つ。セイは新幹線の中で食べ残しを食べてから何も食べていない。というか約束の時間が近付くに連れ何も喉を通らなくなっていた。
だんだんと顔が青くなっていくセイ。
「大丈夫かよ?」
パフェを食べている手を止めてヘスティアがセイの顔を自分の胸に収めた。
「ご、ごめん」
「別にいいぜ」
ヘスティアの胸からトクントクンという鼓動が聞こえる。その音を聞いていると不思議と落ち着いていく。そして神様にも心臓があるんだなとか余計なことを考えているうちに震えが収まっていった。
「ごめん、もう大丈夫」
ウェンディは機嫌が悪い顔をしてパフェをパクパク食べている。
周りを見渡すとめちゃくちゃ食ってるのを見られているのか、人前で恥ずかしげもなく女性の胸に顔を埋めていたのを見られているのかわからないけどめっちゃチラ見されていた。そこっ、盗撮すんなっ。
時計を見ると18:50
そろそろ行かねば。
このお会計ってファミレスの値段だよね?と思う金額を払い、駅へ向かうとすでに父親がいた。
「ごめん、待たせた?」
「いや、今着いたところだ。そちらのお嬢さん達は誠のほっぺにキスしていた人達かな?」
「え?」
「お前が写真送ってきたろうが?」
「俺はそんな写真は送ってない・・・」
「お前、もう少しパソコンとかに詳しくなれよ。データを加工せずにフォルダごと送って来やがって。クソ重たいからなんかのウィルスかと思って見ずに消去するところだったんだぞ」
ゲッ、親に見られたくない奴まで送ってたのか俺は。
ウェンディは前に会っているので火の神様ヘスティア、水の神様アーパスだと説明する。
「よく母さんに会う決心をしたな」
「あ、うん。母親代わりに育ててくれた人と言うか妖怪に会った方がいいと言われてね」
「そうか。本来であればその妖怪にお礼を言いたいが父さんには見ることが出来ないからな」
「そうだね・・・」
「どうした?緊張しているのか?」
「うん」
「まぁ、当然か」
「母さんは本当に俺に会いたいと言ってるの?」
「もちろんだ」
「怖くて捨てたくせに?」
「まぁ、その事は家で話をしよう。この前送ってくれたお前の写真を母さんにも見せたんだ」
「え?」
「何にも説明せずに見せたけど母さんはお前だとわかったぞ」
「本当?」
「あぁ、だから心配すんな」
「でも俺は母さんの顔を覚えてないや」
「お前はまだ3歳だったからな。それとお前には言ってなかったが妹がいるぞ」
「えっ?」
「すまんな。隠したかったわけじゃないんだが、自分だけが一緒に住めないと思うだろうと思って言えなかったんだ。今日は家で母さんと待ってるから」
俺に妹なんていたんだ。
「名前は美幸。お前と同じで妖怪が見える」
「えっ?」
「お前、この前すずちゃんを連れて帰っただろう?」
「う、うん」
「すずちゃんは保育園が無くなった後にずっとうちに住んでいたらしい。美幸が連れて来たそうだ」
「すずちゃん、そんな事は一言も・・・」
「すずちゃんはお前が自分が見えた事でいなくなったのを知っていたんだろうな。美幸には自分が見える事を誰にも言うなと口止めしていたんだ。だから父さんもお前が来た後に美幸が妖怪を見える事とかすずちゃんが住んで居た事とか初めて知ったよ」
「口止めされてたのにどうして話したの?」
「お前が大勢の妖怪を引き連れて空を飛んでいるのを見たそうだ。ちょうど一緒にいるときでな、美幸がすずちゃんと思わず口に出したから聞いたんだ。その時にお前の事も美幸に話した。写真を見て会いたがってるぞ」
次々に知らない事を知らされ頭が真っ白になっていくセイなのであった。