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隙は身を滅ぼす

「げっ、お前ケビンか?」


ほんの少し会わないだけでこんなにデカくなるのかよ?街道作ってる時はまだこんなんじゃなかったぞ?


セイより少し大きくなったケビン。もうワイバーマントもピッタリになっている。


「へっへーん、もう兄ちゃんよりデカいだろ?ウェンディっ、ほら見てくれよ」


ウェンディに俺に身長で勝ったと言いたげに並んで見せるケビン。ウェンディはそんなのに全く興味がないようだ。


「お兄ちゃんっ」


「ラ、ラーラもすっかり大人になって」


奥さんの可愛さと美人さが混じったような綺麗な女性へと育ったラーラ。身長もそこそこある。まだ未成年だよな?


「キーーっ!離れてよっ」


子供の時と同じように無邪気に抱きついてくるラーラ。しかし傍から見たら綺麗な女性に抱きつかれているようにしか見えないだろう。


「そうだぜっ、離れろよなっ」

「離れて」


女神ズはラーラを女性と認定してセイにくっつくなと威嚇する。


「ヘスティア様、前はそんなに怒らなかったのにぃ」


口調とほっぺをプクッと膨らませる所は変わってないけどもう子供には見えない。出る所もしっかり出ているし。


「セイ、手を出すなよ」


カントは女性に育ったラーラが気が気でないらしい。


そしてカントもすずちゃんを見て驚いたので奥さんにした説明をもう一度しておいた。


「これ、お土産ね」


「なにーこれ?」


「チョコレートというお菓子だよ。ご飯食べ終わってからね」


奥さんには肉と魚を渡してあるので料理はお任せと思ったらラーラが作ってくれるらしい。


「セイ、何がどうなってるんだ?」


カントは神たちがまた見えることやすずちゃんを連れて来たこととか色々と疑問が尽きないようなのですべてを話していく事に。


「は?神の通り道を使えるだと?」


「そう。だからこっちの世界とあっちの世界で行き来出来るんだよ」


「兄ちゃんって異世界人だったのか?」


「そう、隠しててごめんね。俺はウェンディの面倒を見るためにこの世界に来たんだよ」


「ウェンディの面倒を見るために?」


「そうだ。それにセイの野郎はウェンディにプロポーズしやがったんだぜ」


サカキが飲みながらそれをバラす。ヘスティア達も知らなかったのに。


「セイ、どういうことだよっ」

「そんなの聞いてない」


怒るヘスティアとアーパス。ガックリうなだれるケビン。


「ふっふーん、そういうこと。だから皆セイにくっつかないでよね」


「えーっ、お兄ちゃん女神様と結婚しちゃったのーっ? 私来年成人だったのにぃ。待っててくれても良かったじゃない」


ラーラよ、何を待つのだ?


「いや、あの。ウェンディは女神だから結婚とかじゃないんだけどね・・・」


「何よっ。一生わたしを守るって言ってキスしたくせにっ」


「あのそれは・・・」


「セイ、お前から言い出したことだろ?ちゃんと責任取りやがれ」


とサカキに言われる。恐らくここでサカキがウェンディとの事を言ったのは奥さんがラーラを嫁にしようとしていたのを防止するためとケビンにウェンディを諦めさせる為だろう。サカキはこういうことをよくするんだよな。もう二人は昔みたいな子供じゃないから気を利かせてくれたのだろう。


「なら俺様とも結婚しろよな」

「私も」


「あのなぁ。人間同士の結婚とは違うんだから今までと何にも変わらんだろうが」


「ズリぃじゃねーかよ。ウェンディばっかり構いやがって」

「でも私にはセイとの子供がいるから勝ち」


すずちゃんはアーパスの子供でも俺の子供でもないぞ。それに勝ち負けなんぞない。


ギャーギャー言い合う女神ズ。ラーラは奥さんと一緒に作った料理を運んで来てくれた。


「はい、お兄ちゃん。食べてみて」


こんな短時間で手の込んだ料理に仕上げてきたラーラ。


「うわっ、めっちゃ美味いよ」


「へへーん。でしょ?ラーラお兄ちゃんの為に頑張って料理を覚えたんだから。ウェンディはこんなの作れないでしょ?」


「ぐぬぬぬぬ」


美味いと褒めたセイを見て勝ち誇ったようにある胸を張ってウェンディを挑発するラーラ。ウェンディもラーラの料理が美味いらしく、ぐぬぬぬぬと言いながらガツガツ食っていた。


「兄ちゃん、飯食ったら勝負してくれよっ」


「稽古ならクラマに・・・」


「違うっ。勝負を申し込んてんだっ」


あーそうか、ウェンディを取られたから勝負がしたいのか。これは受けてやらんといかんな。


「わかった。食い終わったらな」


カントもケビンの気持ちを察して止めなかった。ケビンの奴は結構本気でウェンディのことを好きだったのかもしれん。こんな下品に飯を食う姿を見てきたのによく幻滅しなかったものだ。




「兄ちゃん、本気で行くぜ」


「いいぞ」


木剣での勝負だけど当たると痛いだろうな。今回の勝負はお互い防具無し。ドラコン装備だと木剣なんて受けてもなんともないからな。


「テヤッ」


いきなりケビンが突きで飛び込んで来た。


「うわっ、危ねっ」


速いな。突きの連撃か。クラマはこんなの教えて無かったはずなのに。


ケビンの木剣は60cmぐらいの物、こちらは1m弱だ。受けるのにはいいけどスピードは向こうの方が有利だな。


突きと鋭く振り抜く剣筋を見せるケビン。本当に上達したよな。これってカントとクラマの剣術が融合したような感じだな。


そしてセイが剣を受けた後にそのままショルダータックルを食らわしてくるケビン。これはサカキの教えか。魔物には使い所が難しいが対人戦には有効だな。


セイはショルダータックルを半身で避けながらケビンの軸足を掬うように蹴った。


勢い余って転げるケビン。


「ほら、こういう躱し方もあるからな」


コケたケビンに剣先を突き付けてそういうセイ。前までならここで参ったをするケビンだったがまだ目は降参していない。仕掛けて来るな。


「甘いぜっ」


木剣で足を狙って来たケビン。セイはそれを読んで剣で受けた時にケビンに両足タックルをされた。


やるねぇ。諦めない心が育ったんだな。サカキはどこまで仕込んだのだろうか?


セイは背中を丸めて抵抗せずに倒れ込みつつケビンの身体を掴む、そして後ろに倒れ込む勢いで回転してケビンを尻から落として背中側から首を決めたのだった。そのままギブしないケビンはセイに絞め落とされた。


サカキがバンッとケビンに活を入れて目を覚まさせる。


「はっ、俺は負けたのか・・・」


「お前の完敗ってやつだな。セイは俺の攻撃を散々食らってきたから返し技はめちゃくちゃ上手ぇぞ。首を決められる前にセイの脇腹に肘を食らわせたらまだ勝負は続いたのによ」


と、サカキはケビンに伝えた。自分が回転させられた事に驚いて隙だらけになったケビンはそこまで対応出来なかったのだ。


「兄ちゃん、本当に強いんだな」


「子供の頃から地獄みたいな稽古をさせられてたからな。今の攻撃は相手を殺してもいいような時にしかやるなよ。初見でやられたら後頭部を打って死ぬかもしれんからな。よくもまぁあんな攻撃を躊躇せずに出せたもんだ」


「しょ、しょうがねぇだろ。あれぐらいやらないと勝てないって思ったんだから。でも兄ちゃんならウェンディをずっと守っていけんだよな」


「そのつもりだよ」


「ケビン、自分が強くなったとうぬぼれ始めてた時にちょうどいい薬になったわね。セイくんが本気出してたら剣を出す間もなく魔法でやられてたわよ」


「わかってるよそんなのっ」


敗者に鞭打つ奥さん。相変わらず可愛い顔をしてスパルタだな。


ケビンはセイに敵わないと心から悟ったらしくちょっと吹っ切れたようだ。


「お兄ちゃん、私とも勝負して」


そしてラーラも挑んでくる。奥さんが魔法に合格出したそうだからかなりやるのだろう。


「魔法勝負とか危ないだろ?」


「大丈夫。怪我とかしないようにするから。でもハンデはちょーだいっ」


「どんなハンデだ?」


「試合開始の時にお兄ちゃんは目を瞑ってるの。1〜2秒でいいから」


勝負の2秒って結構なハンデだけどラーラはまだ未成年だからな。これは魔法勝負だから高速詠唱する時間ってことかな?


「わかった。それでいいぞ」


「じゃ、お父さんが合図したら目を瞑ってね」


とラーラが言ったので構える。問題は第一攻撃をどう避けるかだな。セオリーだと横か後ろ。ファイアボールなら後ろは危険だから横飛びか。それを読んで攻撃をしてくるなら上がいいかな。


セイは合図から2秒待って飛ぶ心構えをした。


「始めっ」


パチっと合図と共に目を閉じる。


チュッ


えっ?


「キャーッ、私の勝ちーっ」


今・・・ラーラにちゅーされたのか?


「許さんっ」


ウェンディ達がキィーーっと怒る前にセイはカントにボコボコにされたのだった。



「なんでラーラにちゅーされてんのよっ」


サカキとクラマは奥さんとカントと飲んでいてカントの機嫌がいつまでも治らないので先に寝室に来たのだった。



「痛てててっ、揺らすなよ。俺がしたわけじゃないだろうが」


ウェンディがキーキー怒って身体を揺さぶる。カントからポーションを飲むなと言われて殴られて痛いままベッドに寝転がってるのだ。ラーラもカントからこっぴどく怒られていたけどペロッと舌を出してそそくさと部屋に戻ったのだった。


「俺様にもしろよ」


「俺からしたわけじゃないだろうが」


「でもラーラとしたじゃねーかよっ」


「したんじゃない。されたんだっ。ヘスティア、上に乗るな。いくら軽いからといっても痛いんだよっ」 


「うるせぇっ、こうしてやる」


胸元に座って足で首を締めてくるヘスティア。


「ギブっ ギブだヘスティア」


「セイ、私にもして」


そんなアーパスの声が聞こえる中、ヘスティアに絞め落とされそうになる。


いくらタップしても離してくれないヘスティア。叩く訳にもいかないので太ももをカプッとしてやった。このままだと本当に絞め落とされてしまう。


「うわァァァァっ。コイツ脚を舐めやがったぁぁっ」


真っ赤になって慌てて飛び退くヘスティア。


「舐めてないわっ。痛てててっ」


ダメだ。大きな声を出すと傷に響く。


アーパスが無視されてじとじとしている中すずちゃんだけが大丈夫?とよしよししてくれる。


「すずちゃんは優しいねぇ。痛てててて」


皆も本当に痛がってるのがわかったのか、やっと大人しくなった。



そして皆が寝入った頃


「なんでラーラにちゅーされたのよ」


「まだ起きてたのか?」


「答えなさいよっ」


「お前も見てただろうが。あれが俺からしたように見えたのかよ?」


「隙だらけだからされたんでしょっ」


目を瞑ったから確かに隙だらけだ。


「魔法の詠唱する間目を瞑れと言われたと思ったんだよ」


「わたしを神に戻してよ」


唐突にそういうウェンディ。アネモスで暴風を出したあとから妖力を流してないから髪の毛も青色のままだ。


「別に天界に帰らないからそのままでもいいだろ」


「いいから早くっ」


言い出したら聞かないので手をウェンディに伸ばすとチューっとしてきやがった。すぞぞぞと妖力を吸われるように感じだ。そしてふぅーっと息を吹き込んで来る。


「なっ、何するんだよっ」


「ふんっ」


あれ?あれだけ痛かった殴られた所が痛くなくなっている。あー、今のふうーは傷を治してくれたのか。これも直接口にされると効き目が大きいんだな。


「ウェンディ」


「何よっ」


チュッとお礼にしておいた。それで機嫌が直ったウェンディはそのままくっついて寝たのであった。



翌朝


「ウェンディ、お前神に戻ってんじゃねーかよ・・・あーーーーっ、俺様が寝ている時にちゅーしやがったなぁぁっ」


今日も朝からかしましい女神ズなのであった。


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