表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

290/323

商売替え

台風が過ぎ去って平穏なアネモスに戻る。


「うむ、想定していたような被害はなかったのじゃな」


「実はめちゃくちゃヤバかったんだよ。氷の神様のヒムロとユキメが台風の規模を小さくしてくれてなんとかなったって感じ」


「そうか。それは何か礼をせねばならんな」


ビスクマリーとバルコニーから台風一過の王都を眺めながら話をしていた。すでに俺が異世界人だというのも知られてしまったのでヒムロの事も話したのだった。


「ウェンディ、加護の風を感謝するのじゃ。何か欲しいものはあるか?」


「お礼なら、この国のお菓子をもっと美味しくしてよね」


「確かにアネモスのケーキは美味かったでの。よし、王室の料理人に特訓させておくのじゃ」


特訓して美味しくなるもんじゃないんだけどな。アーパスの宿にお願いしてレシピ貰っておくか。



どこにでもすぐに行けるようにアネモスの屋敷にも神社を建設。ここは4女神全員の神社にしておいた。ウェンディ神社にするとヘスティアが拗ねるからな。


ここからオーガ島に移動してお魚ダンジョンに魚介類を出してもらってからアクアに移動。



「パパ様、あれで遊びたい」


虹のまちは観光地らしく輪投げや的当等の遊ぶ店が増えていた。すずちゃんが遊びたいと言ったのは輪投げだ。


「えいっ えいっ」


「残念だったねぇ。はいこれは残念賞」


残念賞は飴玉ひとつ。しかし、すずちゃんは飴玉を嬉しそうに口に入れた。


「セイ、私もやりたい」


と、アーパスも輪投げに挑戦。店の人もアーパスだとわかっているので判定が甘い。


「大成功っ!アーパス様。景品は特賞のこれですっ」


渡されたのはアーパス像。


「いらない。代わりに飴玉頂戴」


そりゃ自分の像なんてもらってもいらんわな。


飴玉を袋いっぱいにもらってすずちゃんと手を繋ぎながら食べるアーパス。親子のようにも見えるし姉妹のようにも見える。しかし、すずちゃんが俺の事をパパ様と呼んで反対の手で俺と手を繋ぐので皆は俺とアーパスの子供だと思っているようだ。


「パパ様、すずはここにいたい」


「虹のまちに住みたいのか?」


「うん」


「ひょうたんの中では誰と遊んでいたんだ?」


「アメフラシとマダラ」


「マダラ、アメフラシ出ておいで」


「はいはい〜」


「マダラ、すずちゃんがここに住みたいと言うからお前とアメフラシでここに住むか?」


「いいのかにゃ?」


「構わんよ。アメフラシ、勝手に雨を降らせないと約束出来るなら一緒にここに住むか?」


「うん」


マダラもここが気に入ってたので良いだろう。それにマダラとすずちゃんが虹のまちに居ればここはずっと繁栄するしな。


教会横の家で皆を呼んで宴会をする。ダーツ達の子供ルリとシーバス達の子供セイーゴをすずちゃんとアメフラシがよくかまってくれるので親になったシーバス達はゆっくりと飯を食えて喜んでいた。


「セイ、いいのか?すずちゃんの事をみんなお前の子供だと思ってんぞ」


「毎回違うと言うのも面倒だしもういいよ。それにすずちゃんとアメフラシはここに住むことになった。金を置いておくから飲み食いした分を各店に払ってやってくれない?」


「そりゃいいけどよ。マダラもここに住むのか?」


「すずちゃんとアメフラシだけだと心配だしな。まぁ、俺もしょっちゅう来るとは思うけど」


マダラはカツオのタタキをウマウマと白飯を頬張りながら食べている。


「すずちゃんたちが居てくれるなら助かるわ。セイーゴの面倒とか見てくれるのよね?」


「面倒見るったって遊び相手をするだけだぞ」


「それでも助かるわぁ。ねぇ、パールフ」


「ええ。なんだかんだでダーツとか子育てから逃げるし」


「逃げてるわけじゃねーだろうがっ。稼がなきゃなんねぇんだ」


「ほら、そうやって仕事のせいにする」


「うちもおんなじ。シーバスはすぐにどっかに行くんだから」


「どっかじゃねぇよ。肉を狩りに行ってんだろうが」


どうやら二人は一角幻獣の居た近くの肉系魔物スポットに虹のまちで消費する肉を頻繁に狩りにいくらしい。


「近くに肉系魔物のダンジョンを作ろうか?」


「まじかよっ」


「別にそれぐらいいいよ。その代わり、初めに出して欲しい肉の魔物を生け捕りにして食わせないと出ないからね。それにここだと虫の魔物も出ると思うからアネモスのダンジョンより確率は下がると思う」


「それでもいいぜ、数捕れる方がいいからな」


「魚の出るダンジョンはどうする?これだけ出荷数が増えて来たら魚いなくなるんじゃないか?」


「そうなんだよなぁ。養殖もしてるからなんとかなってんだけどよ」


「入江の所の土地を開拓してくれたらそこにダンジョンを作るよ。そこをフィッシャーズ達の土地で立ち入り禁止にしとけばいいだろ?ダンジョンに頼めば生きたまま魚を出してくれるから海に放流すればいいんじゃない?」


「俺たちが交渉できるのか?」


「オーガ島でヒョウエ達もやってるから出来ると思うよ。鬼達は生きたオーガをポイポイとダンジョンに入れて食わせているから」


「ここだと何を入れてやりゃいいんだ?」


「生ゴミや虫の魔物を入れてやればいいんじゃない?」


「生ゴミかぁ。俺達ゴミ運びしなきゃならんのか?」


「誰か雇えよ。観光地は綺麗にしとかないとあっという間にゴミだらけになるぞ。隣に焼却炉を作ってダンジョンが食わなかったゴミを燃やすとかさ」


「分かった。ならスライムを捕まえて来るから頼むわ」


入江にスライムでダンジョンを作り、一部を海に繋げ、魚をそのまま海へ放流するようにしていく。ダンジョンには餌をやるから魚を出すように頼んでおいた。多分餌をやるとお礼に魚を出すようになって行くだろう。


肉を出すダンジョンは他の冒険者達にも開放する。死人も出てくるだろうけどそれはお互いの勝負だから頑張ってくれ給え。



年越しと正月はギルマス達とビビデ達もここに呼んで過ごした。マリーは年始行事があるので来れないとめちゃくちゃ悔しがっていたけど。そしてどうやらガッシーとリタ、チーヌとオルティアも結婚が決まったようでアーパスの教会で式をすることになったのだった。



「へぇ、ガッシーがアンジェラの店を買い取ったんだ」


「タダでやると言ったのにそれはダメだと言われてね」


「ガッシー、あの店で何やんの?」


「冒険者向けの何でも屋だ」


「仕入れはどうすんの?」


「そこはセイさんに期待してますっ」


ニコニコと笑顔でそういうリタ。


「セイ、私達が作った防具や武器、ポーションとか売るらしいぞ」


と、アンジェラ。


「俺がそれを運ぶの?」


「アネモスから輸出船が出るようになるまではな」


「ダメですか?」


と、上目遣いでウルウルさせながら見つめるリタ。こんな目をされてダメだと言う勇気は無い。


「値付けは輸出船で輸入する時を見越してしないとダメだぞ」


「はいっ」


「ねーちゃん、セイさんの前だけ乙女すんなよ。気持ちわりーぞ」


「またあんたは余計なことを言うんじゃないのっ」


姉弟喧嘩は放置して、


「ガッシー、フィッシャーズの家はどうすんだ?」


「面倒見てる奴らにそのまま使わせる。そのうちのあそこはそうやってアクアの有望な冒険者達が引き継いで行くだろう」


なるほど。あの家はトキワ荘みたいになって行くのかもしれんな。


「チーヌとオルティアはどうすんだ?」


「このまましばらく冒険者をやるわ。あいつらが一人立ちしたらギルドに雇って貰うことになってんだ」


「オルティアは?」


「私はそのまま指導係です、ふふん♪」


「指導じゃねー、お前はそのまま現役をやるんだよっ」


「えーっ。面倒臭いっ」


「うるさいっ」


オルティアは相変わらずだな。ちっとも変わってないや。チーヌとの子供が産まれても面倒臭いと言ってチーヌが子育てをしそうだ。


「パールフとツバスはこれから何して行くんだ?」


「ポーション屋よ。美白ポーションが売れだしてんのよね」


回復ポーションと馬脂を混ぜたのが美白ポーションとして使えたらしい。


「なら万能薬も売ればいい。量産体制も整ったからな。それにセイがここから素材を仕入れてくれるなら安定供給も出来ると言うものだ」


「えっ?セイの万能薬を売るのっ」


「残念ながらあそこまでの効能は無いがなんとか買えるぐらいの値段で売れるだろう」


まぁ、通常はティンクルが作るぐらいの効能で十分だしな。


「セイ、チョコ食べたい」


と、唐突にウェンディが言い出す。


「チョコって何?」


ツバスとパールフが聞くので元の世界でウェンディ用に買い溜めたチョコを放出する。


「なっ、何よこのお菓子っ」


「チョコレートというお菓子。俺の居た世界では定番のお菓子なんだけどここにはないよね」


「めちゃくちゃ美味しいっ。これはここで作れないの?」


「素材を探したら作れるかもしれないけど作り方とか知らないぞ」


「えーっ」


「セイ、お前ヒムロんとこの神社使えば買いに行けんじゃねーのか?」


と、サカキ。


「まぁ、そうだね」


「買って来て。もっと買って来てっ」


「私も欲しいですっ」


近い近い近いっ


女性陣にちゅーされるぐらい近付かれてチョコをねだられるセイ。


「離れてよっ」


セイにちゅーされるかと思って皆を引き剥がしていくウェンディ。


「買いに行くのはいいとして向こうの世界のお金がなぁ」


「こっちのお金は使えないの?」


「全然違うお金だからね。この前。戻ったときには宝石を売ってお金にしてたんだけど、何回もやってるとそのうちの盗品かなんかで疑われそうなんだよね」


「セイ、これからも何度も向こうで買い物するならなんとかしてやるさね」


「タマモ、そんなのことできるの?」


「ま、任せておきな。金のインゴットを用意しておくんだね」


タマモがなんとかしてくれるならなんとかなるのだろう。こうしてセイは祓い屋から運び屋になってしまったのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ