観光
外に出てもやることはないしクソ暑いので翌日はここでだらだら過ごすことに。精算をしたらそのまま使い続ける事も出来るようなのでテレビゲームをしたりして遊んだ。飯も砂婆に持ってきてもらった。もう驚かれてもいいや。どうせひょうたんの中からでも様子を伺えるんだろうし。
テレビゲームにハマったウェンディ。簡単なやつでもなかなかクリア出来ないのだ。セイもゲームが上手い方ではないので対戦ゲームとかでもいい勝負になり長い間遊んでいた。
「もう寝るぞ」
「あともう一回、あともう一回だけっ」
何度もう一回言うんだ?セイはもう妖力を流す必要もないので先に寝ることに。
そして夜中に胸に重みを感じて息苦しい。ウェンディのヤツ、ゲームをつけっぱなしで寝に来たのか?
ムニュ
ん?なんだこの感触は?
「よう、迎えに来てやったぜ」
「うわァァァァっ」
「大きな声を出すなよ」
「ヘスティアっ、どうやってここに来たんだよ」
「大神に扉を開けてもらったんだ」
目を開けるとウェンディが横で寝ていて、ヘスティアが胸に乗っかって足で顔を挟んでいた。
「おりろっ」
そんな顔の目の前に乗って来るんじゃない。
「ここなんだ?」
「宿だよ」
「へー、おっ、こりゃなんだ?」
ポチポチと胸の上に乗ったままスイッチを入れるヘスティア。この体勢は良くない。顔に当たる当たるっ。
そしてアダルティーな映像と音声が流れる。
「こっ、こんなの見てやがんのかよっ」
「消せっ消せっ」
慌ててヘスティアをおろして画面を消す。
「おっ、お前、チューだけじゃなしにウェンディとあんなことをしてやがったのかよっ」
「してるかバカッ」
「本当かよ?」
「本当だ」
ヘスティアは迎えに来た経緯を説明する。
「一度に二人しか扉を抜けられないのか」
「だからまずウェンディを連れて帰って、それからセイを迎えに来てやるぜ。お前もあっちに帰りてぇんだろ?」
「そうだな。帰れるなら帰りたいと思ってるぞ」
「へへっ、そうだと思ったぜ。でもよ、この扉、来るときは問題ねぇんだが戻るときに時間がズレるらしくてよ、戻ったら10年近く経ってるらしいんだ」
あー、それでウェンディに連れて行かれた時に時間がズレてたのか。
「だったらもう一度迎えに来てくれる時は10年後ってことになるのか。ヘスティアまでこっちにいたらボッケーノの魔物もアイテムを落としてくれなくなるんじゃないのか?」
「ボッケーノはテルウスがガイヤと兼務で面倒見てるし、アネモスはアーパスが見てるぞ」
「そうか、ちゃんと対策してくれてるんだね」
「だからよ、ちょいとこっちの世界も見せてくれよ。数日こっちにいてもバレやしねぇだろ?」
「それはいいけどさ、俺も後で2日程はいないとダメだし。ヘスティアが街中に出るなら服を着替えないとダメだぞ。こっちの人はウェンディが見えてるからヘスティアも見られると思うからな」
「マジかよ。あっ、帰ったら驚くぜぇ」
「何がだよ?」
「それは帰ってのお楽しみ。あとな、お前を戻す条件ってのもあるんだ」
「どんな条件だ?」
「それも帰ってからのお楽しみってやつだ。まぁセイならなんとかなるんじゃねーかな」
ならいいけど。
「この扉、しまえたりするのか?」
「問題ねぇぞ」
それは良かった。このまま扉がここにあったら部屋をでる訳にはいかなくなるからな。
「じゃあ、明日の朝出発するからな」
「分かった。あとよ」
「何?」
「俺様にもチューしろよ」
「なんでだよっ」
「ウェンディにはしたじゃねーかよ。ずりぃぞ」
「ズルいとかそんな問題じゃないだろっ。それよか見てたのかよ?」
「当たりめぇだろ。アーパスも見てブツブツ言ってたんだならなっ」
俺にはプライベートってないんだな。神にも妖怪達にもずっと見られるているのか。
「でもしません」
「なんでだよっ」
「しましょう、はいそうですかというものでもないだろうが」
「ウェンディばっかりズルいじゃねーかよ」
「ズルいとかじゃありませんっ」
ヘスティアはそのまま夜明けまでギャーギャーしつこかったのである。
早朝に扉をしまってホテルを退出。ウェンディを起こすとヘスティアがいて驚いていた。あの騒ぎを知らないとか凄いと思う。
半裸のヘスティアをそのまま外に出す訳にはいかないのでアクアで買った服を着せる。目立つけど半裸よりマシだ。
ファストフードで朝食メニューを食べる事にしたけど店員さんに驚かれた。何人前ですかって感じだ。
「もう少ししたら服を買いに行くからな」
と、ここでのんびりしてから服を買いに行き一式買い揃える。高くはあるが異世界とは比べ物にならないぐらい安いので予備もたくさん買っておいた。こそっと物陰でアイテムバッグに閉まってからまたカキ氷を食べに。
めっちゃジロジロとヘスティアが見られているけどもう気にすのはやめた。赤い炎のような髪の毛は目立つし、何を着ても胸元が目立つのだ。
「セイだけ後で帰ってくるって本当?」
「扉は二人しか通れないみたいだしな」
「次に会えるの20年も後になるってこと?」
「ウェンディが迎えに来たら10年後だな」
そうか。そういや俺は向こうの世界に戻ったら20年も過ぎている事になるのか。
「アネモスはアーパスが見てくれてるんでしょ?」
「そうだぞ」
「なら帰んなくていいんじゃない?」
「そんな訳に行くかよっ。アーパスが拗ねるじゃねーかよ」
「いつまでも帰らなかったらアーパスも来るんじゃない?」
「おっ、そうかもな」
「ダメだ。お前らは向こうの神だろ?ちゃんと帰って神様やっとけ」
「なんでよっ。私と10年とか離れて寂しくないわけっ」
「個人の気持ちよりやらないといけないことをちゃんとやれ」
「私がいない間にこっちで誰かと結婚とかしてたらどうすんのよっ」
「そうだぞっ。俺様達がちょっと離れている隙にウェンディにだけチューしやがったくせに」
「みっ、見てたのっ」
「当たり前だろうが」
「なんで見てるのよっ」
初めは二人でセイを責めていたのが今度は二人でギャーギャー言い出したので俺が二股掛けて揉めているように思われているんじゃなかろうか?めっちゃヒソヒソされてるし。
「ほら、並んでいる人がいるからさっさと食べろ。もう溶けてきてるだろうか」
カキ氷を食べ終えて店をそそくさと出る。まだギャーギャー言ってるのが本当に迷惑だ。
「なんかもっと面白ぇとこないのかよ?」
確かにここは田舎だからな。高い建物もないしうぉぉって感じにはならんな。
ということで電車に乗って元祖虹のまちへ。
「へぇ、地下道にこんなに店があるんだな」
「お菓子買おうっと」
また駄菓子を山程買うウェンディ。そしてガラスのコップに入ったプリンを食べて赤い火青い火が灯る街へ移動してタコ焼きを食べて、虎が勝ったら飛び込む川のほとりで休憩。
「こんなに人が居てんのかよ?」
「この国で3番目に人が多い街だからな」
「どんな神が管理してやがんだ?」
「この国は神様がたくさんいるからな。あっちとは仕組みがちょっと違うんだよ」
「へぇっ」
「明日、また戻るから他の神様に会わせてやるよ」
「この街の神に知り合いはいねぇのかよ」
「いるけどね、どの神も一癖あるから行くのやめておくよ」
この街の神はみんな主張が強いからな。会うと面倒臭いのだ。街行く人々も主張が強い人が多いからヘスティアもあまり目立たない。
晩ごはんは串カツにした。立ち呑みみたいな所ではなくてコースで出てくる所だ。これは失敗だったかもしれん。ストップをかけないと延々と出てくるのだ。俺は一巡でストップをかけたけどウェンディとヘスティアはいつに止めるのだろう?もう3巡目なのだが。
「まだ食うのか?」
「だっていつまでも出てくるじゃない」
「もういりませんって印を置かないといつまでも出てくるんだよ。ここの材料なくなるぞ」
4巡目に入るときに止めさせた。最後の串カツはアイスクリームの串カツだった。
「これ、お代わりっ」
「やめろ。アイスが食いたいなら違う店に連れてってやる」
言葉が通じてなくて良かったと思う。
「これとー、これとー、これとー、これとー」
「3つだけ選べって言ったろうが」
いくつ乗せるつもりだまったく。
自分は頼むのやめておこう。もうお腹いっぱいだ。
ヘスティアもトリプルを頼み食べ食べ歩く。
ニコニコしながらウェンディがアイスクリームを食べさせてくる。人前であーんとか恥ずかしいじゃない・・・、これチョコミントじゃないか。
「だからこれはやめとけっていったろ?お前がいらなくても俺もこれは苦手なんだよっ」
「食べてよっ。他のも同じ味になるのっ」
「知らん。やめとけといったのにこれがいいとぶーたれたのお前だろ?」
「こんな味なんて思ってなかったのっ」
渋々苦手なチョコミントをあーんさせられていく。他の人からはバカップルに見られているだろう。
「俺様のも食えよ」
「だからチョコミントはいらないって言ってるだろうが」
「なんでぇ、これ旨えじゃねーかよ」
「好き嫌いがはっきり分かれるんだよこれは」
流石にヘスティアの分まで苦手なアイスはいらん。
またウェンディだけ特別扱いしやがってとか機嫌が悪くなるヘスティア。
「て、どこで寝るんだ?」
「あっ」
しまったな、予約すんの忘れてた。
結局タクシーに乗ってもう一つの大きな街に行き、一番高級なホテルしか空いてなかった。一泊で17万円・・・。銀貨だと17枚。そう思うと高く感じなくなるから不思議だ。
「おーっ、なんかどこもかしこも光ってやがんな」
夜景がよく見える部屋なので眺めは抜群だ。ヘスティアもこっちの世界で観光が出来て良かった。ウェンディはぬーちゃんに乗って東京の夜景を見ているからここのはそれほどでもないようだな。
そして朝食はホテルでクソ高い物を食べてヒムロの所へ移動したのであった。