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女の人は怖い

翌日、気合を入れて山に結界を張る。


クラマはかまいたちのイヅナと協力して間伐を行っている。ウェンディはウドーに巻き付かれていた。


「お前、ウドーホイホイとしても有能だな」


ウェンディがいると自分達は襲われないのだ。


「いいから、早く助けなさいよっ」


「クラマとイヅナがここにいないから燃やして倒さないとダメなんだよ。お前火炙りになるぞ?」


それで復活したら神に戻れるかな?


「平気だから早くやりなさ・・・」


わっ、吸われてる吸われてる。


巻き付かれたウェンディは養分を吸われだしたので、平気との言葉を信じて狐火でボッと燃やして倒す。


「熱っついっ!」


復活どころかなんともなかったな。でもウェンディの髪の毛がチリチリになって風神様みたいになってる。なんとなくこの方が神様らしく感じる。


「平気だからやれって言ったろ?」


「もーーーっ」


ウェンディは目を閉じ何か集中すると薄っすらと光り、髪の毛が元通りになっていく。


「なにそれ?」


「治癒したのよっ」


「そんなこと出来んの?」


「神なんだから当たり前でしょっ」


そう言ってプイッと向こうを向いたウェンディは後ろが丸出しだった。


「服は直せないんだな」


「えっ?キャァァァァッ!スケベっ」


バシコンっ


しこたまウェンディに殴られたセイ。服も神の服らしく破けても元に戻るそうなのだがお尻が燃えていたことには気付いていなかったようだ。


「何をイチャついておるんじゃ?」


「どこをどう見たらイチャついて見えるんだよ?」


頬を腫らしたセイはクラマにそう答える。


「間伐した木はどうするんじゃ?使えんことはないぞ」


「じゃあ持って帰ろうか。なんかの役に立つかもしれないし」


倒れた木の枝葉をかまいたちのイヅナが払ってくれ、ぬーちゃんがひょうたんの中に持っていく。


これを貴族の娘の結論が出るまで続けたセイ達。



「じゃ、ヒョウエ、結果を聞きに行って来るわ」


「頼んだ」


セイは貴族の屋敷に向かって前と同じように式神を飛ばした。


「来たか」


「はい、お約束の日でございましたので」


「これは報酬だ」


と金貨の入った袋を渡されそうになる。


「すいません。この状態で受け取ったら持ち出せないので直接来てもいいですか?」


「なら、秘密通路の方へ来い」


セイは執事が開けてくれた家に入り秘密通路に。


「はい、確かに金貨15枚頂きました。娘さんはどうされます?」


どうやら、娘はこの秘密通路にある部屋でずっと過ごしていたようだ。家の者たちには娘が戻って来たことは秘匿されたままらしい。


「ヒョウエという者に会えるか?」


「直接お会いになります?見た目は怖いですよ」


「構わん。娘が頑としてこの部屋から出ようとせんのだ」


「わかりました。うちの家で待機していますのでご案内致します」


秘密通路のある屋敷から馬車に乗り、セイの屋敷へと移動する。


「こ、ここはバートン家の幽霊別荘ではないか」


「一度依頼を受けまして報酬として頂きました。幽霊は退治したのでもういませんよ」


「何っ?幽霊を退治しただと?」


「はい。自分の本業はそういう仕事なので」


「貴様、何者だ?ここは神官でも無理だったと聞いておるぞ」


「私達は風の神様の加護を受けておりますので。神の風は幽霊も吹き飛ばすのですよ」


「疫病神にそんな力が・・・」


またかコイツは。


「中へどうぞ」


両親と娘を中に案内してヒョウエを呼ぶ。


「ヒョウエ様っ」


「ラームっ」


抱き合う二人。


ラーム?この娘の名前はラームというのか?


鬼みたいな見た目の娘・・・ラーム。


・・・・・謝れっ。鬼っ娘ファンに謝れっ。この娘にそんな名前を付けるな。鬼っ娘は本当の鬼みたいであってはいけないのだ



「貴様が娘をたぶらかした男か?」


お、ヒョウエを見てもビビらんとはお父さん男だね。


「俺はヒョウエ。この度は勘違いで護衛達には済まないことをしてしまった」


いきなりそう誤ったヒョウエ。貴族のお父さんは護衛が死んだことなど気にも止めていなかったのに。


「娘を連れて帰ってどうするつもりだ?」


「妻にしたいと思う」


「何だとっ!この化け物が。かわいい娘をお前のような奴の所に嫁がせるとでも思っているのか」


そうか、かわいいのか。親とはそういうもなのだろうか?


「化け物・・・。そうだ。人間から見たら俺達は化け物だろう。相いれぬ存在だというのは理解している」


「なら、なぜ娘を嫁になどと言うのだ」


「すまない。自分でもわからない。この気持ちは理屈では説明出来ないのだ」


「ヒョウエ様・・・」


「あなた、娘のことが本当に好きなのかしら?」


ほとんど話さなかった母親がそう切り出した。


「好きとはどういうことかよく理解は出来ない。しかし、ラームを初めて見た時から守りたいと思った。そしてずっとそばに居て欲しいと思った」


「そう・・・。ラーム、あなたヒョウエ様の所にお行きなさい」


「お母様っ」


「お前は何を言い出すのだっ」


「ラームもヒョウエ様の事を好きなのね?」


「はい」


「あなた、女の幸せは家柄やお金ではありませんわ。こうしてお互いが望んで一緒になること。私はラームが羨ましいわ」


「何を言っているのだお前は・・・」


「ラーム、私は望まれてお父様に娶られた訳ではありません。リーゼロイ家の為に致し方がなく娶らたのです」


「娘に何を言うのだっ」


「貴族とはそういうもの。だから貴方の女遊びにも気付かないフリをして差し上げているのです」


「なっ・・・」


「今更それをどうこう言うつもりはありませんわ。でも娘に私と同じ気持ちを味合わせたくありませんの。たくさんのお出会いをさせていたのもそのせいですわ」


どうやら拐われた時もお見合いというか出会い場の帰りだったようで、延々と連敗が続いて馬車の中で泣いていたらしい。だからヒョウエは拐われたと勘違いしたのか。


「お母様・・・」


「ラーム、ヒョウエ様の所に行けばあなたは魔物に殺された事にします。貴族に戻るどころか帰って来れる場所はありませんよ。それでもいいのかしら?」


「構いません。その覚悟は出来ております」


「わかったわ。ヒョウエ様」


「はい」


「娘をどうか末長く宜しくお願い致します」


「この角にかけてお約束します」


「フフっ、セイ殿が怖い方だとおっしゃってたからどんな方かと思っておりましたが素敵な方ではありませんか」


「お前は何を勝手に決めて・・・」


「あなたには可愛い娘が他にもおられますでしょう?」


「なっ、お前知って・・・」


「当たり前ではないですか。ラームの妹のレームは私が生んだのですから。それとも誰かと勘違いされていますの?」


「い、いや、そんな事はない」


愛人どころか隠し子もいるんだな。奥さんには全部筒抜けで、知っててこういう時の武器にするのか。女の人って怖いわ。


こうしてヒョウエとラームはオーガ島に一緒に戻る事になったのであった。



「セイ殿・・・、いえセイ様」


「はい」


主人が馬車に乗り込んだ後、奥さんはまだ馬車に乗らずセイに話しかけてきた。


「この度は本当にお世話になりました。貴方のお陰で娘の命ばかりか幸せまで守って頂いて」


「依頼を受けて報酬を頂きました。それだけのことですよ」


「バートン家がこの屋敷を渡された依頼がどんなものかわかりませんが恐らく大変な依頼だったのでしょうね。幽霊の噂があったとはいえこの別荘が報酬なのですから」


まぁ、押し付けられたようなものなんだけど。


「私達も何か特別な報酬を差し上げねばなりませんね」


「もう金貨を頂きましたので」


呪いの宝石とか余計な物はいらんぞ。


「それは娘の救出の報酬ですわ。幸せを守って頂いた報酬は何がよろしくて?」


「娘さんの幸せを守るのはヒョウエですよ。自分は教会にお祈りに行って頂くだけで結構です」


「ふふっ。皆はウェンディ様を悪魔だ疫病神だと言っていましたけど、そうではなさそうですわね。お祈りは当然のことです。他に何でも結構ですわよ」


なんでもか。


「では一つ可能であれば」


「はいどうぞ」


「教会を宗教法人に戻して頂く事は可能ですか?」


「あらどういうことかしら?」


「信者がいなくなって宗教法人を解除されてしまったらしいんです。一等地の大きな建物なので税金が高くて神官が食うや食わずの生活を余儀なくされているんです。今年の税金分はなんとか寄付出来たんですけど、毎年寄付出来るかどうかわからなくて」


「そうでしたの。わかりましたわ。我がリーゼロイ家が信者として後ろ盾になりましょう。それで宗教法人に戻れると思いますわ」


「ありがとうございますっ」


「あと、主人には内緒でこっそり娘に会いに行くことは出来るかしら?」


「わかりました。ヒョウエにはその旨を話しておきます。普通の人にはわからない場所ですので私達が案内しますよ」


「ではこれからも宜しくお願い致しますね」


奥さんは見た目は鬼みたいだけどいい人だな。そのうち台風の事で何かお願い出来るかもしれないな。


馬車を見送った後、ヒョウエに母親の事を話すと是非来てくれとのことだった。



翌日、ヒョウエ達と共にオーガ島に行く。


「暴風の件だけどこの島の周りだけになるけどいいか?どこまで海に影響出せるかわからんけど」


「うむ、やってみてくれるか?それで人魚達が戻ってくれたら状況がわかるかもしれない」


「そうだね」


「ウェンディ様。宜しくお願いします」


「まっかせなさいよっ」


ようやく出番のウェンディは張り切って風を吹かせた。


オーガ島を中心とした竜巻みたいな風だ。


「おい、やりすぎじゃないか?」


鬼達の住処の山の周りは暴風の目になり、風壁があるので何も見えないが物凄い事になってるのは想像出来る。


「何言ってんのよ。私の力を思い知りなさいっ」


ウェンディがスッキリした後、オーガ島の魔物どころか木々も全て吹き飛び、おどろおどろしい岩だけの島に変貌していたのであった。


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