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土木作業終わり

翌日から水路工事を始める。昨日の事をウェンディはあまり覚えてなかった。覚えていたのは俺に帰る術がないということだけだった。


測量士が傾斜を考えて指示された通りに掘り起こしては固めていく。


「あんちゃん、その魔法すげぇな」


「これ魔法じゃないんだよね。土を掘り起こして固めるのはテルウスの力をかりてるんだよ。水路が出来たらアーパスの力を借りて水を流すよ」


「神様のお守りって噂は本当なんだな」


「そうだよ。こいつは風の神様ウェンディだよ」


「他の神様はどこにいるんだ?」


「天界でみんなを見守ってるよ」


「風の神様は天界にいなくて大丈夫なのか?」


「まぁ、ちょっとね」


「ははーん、もしかしてあんちゃん風の神様に惚れて側にいてくれとかお願いしたのか」


と、ニヤニヤした顔で言ってくる。


「そんなところだね」


と、否定せずに返しておいた。ウェンディが神様に戻ったらこんな事を言われることもなくなるんだな。初めの頃は夫婦だ何だとよく間違われたっけ。


からかわれつつ作業を続けていく。水路はごく緩い傾斜でも距離があると結構な高低差が必要になるようで出発地点は丘のような感じで船の出発場所を作らないとダメだった。


テルウスの力で掘って横に土を盛り上げて固めて水路作り。慣れてくると綺麗な形に作れるようになってきた。


「あんちゃん、あのデカい岩は迂回すんのか?」


「いや、焼いて溶かすというか蒸発させるから離れて」


ここはヘスティアの力の出番だ。


ゴウゥッ


「何だよそれ・・・」


「これはヘスティアの加護の力。強力だよね」


神様パワーは凄い。本当に土木作業向きだ。


魔物はぬーちゃんに任せて延々と土木作業を続ける毎日。一ヶ月ほどでガイヤまで到着して折り返していく。そして年内にすべての工事を終えたのだった。


宿場町が出来る予定地にはお互いの水路を行き来出来るようにするのと橋を付ける。宿場町は上り下り共通のサービスエリアみたいな感じだな。


次はシーバス達の漁村にも水路のターミナルを作った。


「おー、ロレンツォが言ってた通りに水路まで出来ちまったか」


「近々水を通すよ。今からアクア王都の中に繋げる水路を作ったら完成だね」


「セイ、これを見届けたら妾のここでの仕事も終わりなのじゃな」


ターミナル工事を見ていたマリー姫様は感慨深そうというか寂しそうな感じでそう言った。


「そうだね。冬の間は少し休んで、春に戴冠式を予定してるから。お父さんとお母さん呼ぶ?」


「そうじゃな。しかしボッケーノだけ呼ぶのはまずいのではないか?」


「じゃあ、ガイヤとアクアの王様達にも招待状を送っておくよ」


「うむ、しかし、ここを離れるのは名残り惜しいのじゃ」


「また遊びに来ればいいよ」


「連れて来てくれるのか?」


「夏に海水浴とかしにくればいいんじゃない?王様も休みが必要だし、予め休みの予定を入れておけばいいんだよ」


「ならばセイに成熟した妾の水着姿を見せてやろうぞ」


「15歳で成熟とか言うなよ」


「ふふん、もうすでにウェンディより背も胸も勝っておるのじゃ」


マリー姫は身長160cm半ばくらいまで背が伸びていた。もうヘスティアとお揃いのアクセサリーも似合うだろうな。ボッケーノの宝石店には多面カットの別のを発注してあるから戴冠式の時に渡そう。


冬の温泉旅行の話をするとツバスがもうすぐ出産なので今回はパスするとのこと。次の機会には子連れで行きたいとのことだった。



そして水源まで穴を掘りまずはアクア→ガイヤへの水を流す。


ブシューーーっ ドドドドドド


勢いよく吹き出した水は轟音を立てて水路へと流れ混んでいく。船着き場のターミナル池は湧き水で流れが強くなってしまったので船着き場を改良する。乗り込みや荷物を乗せるのに両岸から挟むような形にしておいた。人用ゴンドラと荷物用ゴンドラの2レーンだ。



「ウェンディ、試乗してみようか?」


ゴンドラを一台借りて船頭さんを雇い試し乗りしてみることに。


「旦那、落っこちたら凍え死ぬから気を付けて下さいよ」


「ウェンディ、だってよ。絶対に立ち上がんなよ」


「そんな事するわけないでしょっ」


川の流れに乗るようなゴンドラは思ったよりスピードが出る。馬車よりも圧倒的に早いのだ。


「結構揺れるね」


「そうですねぇ。こりゃ水路専用のゴンドラを作った方がいいかもしれませんね」


アクア王都で使われているゴンドラは二人が横並びしてちょうどぐらいのサイズ。前後にも乗れるので6人乗りや8人乗りのがほとんどだ。これは横に4人くらい乗れる幅のゴンドラにしたほうがいいな。旅になるから屋根とかも必要だし。


船頭が巧みにゴンドラを操ってくれるので転覆するような事はないけど、未熟な船頭なら危ないかも。真っすぐの水路にしたけど、宿場町以外に休憩出来るポイントを作った方がいいかもしれん。トイレ休憩が出来るポイントを作らないとな。


「魚いるかな?」


グラッ


「こらっ、下を覗き込むな。バランス崩れて危ないだろうかっ。もうお前はこっちに来とけっ」


セイは真ん中に座ってウェンディを足の間に挟むようにして座らせる。


「何よ?わたしを風除けにしてるんじゃないでしょうね」


「こうしとかんとまた変な動きするだろうが」


セイはマントを脱いでウェンディを包む。これで風が当たっても寒く無いだろう。


そして夕方にはシーバス達の村に到着したのだった。



「え?そんなに早く来れんの?」


「みたいだね。こことガイヤの宿場町で泊まったら実質二泊三日でアクアからガイヤまで行けると思うよ」


「うっそ、走るより早いじゃん」


と大きなお腹のツバスが驚いていた。


「ただ今のゴンドラだとひっくり返るかもしれないから専用のゴンドラを作って貰わないとダメだね」


「なら新造船が増えるってことか。船大工達は大忙しだな」


「うん、今のうちから準備しといて貰った方がいいね。ゴンドラの船頭やりたい人増えるんじゃない?」


ガイヤとアクアで話し合って水運ギルドかなんか作ってもらおうか。船の大きさで料金を一律で決めて貰って今後の水路の保守とかやってもらわないとダメだしな。


セイはその後ガイヤまで行き水源まで堀り下げて水を出してアクアまで戻ったのであった。翌日からはトイレ休憩が出来る場所を作っていく。これで水路は完成だ。船を上げる装置は職人に発注しておいた。仕組みはこんな感じでと伝えておいたのでなんとかなるだろう。


大晦日と正月はアネモスに帰ってからオーガ島でヒョウエ達と年越しそばと餅付をして楽しんだ。


肉を大量にコンテナに積み込み再びアクアに戻り両国に水運ギルドの設立と船頭の募集を掛けて貰った。正式な稼働は春になるだろうから後はお任せだ。


セイはやらないといけないことを着々と終わらせていく。マリー姫様の戴冠式の招待状も大国に送っておいた。参加の有無は冒険者ギルドを通じてもらうことになっているので、参加の場合は迎えに行く予定だ。


そして久々のカニ温泉旅行。



「へっへっへ、その甲羅酒くれよ」


「私は甘いお酒がいい」


「私はヒレ酒をもらおうかな」


「わたしもー、甘いお酒、ウメシュがいい」


ヘスティアは甲羅酒、テルウスはヒレ酒、ウェンディとアーパスは砂婆が持ってきた梅酒をお湯割りにしておいた。


「神様達は本当に見えぬだな」


「マリー、でもちゃんといるぞ」


「そうなのじゃな。見えぬと言うのはこちらも寂しいのぅ」


ヘスティア達は自分が他の人から見えないのでこっちに居座っている。今回はカニとフグの両方を楽しんでいるのだ。といっても俺は神様達の世話で忙しいのだが。


「セイ、カニ焼いて」


「お前、カニ焼くのなんて網に乗せるだけだろうが」


「いいじゃない。ウメシュお代わり」


全く自分で何もしようとしないウェンディ。


「お前、赤ちゃんじゃないんだから自分で出来る事は自分でしろよ。梅酒もお湯入れるだけだろうが」


と言いつつカニを網に乗せて梅酒のお湯割りを作るセイ。


「セイ、水路も出来たしもう仕事終わったんだろ?」


と、ヘスティア。


「春に姫様の戴冠式が終わったらね。後はウェンディを神様に戻さないと延々と肉の支給をするハメになる。冒険者達も討伐してもアイテムが手に入らないから稼ぐ効率が悪いんだよ」


「ウェンディ、お前もう神に戻れてんじゃねーのかよ?」


「しっ、知らないわよっ」


「そう、もうとっくに戻れているはず。どうして戻らないの」


淡々とウェンディを責めるアーパス。


「だから知らないって言ってんでしょっ」


「そうよウェンディ。あなたが天界に戻らないとセイがいつまで経っても働きづめよ。そのうち過労死しても知らないわよ」


長女のテルウスも責める。


「まっ、まだエネルギーが足りないのっ」


グビグビと梅酒を飲みながらそう答えるウェンディ。


「まぁ、今日は宴会だから、その話はやめて食べて飲もう。ヘスティア達もせっかく来たんだから楽しめよ」


「チェッ、セイは本当にウェンディにだけ甘ぇよな。そんなんだったら俺様もずっとこっちにいるからな」


と、セイの肩に乗ってくるヘスティア。足でぎゅうぎゅう挟むんじゃない。


「はしたないからやめろって言ってるだろうが」


「いいじゃねーかよ。フェチのセイの為にやってやってんだろうが」


誰がフェチだ。


「セイ、今何をされておるのじゃ?」


「ヘスティアが肩に乗って太ももで顔を挟んで来るんだよ。はしたないからやめろって言ってのにさ」


「セイは嬉しいのか?」


「慣れたとは言え恥ずかしいんだよ」


「じゃあ私は膝枕」


「ちょっとぉ、二人とも離れなさいよぉ」


「いいじゃねーかよ。ウェンディはずっと一緒にいるだろうが。俺様達はたまにしか来れねーんだぞ」


長期出張から帰って来た父親を取り合いする子供のような喧嘩をする女神ズ。


「キィーーーーっ」


「今は何をされておるのじゃ?」


「アーパスが膝枕で寝転がったんだよ」


「では妾はおんぶじゃ」


「マリーはダメーっ」


「なぜじゃ、ヘスティア様もアーパス様もしておるのじゃろうが」


「あんたは人間の女じゃないっ」


「ヘスティア様達も女じゃろうが」


「ダメなのはダメなのっ」


ふぬぬと背中に張り付いた姫様をウェンディが引き剥がそうとするがなかなか力強い姫様は離れない。


「姫様、もう成人したんだからやめなさい」


「春になったらもうこんな事は出来ぬじゃろ。今日で最後じゃ。最後のわがままぐらい許してくれてもよかろ?」


梅酒は甘くて飲みやすけど酒としてはそこそこ強いから皆酔ってるのだろう。姫様の頭とヘスティアのお尻が同じ位置にあるのが不思議だけど、神様に戻ったら幽霊と同じように触れなくなるからこれも当然か。


酔っ払いには何を言っても無駄なのでギャーギャー騒ぐ皆をほっといてセイは焼きカニをほじるのであった。





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