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ケビンとラーラの特訓

「新しい街道を作ってるだと?」


「そう。もうアネモス側は終わっててね、もうすぐボッケーノの領地、ここの領地内に取り掛かるんだよ。ボッケーノ王には工事の許可をもらってるから勝手にやってもいいんだけど領主にも一応挨拶をしておこうかと思って」


「はぁー、アネモスだけでなくボッケーノまでお前が工事すんのか」


「大国4カ国で不可侵条約を結ぶ予定にしていてね、お互いに発展していこうとなってるんだよ。アネモスとボッケーノの交易が盛んになればお互いにメリットが大きいだろ?」


「そりゃあまぁな」


「で、この領地は交易の中継地点として発展していくと思うよ。今のうちに土地を買っておいたら?」


元の世界だと法律に触れるかもしれんがこの世界にそんな法律はない。お世話になってるカントが儲けるぐらいはいいだろう。


「今の生活で満足してるから土地を買って売ってして儲けるつもりはないぞ」


「ケビンやラーラが独立して家をこの領地に建てるなら土地を確保しておかないと高くて買えなくなるかもよ?」


「そんなに上がるのか?」


「多分ね。ここは隣国との玄関口にもなるだろ?中継地として栄えると思うんだよね。この街道を通して、ここに将来駅を作るつもり」


「駅ってなんだ?」


「街道は人も馬車も通るけど、列車というものを走らせる予定。鉄の馬車みたいなものだね。大量の荷物や人を運べる物になるし、アネモスーガイヤ間は7日も掛からない時間で移動出来るようになる」


「本当かそれは?」


「列車が出来るのはまだ先の話しだけどね。街道を作ってしまえばそんなに遠い未来の話じゃない。もっと先の話をすると2日くらいで行き来出来るようになるかもしれないよ」


「そんな時代が来るのか・・・」


「そう。だから土地を買って・・・」


「解った。確保しておこう」


「確保?」


「街道が通るのは未開拓地だろ?」 


「そうだよ」


「未開拓地は開拓したものの土地になるからな。ラーラの魔法訓練代わりにそこを開拓しよう」


「あんまり街道に近いと列車の音とかうるさいかもしれないよ」


「解った。少し離れた方がいいんだな?」 


「そうだね。駅を作る予定の場所から領地までは道を繋げるからその近くがいいかもね」


ということでカントはケビンとラーラの為に土地を開拓することになったようだ。後で相談して開拓しやすいようにしておいてやろう。


大人な話をしている間にケビンはヘトヘトになっていた。


「どうだった?にーちゃん」


ごめん、見てなかったとは言えないので強くなったねと言っておいた。


ここで泊めてもらい、ラーラが一緒にお風呂に入ろうと言ったのをカントは死ぬほど怒っていた。


「本当にいいの?」


「構わんぞ。その代わりラーラにおいたすんなよ」


「しません」


領主に挨拶に行くのと、この近くを工事する間は毎日泊まりに来いと言われてお言葉に甘えたのだった。


「クラマが毎日稽古付けてくれんの?」


「暫くな。ケビンは短剣向きかもしれんからクラマの指導は役に立つ立つと思うぞ。剣を選んでもそれは生きてくるからな」


「セイくん」


「はい、何でしょう奥さん」


「セイくんの作業をラーラにも見学させてもらっていいかしら?」


「土木工事ですよ?」


「魔法の訓練にもいいと思うのよねぇ。土魔法を覚えさすのにちょうどいいの」


「俺のは魔法じゃないですよ」


「似たようなものよ。私も付いて行くから」


ということで領主のアポイントはカントが取ってくれることになり、ケビンはクラマとサカキに剣術と体術の稽古。ラーラは奥さんと一緒に土木作業をすることになった。



「あらぁ、これは鉄の魔物?」


「重機っていいます。魔導具の一種ですよ。俺が土を掘り起こして重機で木を避けて行きます」


ゴゴゴゴゴっと地揺れがして土が掘り起こされて木が倒れる。重機がそれを避けた後に固めるのだ。


「重機も凄いけど、セイくんの力って凄まじいわね」


「これは土の神様テルウスの力を借りてるんですよ。テルウスとかは大きな島をグズグズに崩す事も出来ますからもっと凄まじいですよ」


「神様の力ねぇ。ラーラ、今見たのをやってみましょうか」


奥さんいわく、セイのように一度に出来るわけではないが一本ずつなら可能じゃないかと言う。



「うーん、うーん」


ゴニョゴニョと何かを唱えた後にラーラは力を込めて土を掘り起こそうとしている。少し盛り上がる土だが深く根を張った木を倒すまでには至らない。もっと深く掘り起こさねばならないのだ。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ。ダメ。全然動かない」


「ラーラ、木はもっと深く広くに根を張ってるからその下から掘り起こさないと倒れないんだよ。表面だけ掘り起こしてもダメなんだよ」


「ラーラ、木を倒そうとするんじゃなくて木の下の土を持ち上げるようなイメージを持つのよ。はいもう一度」


重機が木を除けている間はラーラの魔法を見ておく。自分はテルウスの力を貰ったから簡単だが、魔法使いがこれをやるのはかなり大変のようだ。そもそも魔法使いが使う土魔法は土の玉を飛ばしたり、壁を隆起させて防御をするといった使い方らしい。


ぽてっ


あっ、ラーラが倒れた。


「あらぁ、もう魔力切れかしら。慣れない魔法だしかなり魔力を使うみたいだから仕方がないわね」


ラーラは結局木を倒す事が出来ずに昼ご飯前に魔力が切れたのだった。ラーラの魔力は尋常じゃないぐらい多かったけどそれでもダメなのか。


皆で昼飯を食って休憩。


「奥さん、魔力って使い切って回復すると増えるんだったよね?」


「そうよ」


「それは自然回復だけ?」


「そんな事ないわよ」


「ならポーション飲んで回復させてから続けてみる?」


「あのポーションを使うのかしら?」


「そう。たくさんあるからドンドン使っていいよ」


オルティアの特訓と同じだ。あいつは強制回復させて特訓を繰り返したことで飛躍的に伸びていったからな。ラーラにはキツイかもしれんが負けん気を強く持っているからいいかもしれない。


どうするかラーラに聞いたら飲むといったので何粒か飲ませた。一つで満タンにならないから凄いな。


そしてラーラは真剣に土の掘り起こしに取り組んでいくのであった。



「おにーちゃん、まだ倒せなかったぁ」


家に帰りがてら腕を組んできて甘えてそう言ってくるラーラ。ウェンディがふぬぬぬと引き剥がそうとするけど奥さん譲りの力があるのか非力なウェンディでは引き剥がせなかった。


カントハウスに戻るとケビンが伸びていた。


「あらぁ、ダラシないわね。さっさと起きなさい」


奥さんはふわふわした雰囲気なのにけっこうスパルタだ。


「クラマどうだった?」


「ワシよりもサカキに聞け。めちゃくちゃしごいておったぞ」


「サカキ、何やったんだ?」


「体術の動きは剣術にも繋がるからな。動作の基本をみっちりやっただけだ。カントもそれを教えてなかったみたいだからよ、明日筋肉痛で動けねぇんじゃねぇか?」


「まさか発勁を打てるようにしてるんじゃないだろうな?」


あれの稽古は本当に厳しいからな。足腰どころか全身が引き千切れるかと思うような稽古だ。


「セイ、当たりじゃ」


やっぱり。


「剣士にあんなの必要ないだろうが」


「バカかお前は。剣士が剣だけに頼ってたら危ないってのはお前が一番分かってるだろうがよ」


確かに。


「それを証拠にクラマに剣を弾かれたあとはすぐに参っただ。魔物もそれで許してくれんならいいけどよ」


サカキの厳しさは命を守るためか。俺もそうやって何度も言われたな。


「任せたのに口を出して悪かった」


「おう、なら酒を出せ」


「もう蒸留酒はほとんどないぞ」 


「なんだとてめぇっ」


「しょーがないだろ。仕入れにも行けてないんだから。日本酒か焼酎飲んどけよ」


「明日貰いに行けよ。こっからならビビデ達のとこまですぐだろうが」


「俺は仕事してんだよっ」


「こらこら何を揉めてる?」


「あ、ギルマスお帰り。いやサカキがさぁ、仕事休んで酒を買いに行けとか言うんだよ」


「買いに行ってやればいいじゃねーか。作業している奴らも休みは必要なんじゃねーのか?」


確かに皆も休ませてないな。


「あんな何もないところで休みを取らせるってのもねぇ」


「ならこの街の近くになったら休みを取れ。サカキ、酒は明日持って帰って来てやるから今日は我慢してくれ」


「しょーがねぇな。ならセイ、魚出せ。ジジイ、日本酒でいいな」


と酒を旨く飲むための料理ということになり、奥さんの作ったクリームシチューと刺身という変な組み合わせの晩ごはんになってしまった。


「飯食えねぇよ」


今にもへばりそうなケビンは体力を失い過ぎて飯が食えないようだ。


「ほら、これ飲んどけ」


と、ポーションを渡して飲ませる。


「わっ、すっげー。一気に身体が軽くなった」


そしてガツガツと飯を食い出すケビン。


「セイ、明日はそいつを置いてけ」


ケビンもオルティア特訓をさせられるのか。サカキも久しぶりにこういうのが出来て嬉しいのかもしれん。


ケビンは明日から何をやらされるのか知らずに旨そうに刺し身とクリームシチューを食っていたのであった。

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