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ヘンリー確保

「ミナモトくん、随分と広い街道にしているんだな」


「沖田さん、電車作れる?」


「まぁ、材料さえあればな」


「材料って主に鉄だよね」


「そうだ。ここは鉱山が無いだろう?」


「多分あるとは思うけど、どれだけ掘ればいいかわかんないんだよね」


「あてはあるのか?」


「ダンジョンがある場所から貴金属が取れるんだよ。多分鉄も出ると思うけど今すぐには難しいかも。一台目の車両と線路分ぐらいは俺が取ってきてもいいんだけど」


「ボッケーノはたくさん鉄が取れるんだったな」


「そう。これから鉄や金属はたくさん必要になるでしょ?それを運ぶのに貨物列車があればいいなと思うんだよね。まずは単線、素材が安定して手に入るようになれば複線化して人も運べるようにしたらいいと思うんだよ」


「そのための広さか。やはり都市計画は初めが肝心だな。この街も元の世界を思い出すわ」


そう、初めから将来を見越して作っておかないと拡張するのは難しいのだ。


「今度さ、沖田さんと研究者達をガイヤに連れて行くよ。面白い魔導具を作る人がいてね、一緒に研究したらいいかなと思ってるんだ」


「魔導具店のやつか?」


「いや、廃品回収っていうのかな?使い道がわからない魔導具とかを回収して自分で色々と作ってんだよ。スパイスボックスというのもその人が作ったんだ」


「スパイスボックス?」


「これ凄いんだよ。食品を入れておくと劣化しないんだ。ナマモノもそのまま保存出来る優れもの」


「冷凍冷蔵じゃなしにか?」


「そう。これを貨物車に流用出来たらアネモスの魚をボッケーノに卸せるようになるよ。瞬間冷凍してそのまま保存して輸出。ガイヤからは鉱石を輸入。お互いメリットだらけだね」


「よし、そいつに会わせてくれ。非常に興味がある」



ということで沖田達を連れてガイヤのヘンリーの所に行くことになった。



「こんちはー」


「おー、久しぶりだな。ん?なんだそいつらは?」


「元ガーミウルスの魔導具研究者。今はアネモスの国民になったんだ。ガーミウルス国民が全員アネモスに移住してきてね」


「全員移住?」


ヘンリーにアネモスとガーミウルスで戦争があり、その後全員移住してきた事を伝えた。



「魔導戦艦?それに転送装置だと?」


「そう。このオキタさんは俺と同じで古代語も読めるしガイヤから手に入れた設計図を元に色々な物を作り出しているんだよ。で、一度研究者同士話をしてみたらどうかな?と思って連れて来たんだ。ご飯でも食べながら話をしない?」


ガイヤにはカレーショップが出来ているのでそこで食べながら話をする。こらウェンディ、コップに舌を浸けるな。


「列車とは何だ?」


「鉄の馬車って感じなんだよ。重い物でも大量に運べる。ガイヤとアクアはそのうち水路で繫ぐ予定にしているんだけど、アネモスとボッケーノはそれで繫ぐつもり。ヘンリーが見たことがない重機とかガーミウルスの研究者達が作った物は凄いよ」


「ほぅ、それは一度見てみたいものだな」


「でさ、アネモスで一緒に魔導具作りをしない?ヘンリーの作ったスパイスボックスとか流通に革命を起こすと思うんだよ」


「あれが革命を起こす?」


「そう。生鮮食品が輸出入で新鮮なまま運べるのは凄いよ。アネモスからボッケーノに、アクアからはガイヤに。ガイヤも海に面している地域はあるけど王都まで遠いから王都に生で食べられるような魚は手にはいらないだろ?」


「俺はそこまでだいそれた魔導具を作りたいわけじゃないぞ。まだ見知らぬ魔導具のロマンを追い求めてだな」


「ヘンリー、わかるぞ。うんうん、わかるぞその気持ち。ロマンは心の栄養だ。生活を豊かにする魔導具も必要だが、心を豊かにする魔導具も必要性だ。ぜひワシ達と一緒にやらんかね」


沖田はロマンという言葉に食いつきそう言った。月刊誌で学んだだけで魔導戦艦を作ったぐらいだからな。


ヘンリーは廃品回収という気ままな暮らしをしているのでガイヤから離れても特に問題はない。一度アネモスを見てからどうするか決めると言うことになり連れて帰ったのであった。



「この船を作ったのか」


「今は無残な姿ではあるがそれはそれは勇ましい姿でな。こいつで宇宙にいけるのを夢見ていたのだ。これから作る列車もいつかは宇宙に飛び立てるようにしたいものだ」


沖田は3桁のゾロ目が並んだ鉄道も作るつもりだったのか。


それからもヘンリーは沖田達が作った魔導具を見て目を丸くしていた。想像を遥かに超えたものばかりなのだ。


「こんな凄いものを作る奴らに俺は不要だろう?」


「いや、ロマンを持つやつと一緒に仕事がしたいんだ。ガーミウルスの研究者や科学者達はとても優秀だ。だがロマンが足りん。ぜひ一緒にロマンを作ろうではないか」


沖田は少々趣旨が変わって来ているがヘンリーを一緒に巻き込むのに一役買ってくれてそのままアネモスへ移住する事となった。


「じゃ、住民登録しておくね」


「お前はそんな事までできるのか?」


「ミナモトくんはアネモスの王だからな」


「は?王?」


「暫定でね。アネモスが落ち着いたら違う人が王になるよ」


「仮の王ということか。お前に威厳はないからな」


「しょうがないだろ。まだ若いんだから」


元の世界だと大学を卒業して就職していたらまだ新入社員とかわらんような年頃だからな。威厳なんて無縁だ。



セイはヘンリーを沖田達に任せてボッケーノへの街道作りに戻った。アネモス側は終わっているのでこれからはボッケーノ側だ。


ゴゴゴゴゴゴと地面を掘り起こして重機で木を除けて行って貰う。木材は取り敢えず街道沿いに置いておこう。


これを日々繰り返してカントのいる領主街の近くまで完了。


作業員達はここで野営するのでセイはカントハウスに行ってみることにした。



「こんばんはー」


「はぁい、どなたかしらぁ」


カチャっとドアが開いて奥さんが出てきた。


「あらぁ~セイくんっ」


「ご無沙汰してます。近くまで来たので顔を見せに来ました」


「入って入って、あなたぁ、セイくんが来てくれたわよぉ」


「おー、セイ。久しぶりだな」


そしてケビンとラーラも急いでコッチにやってきた。


「にーちゃんっ、ウェンディっ」


「おー、ケビン。お前デカくなったなぁ」


「おにーちゃんっ」


「わっ、ラーラ」


ラーラはいきなり抱きついてきた。前までならそのまま抱っこしていたのにもうすっかり少女になっている。子供の成長ってこんなに早いのか。


「ちょっとぉぉっ、そんなにベタベタくっつかないでっ」


「ラーラっ、離れなさいっ」


ウェンディもラーラを女と認めてくっつくなと怒ったのであった。


「ウェンディ、座って座って」


と、ケビンはウェンディの手を握って引っ張る。


「ちょっ、ちょっ」


すっかり大きくなったケビンに手を繋がれ赤くなるウェンディ。セイ以外と手を繋いだのは初めてなのだ。



テーブルに着いて話をすることに。


おー、ケビンのやつかなり色気付いて来たんだな。ウェンディを見る目がハートマークになってんぞ。


ラーラも嬉しそうにセイに魔法がだいぶ使えるようになったことを捲し立てるように話をしている。


その話を聞きながら奥さんがベーコンやらハムやらの燻製肉料理を振る舞ってくれたので軽くワインを飲みながら食べていた。


どうやらケビンは来年成人らしい。ということは姫様と同じ歳だったのか。


「にーちゃん、後で手合わせしてくれよ。剣術が随分と上達したんだぜ」


「こら、まだ冒険者にもなっとらんお前が特別ランクのセイに敵うわけがないだろが」


「手合わせか。なら指導剣術の方がいいかな。クラマ、ちょっとケビンの相手をしてやってくれないか」


「うむ、よかろう」


「俺達は飲んでようぜ」


「あらぁ、いいわよぉ」


クラマのついでにサカキも出て来て宴会をするようだ。


「えー、ラーラもおにーちゃんに魔法使えるようになったの見て欲しいっ」


「ラーラ、あなた魔力切れで回復もちょっとしかしてないでしょ」


そう奥さんに言われてぷくっと膨れる。


この顔を見ると小さい頃と変わらないなとクスッと笑うセイ。


「おにーちゃん、何で笑ったの?」


「ラーラほ大きくなったけど、小さい頃と変わらないなと思ってね」


「ちゃんと大きくなってるもん。胸だってウェンディより大きくなったよ。ほら」


と、服を捲ろうとするのをカントが慌てて止める。


「そういうところが子供なんだっ!」


カントはめっちゃ怒ってそう怒鳴り付ける。


ウェンディがキィーーーっとなったのは言うまでもない。色んな意味で。



外に出て狐火を灯してクラマとケビンの剣術指導。


「にーちゃんもやってくれよな」


「クラマは俺の剣術の師匠だから俺とやるより勉強になるぞ。俺は見物させてもらうから」


サカキと奥さんは剣術の稽古を肴に飲むようだ。よいしょと持ってきた椅子に座るとラーラがニコニコしながら昔みたいに膝に乗ろうとしてくる。


「ラーラっ、椅子に座りなさいっ。子供じゃないと言うなら子供じゃない行動をせんかっ」


カントが再び怒るのでぷくっと膨れたまま隣に座る。その隙にウェンディが膝の上に座った。


「おい、椅子に座れよ」


「いいじゃない」


何がいいんだ?


「ウェンディだけずるいっ」


「セイは私の下僕なの。だからいいの」


まだそれを言っているのか・・・


ラーラを膝に座らせるにはもう大きいしカントが怒る。ウェンディをこのまま座らせておくのがベターな選択か。そう思ったセイはそのままウェンディを膝の上に座らせた。



カントの合図と共に木剣でクラマに斬りかかるケビン。踏み込みスピードがかなり速いな、随分とカントに鍛えられたのだろう。


カンっ


クラマはケビンの剣の軌道を変えていなす。何度やっても同じだ。


「クソッ」


「攻撃が素直過ぎるわい。スピードはなかなかのもんじゃがそれじゃと魔物も倒せんぞ」


「でやぁっ」


「ほれ、攻撃の後は隙だらけじゃ。一撃で決めれなんだら死んでおるぞ」


軽くいなされ切っ先をケビンに軽く当てて指導していくクラマ。カントはクラマの剣術を見るのは初めてだ。


「なんと見事な」


と、カントはクラマの剣さばきに見とれていた。


「ギルマス、ケビンは強くなったね。ノーマルオークぐらいなら一人で倒せるんじゃない?」


「あっ、ああ。ケビンは冒険者登録をする前にブラックオーククラスまでは倒せるようにしてやろうと思っている」


「そうなんだね。クラマの剣術は短剣向きだから斬り方とか覚えて貰った方がいいかもね。それともギルマスの剣を渡すつもり?」


「初めはそのつもりだったんだがな。ケビンは目がいいしスピードもあるから短剣向きかもしれんと思ってる所だ」


「なら暫くクラマに指導してもらう?父親と違う指導も参考になると思うよ」


「暫くここにいるのか?」


「ウェンディ、ちょっと降りろ。話がしにくい」


「もうっ」


セイはひょいとウェンディをラーラと反対側の椅子に座らせた。カントはラーラをもう一つの椅子に座らせセイの隣に自分が座ったのであった。


「ギルマス、ここの領主を紹介してくれるかな?」


「なんの為にだ?」


「工事のお知らせに行きたいんだよ」


「工事?」


そしてセイはようやく本題をギルマスに話し出すのであった。



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