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時は流れ

毎日毎日移民者達の為の街づくりと転送(ワープ)装置とかの魔石の充填、肉の確保に奔走するセイ。女神ズはいつ仕事が終わるんだよ?と月イチぐらいで来てはブータレながら飯を食って帰っていく日々が続く。


移住者は毎日千人単位でやってくる。毎月3万人ずつアネモスの人口が増えて行くのだ。国の税金は取り敢えずストップして国に残っていたお金を作業をしている人たちに給金として支払う。が、当然足りなくなるのでガーミウルスのお金も使うことに。金銀銅賀よく取れる国だったのでけっこう潤沢にお金はあった。それに紛れてダンジョンから出してもらった金と銀でアネモスのお金も増やしておく。


ガイヤ、アクア、ボッケーノへの支援へのお礼は王と王妃にその国の女神が身に着けている宝石セットを用意しておいた。王には冠だ。これらは新生アネモス樹立を宣言したときにお礼として渡すのだ。



そして最後の移住者達がアネモスにやってきた。


「これで最後だよセイくん」


「最後までガーミウルスの見守りご苦労様でした」


デイスラルは最後までガーミウルスに残り、全員が移住したのを見届けて最後の船でやってきた。


これはガーミウルス侵攻の日から3年後の事であった。



ガーミウルスからの移住者達が住む開拓地は初めから災害に備えた街づくりをしていたのでとてもスッキリとした町並みになっている。味気はないが効率は良いのだ。


「デイスラルがここの領主ね」


「本当にいいのかね?私は敵国の総統であったのだよ」


「問題ないよ。アネモスの貴族達はだいぶ整理したし、ウェンディ信仰をしてくれるならいいよ」


「うむ、ウェンディと新生アネモスへの忠誠を私を含め元ガーミウルス国民達も約束をしよう」


「ここはアネモスとボッケーノの流通中継地として栄えて行くと思うからよろしくね」


セイはすでにアネモスとボッケーノの道路整備を始めていた。トンネルを掘った直通道路は馬車で一週間程の道のりだ。将来を見据えて幅はだいぶ広く作ってある。


カント達のいるボッケーノの領地とガーミウルス街は流通の中継地点として栄えていくだろう。




「おめでとうっ!」


今日はダーツとパールフ、シーバスとツバスの結婚式だ。アーパスの教会第一号として二組同時の結婚式となった。


今日の為に女神ズ達は力を落として皆に見えるようにしてある。遠く離れた地でヘスティアとテルウスは大暴れして力を落したのは言うまでもない。


「しかし、ロレンツォ、この教会によくこんな仕掛けを作ったよな」


「アーパス様のお力を存分に感じられるようにしたかったのです」


前面がガラス張りになっていて海が見えるのは発注通り。アーパス像はガラスの特製像。天井にプリズムが埋め込まれており教会の中に虹が降り注いでいるように見えるのだ。ロレンツォがイメージしたのは晴れているときにもアーパスの加護の雨が降って虹が出ているイメージだそうだ。


アーパス像もその光を受けて透明の中に虹が掛かっているようにも見える。海のキラキラとした光と合わさってもとても綺麗だ。アーパスもとても満足そうだった。



「こんな所で結婚式出来るなんて待ってたかいがあったわ」


と、ドレス姿で喜ぶパールフの腕には赤ちちゃんが抱かれていた。


「お姉ちゃん綺麗」


「ふふふ、ありがとうシーラ」


パールフは母親と妹に褒められてとても幸せそうだ。ダーツととっくに夫婦生活をしているが結婚式はやはりしてみたかったらしい。

 

ビスクマリー姫はツバスに話しかける。


「ツバスも少しお腹が目立ってきたの」


ツバスも妊娠しているようでお腹が出っ張らないうちに式をしたのだった。


「毎日気持ち悪いけど、式の時にはもってくれて助かったわよ」


「もう名前は決めたのか?」


と、セイはシーバスに聞いてみる。


「男だったらセイーゴ、女だったらアージにしようかと思ってる」


「もしかして俺かアーパスの名前から取ってんのか?」


「そうだぞ。どっちが生まれてもご利益ありそうだろ?」


「アーパスはともかく俺の名前にご利益なんかないだろ?」


「ばっか、俺達に踏ん切りつけさせたのはお前だろうが。ガッシーもリタとくっつきそうだしよ」


「チーヌとオルティアは?」


「あそこもくっつんじゃねーか?オルティアはお前に魔法を教えてもらってからめちゃ強くなったしな」


そう、オルティアは過去とちゃんと向かい合って冒険者になると決意したので魔法を教えたのだ。過去の記憶は今のところちゃんと戻ってはいないがなんとなくそうかもしれないと受け入れたのだ。自分は捨てたれたんじゃないと思えた事で心の楔が抜けたような感じだ。


オープン前の宿に移動して宴会をすることに。


新しい宿はブルーを基調としたグラデーションのタイル張りの外装。まだ発展途中の村には浮いた感じだが、そのうち村から街に発展していくにつれてここの象徴となる建物になっていくだろう。


アクアの支配人や料理人、パティシエが手伝いに来てくれて豪華な食事になっている。ランバール達も視察を兼ねて来てくれて宴会は盛況だ。ランバールの孫のレベッカもここで結婚式と宴会をしたいと言い出して父親は渋い顔をしていた。


 

セイは村の皆から囲まれているシーバス達と少し離れてシャンパンを飲んでいる。


「姫様もだいぶ大きくなったよな」


「うむ、来年成人じゃからの。妾もセイに似合う年頃になるのじゃぞ」


「そうだね。初めて会った時からもう4年になるのかな?」


「早いものじゃな。あの時にセイに会えておらなんだらこんな経験をすることもなく、クソ女になるところじゃったの」


「姫様、本当にご立派になられまして」


爺は主役の新郎新婦達よりも姫様がここまで皆と一緒に村の再開発をしてきた事を涙ぐんで喜んでいた。


「セイ様、ここがオープンしたら私達のお役も御免ですわね」


「そうだね。オープンして暫く様子を見て従業員たちがちゃんとやっていけるのを見届げたら終わりかな」


「寂しくなりますわね。こうして外で動いていると健康になって杖もいらなくなりましたし」


モリーナもここを離れる時期が近付いて来て寂しいようだ。


「今日はシーバス達のお祝いに専念して、明日今後の事で話をしましょうか」


と、しんみりしかけた雰囲気を打ち消すようにセイは切り出してお祝いを楽しんだのであった。



翌日、姫様達と話をする。


「姫様、ここが終わったらどうする?」


「うむ、ボッケーノに帰らねばならんの」


「ボッケーノに帰ってやりたいことはある?」


「父様母様もおられるし兄や姉もおるからの。妾の出来る事とはあまりないかもしれんの」


「じゃあ王様やる?」


「王様とな?セイは兄姉達と後継争いをせよと申すのか?」


「いや、新生アネモスの王様」


「アネモスの?セイ、妾に嫁に来いと言ってくれるのか」


ぱあっと顔が明るくなるビスクマリー。


「違う違う。王妃じゃなくて王様」


「王じゃと?アネモスの王はセイがやっておるのじゃろうが」


「俺は代行。そもそも王なんて柄じゃないし国の運営なんて無理だよ。姫様が無理なら今貴族達をまとめてくれているリーゼロイかガーミウルスから来た総統のデイスラルに任せようかと思ってるんだけど、姫様だと新しい国のあり方とかやってくれそうかなと思うんだよ」


「セイ様、それは本気で仰ってますの?」


「そうだよ。ボッケーノの王族である姫様が王になれば隣国同士の同盟とか強固になる。それに今交易の為の道を作ってるから馬車で一週間ほどで行き来出来るようになるから両国にとっても軍備にお金かけなくていいからメリットがあると思うんだよね」


「セイ様、もしかして初めからそのおつもりで漁村の再開発を姫様に?」


爺は薄々勘付いていたとは思うが本当にそうなるとは驚いたようだ。


「うん、ここは姫様の練習にいいかなと思ったんだ。アネモスもだいぶ落ち着いたとはいえこれから新しい体制を作っていかないとダメだからね。民の立場に立ってくれる王様になってくれると嬉しいな」


「セイ、本気で妾に出来ると思うておるのか?」


「新生アネモスは貴族と平民といった垣根を低くしようと思ってるんだよ。仕事が出来る人は身分関係無く活躍出来る国にね」


「爺、妾に王は務まると思うか?」


「姫様のお心掛け次第にございます。やりたいと思われるのであれば爺は付いて参ります」


「マリー、私も手伝ってあげるわ」


「お祖母様、爺・・・」


「もちろん俺も手伝うよ。工事とかまだしないとダメだしね」


「セイは妾に仕えてくれるのか?」


「仕えるとかじゃないけどちゃんと手伝うよ。アネモスはウェンディが庇護する国だから」


「・・・そうか、ウェンディが庇護する国であるからか。・・・わかったのじゃ。その話しは引き受けたのじゃ」


ビスクマリーは自分の為ではなくウェンディが庇護する国だからとセイに言われて少し寂しかった。そんな大事な国の王を自分に任せたいと言ってくれた嬉しさよりも寂しさは寂しさが勝ってしまったのだった。




その夜。


「セイは妾が成人近くなっても女としてみておらんのじゃな」


寂しそうにモリーナと爺にそう話す姫様。


「マリー、女としての愛情は貰えなかったけど信頼は貰えたのよ。胸を張りなさい」


「うむ、わかっておる。妾はアネモスをボッケーノより住みやすい国にしてセイの信頼に応えるのじゃ」


「姫様、それが何よりのセイ様への恩返しですぞ」


「うん」


ビスクマリーの初恋は実らなかったが、こんな経験をさせてくれたセイへの気持ちは感謝へと変換させていくのであった。

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